ゲーセン歴25年の「ゲーセン女子」おくむらなつこさんが語る “ゲーセン文化”の今昔

  • 記事タイトル
    ゲーセン歴25年の「ゲーセン女子」おくむらなつこさんが語る “ゲーセン文化”の今昔
  • 公開日
    2018年03月30日
  • 記事番号
    307
  • ライター
    外山雄一

25年間ゲーセン通いから見つめるゲーセンの現在過去未来

▲音ゲーを楽しそうにプレイするおくむらさん

――ゲーセン通いを始めて25年間とお聞きしましたが、ゲーセンの変遷についてどのようにお感じですか?

おくむら ゲームを楽しめる多彩な技術が出てきて、本当にビックリします。私はビデオ、大型、プライズ、メダル、音ゲー他ほぼ全てのゲームをプレイしますが、音ゲーは私が小1の時にはありませんでした。麻雀がタッチパネルでプレイできたり、店舗間ネットワーク対戦ができるようになったり、プレイデータ記録デバイスとか、マスプッシャー(*01)のデジタル化とか…。トレーディングカードゲームが出た時は、本当にビックリしました。「こんなの出るんや!」って。あとはモニターの進化で本当に明るくなりましたよね。ゲーセンの分煙化なども驚きです。

――人の流れについてはいかがでしょう?

おくむら 最近はゲーセンユーザーが本当に減りましたよね。例えば、私は『WCCF』の稼働初日からプレイしているのですが、当時のWCCFは2~3時間待ちが当たり前でした。そして、そんなゲームがたくさんあった時代からゲーセンにいるので、減ったことを実感しています。

――ゲーセン客の減少には、スマートフォンのゲームに流れたという見方もありますが…。

▲2自身創刊の雑誌2号目となる『ゲーセンさんぽ Vol.2』。2018年2月に発売された(画像はおくむらさん提供)

おくむら 自分のブログ や雑誌『ゲーセンさんぽ』(自著)にも書いたように、ゲーセンの競合が多種多様に広がってきたことが原因の一つだと考えています。ユーザーの可処分時間の取り合いという意味でゲーセンの競合を上げるなら、東京ディズニーリゾート、スーパー銭湯、100均、スタバ、ニトリ、イオン、Twitterなど、ゲーセンの競合は本当にいくらでも挙げられます。

――全国のゲーセンは今世紀に入ってから閉店が相次ぎ、店舗数は右肩下がりですよね。そのことについてはどうお考えですか?

おくむら 100円の中でゲーセンのインカムが少なくなってきていることや、ビジネスの形が変わっていないことなどにも原因があると考えています。

ゲーセンが自身の競合を他店(他ゲーセン)だけだと思っていることももどかしいです。他の競合たちはすでにゲーセンをライバルだと認識して、ゲーセンユーザーにアプローチをしてきている。しかし、ゲーセンはそれに対抗する力をあまり発揮できていないような気がするんですね。

私は常に、ゲーセンにはそれら競合と戦うだけのコンテンツや体験価値という魅力を十分に持っていると確信しています。だからゲーセンは、新しく競合に参加してくる相手も競合と見据えて、ユーザーに提供する体験価値を見直し、もっと進化していってほしいと考えています。

――具体的にどうすべきだとお考えですか?

おくむら あくまで個人的見解ですが、第一にそこ(ゲーセン)に行かないと体験できないことをもっと増やしていくべきだと思っています。家庭用やスマートフォンアプリゲームなら自宅でもカフェでもできますが、個人別や店舗独自のローカル色を強めるなど、そこに足を運ばないとできない体験(の提供機会)を持っていることは、ゲーセンの大きな魅力となります。

第二に、そういったゲーセンの魅力を発信していくためには、個別に店舗情報を発信していくのではなくゲーセン業界全体が一丸となった「オールゲーセン」で、ゲーセンに共通する「おもしろさ」を伝えていく必要があると思っています。

強烈な情報が多く飛び交う現代では、小粒の情報をたくさん出していても一般に認知してもらうことや興味をもってもらうことは難しい。

そのためゲーセン業界全体で「ゲーセンに共通するゲーセンのおもしろさ」を発信できる「共通言語」を持ち、世の中に発信していかなければならないと考えています。

――ゲーセン業界全体、つまり「オールゲーセン」というところがポイントですね。

おくむら オペレーターさん(店)によって経営者が異なり、365日営業していて多忙な状況の中、業界一丸の「オールゲーセン」として動くことは難しい気もしています。だから、私たちがゲーセンの共通言語を作れないかと試行錯誤しながら、「ゲーセンはおもしろいんだ」という共通言語を発信しています
それが(私が創刊した)雑誌「ゲーセンさんぽ 」やブログ「 ゲーセン女子」なんです。

「ゲーセン女子」が考える”ゲーセン文化”とは?

