『燃えプロSP』開発者・市川幹人氏に聞く 後編 ~プロレスラーから普通の主婦まで、個性的なキャラクターが続々と登場する『燃えプロSP』の開発裏話~

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    『燃えプロSP』開発者・市川幹人氏に聞く 後編 ~プロレスラーから普通の主婦まで、個性的なキャラクターが続々と登場する『燃えプロSP』の開発裏話~
  • 公開日
    2018年03月26日
  • 記事番号
    300
  • ライター
    IGCCメディア編集部

「何でもアリ!」の個性的なキャラ

▲実在する整体師の不思議な女性キャラ「まみ」(市川さんのTwitterより引用)

編集部 『燃えプロSP』には他にもたくさん女性キャラが出てくるのも新鮮でいいですよね。それも野球ゲームではあり得ませんよね。

市川 そうですね。キャラの半分は女性です。

そうそう、『燃えプロSP』に「まみ」というバッターが出てくるんですが、この人は、BEEP(レトロアーケードゲームの販売店「BEEP秋葉原」)さんで売っているカセットテープタイプの『平安京エイリアン』のラベルの絵を描いてくれているお姉さんです。絵がとにかくうまいんだけど実は整体の先生で、定期的にうちの会社にも来てくれています。

ある日、僕の作っているゲームを見て、(彼女が)「このゲームはあんまり面白そうじゃない」って言い出して、「うるせーよ」と内心思ったんだけど、「私が面白くなるキャラクターを描いてあげましょう」と言うので描いてもらいました。
「これ何を描いたの?」って彼女に聞いたら、突然、うちのシュレッダーをパッと開けて、シュレッダーのゴミを部屋中に投げながら「雪から生まれたツララマーン」とか言い出したんです。そうか、この絵はツララマーンなのかと…。もう予想をはるかに超えた子でした。

それで『燃えプロSP』にも出たいって言い出して、「まみ」で出ることになりました(笑)。

編集部 そんな理由の方もいらしたんですね(笑)。

市川 そうしたら今度は、まみさんのお母さんも出たいって言い出して、主婦の「ゆうこ」っていう大人気のキャラが誕生しました。ちょうど、ゆうこキャラを作っているときに、ゆうこさん本人が入院しちゃって、本人を元気づけるためになんかやろうって話になりました。

ゆうこさんは主婦なんで、昼下がりのスーパーのお買い物の帰りにキャラを強くしようという話になって、「今日はスーパーでお肉が安かったの」って言いながらキャラがパワーアップする「スーパーゆうこタイム」が生まれました。

▲主婦のゆうこキャラが強くなる「スーパーゆうこタイム」(公式サイトより引用)

編集部 いろんなエピソードがありますね(笑)。

市川 その頃、また、まみが整体にやって来て、自分のキャラを見てひと言「私、Gカップあるのにおっぱいが小さい」って言い出しました。そこでグラフィックツールを勝手に立ち上げ、まみの絵の胸だけを自分で描き直し始めて、結果まみのキャラの胸が大きくなってしまったという話もありましたね。

編集部 つまり、採用されている絵はご本人の絵ということですか(笑)

市川 そうです。胸だけですけど、ちゃんとアニメーションもきちんと描けていましたけどね(笑)。そんなスーパーフリーダムなことも許される開発でした。

編集部 世羅さんのキャラクターを制作した時のエピソードはありますか?

市川 一昨年(2015年)の「生誕杯」かなー。ゲーム内で藤本さんの生誕杯という大会をやったら、世羅さんから自分もやりたいという要望があり、「世羅りさ生誕杯」を開催しました。デスマッチのときに出てくる極道バージョンとカープ女子バージョンがそこで生まれたんですよね。

世羅 はい。

市川 その時、世羅さんのキャラクターが左バッターになったんですよ。最初は右バッターで出ていたのに、何で左になったかというと、世羅さんがスマホを持って右手でゲームをすると、右バッターだと世羅さんのキャラクターが手で隠れちゃうじゃないですか。

「自身のキャラが右手で隠れるのがイヤだと。だから左がいい」と世羅さんが言うので、じゃあそれで行こうって話になりました。

スマホ版でこだわったこと

▲近づいてくるボールの距離が表示され、打つタイミングが分かりやすくなっている(公式サイトより引用)

編集部 アーケードの『燃えろ!!プロ野球 ホームラン競争』をスマホ版にするにあたって、どんなことに注意して開発されたんでしょうか?

