「現代で格ゲーに特化したゲームセンターを経営する」という理想と現実~ビッグワン2nd

「現代で格ゲーに特化したゲームセンターを経営する」という理想と現実~ビッグワン2nd  IGCC

いつの時代も「好きだから」という理由が動機となって何かを始める人は多い。例えば、音楽が好きだからレコード屋を始めたり、本が好きだから古書店を始めたり。あるいはまた、ゲームが好きだからゲームセンターを始めたり…。

JR武蔵野線とJR京浜東北線の停車駅である南浦和駅にある「プレイスポットビッグワン2nd(以下、ビッグワン2nd)」も、そうして開店したゲームセンター(以下、ゲーセン)の一つである。設置タイトルにはオーナーのこだわりが凝縮され、知る人ぞ知る純個人経営のゲーセンとして一定の評価を得ている。

惜しまれながらもゲーセンの閉店ラッシュが続く現代にあって、今なお経営を存続できているビッグワン2nd。その支持される理由、そして、そこに立ちはだかる現実をご紹介したい。

元プレイヤーからゲーセン経営者への道のり

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▲ビッグワン2ndオーナーの石川氏。『ストリートファイターZERO3』の全国プレイヤー「デシカワ」と聞けばピンとくる人もいるはず

ゲーセン経営の現実ですか? 正〜直、甘くはないですね

「まずは、ゲーセン経営の現実をお聞かせいただきたい」という筆者の問いに対し、いきなり開幕パンチを放ってくれたのは、『プレイスポットビッグワン2nd』オーナー、石川直樹氏。現在は一線を退いているものの、かつて、カプコン2D格ゲー(格闘ゲーム)がメインの全国プレイヤー「デシカワ」として名を馳せていた彼は、約6年前の2012年12月、この地にゲーセンをオープンした。

「当時、私がスタッフとして働いていたゲーセン「ビッグワン」が、ビルの老朽化に伴い撤退を余儀なくされました。自分なりの思い入れもあるし、赤字というわけでもない。何より昔からの夢を叶えるという意味でも、自分が存続させていこう! と考えたのです」

開店当時を振り返る石川氏に、南越谷店の閉店(2012年8月)からビッグワン2ndの開店(2012年12月)までの数カ月、準備を進める上で特に注意した点を聞いた。

まず、事業計画と開業資金調達。そして風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)許可の取得は当然として、お店を開く場所選び。この点を特に重要視しました」

ゲーセンの立地環境には、主に車で訪れる「郊外型」と主要駅から近い「都心型」の2つに大きく分けられ、ビッグワン2ndは後者に類する。南浦和駅はJR線の乗り換え駅として利用者が多く、同時に、石川氏自身の出身地である埼玉県への愛着もあり、現在の場所に開店することとなった。

場所が決まると、今度は筐体などの設備を整えていかねばならない。設備については、
「当時の親会社にキチンと筋を通し、屋号を頂いて独立し、志(こころざし)を継ぐという意味で2号店としました。開店準備の際にも筐体や基板、部品の面で協力していただき、この点は大変感謝しています」
と、親会社の協力が大きかったことを語っている。

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▲ビッグワン2ndは駅から徒歩3分という好立地。何かのついでに立ち寄るのもアリ

独立、開業、そしてお店を経営する労力は文字通り甘くはない。特にゲーセンの環境を整えるとなると、実作業のほかに、ゲームタイトルをどんなラインナップにするかなどの目利きや客の動向を読む力、そして、想像力は欠かせない。開店準備がスムーズに進んだことに関して石川氏は、「周囲の理解と激励、そして運です」と謙虚に語る。

こだわりを前面に押し出し、対戦ゲームを主体にした理由

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▲タイムスリップしたかのような錯覚を起こすゲームタイトルばかり

ひとくちにゲーセンといっても、その単語で思い描くイメージは年代によって異なるのではないだろうか? ビッグワン2ndはビデオゲーム、特に新旧の対戦(格闘)ゲームに重点を置いたつくりで、結果的とはいえ1990年代の格ゲー全盛期によく見られたゲーセンの雰囲気を色濃く反映させている

「あらゆる点を考慮し、プライズ・音ゲーを含む大型筐体、メダルゲームの設置は断念しました。自分の得意ジャンルで勝負したかった、というのもありますし、50円1〜2クレジットという基本のプレイ料金も変えたくなかったですね」

店内に置かれた対戦台21セット、シングル4台の筐体は、快適にプレイできるよう考え抜かれ配置されている。また、対戦動画をライブで映し出すモニターを、店内のどこにいても視聴可能なように複数配備したことは、このお店のウリである「一体感の演出」に一役買っている

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▲イベントともなると来場者は多数。思わぬ強敵と対戦できることも

