リメイクにこだわり続けるアーケード界の始祖、タイトーの美学

リメイクにこだわり続けるアーケード界の始祖、タイトーの美学  IGCC

ビデオゲームが誕生して、はや40年超。
今年2018年は、当サイトでもすでに特集として取り扱った、タイトーの『スペースインベーダー』発売40周年という節目の年である。1978年に登場した『スペースインベーダー』は単なるヒットタイトルというだけではなく、日本におけるアーケードゲームという市場を切り開いた偉大な始祖であり、現在のメーカー、ディストリビューター、オペレーターと呼ばれるアーケードゲームのビジネスモデルは、実質的に本作を機に確立されたと言ってもいい

そんなアーケードゲーム業界最古参の部類に入るタイトーだが、リメイクゲームメーカーとしての側面があるのはご存じだろうか? 『スペースインベーダー』は言うに及ばず、古典的なゲームジャンルやIP ※1IP : Intellectual Propertyの略で「知的財産」のこと。著作物や肖像、商標・意匠など、形はないが財産的価値をもつもの。ゲームの場合、生産されたパッケージという物体ではなく、それを生み出す作品そのものの権利全般を知的財産として扱う。が現在に至るまで息づいているメーカーというのは、アーケードゲーム業界を見回しても実に珍しい。

そこで、本稿では「リメイクゲームにこだわるメーカー」という側面で、タイトーのIPに対する姿勢について迫ってみたいと思う。すべてのタイトルを取り扱うのは現実的ではないため、とりわけタイトーの姿勢が伺える4つの作品に焦点を当てて解説してみたい。

タイトー最多シリーズ数を誇る『スペースインベーダー』

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▲『スペースインベーダー』『スペースインベーダー パートⅡ』パンフレット  © TAITO CORPORATION 1978 ALL RIGHTS RESERVED

タイトーの最も大きなIPとして『スペースインベーダー』を挙げることに異論を挟む人はいないだろう。以後のアーケードゲームに多大な影響を与えたビッグタイトルだが、多数のシリーズ作品が発売されているタイトルでもある。海賊版や他社ライセンス品を除いた、アーケードゲームの正規シリーズのみに限定しても、以下のタイトルが存在する。

『スペースインベーダー・パートⅡ』(1979年)
『リターン・オブ・ザ・インベーダー』(1985年)
『マジェスティック・トゥエルブ「MJ-12」』(1990年)
『スペースインベーダーDX』(1994年)
『あっかんべぇだぁ~』(1995年)

また、主だった家庭用ゲーム機にも移植されており、むしろ移植されていない機種のほうが珍しいほどである。これらは、グラフィックや演出についての新要素は追加されていても、ゲームルール自体は画面上部から攻めてくるインベーダーたちを画面下部の砲台で迎え撃つというもの。いかに同社が『スペースインベーダー』というタイトルを偉大なオリジンとして位置づけているかが伺える

キャラクター性とゲーム性が高度なレベルで結実した『バブルボブル』

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▲『バブルボブル』パンフレット © TAITO CORPORATION 1986 ALL RIGHTS RESERVED.

バブルボブル』(1986年)は同社の『フェアリーランドストーリー』(1985年)を下敷きにした固定画面のアクションゲームで、いわゆる「ひな壇型」アクションゲームを確立した名作である。「泡を吐いて敵を閉じ込めて割る」「全滅すれば面クリア」という単純なルールのおかげで、初見のプレイヤーでも十分に楽しめる内容だ。
その一方で、ボタンを押しながら泡に乗ることができるテクニカル性、パワーアップすれば泡を連射できるシューティングゲームのような爽快感、隠し面や各種アイテムによる謎解き要素など、1画面の中に多数のフィーチャーを盛り込んでいながら、すべてが高レベルでまとまった絶妙なゲームデザインにより、本作を大ヒットタイトルたらしめた。

世はスクロールゲーム全盛で、時代遅れとされた固定画面のゲームであった『バブルボブル』だが、ゲームファン層の間口を広げた功績は大きく、多数のシリーズ展開がなされている。『スペースインベーダー』と違って、ストーリー性、キャラクター性がある作品だけに、単純なシステム上の続編ではなく、『パズルボブル』(1994年)などのように別ジャンルへの展開が行われたのも本作の特徴といえる。

