『ベーマガ』&『エイリアンフィールド』復刻記念! 大橋編集長×水上氏×市川氏 特別インタビュー 後編

  • 記事タイトル
    『ベーマガ』&『エイリアンフィールド』復刻記念! 大橋編集長×水上氏×市川氏 特別インタビュー 後編
  • 公開日
    2018年12月19日
  • 記事番号
    726
  • ライター
    高橋 ピョン太

『エイリアンフィールド3671』の気になる中身

――ゲーム部分の復刻については、何か苦労されましたか?

市川 実は、ゲームができあがった時に水上さんに見ていただいて、最初に「こんなに展開、速かったでしたっけ?」と言われました。でも、ある人は「こんなに遅かったっけ?」と…。同じものを見せているのにいろんな感じ方があるんですよ。

▲ゲームの設定画面では、好みのスピードでゲームを楽しめるスピードコントローラー機能がある

これが、当時何歳で『エイリアンフィールド』を遊んでいたかとか、FPS(*01)のようなゲームを今も現役でやっているかとか、それぞれの状況によって捉え方が異なるんですね。一応、PC-8001の実機を見ながら作っているので、速度はオリジナルに合わせているんですが…。

そこで、スピードコントローラーを付けました。ロジックは完全に同じですが、スピードは自分の好きな納得の速度で遊んでもらえるようにしました(笑)。

それとゲームについてですが、原作が短いプログラムというコンセプトだったこともあり、状況によっては初回のパターンで死亡確定というようなことがありました。

そのため、復刻版ではそういった部分はなくそうと、ちょっとアレンジしているうちに、ちょっとじゃなくてアレンジしすぎてしまい、急きょ盛大にアレンジしたバージョンも付けることになりました(笑)。それと、PCG(*02) ってあったじゃないですか。

――HAL研究所から出ていたプログラマブル・キャラクタ・ジェネレータですね。

▲パッケージ版に付属する昔懐かしいカセットテープ(画像:マインドウエア提供)

市川 そうです。PC-8001版のPCGには実は音源も付いていて、アレンジ版には、このPCG音源縛りのBGMを付けました。それと『平安京エイリアン』の時と同じように、究極進化形ということで、かなりアレンジを施したバージョンも付けました。

パッケージ版にはカセットテープが付くんですが、それにはPC-8001版のプログラムが収録されていて、ブックレットにはなんとIchigoJam(イチゴジャム(*03))版『エイリアンフィールド』のリストも載ってます

『マイコンBASICマガジン』も再創刊!

▲水上氏が今回新たに改良を加えたHSP版の『エイリアンフィールド』。こちらのプログラム量を小さくしたものが『ベーマガ』再創刊号に掲載予定

水上 復刻版の中でいろいろな挑戦をしていると聞き、自分の中にも『エイリアンフィールド』の仕様をいじりたいなというのが昔からありまして、今回、HSP( Hot Soup Processor(*04))でサクッと作りました。

市川 これが今回、『電子工作マガジン』に別冊付録として再創刊される『マイコンBASICマガジン』に載るというんですからね。創刊号と再創刊号(の両方)に『エイリアンフィールド』が載るなんて、感慨ものですよね。

――奇跡的な流れですね。その連動は最初から決まっていたんですか?

市川 偶然ですね。僕が大橋さんにご連絡を差し上げて、『エイリアンフィールド』を復刻したいというお話をしたら、大橋さんが「実は12月に『ベーマガ』を復刊させることを考えてるんだ」と。それならと、『ベーマガ』を盛り上げる意味でも『エイリアンフィールド 3671』の発売日を『ベーマガ』の復刊日に合わせました

――本当に偶然に平行して企画が走ったんですねー。

▲『ベーマガ』復刊の経緯を話す大橋編集長

市川 びっくりしました。本当の偶然です。

大橋 ちょうど昨年(2017年12月)、電波新聞社のトップが若返り、34歳の平山勉が社長として就任しました。社長は、私がちょうど『ベーマガ』(の編集長)を始めた年齢なんですが、「こういうライセンス環境をきちんと整えて、過去の書籍の復刻などはオフィシャルにしましょう」という話になって、いろいろとタイミングも整ったわけです。

ただ、こういう話は複雑な兼ね合いもあるので、1度会社に市川さんをお呼びしましたね。

市川 そうですね。僕も社長さんにお会いして、直接、説明させていただきました。

大橋 そうしたら「ぜひやってください」という話になって、すべてが決まったということでしたね。偶然ではありますけど、いろいろなところでその時代(BASICが盛り上がっていた時代)の話が取り上げられることもあり、今、BASICがトレンドとしてきている感はありますね。

『ベーマガ』でBASICを覚えた当初の子供たちが大人になって、親になって、その子供たちもまたプログラミングを始めるような連鎖が起きてるんでしょうね

『電子工作マガジン』では、子供のお小遣い程度で買えるIchigoJamをバックアップしているんですが、これもかなり浸透し始めてきていて、それでBASICを覚える子供たちも増えています。

また最近ですと、Raspberry Pi(ラズベリー パイ(*05))で動くスマイルブームの『プチコン3号 SmileBASIC(*06)』なんかも盛り上がったりしていますし、IoTなどとつながり、BASICが見直され始めています。1980年代とは違い、BASICとロボットを組み合わせたりすることもできますからね。

――そういった情報も今回の『ベーマガ』再創刊号で紹介されているのでしょうか?

