世界有数の歓楽街・新宿歌舞伎町で生き続ける テーブルゲームの秀作『おてなみ拝見』シリーズ

東京都新宿区歌舞伎町。数多くの飲食店や遊戯施設が建ち並び娯楽に溢れるこの地は、学生・社会人はもとより国内外からの観光客で賑わい、眠らない街とも言われている。

一方で、当メディアの特集記事「ゲームセンター聖地巡礼シリーズ」にもあるように、往時から現在も多くのゲームセンター(以下ゲーセン)が林立している。

その中の一つである「新宿プレイランドカーニバル」は、ゴジラヘッドでおなじみの新宿東宝ビル(旧新宿コマ劇場跡)横という歌舞伎町のド真ん中に位置する、ヒューマックスパビリオン新宿歌舞伎町ビルに店を構える。

1階にはクレーンゲームなどのプライズ機やプリクラを設置し、2階には各種オンラインゲーム、音楽ゲーム、トレーディングカードアーケードゲーム(TCAG)、ビデオゲームが設置されている。

まさに大型店と呼ぶにふさわしいスキのないラインナップだが、そのビデオゲームコーナーの一隅に、しっかりと根を張る作品がある。1999年にサクセスからリリースされたテーブルゲーム(以下、TBL)の『おてなみ拝見』シリーズだ。

最新機種や他ジャンルの名作に混じり、この地で今も現役稼働している理由、そして、ゲーセンにおけるTBLの存在意義について、同店への取材をもとに一考してみたい

「テーブルゲーム」というジャンルの特徴

▲初代『おてなみ拝見』の収録ゲーム。囲碁、五目並べに将棋、花札、トランプ、リバーシと、馴染み深いものばかり

読者の皆さんはTBL(テーブルゲーム)というジャンル名を聞くと、どんな種目を思い浮かべるだろうか?

その多くは囲碁、将棋、麻雀、トランプ、花札などと推測するが、これらはビデオゲームとの相性がよく、いく度となくゲーム化されてアーケードゲーム内での地位を確立してきた。さらに進化した現代では、オンライン対戦が盛んである。

『おてなみ拝見』は1999~2005年に計3作品発表されたTBLのシリーズもの。ネットワーク機能は備えていないながらも比較的知名度はあり、将棋、チェス、リバーシ、カードゲーム(トランプ、花札、UNO)など、複数種類が基板1枚で楽しめるTBLだ。

常日頃から「TBLはカタい(インカムが安定している)」との意見はよく耳にし、筆者もゲーセンスタッフ時代から、麻雀ゲーム※01麻雀ゲーム : ビデオゲーム草創期からゲーム化され続け、特にアーケードでは1980〜90年代に各メーカーからこぞってリリースされたTBLの一ジャンル。専用コンパネを用いて脱衣/非脱衣、4人打ち、メダルゲーム、通信対戦など、多岐にわたり展開してきた。現在その主戦場はオンラインに移り、代表格に『麻雀格闘倶楽部(マージャンファイトクラブ)』シリーズ(2002年~/コナミ)などがある。とともに同シリーズの高いインカム状況は数字の上でも体感してきた。

ただしそれはかつての話。いま現在はどういった状況なのか?

シリーズ全作が稼働している「新宿プレイランドカーニバル」を訪れ、『おてなみ拝見』について貴重なお話を伺った。

店内全シングル台の中でも高インカム、初代の持つ普遍性

▲対戦キャラクター(COM)の選択画面。下に行くほど強キャラとなっている

このシリーズ、特に初代の『おてなみ拝見(以下、初代)』のインカムは、上から数えたほうが断然早いですね。おそらく皆さまが想像されている以上だと思います。

そう話すのは、「新宿プレイランドカーニバル」シニアアソシエイトの高橋氏。今回の取材に対し「あくまで当店の場合ですが」と前置きされてはいたが、それでも上位というのは驚きだ。では、どんなお客がどんな種目をプレイしているのだろうか。

年配の男性で、固定のお客様(常連)が中心です。連日、開店と同時に来店されるケースも少なくありません。ひたすらコインを投入し、もくもくとプレイされています。よく見る種目は…圧倒的に将棋ですね。

