秋葉原ゲーセンの老舗にしてコアなプレイヤーが集うレトロゲームの王国 「Hey」

秋葉原ゲーセンの老舗にしてコアなプレイヤーが集うレトロゲームの王国 「Hey」  IGCC

Hey」はゲームセンター激戦区の秋葉原で営業するタイトー直営の店舗だ。中央通り沿いにあり、秋葉原駅電気街口からも程近い場所で営業している。ライバル店に挟まれ、メインとなる営業フロアが2階から4階ということで、ちょっと見逃してしまいそうな立地ではあるが、オンラインカードゲームやレトロゲームの充実ぶりでファンを集める人気店だ。

今回は「Hey」の店長と、タイトーの広報担当に、レトロゲームを中心とした同店の取り組みや特徴について、お話を伺ってきた。

秋葉原におけるゲームセンターのはしり

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▲50インチ×2面のオリジナル筐体の存在感に圧倒

「Hey」は2001年オープン。秋葉原が現在のようなエンターテインメント色を強める前、まだ電気街として家電販売店が軒を連ねていた時期から営業している。当時の秋葉原を思い出すと、大型店は「クラブセガ(現・セガ 秋葉原 1号館)」と「トライアミューズメントタワー」の2店舗くらいで、秋葉原で営業しているゲームセンターとしては老舗と言ってよいだろう

出店理由の一つは、「秋葉原だったから」ということらしい。秋葉原へやってくる人のタイプを考えた際に、やはりこのようなサービスを求める層が多かったからというのは、ある意味企業として当然の考えだろう。ゲーム会社であるタイトーからすると、やはり秋葉原は外せない場所だったのだと言える。

ゲーム史に名を残す名作はほとんど網羅

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▲ずらりと名作が並ぶ圧巻の店内。写真に写るのはほんの一部に過ぎない

ビデオゲームだけでも300台以上が稼働している「Hey」だが、レトロゲームの稼働数は2階のビデオフロアが90台。しかし、3階のパズルや90年代の格闘も入れれば軽く100台以上稼働しているのは確実。『ドルアーガの塔』(1984年/ナムコ)や『大魔界村』(1988年/カプコン)など、ゲームの歴史を語る上では外せないような名作が稼働しているのはもちろんのこと、シューティングゲームの充実ぶりには目を見張るものがある

特にケイブ※1ケイブ : 弾幕系シューティングゲームのトップメーカー。残念ながら現在はアーケード、家庭用ゲーム機ともに撤退し、スマートフォンアプリ専業になってしまった。の歴代シューティングゲームが並ぶ光景に、シューティングゲーム好きの筆者は思わず涙が出そうになった。まさか『エスプレイド』(1998年/販売アトラス)、『ぐわんげ』(1999年/販売アトラス)、『むちむちポーク!』(2007年)に再び出会えるとは!

また、タイトー直営店ということで『ダライアス』シリーズ(1986年~)全タイトルや、『レイフォース』からの『レイ』シリーズ(1994年~)3作品、『ニンジャウォーリアーズ』(1988年~)…とその他タイトルを一つ一つ挙げていくとキリがないので割愛させていただくが、タイトーの有名どころはもらさず導入されているところに「Hey」のこだわりを感じることができた。

汎用筐体で過去の大型筐体ゲームが遊べるインパクト

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▲かつての専用大型筐体ゲームが汎用筐体でプレイできるのも「Hey」ならでは

メンテナンス、機械いじりに強いスタッフがいることも、「Hey」にとっては強みになっていると言えるだろう。それが目に見える形で現れているのが「Hey」オリジナルの改造筐体。『スペースハリアー』(1985年/セガ)や『ナイトストライカー』(1989年/タイトー)をイーグレットⅡ筐体※2イーグレットⅡ筐体 : タイトー製のCRT筐体。ミディタイプと呼ばれる一般的な形状で、斜めに取り付けられたモニターを前にして座ってプレイする。 で遊ぶことができるのは、ここだけではないだろうか。また、50インチ液晶モニターを2面連結したオリジナル筐体で動作させている『ダライアスⅡ』(1989年/タイトー)は、インパクト抜群だ

レトロゲーム、特に専用大型筐体でリリースされていたタイトルは、経年劣化による故障に悩まされているという話をあちこちのオペレーターから耳にする。30年以上もの昔にリリースされた筐体は、メンテナンスしようにも当時の部品が手に入らないという問題が起きている。オリジナルの筐体サイズも大きなものが多いので、壊れたら廃棄するしかない。それでは、今後の若い人たちがオリジナルに触れる機会はなくなってしまうではないか。

「Hey」のように、改造してでも動作する環境を作り出すという取り組みは実に頼もしいと思う。改造の手間も大変だろうが、まだまだ多くの大型筐体の名作はあるので、ぜひこれからもこの取り組みを続けてほしいと感じた。

目指しているのはアーケードゲームファンにとって居心地のいい空間

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▲トレーディングカードゲーム機も充実しており、幅広い層にアピール