▲12月19日発売の『電子工作マガジン』特別付録として出される『マイコンBASICマガジン』再創刊号

大橋 再創刊号となる『マイコンBASICマガジン』では、IchigoJamと赤外線コントローラーを組み合わせて、さらにスマホを使って音声で動かすといったプログラムを、BASICで作る企画もあります。

――また楽しい時代がやってきそうですね。最後に『ベーマガ』の再創刊について、一言何かメッセージはありますか?

大橋 今回も「BASICにこだわって、BASICでやっていきましょう」というスタンスで、『ベーマガ』を復刊することになりました。また小学校5年生ぐらいの層を中心に、子供たちがコンピューターを楽しく学べる場を提供していく予定です。その時に、この『エイリアンフィールド』のHSP版が呼び水になるといいなぁと思っています。

© Dempa Publications, Inc.
Licensed from Keita MIZUKAMI. Ⓒ Mindware

大橋 太郎 氏

1948年、東京都生まれ。1967年に電波新聞社に入社。『ラジオの製作』編集長を経て、1982年に『マイコンBASICマガジン』を創刊。1996年には28万6000部で業界No.1のゲーム雑誌となる。『ALL ABOUT namcoナムコゲームのすべて』、『Computer Music Magazine(コンピューターミュージックマガジン)』など次々とヒット作を出し、現在も現役で『電子工作マガジン』の責任者を務める。電波新聞では、コラム執筆も担当している。現・電波新聞社取締役。

水上 恵太 氏

電気店店頭のマイコンでBASIC言語をマスターし、中学生にして『ラジオの製作』の特別付録『マイコンBASICマガジン』創刊号(1981年)の掲載プログラマー第1号となる。ナムコのゲーム開発者などを経て、現在はコンピューター関連のエンジニアと並行し、法政大学大学院経済学研究科でゲーム産業研究に従事。その傍ら、IGCCと慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) がコラボしたゲーム文化アーカイブプロジェクトにも携わる。

市川 幹人 氏

1971年東京都生まれ。有限会社マインドウェア代表取締役。1987年、マインドウェアの前身となるMNM Softwareを高校生にして設立し、X68000用『Star Wars -Attack On The Death Star-』(1991年)、メガドライブ用『スラップファイトMD』(1993年)を発表。以来、数多くの作品を手掛ける。現在は往年のPCゲームを復刻させる「VIDEO GAME CLASSICS」シリーズなどを展開中。

『電子工作マガジン 2018年冬号』

〇特集内容
チャレンジ!!電子工作大作戦
冬休みの電子工作
BCL・SWL用機器製作
ラ製65周年
〇特別付録
マイコンBASICマガジン
・ベーマガ創刊号掲載『エイリアンフィールド』2018年版
・IchigoJam/IchigoLatte/IchigoBoyなどの投稿プログラム18本掲載!!
・パソコンレクチャー「拡張合体! 学習リモコン基板」with IchigoJam
価格:1,296円(税込み)
発売日:2018年12月19日

『エイリアンフィールド3671』製品情報

対応OS:Windows 7以降(STEAMクライアントがインストールされていること)
ジャンル:ローグライクドットイート
価格:ダウンロード版 1,480円(税込み)
特別版(パッケージ版) 6,000円(税抜き)
【パッケージ版の内容】
〇B5版ブックレット(マイコンBASICマガジン1981年5月号、エイリアンフィールド掲載ページ、表紙、裏表紙の復刻)
〇Ichigo Jam版エイリアンフィールド
〇STEAMキーの記されたカード
〇大橋編集長、原作者水上氏、IGCC所長大堀氏、本作プロデューサー市川氏による対談DVD
〇タイトルロゴステッカー
〇カセットテープ型パッケージ
A面:PC-8001版エイリアンフィールドを収録。
B面:エイリアンフィールド PC-8001アレンジバージョンサウンドトラック
〇B5サイズクリアファイル
〇B2サイズポスター
配信開始日:2018年12月19日
公式サイト

高橋 ピョン太

脚注

脚注
01 FPS : First Person Shooter(一人称シューティングゲーム)の略。シューティングゲームの一種で、操作するゲームキャラクターの視点で画面が展開され、キャラクターになりきった形で武器などを使い戦闘する。
02 PCG : キャラクターパターンを書き換えて、疑似的なグラフィックを生成できるプログラム。ドット絵を動かす仕組みに用いられた。
03 IchigoJam : 子供でもプログラミングができるよう子供向けに開発された手のひらサイズのパソコン。1,500円と低価格で、初心者向けプログラミング言語BASICを採用している。
04 HSP : Hot Soup Processorの略。オニオンソフトウェアの代表「おにたま」氏が個人用、ゲーム開発・ツール開発などのホビー用に開発したソフトウェア。1994年に開発、1996年より公開されている。公式サイト
05 Raspberry Pi : イギリスのラズベリー財団が学校教育用に開発したARMプロセッサ搭載のシングルボードコンピューター。
06 プチコン3号 SmileBASIC : 2014年にスマイルブームより発売されたニンテンドー3DS対応のソフトウェア。入門者向けのプログラム言語「BASIC」を使用したプログラムを作成できる。

こんな記事がよく読まれています

2018年04月10日

ゲームセンター聖地巡礼「1980~1990年代 新宿」前編

今回から、新企画「ゲームセンター聖地巡礼」の連載がスタートします。当研究所・所長の大堀康祐氏と、ゲームディレクターであり当研究所のライターとしても協力いただいている見城こうじ氏のお2人が、1980~1[…]