信頼のメーカー、テクモが放った“飛び道具” ミニゲーム集『がんばれギンくん』とその時代

  • 記事タイトル
    信頼のメーカー、テクモが放った“飛び道具” ミニゲーム集『がんばれギンくん』とその時代
  • 公開日
    2019年07月26日
  • 記事番号
    1147
  • ライター
    山田鍵(やまだかぎ)

時は1995年。世のゲームセンター(以下、ゲーセン)では対戦格闘ブームに沸きつつも、アクションゲーム(ACT)、シューティングゲーム(STG)、大型筐体など幅広いジャンルで絶え間なく新作ゲームがリリースされ、現代においても名作との評価を得ているゲームも多い。

そのような作品群を相手に、落書き風の線画で描かれたユルユルなフォントとキャラクター、かと思えば、妙にリアルな実写風イラスト。良く言えば色彩豊か、悪く言えば目に優しくないグラフィック。そして、それらの雰囲気に臆することなく存在するサウンド。その作品こそ、アクションミニゲーム集として1995年にテクモ(現:コーエーテクモゲームス)より発表された『がんばれギンくん』である。

本作については、プロデューサー、ディレクターのお二方に制作者ダブルインタビューを行っている。当サイトにおいて前後編でお届けする予定だが、その前編では、作品の成立背景や当時の開発状況をお聞かせいただいた。

そこで今回は、『がんばれギンくん』の作品紹介とともに、アーケードにとって1995年とはどんな時期であったのか? ミニゲーム集とはどのようなジャンルか? 攻略法は存在するのか? という3点に注目しながらこのゲームを紐解いていきたい。

アーケードにおいて『がんばれギンくん』が
リリースされた1995年はどんな時代だったのか

まず本作を説明するうえで、同時期にゲーセンで稼働していた作品を駆け足ながら振り返ってみたい。他ジャンルではどんなゲームがリリースされていたのだろうか?

■アクション(ACT)ゲーム
ロックマン・ザ・パワーバトル』(カプコン)
アウトフォクシーズ』(ナムコ)

■シューティング(STG)ゲーム
ゲーム天国』(ジャレコ)
首領蜂(どんぱち)』(アトラス)
ストライカーズ1945』(彩京)

■対戦格闘
ストリートファイターZERO』(カプコン)
マーヴル・スーパーヒーローズ』(カプコン)
鉄拳2』(ナムコ)
ザ・キング・オブ・ファイターズ ’95』(SNK)
餓狼伝説3』(SNK)
サムライスピリッツ 斬紅郎無双剣』(SNK)

■大型筐体
セガラリー・チャンピオンシップ』(セガ)
アルペンレーサー』(ナムコ)

■その他
マジカルドロップ』(データイースト)
森口博子のクイズでヒューヒュー』(タイトー)
プリント倶楽部』(アトラス)
etc…

冒頭で述べたように、この時代はとかく対戦格闘が注目されがちだが、技術の進歩も目覚ましく、ACTやSTGのみならず革新的な大型筐体、プリクラ第1号機の登場が同年であったことにも注目しておきたい。

かような名作や大作のただ中にあって、1995年ひいては1990年代において、「ミニゲーム集」というジャンルに分類されるゲームも少なくないリリース数を誇っていた。

一定の人気があった
「ミニゲーム集」というジャンル

▲『がんばれギンくん』のインストラクションカード。この時点ですでに「ほかのゲームとは何かが違う…」という雰囲気が漂う

ミニゲーム集とは、一つ一つの簡易なゲーム…例えば「ボタンを早く連打する」「タイミングよくボタンを押す」「ジグソーパズル風の絵合わせ」「複数の中から間違いを探す」「決められ通りのコマンドを入力する」などといった、特に複雑な思考を要さず短時間で完結するコンパクトなゲームをまとめたジャンルのこと

アーケードにおいて『がんばれギンくん』以外では、豊富なミニゲーム数を誇り当該ジャンルの象徴とも言うべきパズル&アクションの名作『タントアール』シリーズ(1993年〜/セガ)や『ビシバシチャンプ』シリーズ(1996年~/コナミ)のほか、クイズゲームと融合した『クレヨンしんちゃん オラと遊ぼ』(1993年/タイトー)、登場キャラ同士の恋愛要素(同性カップリング含む)を盛り込んだ意欲作『だい好キッス!』(1996年/コナミ)のほか、『おいしいパズルはいりませんか』(1993年/サン電子)や『脳力向上委員会』(1995年/テクモ)などが挙げられる。このジャンルは、ゲームそのものに馴染みのない人もすぐに楽しめたり、2人または複数プレイでさらに盛り上がれる点も一つの特徴といえるだろう。

デザインとストーリーから見た
『がんばれギンくん』というゲーム

▲残念ながら各コースとも1コインクリアは不可能に近い。コンテニュー前提で挑もう

本作は全16種類に及ぶアクション寄りのミニゲームをクリアしながら「かんたんコース(ゲキトーTV Theつらい)」「ふつうコース(どんまい学園 涙もの)」「きついコース(緊急出勤!ぶらり旅 スパイもの)」という3種類のコースを進めていく。各コースには固有のストーリーがあり、きついコースほどラウンド数とノルマが多い。

主な登場キャラは、1Pプレイヤーの主人公「ギンくん」、2Pプレイヤーのカエル「ハムくん」、彼らに対峙する出題者「ガツガツ」の計3人(匹)。本作は同年にリリースされた他作品と比べても、独特という言葉を軽々と超えるユーモアと世界観に満ちたゲームデザインを特徴とする。

