『ファンタジーゾーン』で振り返る シューティングゲームにおける「連射」とは?

『ファンタジーゾーン』で振り返る シューティングゲームにおける「連射」とは?  IGCC

シューティングゲーム(以下、STG)というジャンルは、歴史的傑作『スペースインベーダー』(1978年/タイトー)の登場から今日に至るまで、時代とともにさまざまなスタイルや独特なシステム、敵を倒す爽快感、印象深いサウンドによって、多くのプレイヤーを魅了してきた。

また、クリアのために必要な集中力と高度なゲーム性は求道的とも形容され、俗に「シューター※1シューター : 特にSTGをこよなく愛するプレイヤーの尊称。全国レベルのハイスコア保持者や超人的なテクニックを持つなど、いろいろな意味で一目置かれる存在。と呼ばれる情熱的なファンをも生み出してきた。

時はさかのぼり1986年。

百花繚乱と呼ぶにふさわしく、数多くのタイトルがリリースされ、STGの栄華を誇ったこの年に、現在でも語り継がれる名作『ファンタジーゾーン』(セガ)が稼働した。本作を通じてSTGが持つ妙味、そして当時の重要なテクニックであった「連射(連打)」という側面から、歴史の一端を覗いてみたい。

なお、本作は複数の家庭用機、PCに移植されているが、本稿では原則アーケード版の内容に準拠する。

『ファンタジーゾーン』における連射の有用性

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▲例えば、3面のボス「コバビーチ」は、ヘビーボムを使用すれば全ボスの中でもっとも楽に、そして一瞬で決着がつく

このゲームは、鮮やかな色彩で美麗に描かれた各惑星(ステージ)を軽快なサウンドにのせて進む横スクロールSTG。かわいらしい見た目に反し、激しい攻撃を仕掛けてくる敵キャラを倒しながら、各惑星に配置された10の基地と、基地全滅後に現れるボスを倒すと出てくるお金を取得し、パーツショップで武器などの商品を購入。最後に待ち受けるラスボスとの決戦、そして衝撃のエンディングが…といった説明は、当メディアに訪れる熱心な読者諸氏には今さら不要だろう。

では、本作をなぜ「連射」という題材にて採り上げたかというと、「連射の遅速でゲーム性が大きく変化する作品の一つ」と言えるからである。

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▲とにかく固い7面の基地「ロリンガ」。パーツを購入すればともかく、ノーマルショットのみで倒そうとするなら、指の痛みは覚悟すべし

連射の遅速でゲーム性が大きく変化する作品といえば、多くの人は『ダライアス外伝』(1994年/タイトー)を思い浮かべるだろう。このゲームはノーミスやスコアアタック、少なくとも1コインALL※21コインALL : コンテニューをせず1コインでゲームをクリアすること。ハイスコア申請や「そのゲームをクリアした」と公言する場合の実質的な基本ルールとなる。するためには連射が必須であるからだ。

対して『ファンタジーゾーン』は、豊富で強力なパーツを購入しつつ、サブウエポンであるボムを有効活用していけば、一概に連射必須というわけではない。ただし、無駄使いをすればお金はすぐに底を尽くし、面が進むにつれて敵の攻撃は激しさを増すこともあって、のんびりはしていられない。耐久性のある基地や多くの敵キャラを倒すため、プレイヤーはいかに素早く連続してボタンを押せるか(連射)に躍起になった。

そもそも連射とはゲームにとってどんな効果があるのか?

ここで他ジャンルにも目を向けてみたい。STG以外で連射を要する代表作を挙げれば、長期にわたりシリーズ化されているスポーツゲーム『ハイパーオリンピック』(1983年/コナミ)における選手の加速や、ベルトスクロールアクションゲームの傑作『ファイナルファイト』(1989年/カプコン)での通称「パンチはめ」といったものがある。

そしてSTGでは、連射行為が不要および重要視されない作品や、コナミ『グラディウス』シリーズ(1985年~)におけるレーザーのように連射に依存する必要のない武器を除き、基本的にあらゆる局面で生き残るために連射が必要である(そこがSTGの魅力たるゆえんの一つでもあるのだが)。

このように、連射行為は主にプレイヤー(自機)の強化ないし攻撃を意味し、多くの作品では早く押せば押すほどその威力は高まる。よってプレイヤーはいかに安定して長くボタンを連射し続けるかをこぞって模索した。結果、ある者は痙攣(けいれん)打ち、ある者はピアノ打ち、ある者は爪の利用といったような「人力による手連射」を会得していった。