市川 1つは、必ず育成要素は必要だろうなということ。もう1つは、地下鉄ひと駅で盛り上がれるというのが最初のスローガンにありました。実際にストップウォッチで計って、これぐらいかというのをやりました。

あとは、操作をなるべくシンプルにするそれとボタンをでっかくする。これも、結構いろんなゲームをスクリーンショットして、ボタンのところだけ色を塗って比較したり、『燃えプロ』と重ねてみたりして、さんざんやりましたね。

編集部 他のスマホゲームとの比較ですよね。

市川 そうです。球を打つとき、押して離すという操作なので、片手だけでできますよね。あれ、電車の吊革につかまりながらも操作できますから。

世羅 そうですね。できますね。

市川 そこは超意識しました。

編集部 では、最後に『燃えろ!!プロ野球 ホームラン競争SP』の今後について伺います!!

▲「元プロ野球選手が続々と登場する」と今後の計画を話す市川氏

市川 この後はプロ野球シーズン開幕に向けて、元プロ野球選手がいろいろと出てきます。それ以外にもいろんなことがやりたくて、イベントは、公開放送でやりたいですね。

あと、世羅りささんが所属するアイスリボンのレスラーの方も、今後まだまだ登場します。1人は、ほぼできていて、他にもあと2人は作りたいなぁと思っていて、それでまた大会もやりたいですね。最終的には社長も含めて全員で出ていただきたいんですが(笑)。

世羅 社長は、あの頭を完全再現してほしいですね(笑)。

市川 あー、そうねー。プロレス界で頑張ってきた生き様が刻み込まれた頭を忠実にね。あとね、選手だけじゃなくてレフリーの方とか、もういろんな方に出てもらいたいですね。そして、そういう方々にもいろいろと希望を聞いて、また夢にも見なかった仕様を作っていきたいですね。僕も楽しみたいですからね。作っていて楽しめないと、面白くないですから

編集部 いいですね。では、本当の最後になりますが、『燃えろ!!プロ野球 ホームラン競争SP』のファンに対してひと言、市川さんからお願いします。

市川 ちょっとやりたいこと、いろんなものが遅れているんですが、今、やっとバッジの送信機能が実装できるようになりました。今後は、「ドラコン」の反対で、いかに短い距離のホームランを打つことができるかを競争する「ショボコン」という競争も予定しています。

世羅 やりたい(笑)。

市川 でも、ホームランじゃなきゃダメっていうのがいいでしょ。ふだんほとんど使っていないレベル1のバッター大活躍みたいな、そんな競争もやりたいですね。
今後、バッターでは、野球界OBの大物がメジャーも含めて出てきますので、期待していただきたいですね。

編集部 ありがとうございました。

※敬称略

LICENSED FROM CLARICE GAMES / Ⓒ Mindware

市川 幹人 氏

1971年東京都生まれ。有限会社マインドウェア代表取締役。1987年、マインドウェアの前身となるMNM Softwareを高校生にして設立し、X68000用『Star Wars -Attack On The Death Star-』を1991年に、メガドライブ用『スラップファイトMD』を1993年に発表。以来、数多くの作品を手掛ける。現在は往年のPCゲームを復刻させる「VIDEO GAME CLASSICS」シリーズなどを展開中。

『燃えろ!!プロ野球』

ジャレコより1987年に発売されたファミリーコンピュータ用ゲームソフト。テレビ中継さながらの投手後方からのアングルによるプレイ画面で、当時としては珍しいスタイルの野球ゲーム。他社の野球ゲームにはないリアルな雰囲気が話題になり、日本では158万本を出荷する大ヒットを記録した。以来、ゲームはシリーズ化され、アメリカでも『Bases Loaded』という名で発売され、全世界累計700万本を超える大人気ゲームへと成長した。

ゲーム情報

タイトル:燃えろ!!プロ野球 ホームラン競争SP
対応OS:Android 4.2以降、iOS 7.0以降
パブリッシャー:マインドウェア
価格:無料(アイテム課金あり)
公式サイト

IGCCメディア編集部

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