線画で描かれてはいるものの、キャラクターの表情はメインキャラ、サブキャラに至るまで驚くほど豊かで生き生きと動き回る。種目によって、バイクに乗ったりお寿司を食べたりミサイルを発射したり首がちぎれたり(!)、さらには、ノルマを達成した時や失敗した時、「ガツガツ」に怒られている時など、ミスをしてもどこか憎めずかわいらしい。ただし、いざコインを投入して本作をプレイしてみれば、決してかわいいだけではない現実を知ることとなるだろう。

▲ミニゲーム開始前には必ず操作説明が挿入されるので予備知識は一切必要なく、ゲーム初心者でも安心

〜全ラウンド制覇のために〜
ミニゲーム攻略の手引き

▲その都度選べるミニゲームは4種類。こればかりはランダムなので、得意な種目が出ることをただ祈るしかない

『がんばれギンくん』はライフ制で、ミニゲームで失敗すれば一つ減り、ゲーム選択時にランダムで出現する「チャンスゲーム」をクリアすれば一つ回復する。本記事執筆に先立ち筆者が全コースをクリアした結果をもとに、各々のミニゲームを特徴ごとに大枠で分類。攻略しやすいゲーム・しにくいゲームをまとめてみた。

【タイミング重視系】
「ラッコさん部隊」▲
「大砲でドン」▲
「ベルギー消防団」●
「ロケットずし」▲
「ふとうでしとう」▲
「牛と赤マント」★
「泣いてないよフラメンコ」▲

【レバー回転系】
「つりばか必死」★
「オレとジャンプとメタンガス」★

【ボタン連打系】
「だるまさんのふんどし」●
「赤ちゃん危機一髪」▲

【キャラクター操作系】
「ゲッターギン」★
「ユキヤマン」▲
「カレーの王様」★

【間違い(仲間はずれ)探し系】
「しかってしかばね」●
「くまちゃんムチの味」▲

●…コツさえ掴めば比較的安心。
▲…序盤ならクリア可能。
★…難しい。できれば避けたい。
(以上、筆者調べ)

このように分類すると、本作は「タイミングに合わせてボタンを押す」という種目が多いことが分かる。また、クリアを重ねていくとゲームランクは上昇し、要求されるタイミングがシビアになったり制限時間減やクリアの規定数増など条件がかなり厳しくなる。状況によっては、体感で「今のプレイは失敗なの!?」といったシーンもあり、それゆえ全4ステージの「かんたんコース(ゲキトーTV Theつらい)」ですらも、おそらく1コインクリアは難しいだろう

しかし、ゲームオーバーになってもめげずにコンティニューすればランクは下がるので、再び初期状態から開始できる。この救済措置を利用し、ある程度コインに余裕を持ってプレイすればクリア自体は不可能ではない。

一例として、タイミング重視系ゲーム「ベルギー消防団」の筆者プレイ動画を掲載する。この種目はゲームランクが上ってもコツを掴めば比較的クリアは容易なので、タイミングを測る一助としてご覧いただけたら幸いである。

▲「ベルギー消防団」の筆者プレイ動画。このミニゲームは、ボタンを押してから放水(放尿)までの時間に開きがある。よって、やや遅めにボタンを押してタイミングを調整しよう(リカバリー可能)

現代で『がんばれギンくん』を味わうには

本作をリリースしたテクモ(旧テーカン)は、ゲームファンにはおなじみの『スターフォース』(1984年)や『アルゴスの戦士』(1986年/テーカン)、『ソロモンの鍵』(1986年/テーカン)、『テクモボウル』シリーズ(1987年〜)のほか『キャプテン翼』シリーズ(FC/1988年〜)や『忍者龍剣伝』シリーズ(1989年〜)などアーケード/家庭用問わず多種多様な作品を発表し、どこか正統派ながらもひねりの効いた、かつ品のある作風でゲームメーカーとしての地位を築いていた。

そんな優良企業からリリースされた『がんばれギンくん』というゲームは、筆者を含め(ごく一部の)プレイヤーの心をつかみ、強烈なイメージを植え付けたことは間違いなく、同社の懐の深さを示した。

▲『がんばれギンくん』以外のゲームでコンテニューの回数がランキングの条件という作品を、筆者は寡聞にして知らない

『がんばれギンくん』は残念ながら他機種への移植には恵まれず、主要キャラが同社の別作品へゲスト出演(*01)した以外は、サイトロンレーベル(*02)の「1500シリーズ」(1995年)と「テクモ・アーケードゲーム・クロニクル」(2014年/Sweep Record)からサウンドトラックが発売されたのみである。

2019年現在、もしどこかのゲーセンでプレイすることができたら、それは非常に幸運だ。頭を空っぽにしてどっぷりとその世界に浸っていただきたい。

© コーエーテクモゲームス All rights reserved.

山田鍵(やまだ かぎ)

脚注   [ + ]

01. 主要キャラが同社の別作品にゲスト出演 : 『モンスターファーム』シリーズ(PS/1997年〜/テクモ)でモンスターとして出演。その他、2017年池袋にオープンした「KOEI TECMO CAFE & DINING」での期間限定イベントにおいてコースターとしてプレゼントされたりと、なんだかんだで愛されている。
02. サイトロンレーベル : 映像・音楽コンテンツ制作会社「サイトロン・アンド・アート」が、ポニーキャニオンの1レーベルとして立ち上げたレーベル。同社は、ゲームミュージック日本初のサウンドトラック『ビデオ・ゲーム・ミュージック』(1984年)をリリースした「アルファ・レコード」をルーツに持つ。これについては当サイト記事「ビデオゲームミュージックの父 小尾一介氏×大野善寛氏ダブルインタビュー 前編」「同 中編」に詳しく記述してある。

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