やはりTBLの王道、将棋はいつの時代も強い。すぐそばに『女流将棋教室』(1997年/ビスコ)も稼働しているが、インカム面では及ばないとのこと。同じ将棋ゲームであっても差がつくのは、おそらくは『初代』が持つ作品の雰囲気やコンピューターの思考ルーチンが肌に合うからだろう。

▲花札の代表的な種目である「こいこい」プレイ画面。念のため言っておくと、『華の舞』と違い『おてなみ拝見』に脱衣要素はない

その次にプレイ率が高いのが、こいこい(花札)です。『初代』では将棋と花札以外を目にすることはまずありませんね。」

将棋と並び日本国内で古くから遊び継がれる花札も、定番TBLの一つ。これまでにもアーケードでは一定の作品数を誇り、『華の舞』(1988年/ダイナックス)のような佳作も存在し、筆者も含め一部で根強い人気がある。このように、『おてなみ拝見』シリーズに関してのプレイ状況は改めてうなずける点が多い。

内容一新の『続・おてなみ拝見』、異彩を放つラインナップの結果…

▲『続・おてなみ拝見』の収録ゲーム。キャラクターを廃した、かなりシンプルなトップ画面となっている

『初代』リリースの翌年、2000年に稼働した『続・おてなみ拝見(以下、続)』は、初代が囲碁、将棋、トランプといった「分かりやすい」ラインナップに対して、前作から引き続き採用された将棋のほか、ビリヤード、チェスはまだいいとして、ヘキサイト※02ヘキサイト : 三角のマスに区切られた六角形のなかに、決められた法則でパーツを埋めていくゲーム。『テトリス』のルーツとされる「ペントミノ」というパズルに近い。、三人麻雀(三麻)といった「攻め」を感じさせる布陣。この点に関して高橋氏にお聞きすると…

エッジの効いたラインナップですが、とはいえ(一番人気は)やっぱり将棋です。むしろ『続』に関しては、この一種類で持っていると言ってもいいと思いますね。インカムに関してはやや落ちますが、『初代』に比べフリーズ※03フリーズ : プレイ中、特定の行動やそのほかの理由でゲームが停止してしまう現象。こうなると電源を入れ直さなければならない。しにくいといった理由もあるので、こちらを好まれるお客様もいます」

確かにプレイ層を考えると、将棋人気はなんとも当然というか、納得のいく状況。ただし、非オンラインのアーケードで麻雀ゲームは数あれど、三麻が打てるゲームは日本物産(ニチブツ)『雀豪』シリーズ※04ニチブツ『雀豪』シリーズ : 3人打ちを主体とした麻雀ゲームのシリーズもの。特に初代『雀豪』は三麻に加えブー麻雀の要素もある変わり種。この独創性こそまさにニチブツ。と本作だけのように思う

そういった意味では貴重であるし、なんといっても三麻は関西が本場。もし、この『続』稼働店舗が関西圏にあれば、また違った結果になるかもしれない。また、フリーズに関する点は、やはり慣れ親しんだプレイヤーならではのこだわりといえるだろう。

▲「三人麻雀」のプレイ画面。本作では字牌の「北」以外に一萬と九萬が抜きドラ扱いになっている

原点回帰(?)5年の時を経て復活した『おてなみ拝見FINAL』

▲『おてなみ拝見FINAL』のトップ画面。前2作とはずいぶん雰囲気が変わった明るい色遣い

『続』から数えて5年後、2005年にリリースされた『おてなみ拝見FINAL(以下、FINAL)』は、全体的にパステルカラーのポップなデザインに、『続』で廃止されたキャクターシステムを復活させている。

ラインナップは定番の将棋のほかUNO、トランプ(大富豪)、マッチ3パズル※05マッチ3パズル : あらかじめ配置されているブロックを上下または左右に3つずつ並べて消していくパズルゲーム。『パズル&ドラゴンズ』(2012年/ガンホー・オンライン・エンターテイメント)などが有名。のズーキーパーといった親しみある種目で、登場キャラのタッチも含め若年層を狙ったものと推測される。この作品についても、高橋氏にお聞きした。