「Hey」の近隣には大小合わせて14軒のゲームセンターがある。「1エリア内にゲームセンターが集中している場所としては、間違いなく日本一ではないでしょうか」と店長。ライバル店としのぎを削る中で、住み分けを意識して強みを生かすための営業を心がけているそうだ。

通常、路面店の営業セオリーとしては、道行く人に店舗の前で立ち止まってもらい、入店のきっかけとなるように1階はプライズゲームコーナーにする。しかし「Hey」の場合は入居しているビルの構造上、エントランスが2階となる。なので、道行くライト層の客を2階に呼び込むには相当なハンデがある。

「ほかのお店が1階でクレーンゲームをやっていて、『Hey』にも2階にクレーンゲームありますよと言っても、なかなか入っていただけないんです」と店長。通常の営業セオリーが使えないため、コアな客層が気軽に出入りできる居心地のいい空間、仲間たちとの集会所になるような店作りを意識しているそうだ。その結果として、レトロゲームとオンラインカードゲーム機が充実し、「Hey」の個性を形作っている。

厳しい時代に試行錯誤しながら現在の形になっていった「Hey」

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▲ネオジオミニの発表で注目が集まっているネオジオのタイトルも多数稼働している

オープン当時と比べて、ビデオゲームの設置規模が大きくなったという「Hey」。現店長は歴代5代目の店長となるそうだが、それぞれの店長が手探りしながら現在の特色を形作っていったとのことだ。

ゲームセンターの営業形態には基本形というものがあり、メダルゲーム系、ビデオゲーム系、プリクラ系、プライズ系の4種から構成するのが現在の大型路面店の主流となっている。オープン当時の「Hey」もその基本形に沿った営業を行っていた。

2001年当時はヒット作に乏しく、ゲームセンターにとって厳しい時代。翌2002年にはアーケード向けトレーディングカードゲームが登場し、一大ブレイクとなるまでの約5年間、ゲームセンター業界は霧に包まれていたと言っても過言ではなかったとのこと。

対戦格闘ゲームは最盛期を過ぎ、インカム(売り上げ)に期待できる大型機として『ダービーオーナーズクラブ ※3ダービーオーナーズクラブ : 競走馬の育成・調教・レースを楽しむゲーム。データカードに自分の競走馬を記録し、どのゲームセンターでも継続してプレイできた。』(1999年/セガ)が存在していたが、それも下火になっていった時期なので、当時は「Hey」も本当に苦しい営業を強いられたそうだ。

「Hey」の強みとなる特色を作ろうにも、設置台数をある程度確保しなければならない大型店であるということが、当時はネックになった。最新ゲームで店内を充実させるにも予算的に余裕がない。そこで目をつけたのがレトロゲームだった
秋葉原は中古基盤がそこら中で売っているような土地柄、レトロゲームのファンも集まっているはずなので、需要もあるだろうと当時の店長たちは考えたそうだ。

「Hey」は最初から狙ってレトロゲームでコテコテの店舗にしようとしたわけではない。歴代店長の試行錯誤がファンに受け入れられたおかげで、現在の形があるのだ

レトロゲームの役割は集客ツール

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▲レトロゲームの花形、シューティングゲームの充実ぶりがすごい

秋葉原ということでターゲット層も厚い。実際に「Hey」店内でレトロゲームに集中している多くのプレイヤーを目にした私は、率直にインカムについてたずねてみた。するとやはり、「レトロゲームだけで利益を出せるとは考えていません」との回答が返ってきた

レトロゲームはエンディングがなく、繰り返しステージをループするものが多い。リリースされた当時からやり込んでいるような、うまいプレイヤーが多いので、プレイも長時間になりやすいことがその理由であるようだ。
「かといって今すぐプレイ料金を上げるなどというつもりはありません」と現店長。「Hey」としては、レトロゲームについてはインカムの良し悪しだけではなく、このタイトルがあるから店に来てほしいという考えで営業しているそうだ。店に足を運んでもらうきっかけになり、他のゲームで遊んだり、ジュースを買ったりしてもらうことにつなげるのが、レトロゲームの役割なのだろう。

ゲームへの理解が深い店長が運営する魅力的な店

「Hey」の取材は実に楽しいもので興味深い話も様々だったが、スペースも限られており、紹介しきれないのが残念。一つ言えることは、「Hey」というゲームセンターは我々と同じ感覚の店長が店舗運営を任されている、魅力的なゲームセンターということだ

取材前は、メーカー直営店ということもあり、本部の方針に沿って運営されているのかと思っていた。しかし、現場を一番分かっているのは店舗スタッフということで、本部は店長の裁量を大きくし、連携も取りつつ地域の客がもっとも喜ぶサービスを追求しているという。そして、これからもレトロゲームの充実を図り、より魅力的な店舗運営を目指していくそうだ。
秋葉原に立ち寄った際には、ぜひ「Hey」にも足を運んでいただきたいと思う。

【店舗情報】

Hey
住所:東京都千代田区外神田1-10-5 廣瀬ビル1F~4F
営業時間:10時~23時45分
休み:なし
駐車場:なし
公式サイト
公式Twitter

 

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