伝説のゲームデザイナー・上田和敏氏×遠藤雅伸氏ダブルインタビュー 後編

伝説のゲームデザイナー・上田和敏氏×遠藤雅伸氏ダブルインタビュー 後編  IGCC

伝説のゲームデザイナー・上田和敏氏×遠藤雅伸氏のダブルインタビューも今回が最終回。
前回は1988年にアーケードに登場した『テトリス』の衝撃、そして『ポケモン GO』のプレイスタイルにおける日本とアメリカのゲーム観の違いなど、アカデミックなテーマにまで掘り下げた。

今回は遠藤氏と上田氏それぞれの資質を、メカニクスデザイナーとレベルデザイナーという区分から解き明かしていくとともに、お2人の原点ともいえるボードゲームについて、近年の事情やビデオゲームとの関係まで切り込んでいく。

【聞き手】
ゲーム文化保存研究所
所長:大堀 康祐
ライター:見城 こうじ

メカニクスデザイナー遠藤雅伸とレベルデザイナー上田和敏

伝説のゲームデザイナー・上田和敏氏×遠藤雅伸氏ダブルインタビュー 後編  IGCC
▲メカニクスデザイナーとレベルデザイナーという互いの資質に言及するお2人

――1986年8月号『Beep』の対談で、遠藤さんはゲームを作るときに仕上げには興味がなくて、上田さんは逆に最後の調整のほうが好きで、最初のアイデアを思いつくのに苦労すると書かれていて、これはおもしろいなと思ったんですよね。

一同 (笑)。

遠藤 そうなんだよねえ(苦笑)。

――これはずっとそうだったんですか?

遠藤 うん、それは本当に。だから、(一緒に仕事をしていたときに)最後に上田さんに見てもらうと少し安心する。

上田 僕は数字オタクなんで、数字をバッチリ書いた仕様書を仕上げる。その通りに作ってもらって、そのまま調整なしでゲームになる、というのが醍醐味ですね。

――でも、さすがに調整が必要な場合も出ますよね?

上田 ほとんどない…と思っていますけどね。

――それって仕上げが好きというよりは、仕様書の段階で仕上がっているということですよね。

上田 頭の中でゲームが動いているんですよ。その動きをそのまま数字に落としているんで、それが最終調整状態であるというのが、自分の中にありますね。

――『Mr.Do!』(1982年/ユニバーサル)についても、そういうことをおっしゃっていましたよね。

上田 今まで作ったゲームは大体同じかな。

――それすごいですよね。自分も企画者をやってきたので、ちょっと信じられないのですが。

上田 すごいですよね(笑)。

遠藤 そういう意味では、上田さんはレベルデザイナー的な感覚なんだよね。僕は完璧にメカニクスデザイナーで、新しいものがやりたいだけっていう。

――昔はそのような区分も単語もなかったですよね。

遠藤 なかったね。でも、今、メカニクスデザイナーというのは、もう成立しないんだよ。ガチャとかで集金マシンとしてゲームを見るような世界では、メカニクスを考える必要がないから。今、メカニクスデザイナーがボードゲームに移っているのは、そのせい

――興味深いお話ですね。本当にそんなことが起こっているんですか?

近年のボードゲーム事情とビデオゲームの関係

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▲ボードゲームにも造詣が深い遠藤氏。興味深い話が次々飛び出してくる

遠藤 ボードゲームがなぜ流行っているかというと、マニア層がデジタルゲームをつまんないと思うようになって、ボードゲームに移行しているからなんだ。

――僕も今年のゲームマーケット※1ゲームマーケット : 電源を使用しないアナログゲームの振興とユーザーの交流を目的としたイベント。東京と関西で定期的に開催されている。に行きましたけど、ボードゲームのアイデアってすごいですよね。こんな遊びのアイデアがあるんだって、プレイするたびに感銘を受けます。

遠藤 だから、メカニクスデザインとかテーマデザインをする人って、そちら側に行っている。遊び手のほうも、ゲームを本当に好きな人たち、つまり1980年代のゲームがすごいと思っている人たちは、『ドミニオン』(2008年/Rio Grande Games※2ドミニオン : 2008年に発売されたアメリカのボードゲーム。大変高い評価を受けている。領土を拡張し、もっとも多くの領地を手にしたプレイヤーの勝利となる。)以降、けっこうみんなボードゲームに行っているんだよ。

