ジョイスティックとボタンに込めた職人魂、三和電子に聞く・後編

ジョイスティックとボタンに込めた職人魂、三和電子に聞く・後編  IGCC


ジョイスティックやボタンなど、業務用パーツを専業で作り続けてきた老舗、三和電子へのインタビュー特別企画「三和電子に聞く」も今回が最終回。

ここではジョイスティック、ボタン以外の三和電子の製品群のほか、家庭用向け製品やeスポーツへの取り組みなど、新たな分野への挑戦について聞いた。

三和電子株式会社
生産部部長:大森 博克氏
生産部技術課:鵜木 智之氏
営業部第一課:佐藤 望氏

【聞き手】
ゲーム文化保存研究所
所長:大堀 康祐
ライター:前田 尋之

コンパネから対戦ハーネス、ビデオコンバーターまで、さまざまな製品群

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▲ジョイスティックやボタン以外にも多数の製品を手掛けてきた大森氏

――前回までは御社の主力製品であるジョイスティックとボタンについてお話を伺ってきたのですが、それ以外の製品にはどのようなものがありますか?

大森 少々古い製品なのですが、(1990年代に発売された)S社さんの汎用アーケード筐体用にコンパネ(コントロールパネル)を販売しています。昔はもっと種類もあったのですが、さすがに需要がだいぶなくなってしまいましたので、麻雀パネルなど在庫限りの商品となります。

大堀 S社さんの筐体も昔はずいぶん出回っていたものですが、ブラウン管自体がだいぶ減ってしまいましたからね。

大森 もっと以前は別の汎用アーケード筐体(1980年代発売)のコンパネもやっていました。一連の製品はS社さんから許可を頂いて、うちで販売していたんですよ。

あとは、JAMMA規格※1JAMMA規格 : 1986年に日本アミューズメントマシン工業協会が発起人となって制定されたアーケードゲーム基板の共通端子規格。これが制定されるまではメーカーごとにケーブルがバラバラだった。新JAMMA規格※2新JAMMA規格 : 1997年にJAMMA規格を拡張する形で制定された新規格。音声出力のステレオ化や通信機能への対応などが図られている。に対応した対戦ハーネス※3対戦ハーネス : 2台の筐体を接続して通信対戦を実現するケーブル。対戦格闘ゲームヒット以降、必須と呼べるアイテムとなった。ビデオコンバーター※4ビデオコンバーター : ゲーム画面を外部のモニターに出力するために必要な周辺機器。ゲーム映像のビデオ録画やギャラリー向けモニターなどに使われる。の類でしょうか。対戦ハーネスは今でも高い需要がありますが、ビデオコンバーターはゲーム画面を外部モニターに出力するという、ゲーム大会などでの使用を想定したJAMMAならではの製品です

ほかには、ビデオタイマーといってコインを入れると一定時間遊べるという機器も発売していました。ビデオゲーム用とUFOキャッチャー用と2種類用意していたのですが、これも今では需要がなくなって、販売終了してしまった代物です。

大堀 ゲームセンター用の製品をずいぶんいろいろ作っていたんですね。

大森 JAMMAはわりといじりやすかったので、うちでもさまざまな対応機器を用意していました。今はUSBなどで端子が簡略化されてしまったおかげで、こういったアクセサリは作りにくくなりました

実は、ずいぶん昔に家庭用ジョイスティックを発売したことがあるんです。こちらなのですが……。

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▲業務用部品をそのまま使った本格派ジョイスティックのはしり、三和電子製PASOKO-1000(1985年)

――これは懐かしい! 当時『マイコンBASICマガジン※5マイコンBASICマガジン : 1982年から2003年まで電波新聞社から刊行されていたパソコン情報誌。アーケードゲームの情報にも注力していた点が大きな特徴だった。でよく広告を見かけました。当時のMSX※6MSX : 1983年にマイクロソフトとアスキーが提唱したホビーパソコンの共通規格。最終的には全世界で500万台発売された。をはじめとしたパソコン用のスティックですね。

大堀 この、昔ならではのマイクロスイッチの音が心地良いですね。

佐藤 この製品は当時広告も出していて、けっこう売れていたらしいです。現物が残っていなかったのですが、弊社を代表する製品の一つということもあって、社長命令で後からヤフオクで入手しました(笑)。

――1980年代半ばといえば、オモチャみたいなジョイスティックが多かった時代でしたが、現物を見ると想像以上に作りがしっかりしていますね。さすがに業務用の製品を作っているメーカーが手掛けた貫禄を感じます。

佐藤 私が入社するずっと前の製品ですが、これを見ると三和電子は時代を先取りした会社だなと思います。光センサーレバーも、静音性が求められるずっと前からうちで作っていたわけですから

鵜木 時代が早すぎた(笑)。

佐藤 時代がやっとうちに追いついたと(笑)。

 試作だけで世に出なかったボツ・コントローラー

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▲他社にはまねのできない高耐久性が自慢と胸を張る鵜木氏

大堀 ということは、作りはしたけど世に出なかった製品も相当あるのでしょうか?

大森 ボツですか? それはずいぶんありますよ。「骸骨レバー」とかありました。通常のレバーの先端をひねることができるもので、戦車の砲塔のように通常の8方向移動と発射方向を同時に指定できるようなものなのですが……あれは採用されたのかな。

――一部のアクションゲームに採用された「ループレバー」みたいですね。

大森 あれってそう呼ばれているんですか? 私たちはレバーの握り玉の形状から骸骨レバーと呼んでいました。

鵜木 骸骨レバーよりはループレバーのほうが響きはカッコイイですね(笑)。

大堀 ほかに何かボツアイデアはありますか?

鵜木 そうですね。手のひらで操作するレバーというものを試作したことがあります。手のひらを乗せた状態で8方向にコントロールするというもので、同じ仕組みを応用して足で8方向操作できるレバーも作りました。

大森 結局、「何に使うんだ」ということでボツになりました。

鵜木 開発した当時は受け入れられなくても、あとから「これは使えるぞ」と、過去の製品コンセプトを引っ張り出してくることもあります

佐藤 例えば、光センサーレバーは静音性が高いという大きなメリットがありながら、当時受け入れられなかった理由は、レバーを入れたときのマイクロスイッチの感触がないからでして、逆に言えば「感触を再現しつつ静音性を両立すれば受け入れられるよね」という発想が、新しい商品開発につながりました。

それが「JLF-TRG/TPRG静音ジョイスティックレバー※7JLF-TRG/TPRG静音ジョイスティックレバー : 同社は過去に光センサーを使用した静音ジョイスティックレバーを他社に先駆けて開発していたものの、マイクロスイッチ独特の感触がないため不評であった。本製品はリードスイッチを採用することで、感触と静音性という相反する要素を満たすことに成功している。」です。有接点でありながらリードスイッチを採用することで、感触と静音性を実現したという画期的な製品です。さらに、この方法であれば光センサー式と違って、別途5Vの電源を供給する必要がないので、現行のマイクロスイッチからそのまま置き換えることができるという利点もあります。

鵜木 他社さんの静音スティックは大抵光センサー式ですが、弊社の製品はマイクロスイッチとは違った繊細な感触を感じていただけるものに仕上げました

これはスイッチメーカーと共同で開発したもので、実は職人さんが一つ一つ調整をしながら作っている代物なんですよ。その分お値段は少々割高になりますが、従来製品に比べて耐久性は格段に上がっていますし、そう簡単には他社さんがまねできないものと自負しています。

脚注   [ + ]