見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2023年03月24日
  • 記事番号
    9316
  • ライター
    見城 こうじ

第1夜『プーヤン』(1982年・KONAMI)

今回から連載を始めさせていただきます。見城こうじです。
毎回1タイトル、ハムスターさんの『アーケードアーカイブス』で復刻されている昔のアーケードゲームを紹介していきます。当時の思い出や自分なりの考察も織り交ぜつつ、書いていければと思っています。連載を読んで興味を持たれたゲームがあれば、ぜひプレイしてみてください。第1夜は『プーヤン』です。

愛しの子ブタを救い出せ!

『プーヤン』は狼にさらわれた子ブタを救うべく、ママ豚がゴンドラに乗り込み弓矢で戦うシューティングゲームです。狼は風船に乗って崖の上から降りてきたり、逆に地上から上昇しながら攻撃してくるので、プレイヤーはこの風船部分を狙って撃ち落としていきます。

独創的な画面レイアウトと統一感のあるメルヘンティックなビジュアル、そして優れたサウンドによってゲームが仕上げられており、類似した製品があまり思い浮かびません。とてもエレガントなゲームです。タイトルの響きもいいですよね、『プーヤン』。

上りと下りで絶妙に異なるゲーム性

操作は1レバー1ボタン。レバーは上下2方向のみ使用、ボタンはショットに使います。ラウンド1は狼たちが上から下へ移動(下降)します。撃ち逃した狼はプレイヤーの後方へ回り込み、噛みつき攻撃をしてくるので、逃せば逃すほど不利になっていきます。

ちなみに、この後方に回り込んで攻撃してくる仕様は、縦から横へ90度回してみると、『ギャラガ』のザコの宙返り攻撃であったり、それこそ『銀河帝国の逆襲』のスティックエイリアン(下から槍で突いてくる)と構造がそっくりです。どれもプレイヤーが2方向にしか移動できないことを利用した効果的な敵の攻撃パターンといえます。

そして、ラウンド2は逆に下から上へ移動(上昇)します。撃ち逃した狼はどんどん崖の上にたまっていき、一定数を超えると大きな岩をプレイヤーの頭上に落としてミスとなります。

この仕様でおもしろいのが、ラウンド1では撃ち逃すほど邪魔する狼が増えて、じわじわと真綿で首を絞められるような状況になっていきますが、逃したこと自体が1ミスに直結するわけではありません。

それに対し、ラウンド2では逃した狼が規定数に達するまではゲーム上何も起きないのですが、超えた時点でいきなり強制的に1ミスになります。プレイヤーの追い込まれ方が変わるのです。

どちらがプレイヤーにとって厳しいルールかは一概にはいえませんが、少なくともラウンド1ではいくら撃ち逃しても問答無用でミスになることはありません。

他にもラウンド2では、狼の乗った風船以外にお邪魔風船が出てくるという違いもあります。これはラウンド1では狼の移動の方向が下向きなので、そこで狼の乗ってない風船まで重石もないのに下降していくと違和感がある、という理由もあったのかもしれませんが、結果的にラウンド2の方が障害物が多く、難しくなっているというのがおもしろいところです。

スペシャルウェポン“肉”のユニークさ

ラウンド3はボーナスステージです。スペシャルウェポンである肉だけを使って敵を何体倒せるかという遊びです。肉は放物線を描いて落ちていく貫通弾で、最上部へ取りに行くことで、都度補給するシステムになっています。設定としては、肉に釣られた狼が風船から手を放して真っ逆さま、といったところでしょうか。

このスペシャルウェポンは、ボーナスステージだけではなく、すべてのラウンドでキーとなる武器です。発射は一つしかないショットボタンを兼用するためストックができないのですが、その代わりどんどん出現します。それだけ使いこなすのが難しいということでもあるのですが。

肉に関して、よくできているなと思うのが、遠くへ行くとほぼ真下へ向かう一直線の軌道になることです。つまり、プレイヤーから離れた列にいる敵を一網打尽にしやすいのです。

このゲームは、プレイヤーが上下2方向にしか移動できず、自ら敵に接近することができません。また近代のゲームのような高速連射もワイドショットもないので、遠くの座標を移動する敵ほどかなり狙いにくくなります。このスペシャルウェポンは、そこをうまくカバーできるように作られているわけです。ストレスを軽減できる武器といってもいい。

しかし、この武器もけっして無敵ではなく、うっかり真横から風船に当ててしまうと弾かれて無効となってしまいます。この辺の考え方のバランスもうまい。

オリジナリティあふれる画面レイアウト

最初にも触れたとおり、このゲームのレイアウトはじつに独特で、まず移動が縦2方向のシューティング自体が非常に珍しく、その上、プレイヤーが右から左方向へのみはたらきかけるタイプのゲームもかなり少ないと思います。

移動操作が縦2方向のみのシューティングといえば、たとえば『ムーンシャトル』、それから『海底宝探し』や『スカイランサー』などが思い浮かびます。ただ、どれも細かくいうと一部横へ進むステージだったり、左右の振り向き動作などがあります。『フリップル』のようなパズルゲームまで含めたり、近年のゲームも探していくと、もう少しいろいろありそうですね。

プレイヤーが右から左側へ向かって働きかける(進む)タイプのゲームといえば、『フライボーイ』『ジャングルキング』『スカイキッド』などがあります。もちろん、場面に応じて右と左の両方へ向かうゲームは無数にあるのですが。

ふと思ったのですが、『プーヤン』のゴンドラを画面右端ではなく中央に配置し、左右に攻撃する『スカイランサー』のようなつくりのラウンドがあってもおもしろそうですね(まず『スカイランサー』がどういうものか、なかなか伝わらないと思いますが)。

では、また次回。

© Konami Digital Entertainment
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