――『ドミニオン』は2008年のボードゲームですから、この10年ぐらいということですね。

遠藤 で、すごいのが、ゲーム少年って誰でも「自分で考えたこんなゲームがほしい」っていう願望があるじゃない? ボードゲームの世界では、それが実現できる。カードやコンポーネントを作って、印刷屋などに持っていくと、きちんとしたパッケージにしてくれる。30セットとかでも。

――近年はそういうお店がビジネスとして成立していますからね。

遠藤 3Dプリンターのおかげで、ゲームマーケットはものすごく進歩したんだよね。それを示したのが『枯山水(かれさんすい)』(2014年/New Games Order)というボードゲーム。庭石が3Dプリンターで作られている。

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▲中高年を中心に人気を集めている『枯山水』。プレイヤーは禅僧となり、いかに洗練された枯山水庭園を造れるかを競う。©Yamada Koota & New Games Order LLC. All rights reserved.

――今回、ゲームマーケットに来た外国のボード&カードゲームファンの人が、日本を褒めていたという記事を読みました。日本にこれだけの種類のゲームがあることがすごいって。

遠藤 これだけ多様性を持ったものを作れるのは、日本人しかいないのよ。しかも、日本は遊んで評価する側も多様性に対応しているから、その中でみんながおもしろいと思っているものの芽が伸びて、次の木ができる。そこでまた違ったものが育つんだよね。

マイナー好きな人も含めて、いろいろなところに需要ができていて、それがヨーロッパの人たちにも伝わり始めているおかげで、ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)などに日本のゲームがノミネートされている。『街コロ』(2012年/グランディング)はファイナリストにノミネートされたし、『Love Letter(以下『ラブレター)』(2012年/カナイ製作所※2014年以降アークライトが販売)は推薦リスト入りしたのかな。『ラブレター』が伝わるって、けっこうヨーロッパの人は(日本のゲームを)分かっているってことだよ

――『ラブレター』とは、どういうゲームですか?

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▲『ラブレター』は、プレイヤーは姫に恋する若者となり、協力者(手札)を使ってライバルたちを脱落させながら、最初に姫に恋文を届けた者が勝者となるゲーム(画像は公式サイトより引用)©2014 Arclight, Inc. /カナイ製作所

遠藤 『ラブレター』って「さあ始めよう」と配った時点で、ゲームから除外されている人が出たりするんだよ。手札が1枚しかないカードで、ディールされたときにカードを見たら、「あなたはすでに死んでいます」というカードが入っているの。そのカードが自分に来たときに、「イエーイ、俺死んでいたもん」って笑って楽しめるのは日本人だけ。

アメリカ人だと、最初にこれが来て一手もやらずに死んでしまうゲームはおかしいだろ、ありえないだろうと考える。でも、フランス人やドイツ人は「それもありなんじゃないの」ということが分かってきている

上田 そのカードが来た人は本当に何もできない?

遠藤 その回は終わりなんで、「さあ、次、次」っていう感じ。

――『人狼※3人狼 : 村人と、村人に化けて正体を隠した人狼が、会話による駆け引き・心理戦を行い、正体を探り合うゲーム。ゲーム内で1日経つごとに、全員の投票により人狼と思われるプレイヤー1人を処刑する。すべての人狼を処刑できれば村人の勝ち。村人を人狼と同じ数まで減らすことができれば人狼の勝ちとなる。これを基本ルールとして、さまざまな人狼ゲームが世界で出されており、なかでもアメリカの『汝は人狼なりや?』やイタリアの『タブラの人狼』が有名。オンライン版やiPhone版などにも広がりを見せる。も、いきなり殺されてゲームに参加できないですものね。

遠藤 『人狼』(系カードゲーム)が複雑化していく中、『人狼』を簡素化した『ワンナイト人狼』(2012/奥井晶久)は、ドイツで非常に評価されている。すごい切り詰めてエッジの効いたデザインで、一晩分しかやらない『人狼』。

脚注   [ + ]