アーケードゲームマニア必携のコントロールボックスを生み出した男! 鈴木康史氏インタビュー後編

格闘ゲームの流行で驚くほど売れたコントロールボックス

▲同社のコントロールボックスの歴史がわかる『ベーマガ』(1988年)掲載の広告(画像 : COMBOシリーズ公式サイトより引用)

大堀 実際にキョーワさんでは総数にしてどれくらいのコントロールボックスを売ったんですか?

鈴木 具体的な数はパッと出ませんが、数千台のレベルで売ってきました。ブームの頃はものすごい数が売れたので5000台くらいかな…いや、もっと多いかもしれないですね。

──これまでお1人でそれだけの数を製作したのですか?

鈴木 今は1人でやっていますよ。一番売れていた頃はさすがに1人では無理でしたから、ゲーム筐体製造大手のマリンゲームという会社に頼んで組み立ててもらっていました。今はそんなに数が出る商品ではないので、板金の部分だけ業者に頼み、組み立ては自分でやっています。工賃が給料になると思って仕事しています(笑)

──ちなみに現在の月産はどれくらいなんですか?

鈴木 これ(COMBO AV EX++)を2018年12月に発売してからもう300台は超えたから、2日か3日で1台くらいのペースですね。趣味でやっていると考えると悪くないですよ(笑)

大堀 今はお1人で2~3日に1台のペースで作られているとのことですが、最盛期の『ストⅡ』の頃は外部委託をして作らなければならないほどの人気だったということですね。

鈴木 すごい時代でしたよ。秋葉原で店舗販売をしていた頃は99万9,000円までカウントできるレジを使っていたのですが、それがオーバーしちゃって1日の売り上げ計算ができなくなることが3日くらい続いたこともありました。あとは、セットで購入して20万円近くになったお客さんには東総信(東京総合信用、現・セディナ)という三井住友系のローンを組めるようにしていましたが、そちらも売り上げもすごかったですよ。

大堀 『ストⅡ』基板とのセット販売ですか?

鈴木 カプコンの代理店とは昔からの付き合いで仲が良かったものですから、『ストⅡ』の基板はうちへ優先的に卸してもらっていました。

大堀 どこで耳にしたか忘れてしまったんですけど、『ストⅡ』の発売初日、キョーワさんにとんでもない数の『ストⅡ』基板が納入されていたという話を聞いたことがあります。初代『ストⅡ』じゃなく、『ストリートファイターⅡ’TURBO -HYPER FIGHTING-』(1992年)か『スーパーストリートファイターⅡ -The New Challengers-』(1993年)でしたよね?

鈴木 大量に入ってきたので、だいぶ売ることができましたよ。

大堀 10台や20台というレベルじゃなくて、100台とかそんな数でしたよね。そんなとんでもない台数の超人気作が発売初日にキョーワさんにどーんと届いたんだからすごい。『ストⅡ』はシリーズを通してすごい数をさばいていたんじゃないですか?

鈴木 ピーク時は1日に10台くらいかな。業者にも売っていました。大阪のほうの業者とかと取引がありましたから。

大堀 やはり『ストⅡ』のようなゲームは練習目的で買っていくという感じだったんでしょうか?

鈴木 ゲームセンターで練習すると何万円も(プレイ料金が)かかるから、買ってしまったほうがかえって安上がりだったのではないでしょうか。私も最初の頃は基板の値段は高いのに、お小遣いは大丈夫なんだろうかと思っていましたよ。でも『ストⅡ』を上達したいマニアには、むしろ(基板の購入が)お小遣いの節約になったんでしょうね。

大堀 ゲーセンだと何万円も注ぎ込まなくちゃならないけど、これなら1回買えば遊び放題だし。

鈴木 対戦ゲームであったことが大きいですよ。対戦だと(お金を)多く使うわけです。『スペースインベーダー』のようにコンピューターが相手だと「もういいや」って止めてしまうけど、ほかの人間が相手だから「もう一回やろう!」と言われたらやってしまうじゃないですか。基板を買ってしまえばプレイ料金を気にしないで、いくらでも対戦できたというのは大きかったと思いますよ。

──家で練習してゲーセンで上達した腕を披露するという人も多かったでしょうね。

長年積み重ねてきたノウハウのおかげで今は大きな不具合はない

▲「故障にしても、それほど直すのが難しいレベルのものはないですね」と鈴木氏

──ずっとコントロールボックスの製作と販売を続けてこられたわけですが、苦労や大変だと感じたことはこれまでありましたか?