「当店に設置している新旧の格ゲーは、時流を考慮しつつ大会やイベントごとに入れ替えるため、常設タイトルと呼べるものはありません。ですが、その中でもカプコンの『スーパーストリートファイターⅡ X-Grand Master Challenge-』(1994年)、『ストリートファイターZERO3』(1998年)、『ストリートファイターⅢ 3rd STRIKE』(1999年/)、『ジョジョの奇妙な冒険 未来への遺産』(1999年)、『ヴァンパイア』シリーズ(1994年~)、『マーヴルVS. カプコン』シリーズ(1994年~)のほか、セガの北斗の拳』(2005年)や『メルティブラッド アクトレスアゲインカレント コード』(2010年)、『エヌアイン完全世界』(2010年/SUBTLE STYLE)などは稼働率が高く、強豪プレイヤーの来店もありご好評を頂いています」

格ゲーというジャンルは『ストリートファイター』シリーズを例に見ても、一発ヒットが出ればメーカーもオペレーターも潤し、寿命が長いと言われるが、まさにその例をビッグワン2ndが証明しているといえるだろう。

お客のニーズに応えるだけではなく、先手を打って仕掛けることも

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▲充実したイベントはお店のキモ。幅広いプレイヤーにニーズに応える

とはいえ、いくら作品に人気があろうと、ただ筐体を置いただけではこの時代インカムは望めない。石川氏は、多彩な工夫を凝らして常に一定の客足を保っている。

「お客様の関心を得るためのイベントやサービスにも目を配ります。ほぼ毎日、対戦会やフリープレイを実施し、定例大会や対戦動画のライブ配信も積極的に行っています。イベント中の分煙や、通常50円1クレジットを2クレジットにするなど、どんなことでも思い立ったら即行動に移せるのは、個人経営ならではと言えるかもしれません。ただ、こういった工夫を凝らしているのは決して当店だけではないですが…」

お店の「ウリ」を作ることは、あらゆる点でメリットが大きい。例えば、ビッグワン2ndでは現在、定例イベントの一つとして『マジカルドロップⅢ』(1997年/データイースト)の対戦会を毎週水曜日に、月例大会を毎月第一日曜に行っている。これなどはまさに「仕掛け」の一環ではなかろうか。

「この話を持ちかけてくださったお客様が熱意のある方で、作品のおもしろさは私自身もある程度理解していました。その縁で、じゃあ一丁やりましょう、となったのです。お店としてはあくまでお手伝いという形で、2年ほど前から始めたのですが、わずかずつでも参加者や新規プレイヤーが増えています。本当にありがたいことですし、こんなときに大きなやり甲斐を感じます。うれしいですね

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▲『マジカルドロップⅢ』の対戦会にて。ビッグワン2ndはお客主催のイベントも可能。気軽に相談してみよう

オペレーターとしてやりたいこととやるべきこと

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▲規模によっては貸切イベントや公式の全国大会予選会場に選ばれることもある

ゲーセンは世代を超えて実にさまざまな客が訪れる場所。ここビッグワン2ndも、口コミや動画配信などの影響からか、全国はもとより海外からのプレイヤーもしばしば来店するという。しかし、その陰には店の絶え間ない努力がある。

「おかげさまでオープンから6年目を迎えましたが、冒頭でお話したように経営は甘くはなく、順風満帆とはいえません。例えば、基板や筐体は故障→修理→メンテナンスの繰り返しです。これはゲーセン経営における宿命といえるでしょう。そのため、メンテナンスに関する投資、技術力の研鑽や情報収集は欠かせません

時代とともにゲーセンを取り巻く環境はあらゆる点で変化し、経営の難しさが叫ばれている。しかも、以前と比べてアーケードとコンシューマーの差はなきに等しい。だが、それはあくまでオペレーターの事情。プレイヤーは真摯に気持ちよくゲームができる場所を望んでいる。

ゲーセンはお客様に足を運んでいただいてこそ。ただ、漫然に店側が『来てほしい』と声を上げるだけではなく、常連の方や初めて来店される方問わず、皆さんに『行ってみたい』と感じていただけるような店作りを常に心がけています」

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▲ビッグワン南越谷店時代から刻まれた闘いの足跡

最後に、「これからも徹底したこだわりをもって経営したい」と語る石川氏のその表情に、ゲームそのものを愛する眼差し、現代の対戦格闘ゲーム文化の一翼を担っている自負心、そして、個人でゲーセンを経営する者としての責任感が垣間見えた。

ビッグワン2ndは格ゲーファンだけではなく、ゲームを愛するすべての老若男女にとって、かけがえのない時間を与えてくれている。

【店舗情報】

プレイスポットビッグワン2nd
住所:埼玉県さいたま市南区南浦和2-27-12 アビアントビル2F
電話番号: 048-711-2218
営業時間:11時〜24時
休み:なし
駐車場:なし
公式サイト
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