『続』に比べればバランスの良いラインナップだと思います。ですが、ズーキーパーがまれに動く程度で、前2作に比べるとインカム自体は落ちますね。」

▲『おてなみ拝見FINAL』の収録ゲーム。前作と比べ全4種類という少なさに、一抹の寂しさを感じないでもない

シリーズの新作が必ずしも人気が出るとは限らない、という現象はどのジャンルでもよく見られる傾向である。この取材で久しぶりに大富豪をプレイしたが、全勝負1位(大富豪)でクリアしたタイムは約15〜20分。サクッと遊ぶにはちょうどよい

ただし、大富豪は細かなルール※06大富豪の細かなルール : 各々の解説は省略するが、「8切り」「11バック」「都落ち」「しばり」など。これ以外にも、地方によって麻雀と同じくらい多くのルールがある。があるトランプゲーム。任意で簡単なルール設定ができるとうれしかったかもしれない。

高橋氏によると「『FINAL』は『初代』『続』に後塵を拝してはいますが、それでも設置する価値(インカム)はあります」とのことである。

『おてなみ拝見』シリーズは空気のような存在

▲店内は新旧を問わず幅広い作品を設置し、大会やイベントも多数開催。『ぷよぷよ通』(1994年/セガ)の定例対戦会も行われている

ここまでお読みいただいて、多くの方はおそらく「TBLだったら実際に雀荘行ったり、スマートフォンやパソコンで好きなだけ無料でプレイできるじゃん!」と、お思いになったかもしれない。まったくその通りなのだが、高橋氏は、その理由を以下のように分析している。

「すべての方がスマートフォンを使いこなせるわけではありませんし、年配層は最新ガジェットに不得手な方が一定数以上いらっしゃいます。それに、もし使いこなせたとしても、やはりゲーセンとは感覚が違いますからね。」

さらに、ゲーセンとの感覚の違いについてお聞きしたところ、

「以前に一度お客様と話したことがあるのですが、日課のようにゲーセンに通ってプレイするから楽しいんだ、とおっしゃっていました。積極的な交流はないまでも、年配の方同士でコミュニティのようなものもできていますし、この点は非常によく分かります。

ゲーセンは、特定のジャンルを好む層のためだけに存在するものではない。特に「新宿プレイランドカーニバル」のようにさまざまな種類のゲームを設置している店は、性別人種国籍を問わず、あらゆる人が等しく楽しめる場所。取材の最後に、高橋氏が語った言葉が印象深かった。

『おてなみ拝見』は空気のようなゲームです。あるのかないのか分からない、といった意味ではなく、ないと困る。普段意識することは少ないですが、撤去しようものなら確実にダメージを受けます。

決して、穴埋めやノスタルジックな感情で設置しているわけではありません。当店はほかにもクラシックゲームや新旧の対戦格闘にも力を入れていますが、それらとともに貴重な戦力と捉えています。これからも『おてなみ拝見』シリーズを設置ラインナップから外すことはないでしょう。」

これからも「その場所」で咲き続けるビデオゲームたち

▲「新宿プレイランドカーニバル」が入るヒューマックスパビリオン新宿歌舞伎町は、サウナ、食事、各種イベント、漫画喫茶、ボーリングなどが楽しめる、まさに娯楽の殿堂

歌舞伎町という場所柄、と言ってしまえばそれまでかもしれないが、それでも予想以上の活躍を見せる『おてなみ拝見』シリーズ。

高橋氏の「もう1セットずつ基板を確保してありますので、なんでしたらすぐにでも2セットずつ置けますよ」という発言から、プレイヤーに愛されているのみならず、オペレーターからも信頼されている作品なのだと、取材を通じて実感できた。

確かに、新作ゲームと比べると派手さはないが、フロアの奥、そして缶コーヒーと紫煙がよく似合う存在として、これからも末永くプレイされ続けることだろう。

 

©SUCCESS

【取材・撮影協力】

新宿プレイランドカーニバル
住所:東京都新宿区歌舞伎町1-20-1 ヒューマックスパビリオン新宿歌舞伎町1・2F
営業時間:10時〜24時45分
休み:なし
駐車場:同ビル内の有料立体駐車場(歌舞伎町交番前パーキング)を利用
公式サイト
公式Twitter

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