だが、そのような肉体を酷使する者がいるなかで、「道具」の使用に活路を見出していった者もいた。

道具の使用でもたらされた連射の威力と弊害

手連射テクニックの一つに「擦(こす)り」がある。ボタンに対して指(爪)を擦るように反復運動させることで高い連射効果が得られる技だが、爪の破損や出血など、肉体に大きな負担を強いることになる。

そこで、この擦り行為に道具を用いるプレイヤーが現れた。多くは乾電池、フィルムケース、改造モーター、定規、プラスチックカプセルなどを使い、低負担であるうえに、手での「擦り」以上に高い効果が得られるとあって使用者が続出。余談ながら、筆者が当時通っていた地元の駄菓子屋ゲーセン「A」では、『ファンタジーゾーン』が稼働していたテーブル筐体に、ご丁寧にもピンポン球が常備されていたりもした。

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▲「擦り」について活発な議論を交わす『ゲーメスト』(新声社)の記事(すずめ出版所蔵 : 1987年5月号P52〜53「ゲーメストアイランド」より引用)

しかし、当時も今もアーケード筐体はある程度の衝撃が考慮されているにせよ、何らかの道具を用いたプレイを想定して設計されているわけではない。激しい擦り動作がボタンや筐体に過剰な負担をかけていることは明白で、店舗にとってそれは大ダメージ。そのたびに修理や交換を余儀なくされたようである。

事実、ボタン部分の塗装が斜めに剥げている当時のコンパネをご記憶の方も多いことだろう。よって、「擦り」行為そのものや道具の使用を禁止する店舗もあれば、その是非を巡って、専門誌上で編集部と読者同士による真剣な議論が展開されていたこともある

かくてアーケードに実装された「連射装置」という神器

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▲秋葉原にあるタイトー直営ゲーセン「Hey」の『ファンタジーゾーン』に設置されている連射装置

具体的にいつどこで、とは断定できないが、おおよそ1990年代の初期から中期には、ボリューム連射やシンクロ連射※3ボリューム連射/シンクロ連射 : いずれも基板から出力される信号を利用して連射を可能にする代表的な装置。など、一部を改造して筐体に取り付けられる装置が出回り始めた。

さらに『達人王』(1992年/東亜プラン)や『首領蜂(どんぱち)』(1995年/アトラス)のように、ゲームシステム上にあらかじめ連射機能を組み込んだ作品や、『バトルガレッガ』(1996年/エイティング)などの連射速度(ショットの発射数)によって難易度が上昇するシステムが登場。STGと連射の関係に大きな変革がもたらされたのだった。

かつては「血を流してこそ価値がある!」「連射装置なぞ不要!」といった硬派なマニアがいたことも事実だが、(苦労してこその栄光、という部分には個人的に共感するも)多くのプレイヤーにとって連射装置は諸手を挙げて歓迎された。ゆえに、STGにとって人力における手連射という行為は、時を同じくして弾幕STGで知られるメーカー、ケイブ※4ケイブ : 1994年の設立以降、国内STGシーンを牽引し続けるメーカー。文中にある『首領蜂』シリーズや『虫姫さま』(2004年〜)、『デススマイルズ』(2007年〜)といったシリーズもののほか、『ケツイ 〜絆地獄たち〜』(2003年)、『むちむちポーク!』(2007年)など幅広い作風で知られ、システム上で連射が標準装備されている。の台頭もあり、特に必要な局面を除き頻度が減少してゆく。

連射テクニックから見たSTG、そこに歴史あり

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▲ズラリと並んだ新旧の名作が、いずれもメンテナンスの行き届いた状態で稼働している「Hey」。コインを投入すれば快適なプレイを約束してくれる

現在でこそ、最初からシステム上に連射機能が備わっていたり、本稿の撮影で訪れた秋葉原「Hey」のように、連射装置設置台が良質なメンテナンスのもと稼働している店舗もあるため、必要以上に肉体を酷使したりモラルに悩んだりしていた当時を思うと隔世の感がある。

だがそれも、過去の並々ならぬ制作者の葛藤、オペレーターの奮闘、そして、プレイヤーの一途な想いがあったればこそ。「ボタンをいかに早く押すか」という行為に血道を上げた歴史に思いを馳せながら、改めてプレイしてみるのもまたオツなものだと思う。

「最初の2周は準備運動」といった上級者も、連射装置のない当時にクリアを諦めたプレイヤーも、これを機に今いちど本作に触れてみてはいかがだろうか?

ⒸSEGA

【撮影協力】
Hey
住所:東京都千代田区外神田1-10-5 廣瀬ビル1F~4F
営業時間:10時~23時45分
休み:なし
駐車場:なし
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