また、『バブルボブル』のキャラクターたちが、カメオ出演という形で同社の他作品に登場することも多く、本作が持つキャラクター性の高さゆえといえるだろう。

【直系の続編】
『バブルシンフォニー』(1994年)
『バブルメモリーズ』(1996年)

【世界観とストーリーを継承した続編】
『レインボーアイランド』(1987年)
『パラソルスター』(PCエンジン・1991年)

【続編ではないがゲームシステムを継承】
『ドンドコドン』(1989年)

【キャラクターを継承した派生】
『パズルボブル』(1994年)
『パズルボブル2』(1995年)
『パズルボブル2X』(1995年)
『パズルボブル3』(1996年)
『パズルボブル4』(1998年)
『スーパーパズルボブル』(1999年)

これらのシリーズタイトルは、それぞれに家庭用ゲーム機への移植版・派生タイトルが存在しており、現在でもシリーズ継続中である。特に『パズルボブル』に至っては、オリジナルである『バブルボブル』を超えるほどのタイトルがリリースされた。

体験型シミュレーターの草分け『ミッドナイトランディング』

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▲『ミッドナイトランディング』パンフレット © TAITO CORPORATION 1987 ALL RIGHTS RESERVE

ミッドナイトランディング』(1987年)は、専用の大型筐体でリリースされたタイトーの運転シミュレーターの第1弾。内容自体はパソコンで古くからある、ドットで夜景を表現するタイプのフライトシミュレーターだが、本格的な操縦桿(そうじゅうかん)による操作系、英語による機内アナウンスなど、きめ細やかな演出の妙により、パイロット気分を体験できる画期的なゲームであった。密閉型の筐体だったため、ギャラリー用モニターまで別途設置してあるなど、心憎い配慮もなされていた

ゲームというもの自体が「非日常の体験」とするならば、「パイロットになりたい」という願望を叶えてくれる本作は、まさにゲームの王道といえるものであり、タイトーの運転シミュレーター系ゲームシリーズを生み出す契機となっている。以後、『~ランディング』シリーズ(1988年~)といった直系の続編はもちろんのこと、後に記録的大ヒットとなる『電車でGO!』(1997年~)を生み出す土壌へとつながっていった

【直系の続編】

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▲『トップランディング』パンフレット © TAITO CORPORATION 1988 ALL RIGHTS RESERVED.

『トップランディング』(1988年)
『ランディングギア』(1996年)
『ランディングハイジャパン』(1999年)

 

 

 

 

【ヘリコプター】

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▲『エアインフェルノ』パンフレット © TAITO CORPORATION 1990 ALL RIGHTS RESERVED

『エアインフェルノ』(1990年)

 

 

 

 

 

 

 

 

【鉄道】

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▲『電車でGO!』パンフレット © TAITO CORPORATION 1996 ALL RIGHTS RESERVED

『電車でGO!』(1997年)
『電車でGO! EX』(1997年)
『電車でGO!2高速編』(1998年)
『電車でGO!2高速編 3000番台』(1998年)
『電車でGO!3通勤編』(2000年)
『電車でGO!3通勤編 ダイヤ改正』(2000年)
『がんばれ運転士』(2000年)
『電車でGO!!!』(2017年)

【ラジコンカー】
『RCでGO!』(1999年)

【パワーショベル】
『パワーショベルに乗ろう!!』(1999年)

第2次ブロック崩しブームを起こした立役者『アルカノイド』

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▲『アルカノイド』アーケード版。当時ブロック崩しのブームを作った © TAITO CORPORATION 1986 ALL RIGHTS RESERVED.

アルカノイド』は1986年にタイトーから発売された、いわゆるブロック崩しゲームである。『ブレイクアウト』(1976年/アタリ)のヒット以降、アーケードゲームメーカー各社から発売されたブロック崩しだが、タイトーも例に漏れず、複数のブロック崩しタイプのゲームをリリースしていた。

それから10年が経過し、古典的なジャンルとなっていたブロック崩しに着目したタイトーは、敵キャラクターやアイテムを追加し、1980年代ならではの最新アレンジを施した『アルカノイド』を発売。ゲームのルール自体はひと目で見て分かる「ブロック崩しそのもの」だったために、年齢性別を問わず幅広い客層に訴求。「古いのに新しい」エポックメーキングなタイトルとなり、大ヒットした

