「メガドライブの時代」を詰め込んだタイムカプセル、メガドライブミニのキーマンに訊く 後編

  • 記事タイトル
    「メガドライブの時代」を詰め込んだタイムカプセル、メガドライブミニのキーマンに訊く 後編
  • 公開日
    2019年08月30日
  • 記事番号
    1336
  • ライター
    前田尋之

新作ソフトの開発中はメガドライブ実機で動作検証

▲初代を厳密に再現したメガドライブミニ(画像:公式サイトより引用)

――移植はどういったハードウェアで、どのようなプロセスで行われたのでしょうか?

奥成 メガドライブミニの中身は基本的に汎用部品です。任天堂さんやその他のメーカーさんが出されているハードウェアと同じ構成と思ってもらって構いません。今の時代にこういったコンセプトの製品をこの価格帯で発売することを考えたら、たぶんこれしか選択肢はないですね。

宮崎 何を使っているといったことは説明しませんが、中を開けたら分かるようなものが入っています。ただ、そこに載せているエミュレータは、エムツーさんが長い間頑張って作ってチューンナップしてきたメガドライブエミュレータである点がポイントですね。

奥成 別に68000が入っているわけではありませんし、16ビットでもありません(笑)。

大堀 今回新規開発の『ダライアス』や『テトリス』は、メガドライブ実機でも動くように作られているのですか?

奥成 そうです。だから、チェックはメガドライブ実機で並行してやっていました。メガドライブで動かして再現度を確認した上でメガドライブミニに落とし込み、実機と同じ動作するかどうかを確認するという手順です。そういったことをそれぞれのタイトルでやっています。特に、今回搭載したエムツーさんのエミュレータはさらにチューンを上げているので、今まで以上に限りなく実機に近い再現度になったと自負しています。

メガドライブの歴史を表現するには30タイトルでは足りない!

▲メガドライブミニに収録されているタイトル一覧

宮崎 逆に、大堀さんは今回のメガドライブミニをご覧になってどう思われましたか?

大堀 今夏すべてのタイトルが発表された時に、いちファンとして痺れましたね。「こう来たかぁー!」といった感じで。タイトルの発表の仕方も絶妙でしたし。

宮崎 我々も、実は期待以上に成功したマーケティングじゃないかと思っています。

奥成 その前がボコボコでしたからね(笑)。

宮崎 収録タイトル国(*01)のこと? あれは、ある程度叩かれるのを覚悟の上だったんですよ。『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』シリーズ(MD/1991年/セガ)にしても複数タイトルの中から収録希望を投票させたわけで、「なんで選択? 両方入れればいいじゃん」「セガはバカか?」という反応もたくさん頂きました。それももっともだと思います。その後に「セガフェス2019」で収録タイトルを発表しますという流れだったんですけどね。

でも、国民投票の段階では「収録タイトル数が40タイトル」という情報を出していないわけですよ。もしかしたら20タイトルかもしれない。その中の3つを選ばせているのかと思われたのではないでしょうか。でも、そういった反応にあえて我々からは反応しなかったんです。そうしたほうが2019年3月31日の「セガフェス2019」での発表でドンと跳ねるから。ただその後、想像以上に叩かれていたので、収録タイトル数だけでもバラそうかと思った時がありましたね。

奥成 ファンの方々がどこで仕入れてきたのか「どうやらメガドライブミニには8タイトルしか入らない」という話がまことしやかに流れまして、これはさすがに否定したほうがいいんじゃないだろうか、となったことがあったんですよ。

大堀 どんな根拠で「8タイトル」だったんでしょうね。

宮崎 フェイクニュースって怖いですねぇ(笑)。最初は、誰かが根拠なしにネットに書き込んだだけだったものでも、引用されるたびに(正式な)出典元から引用されてきた雰囲気になっちゃって、それをベースにしてまた書く人がいるもんだから、どんどん尾ひれがついちゃう。

奥成 任天堂さんが初めて、ミニチュアゲーム機にソフトを30本入れた製品を作りました。テレビの前に小さいファミコンが置いてあるだけでも楽しい、そんな商品コンセプトだったと思うんです。それから、当然のようにミニスーファミ(ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン)も発売されて、しかもその中には幻のソフトまで入っていると。任天堂さんは手を変え品を変え、いろいろな魅力を伝えてくる。「さすが任天堂さん」と思う中でセガが同じレベルの仕事をしたとしても、それじゃ意味がないよね、と。さらに、収録タイトル数について宮崎と話していた時、最初は30本くらいでどうだろうと。社内でもそういった意見があったんです。

しかし、「メガドライブの時代」を本製品に込めようとしたら、どうしても30タイトルでは表現しきれなかった。それで「40本にさせてください」とお願いしました。これならどうにか、全部とはいえませんが、メガドライブの代表作を詰め込むことができるんじゃないか。ファンの心をつかむタイトルが入れられるんじゃないかということで、ようやく方向性が見えてきたんです。

ところが、作っている間に想像以上にライセンスを快諾してもらえるケースが増えてきまして、このままじゃ40タイトルを超えてしまうかも、という事態になりました。まだ40という数字は対外的に発表していませんでしたが、さすがに一度泣きついているだけに、これ以上収録タイトル数を増やすのもどうしたものかと。そこで、相談をしたところ「だったら40プラス2ではどうだ?」という案が出たんですよ

宮崎 任天堂さんのやりかたを踏襲させてもらったということになりますね。20本と発表して後から「プラス1」というやり方なら、「そのプラス1に理由があればそれはそれでアリ」となります。その前例に押されて、こちらは「プラス2」でいくことにしたんです。

――それでは、当初は40本きっかりで進められていた、と。

宮崎 マーケティングツールを作るにしても「40タイトル」ピッタリのほうがどう考えてもいいわけじゃないですか。42は縁起が悪いなんて言われていますけど、そりゃそうですよ(笑)。でも、どうしても入らないんでプラス2という方向に持っていった。

脚注

脚注
01 収録タイトル国民投票 : 2019年2月25日~3月4日の期間で、メガドライブミニに収録してほしいタイトルの投票を行った。

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