『燃えプロSP』開発者・市川幹人氏に聞く 前編~昭和の名作がめぐりめぐって平成で復活!復刻版が開発されることになった意外な真相~

  • 記事タイトル
    『燃えプロSP』開発者・市川幹人氏に聞く 前編~昭和の名作がめぐりめぐって平成で復活!復刻版が開発されることになった意外な真相~
  • 公開日
    2018年03月26日
  • 記事番号
    296
  • ライター
    IGCCメディア編集部

プロレスラーも登場する野球ゲームの意図

▲「ゲームの世界で夢の競演をさせたかった」と語る市川氏

編集部 なんとなくプロレスラーの方々が出場するきっかけは分かりましたが、なぜ野球選手ではない人々をバッターに選んだのでしょうか?

市川 NPBのライセンスを取ってゲームを作ろうと思うと、たぶん年間で20億円ぐらいないと、開発から運営までできないんですよ。これはNPBの契約が大変だということではなく、つまりプロ野球はそれぐらい大きな存在で、現状のゲームの規模では無理な話でした。しかも、最初の『燃えプロ』自体もNPBのライセンスゲームではないので、「じゃーどうするんだ?」ということになるんですね。

そうなると、なるべくいろんなことができて、みんながびっくりするようなものを出していかなければならないのと、まぁこういうことを言うと『燃えプロ』には申し訳ないけど、あのゲームはもともとB級なところがあるので、それでウケたんですよね

編集部 そうですね。バントホームラン(*01)とか、そういうところありましたよね。

市川 でしょ。そしたら、もうその路線を爆走するしかないという話になって、その個性を押し出していくとしたら、もういろんな種類の人が出るというのは必須でした。夢にも思わないことが起きるから楽しいんであって、みんなが分かっているものだけ出しても面白くないですよね。

しかもわかっているところでも、超大物のルース(野球の神様ベーブ・ルース)が出てきますからね。他にもプロ野球界OBの大御所たちもがいろいろ出てくるし、なかなか他のゲームでは真似できない点もしっかりとあると思います。いろんな人が出てきて、みんなでホームランを打って喜ぶという、夢のゲームにしたかったんですよね。

編集部 オールスターのような、まさに夢の競演ですね。

市川 そうです、そうです。夢にも見たことがない競演です(笑)。

編集部 ちなみに、市川さんはファミコン版の『燃えプロ』や当時のアーケード版はプレイされていたんですか?

市川 アーケードはですね、先ほども言ったように150台ぐらいしか出てないので、本当にレアなので、僕は一度プレイしたかしてないかぐらいです。ファミコンのほうはまったくプレイしてないです。

僕ね、ゲーム業界内では変わっている方で、90年代までファミコンを持ってなかったんですよ。ファミコンを初めて手にしたのは親戚の家で、『バルーンファイト』(1985年/任天堂)をやって、これ面白いな、極めたいなと思い、それをやるために購入したぐらいです。それまでほぼ洋ゲー(洋物ゲーム)で遊んでいたので、ファミコン版の『燃えプロ』はやってないんですよね。

編集部 では、純粋にミカドさんの縁で『燃えプロ』に出会ったんですね。

市川 そうです。だから、どうやってチャレンジして『ホームラン競争』を面白いゲームにするか、どうやってなるべくみんなが思ってもいないようなことを実現させるのかを考えました

編集部 そういう思いが「中野のブルちゃん」という(ゲーム内の)スタジアム広告につながるんですね。

市川 そうですね。ゲームにはブル中野さんにも選手として登場していただいているし、今年(2018年)の1月に行われたブル中野さんの「50周年記念杯」にご協力いただいたりと、昔からすごく良くしてくださっているので、感謝の気持ちを込めて(ゲーム内の)スタジアムに広告を入れています。

編集部 そういう方々にゲームに出ていただくことで、何か大変だったことはありますか?

▲今でも親交が続く市川氏とキラー・カーン氏

市川 キラー・カーンさんに出ていただくときに『燃えプロSP』のお話を電話でしたら、アプリのことをよく知らなくて、「出るのはいいんだけど、俺、野球とか得意じゃなくて」言われました。「いや、キラー・カーンさんが直接打つんじゃないんですよ」って。アプリを知らない人に説明するのは難しかったですね。

キラー・カーンさんも最後は納得してくださったようで、「なるほどそういう話か。こんなことをしていても、いつかは名前を忘れられてしまうので、(自分のキャラクターがゲームに登場するのは)ありがたい話だね」っておっしゃって…。そうしたら、キラー・カーンさんが「で、これはお金がかかるのかい?」ってお聞きしてきたんです。「いや、そうじゃないですよ(笑)」と。どちらかというとこちらがギャラを払わなくちゃいけない立場なのに、とにかく丁寧な方で、申し訳ないんで、何度かキラー・カーンさんのお店に飲みに行きました。そうしたら今度は、キラー・カーンさんからハガキで「ありがとうございました」という感謝のお言葉を頂いちゃいまして。なんていい人なんだという、そんなエピソードもありましたね(笑)。

編集部 いいお話ですね。

※敬称略

LICENSED FROM CLARICE GAMES/ Ⓒ Mindware

市川 幹人 氏

1971年東京都生まれ。有限会社マインドウェア代表取締役。1987年、マインドウェアの前身となるMNM Softwareを高校生にして設立し、X68000用『Star Wars -Attack On The Death Star-』を1991年に、メガドライブ用『スラップファイトMD』を1993年に発表。以来、数多くの作品を手掛ける。現在は往年のPCゲームを復刻させる「VIDEO GAME CLASSICS」シリーズなどを展開中。

『燃えろ!!プロ野球』

ジャレコより1987年に発売されたファミリーコンピュータ用ゲームソフト。テレビ中継さながらの投手後方からのアングルによるプレイ画面で、当時としては珍しいスタイルの野球ゲーム。他社の野球ゲームにはないリアルな雰囲気が話題になり、日本では158万本を出荷する大ヒットを記録した。以来、ゲームはシリーズ化され、アメリカでも『Bases Loaded』という名で発売され、全世界累計700万本を超える大人気ゲームへと成長した。

ゲーム情報

タイトル:燃えろ!!プロ野球 ホームラン競争SP
対応OS:Android 4.2以降、iOS 7.0以降
パブリッシャー:マインドウェア
価格:無料(アイテム課金あり)
公式サイト

IGCCメディア編集部

脚注   [ + ]

01. バントホームラン:『燃えプロ』の特徴的バグの一つで、各チームに1人設定されている強打者は、バントの構え中でも、球の当たりどころによってはホームラン性の打球となったことから、バントホームランの通称で呼ばれていた。

こんな記事がよく読まれています

2019年09月27日

『ナイトストライカー』を作った男たち 前編

海道賢仁×津森康男 ダブルインタビュー 今からちょうど30年前の1989年、タイトーからリリースされた名作シューティングゲームが『ナイトストライカー』である。セガの体感ゲームの数々が人気を博していた当[…]