このヒットに気をよくした他社も、こぞってブロック崩しのリメイクを始め、このムーブメントは第2次ブロック崩しブームといえるほどまでになった。代表的なものとしては『ギガス』(1986年/セガ)、『ギガスMkⅡ』(1986年/セガ)、『クエスター』(1987年/ナムコ)などがあり、ほかにも家庭用ゲーム機では多数のブロック崩しタイプのゲームがリリースされている。

また、タイトー自身もブロック崩し以外の金脈を発掘するべく、『ヘッドオン』(1979年/セガ)のようなドットイート※2ドットイート : 自機を操作して画面上の敵(ドット)を消していくアクションゲーム。セガの『ヘッドオン』はその元祖と言われ、『パックマン』(1980年/ナムコ)で世界的な人気ジャンルとなった。タイプをリメイクした『レイメイズ』(1988年)、『サーカス』(1977年/エキシディ)といった風船割りゲームをリメイクした『プランプポップ』(1988年)など、どこも作らなくなった古いジャンルを現代に蘇らせ、新たな客層を掘り起こすという、単なる第2次ブロック崩しブームを超えたリメイク作品をこの頃に集中してリリースしている。

ほとんどのメーカーは後続タイトルを発売することなく、ブロック崩しブームは定着せずに静かに収束していったが、火付け役となった『アルカノイド』だけは以後もシリーズ化され、タイトーの安定したIPの一つとして成長していった。アーケードだけでも『アルカノイド』シリーズは複数リリースされており、これ以外にも多数の家庭用ゲーム機への移植版が存在する。

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▲『アルカノイド リベンジ オブ DoH』パンフレット © TAITO CORPORATION 1987 ALL RIGHTS RESERVED.

【直系の続編】

『アルカノイド リベンジ オブ DoH』(1987年)
『アルカノイドリターンズ』(1997年)

【ブロック崩し系派生タイトル】
『プチカラット』(1997年)

アーケードゲームメーカーのリーディングカンパニーとしての責任と自負

ここまで、いくつかの例を挙げてタイトーの自社IPに対する取り組みについて紹介してきたが、冒頭でも述べたとおり、ここまで自社IPの展開やリメイクについて前向きに取り組んできたメーカーは少ない。もちろん、ゲームメーカーもビジネスでゲーム開発を行っているわけだから、シリーズ展開されずに1作限りで終わってしまったタイトルはもちろん数多く存在する。それらを差し引いて考えても、なぜタイトーは、ここまでシリーズ展開やリメイクへの姿勢を持ち続けていられるのだろうか。

私はその昔、某古参アーケードゲームメーカーに勤務していた時期があったのだが、そこの社長は訓示の中で、たびたびタイトーの名を出し、「タイトーに追いつき、追い越すこと」といった具合に、強く意識していたことをよく覚えている。単純にライバルというよりは大きなリスペクトの対象といったニュアンスであり、アーケードゲーム事業を営む上で、いかに大きな目標であったかを感じさせるものであった。

『スペースインベーダー』のヒットにより、アーケードゲームを遊ばせること自体を目的とした「インベーダー喫茶」から「街のゲームセンター」という小さな店舗が生まれ、それが現代のアーケードロケーションの土壌のもととなっていった。タイトーは現代でも「タイトーステーション」というアミューズメント施設事業を柱の一つとして持っており、日本のアーケードゲームメーカーのリーディングカンパニーとしての責任と自負を全うしようとしているように見受けられる。

黎明期にリリースした自社IPやゲームジャンルを「古いもの」と一蹴せずに、シリーズ展開を続けることでゲームジャンルの一つとして後世に残そうとする姿勢も、リーディングカンパニーとしての責任と自負からくるものなのではないだろうか。

タイトーは『スペースインベーダーエクストリーム』(STEAM版)や『電車でGO!!』のようなリメイク作品を、節目節目でリリースしている。新規IPよりもリメイクを格下に捉える人もいるかも知れないが、少なくとも私はそんな数々のタイトルを見るたびに尊敬の念を禁じ得ない。願わくば、これからもゲームの新境地を開きつつも、同時に古いものも大切にするタイトーであってほしいと願っている。

脚注   [ + ]