鈴木 製作に関しては特にありませんね。最初の頃はゲーム基板との相性問題で映像が映らないということもありましたが、一つ一つ調べて対処したおかげでノウハウとして身に付きましたから。今では(コントロールボックスの)テストをしなくても問題なく出荷できるくらいの自信がありますよ。販売のほうでは、機械に詳しくないビギナーのお客さんに毎回同じ説明をするのは大変だと感じることはあります(笑)

大堀 コントロールボックスはマニュアルもある程度の知識がないと厳しい部分がありますもんね。購入後のクレームもあったりしませんでしたか?

鈴木 クレームは来ることもあるんだけど、1年保証をつけていますし、私は昔からほとんど無料で直してあげるようにしているんです。

息子がファミコンのパッドを修理に出したことがあったんですけど、任天堂さんは「これは故障じゃありません」と言って新しいものを送ってきたんですよ。任天堂さんのようにしないとダメなんだなと思って、私も無料でやるようにしたんですけどね。

大堀 任天堂の神対応と同じじゃないですか。それはすごい! かなり昔から保証をつけていますよね。

鈴木 1年保証と言っているけど、ほとんど無料で直しています。修理代はよほどのことがない限り頂いていません。

── いまだにそれを続けていらっしゃる?

鈴木 はい。電源を逆挿しして壊しちゃったというケースが多いのですが、それも直せますしね。

大堀 逆挿ししたトラブルを直せるんですか?

鈴木 逆挿しした場合の多くはショートで故障しています。ゲーム基板なんかもそうですが、電源を逆挿ししたケースでは、だいたい電源入力付近のゲートICが壊れるので、そういうものはほとんどの場合、直せるんですよ。

大堀 じゃあ、うっかり逆挿ししちゃっても直してもらえるんですね。すごい!

鈴木 だけど、複雑な壊れ方をしていたときは「5,000円になります」と修理代を頂くこともあります。だから「よほどのことがない限り無料」ということですね。

現行モデルの仕様変更は時代に合わせたマイナーチェンジが中心

▲写真(上)は最新の「COMBO AV EX++」、写真(下)は前モデルとなる「COMBO AV EX+」(画像 : COMBOシリーズ公式サイトより引用)

──現行のコントロールボックス「COMBO AV EX++」についてですが、昔のモデルと比べてどのような違いがあるのでしょうか?

鈴木 映像出力を、最近主流になっているモニターに対応させています。VGAやHDMI出力をできるようにした感じです。

──じゃあ、昔のコントロールボックスから変化したのは映像出力くらいですか。

鈴木 そうですね。レバーにしてもボタンにしても大きな進化はないじゃないですか。まあ、ボタンについてはCherry(チェリー)※01Cherry : ドイツのコンピューター周辺機器メーカー。耐久度と正確性に優れるCherry MXスイッチを製造している。PC用キーボードなどの入力デバイスで、操作感にこだわる人はCherry MXスイッチ採用製品を選ぶことが多い。の製品が優秀なので、コントロールボックスのチューニングパーツとして売り出そうと思っています。

──Cherry社のボタンだと何が違うんですか?

鈴木 耐久性が高いんです。あと応答性もいい。一般的なボタンはストロークが2ミリほどなんですが、Cherryのボタンは1.2ミリくらいしかない。連射が効いて技も出しやすいんです。eスポーツの競技者の間でもCherry製を選ぶ人が増えていますよ。対戦格闘系のゲーマーは特に。

──eスポーツ競技者が愛用するのですから、プロスペックということで、価格もそれなりという感じでしょうか。チューニングパーツとして別売になるのはコントロールボックスの本体価格に影響しないようにですか?

鈴木 いや、そんな高いパーツじゃないんです。200円とか300円程度ですから、私のほうもそれだけでは儲けがないくらいで(笑) ただ、Cherryのボタンが付けられるという意味は大きいと考えています。ボタンだけ別売にするというのは、(操作感の)好みが人によって違うからです。Cherryのボタンはストロークが短いぶん、反応が良すぎてやりにくいと感じる人もいますから。だから改造キットということで、必要な人は自分で取り付けてください、ということです。

──本日は長いインタビューにお付き合いいただきありがとうございました。最後に読者の皆さんに向けてメッセージを頂けますか。

鈴木 実は心臓を悪くしてしまいまして、現在販売している「COMBO AV EX++」がコントロールボックスのファイナルバージョンになるのかなと考えています。
最近の家庭用ゲーム機やPCは高性能で、ゲームメーカーさんもエミュレーション技術を使ってアーケードゲームを移植していますが、実物に触れるという意味では、やはり基板にコントロールボックスをつないでプレイするほうが良いのでは、と思っています。今は1人で製作していて、なかなか量産はできませんが、ぜひ弊社のコントロールボックスで多くの名作に接していただきたいですね。

──ありがとうございました。

▲コントロールボックスを通じてベーマガライター時代の思い出で盛り上がった鈴木氏と大堀所長

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