――先ほどからおくむらさんは「ゲーセン文化」という言葉をよく口にされていますが、この「ゲーセン文化」とは何なのでしょうか?

おくむら ゲーセンだけでなく、その周りを取り囲むロジスティックス(物流)、人の流れも含めて、ゲーセンは文化だと思います。オペレーターが減ると、ロジスティックス(物流)も一緒に潰れる。(取引先の)修理屋、ワックス屋、電気系統のエンジニアもいなくなる…。技術継承という意味でも、ゲーセンを取り巻く産業も「ゲーセン文化」の中に入ってくるんじゃないかと思っています。

ゲーセンは進化の歴史があって、一つのコンテンツでもあり、思い出を持つ人もいるし、愛情を持つ人もいる。最後にお客さんに提供されているものの裏側にはちゃんとビジネスがあって、これも文化だと思うのです。
だから、ビジネスが縮小していっていることが、私はすごく怖いです。「ゲーセン文化」がなくなるんじゃないかと

――「ゲーセン文化」をなくしたくないと…。

おくむら ゲーセンは「文化」なので、生きていることが大事だと思います。だから私は、(ゲーセンを)博物館化させたくないです。ゲーセンは文化として進化し続け、常にアミューズメントの、エンタメの最先端にあってほしい。最先端の遊び方がある場所でい続けてほしいと思っています。

▲2018年2月開催のJAEPOでは、自費出版の『ゲーセンさんぽ』を販売した(画像はおくむらさん提供)

――これまで、ブログやラジオ、雑誌などでゲーセンを盛り上げていく活動をされてきましたが、今後「ゲーセン文化」のためにどんなことをしていく予定ですか?

おくむら 今までもこれからもゲーセンの外にいる方たちへ、ゲーセンの楽しさ、おもしろさを発信していきたいと思っています。昨年(2017年)は、私のブログを見てくださった複数のメディアの方から、「東京ゲームショウやeスポーツ大会の取材に行きたいが、アーケードゲームの楽しみ方やeスポーツの楽しみ方が分からないから翻訳者』が欲しい」とのお声掛けを頂きました。このように私が「翻訳者」になってゲーセンの楽しみ方を伝えていくことができたらと考えています。ゲーセンやアーケードゲームそのもののおもしろさ、そのコミュニティーの強さや楽しさという魅力があるから、私が「翻訳」した上で彼ら(メディア)に引き渡していきたいです。

――最後に、今後のおくむらさんの活動と目標について教えてください。

おくむら もっと仲間が欲しいですね。1人でできることに限界があるから(笑)。あと、今回こうして取材の機会を頂けたように、(ゲーセンの外からも)問い合わせが欲しいです!(笑) 本当にどんな問合わせや相談でもいいので…。それを(自分なりに)考えて、どんどん「翻訳」していきたいです。
「近くにゲーセンはあるけど、最近行ったことがない」「昔ゲーセンに行っていたけど、今の楽しみ方が分からない」という方たちにゲーセンの楽しさを伝えたい。興味を持ってもらうための機会を1つでも増やしていきたいです

そして、いつかはゲーセン女子で「アーケードゲームフェス」みたいなフェスイベント開催とか、これまでのマーケティング経験を生かした自分たちのゲーセンを持ちたい! とか、いろいろ企んでいます!

※敬称略

おくむら なつこ さん

株式会社トライバルメディアハウス 組織・人事戦略担当
年間330日ゲーセンに通う「ゲーセン女子」として、テレビ/イベント出演、ラジオ「ラジオ版ゲーセン女子トーク」パーソナリティー、雑誌「ゲーセンさんぽ」やブログ「ゲーセン女子」などを通じて「ゲーセン文化」を広める活動をしている。WCCFガール 秘書(初代)。鉄拳女子部 2代目部長。
ブログ ゲーセン女子
Twitter(おくむらなつこ)
ラジオ版ゲーセン女子トーク

撮影協力:ピンクパンサー つくば店
住所:茨城県つくば市小野崎177-2
電話:029-861-1983
営業時間:9時~24時
休み:なし
公式サイト

※記事中の写真は店舗の許可を得て撮影しています。

脚注

脚注
01 マスプッシャー : メダルゲーム機のうち、メダルを押し出して落としていくタイプを「プッシャーゲーム」と呼ぶが、このうち1~2人用を「シングルプッシャー」、それ以上の人数用を「マスプッシャー」と呼ぶ。一般的に「マスプッシャー」の方が大当たりの際のメダル払い出し枚数が多い。

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