ミニチュア制作会社「ヘルメッツ」がアーケードゲーム筐体保存にこだわる理由

レア筐体の資料集めのためには日本全国どこへでも足を延ばす

専用大型筐体は経年劣化とともに廃棄されてしまうケースが多く、今となっては幻となっている筐体も多い。兒玉氏も筐体のデータ収集にはかなり苦労されているようだ。

ヘルメッツではミニチュア制作をする際に、筐体の実物から細かく採寸している。また、筐体の意匠などまで再現するために、細部も写真撮影しているという。試作品の開発が進んでくると資料データの取材漏れに気づくこともあるが、ミニチュアだから大体のデータと合っていればいいかという妥協はせずに、再び取材におもむくそうだ。

▲試作の『オペレーションウルフ』(1987年/タイトー)。取材を元にガンコントローラーの細部までしっかり作り込まれている

先述した『ナイトストライカー』筐体の生産数は304台※01生産数は304台 : 当時タイトーで開発ディレクターを担当していた海道賢仁(ぱぱら快刀/@kenji_kaido)氏が、過去にTwitterで『ナイトストライカー』の生産数について「タレコミがあって筐体の生産実績はじつは304台だったらしいです(2013-05-05 01:06:50)」と発言している。とされており、リリース当時から個体数が少ない。現存しているもので確認できたのは関西1台・関東2台とのことで、ヘルメッツもその実機からデータを得るために取材を敢行したという。

 

▲兒玉氏のノートには取材で得た実機のデータがびっしり。細かなパーツまでしっかり採寸しているそうだ

商品化する予定がなくても、レア筐体の情報を聞きつければ取材は実施するそうで、とにかくデータを残すための保存活動の側面が強いことを感じた。最近では、アーケード基板の販売・買取をしている「BEEP秋葉原」の協力で実機資料を入手するということも増えてきたそうだ。読者の中にも「ここにこんな珍しい専用筐体がある」という情報を持っている人がいたら、ぜひツイッターなどで教えてあげてほしい。

商品ラインナップは今後ますます充実! 年内にもビッグタイトルの発表を予定

▲Raspberry Pi内蔵のX68000ミニチュアなど、ゲーム筐体シリーズ以外にも魅力ある商品をリリースしている

商品化に至っているものは、正直言ってまだ少ない状態ではあるが、今後は開発スピードをアップしてラインナップをどんどん拡充していくとのことで非常に楽しみだ。直近では、かつてのゲームセンターで標準筐体となっていたテーブル型のミニチュアを夏頃に発売する予定と伺った。

埼玉ゲームシティに出展して商品の反響に感じた手応え

▲イベントで多くの方に関心を持ってもらえたことは、これからの作品作りの励みになると兒玉氏

埼玉ゲームシティでは、同社のミニチュアに見入っている来場者の姿を多く見かけたが、ヘルメッツのお2人はどのように感じていたのだろうか。

「ソニックシティさんで初めて開催するゲームイベントということで、始まってみるまでどうなるか予想できませんでしたね」という兒玉氏が実施したのは、ミニチュア筐体を利用したゲームセンターのジオラマ風展示だった。蓋を開けてみれば、どの来場者も興味をもって見てくれてホッとしたとのこと。親子連れの方が多く、どの親御さんもゲームに理解を示しているようで、「昔のゲームセンターはこんな感じだったんだよ」とお子さんに説明している方もいたそうだ。

イベントで展示したジオラマには、まだ企画中の筐体ミニチュアも多数含まれていた。それらの使用をタイトーさんに快く許諾してもらえたので、充実した展示になって良かったとのことだ。兒玉氏は、展示のためにイベント当日の深夜までミニチュア制作をしていたそうで、そんなエピソードからも同社の商品づくりにかける情熱を垣間見ることができた気がする。

▲埼玉ゲームシティで展示したジオラマ(画像:ヘルメッツ提供)

小規模だからこその機動力が強み! 今後もマニアックな商品に期待

個人でペーパーモデル制作を楽しんでいた兒玉氏。その精密な物づくりは、材料にプラスチックと木材を使うことでますます磨きがかかる。普通なら個人の密やかな楽しみで終わるミニチュア制作を、我々レトロゲームファンと共有するために起業したという行動力には頭が下がる思いだ。

ゲームのミニチュア筐体のようにニッチな商品は、なかなか採算が取れないとして大手メーカーは手を出しにくい分野だと思う。だからこそ、ヘルメッツのように小回りの効くメーカーが活躍してくれるのは消費者としてうれしく、ありがたいことだ。

兒玉氏はできる限り多くのメーカーの筐体を商品化したいと考えているそうだ。小規模の会社でメーカーを一社一社巡るのは大変な労力だが、ぜひ頑張ってメーカーを説得していただきたいと思う。同時に、各メーカーにもファンのニーズがあることを理解していただき、商品化が円滑に進むように快く許諾を出してくれることを期待したい。

このままだとゲーム自体は後世に伝わっても、それが動作していた筐体は伝聞で残るだけになりますよ

取材が終わった後も、そんな兒玉氏の言葉が頭に残る。同社にはこれからも史料価値のある商品を世に送り出すため、頑張っていただきたい。

株式会社ヘルメッツ
2015年11月創業のキャラクタートイの企画・製造・販売・輸入を行う会社。アーケードゲームのミニチュア筐体を発売し、レトロゲームファンの人気を集める。ゲーム関連イベントにも精力的に参加している。
公式サイト
公式Twitter

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