『がんばれギンくん』を作った男たち 早川隆祥氏×高宮孝治氏ダブルインタビュー 前編

がんばれギンくん
1995年にテクモ(現 コーエーテクモゲームス)からアーケードでリリースされたこのタイトルを聞いて、果たして何人の方が首をかしげ、また何人の方がニヤリと微かな笑みを浮かべるだろうか?

本作はジャンルこそアクションミニゲーム集だが、肝心のゲーム内容以外の点にとかく注目が集まりやすい。いわく「斜めはるか上を行く世界観とCGデザイン」「あのテクモが突然放った飛び道具」など、褒めているのか判断に迷う2つの名を持つ。

このたび、実に幸運なことに『がんばれギンくん』のプロデューサー早川隆祥氏、ディレクターの高宮孝治氏にダブルインタビューをご快諾いただいた。

本作にまつわる“あの”憶測や新事実など、開発時の社内風景も交えながら、時間の許す限り大いに語っていただいた。その模様を2回に分けてお送りする。

役職名すら遊びで付ける!
『がんばれギンくん』制作者の素顔

▲本インタビューに際し、早川氏所有の『がんばれギンくん』公式サントラをお持ちいただいた。「インタビューのお話を頂いてから家を探したら出てきました。手放さずに持っていたんだねぇ〜」と早川氏

――まず、お二人は『がんばれギンくん』にどのようにかかわられていたのでしょうか?

高宮 本作ではディレクター、プランナー、プログラマーとして参加しました。プログラミングもしつつ、サウンドやCGグラフィック担当のスタッフたちと折衝し、現場で擦り合わせながらゲームとしての形を作っていきました。クレジット上ではプロジェクトマネージャー(プロマネ)という表記です。

早川 私はプロデューサーとして、全体を統括しながら高宮さんから上がってきたものに最終的なGOサインを下していました。同じくクレジット上ではチーフマネージャー(チーマネ)という表記です。

――ディレクターとプロデューサーの関係性であれば、早川さんが高宮さんの上司ということですか?

早川 確かに立場的には上司でしたが、よりフランクな先輩・後輩といった関係のほうが、私はしっくりきます。

――スタッフロールの最後に表記されている「制作:がんばれギンくんせいさくいいんかい」というクレジットは、どういった経緯で?

早川 「〇〇製作委員会」という名称が当時流行っていたから、勢いで付けただけです(笑)。

▲ライナーノーツを見ながら「好き勝手な役職を付けて、それがまかり通るんだから、つくづく大らかな時代でしたね」と高宮氏

元ネタは本当にあの人気テレビ番組!?
『がんばれギンくん』誕生の背景に迫る

――さて、まずリリース当時の世相として『がんばれギンくん』が稼働を開始した1995年といえば、対戦格闘ゲームが大ブームでした。

高宮 懐かしいですねぇ。

――店舗や時間帯にもよりますが、私が当時通い詰めていた埼玉のゲーセン「プレイスポット ビッグワン南越谷店」は地域でそこそこ名の知れたお店で、それこそ対戦するために列を作って並ぶ必要がありました。

早川 あのころの熱気は、今も覚えています。

――そんな時、待ち時間や空いた時間に気分転換を兼ねてプレイしていたゲームの一つが、この『がんばれギンくん』なのです。何よりもアクションミニゲームとしてサクッと遊べる手軽さが魅力でした。さすがに今、日常的なプレイは叶わないまでも、今でも心に残る、というよりも何かが引っ掛かる作品なのです。

高宮 このジャンル(アクションミニゲーム)は、『タントアール』(1993年/セガ)という偉大な先駆作がありましたので、企画自体もわりと苦労せず通りましたね。そこで、テクモとしてどのように差別化を図ろうか、ということを第一に考えました

――プレイヤーとして、何よりもまず目に飛び込んできたグラフィックとサウンドに衝撃を受けました。今振り返ると、1990年代によく見られた色遣いやデザインとも言えますね?

▲「『ウゴウゴルーガ』の世界観を意識して作った」と振り返る高宮氏

高宮 おっしゃる通り、そういったイメージやタッチは確かに意識しています。私がこの当時通っていた美術館や現代アート系の展覧会で受けた影響もあります。

――全体を覆う、夢の中というか不条理かつ脱力な世界観、線画で動くキャラクター、原色を多用した色遣いなどなど、これはいやが応にも、かつて放送されていたあるテレビ番組を彷彿とさせます。

早川 それは『ウゴウゴルーガ※01ウゴウゴルーガ : 1992〜1994年にフジテレビ系列で6〜8時台の30分枠で放送されていた。全編CGでデザインされ、ウゴウゴくんとルーガちゃんという2人の子役と、日替わりで登場する個性的なキャラクターの掛け合いを中心に、多くのミニコーナーによって構成されている。ことわざ、科学、文学、外国語など学びの要素を含むれっきとした子ども向け番組なのだが、制作者やゲストに当代屈指のタレント、クリエイター、スポーツ選手、文化人らを起用。世相や流行、ときに内輪ネタや下ネタも盛り込まれた内容は、子どものみならず、感度の高い中高生や大人をも魅了した。俗に黄金期と呼ばれた1990年代前後の同局深夜番組のエッセンスをルーツに持つとされている。』ですか?

――そうです。ズバリとお聞きしたいのですが、『がんばれギンくん』は「ウゴウゴルーガ」にインスパイアされて、あるいはオマージュを込めて制作されたのでしょうか?

高宮 まぁ…ぶっちゃけた話、(着想を)頂きました。

一同 (笑)。

――長年の疑問が解決しました。『ウゴウゴルーガ』と『がんばれギンくん』の両方を知るファンであれば、おそらく同じ疑問を持っているのではと思うのです。過去の文献※02過去の文献 : 雑誌『ゲーム批評』(1994〜2006年/マイクロデザイン出版局)誌上で連載されていた人気コラムをまとめた書籍『悪趣味ゲーム紀行』(1998年/がっぷ獅子丸:著/マイクロデザイン出版局)。『がんばれギンくん』に関して4ページを割き、軽妙な筆致で作品を紹介。ウゴウゴルーガとともに『モンティ・パイソン』からの影響も指摘し、本作を「両者の不条理な結婚」と綴っている。やインターネット上の記事を漁っても、『がんばれギンくん』を語る上で『ウゴウゴルーガ』は決まって引き合いに出されます。ただ、「それは本当なのだろうか?」という疑問も同時に湧き上がりまして…。

早川 これはもう、見たままですよね(笑)。

高宮 さすがにそのまま丸パクリはしませんが、デザインなどの表現演出手法を参考にしています

――全体を覆う「ノリ」も、近いものがあるように思います。

高宮 私自身も『ウゴウゴルーガ』の大ファンなので、そんな部分も大いに参考にさせていただきました。事実、プレイヤーとして活躍する「ギンくん」と「ハムくん」など線画で動くキャラクターは、同番組のミニコーナー「がんばれ!まさおくん※03がんばれ!まさおくん : 『ウゴウゴルーガ』における、人気ミニコーナーの一つ。線で描写された小学生「まさおくん」の日常を描くが、最終的にまさおくんがヒドい目に遭うことが多い。息の長いコーナーで、放送時期によってジングルが変わったりタイトルが「もっとがんばれまさおくん」に変化したりもした。」からです。そもそも『がんばれギンくん』というタイトルからしてさもありなん、ですが(笑)。

脚注 +