ジョイスティックとボタンに込めた職人魂、三和電子に聞く・前編

  • 記事タイトル
    ジョイスティックとボタンに込めた職人魂、三和電子に聞く・前編
  • 公開日
    2018年05月25日
  • 記事番号
    372
  • ライター
    前田尋之

100kgの荷重に耐える『●場の絆』スティック

大堀 カタログを見ると通常レバー以外にもさまざまなラインナップがありますが、その辺りについてもお話をお聞かせください。

大森 うちの主力製品は先ほど紹介していたJLFなのですが、それと別にJLW-PL(*01)という製品があります。これはボール型ではなく、全体がグリップ状になったジョイスティックなのですが、PL1とPL2という2種類がありまして、S社さんの『●ーチャロン』(1995年)用のスティックのベースが必要だという相談を頂いたときに採用されたという経緯があります。

――それはそのゲーム用に新規開発をされたということでしょうか?

大森 もともと1980年代に発売していたJLW-TM-8(*02)という製品があるのですが、グリップ形状のスティックはそれまでありませんでした。先方さんから「こういうのを作れないか?」とご相談いただいたのを機に新規開発をしたのがJLW-PLシリーズなんです。

JLW-TM-8はマイクロスイッチを使った旧式のスティックです。これをあえてベースに使用した理由は、単純に強度によるものでした。グリップ形状のスティックというのは全体を握るためにかなり力がかかるんですよ。JLFだと中の基板が割れる危険性を考慮して、あえて旧式の頑丈な製品をベースに選びました。

JLW-PLは、そういった流れで初代の『●ーチャロン』に採用されたのですが、シリーズの第2弾以降は、先方さんで自社生産することになったので、残念ながら1作限りですね。

大堀 他にメーカーさんからのオーダーで作った事例はありますか?

大森 JLK-GF2というアナログジョイスティックレバーがあります。これはB社さんの『●場の絆』(2006年)のベースになっています。

また、このスティックはS社さんの製品でずいぶん採用されていまして、『●フターバーナー●ライマックス』(2006年)などでも使用されています。ほか、多数のメーカーさんから検討されたスティックですよ。

確か、これも先方さんからの相談がきっかけで開発したものです。当時、日本製ではこれだけ大きなアナログスティックがなかったため、アメリカ製のスティックをサンプルとして持ってこられて、「これと同じようなものを作れないか?」とご相談を受けたことを覚えています。うちはS社さんとのお付き合いが深かったですから。

――アナログジョイスティックはかなり乱暴に使用されるイメージがあるのですが、通常のジョイスティックに比べて強度面で留意している部分はあるのでしょうか?

▲微妙な角度入力に対応するため、今では必須となった感があるアナログスティック

大森:B社さんのオーダーはすごかったですよ。先ほどの『●場の絆』のときには「100kgの荷重に耐えられるものを」というものでしたから。なんとかクリアして採用になりました(笑)。

100kgともなれば、通常のジョイスティックでは到底耐えられません。そもそも、シャフトの太さがぜんぜん違うんですよ。

鵜木 『●場の絆』のときは、それでもそのまま採用ではなかったですよね。内部の一部で変更があったり。

大堀 その場合はどういった状態で納入されるんでしょう?

鵜木 先方さんから部品の指定があり、それを使用して組み立てたものを完成品として納品しました。

大森 『●場の絆』は、B社さんも相当試行錯誤されていたみたいです。とにかく、ゲーム中に体重がかかるんですよ。スティックだけではなく周辺のデザインも、そのおかげであのような特殊な形状になったようですね。

――密閉型の筐体だから、ゲームの中にのめり込んでしまうプレイヤーも多いでしょう。さぞや苦労されたことと思います。

大森 本当にそうですね。

レバーの入力テストは200万回以上

▲レバーをずいぶん壊してきただけに、耐久性について興味津々の大堀所長

大堀 レバーの耐久テストなどはどれくらいされるんですか?

大森 そうですね。製品ごとに明確な回数を定めているわけではありませんが、入力テストは200万回はやっていると思います。実際の入力回数は、それ以上にも十分耐えられるように設計していますよ。

鵜木 電気的な接触だけではなく、スイッチやパーツの磨耗も含めた試験をおこないます。使っているうちに摩耗したパーツから出るカスが溜まるといった現象もありますので、それらも加味した総合的なテストになりますね。

もっとも、レバーを使用する環境とひと口に言っても、ゲームセンター店内の環境や、家庭で使用するかどうかによっても大きく変動しますし、実際の寿命は相当幅があります。

――先ほどの『●場の絆』のような耐荷重テストはおこなっていますか?

大森 社内ではそこまではやっていません。メーカーさんのほうが採用にあたって評価試験をするといった感じです。

鵜木 お客様から耐荷重テストをやってほしいといった依頼を頂いたケースもあるのですが、弊社には簡単な試験設備しかないため、評価はお客様のほうでお願いしたいと説明しています。

大堀 僕はわりとレバーを壊してきた側なので(笑)、「こんな故障事例があった」みたいな話があれば聞きたいです。

佐藤 昔ならともかく、基本的に今の製品は、レバガチャのような乱暴なプレイでも耐えられるように十分な強度を確保してありますので、まずそういった報告は上がってきませんね。安心して遊んでいただいて大丈夫ですよ。

ボール型とナス型、なぜ国によって違う

――素朴な疑問なのですが、ジョイスティックに「ボール型」と「ナス型」(*03)ってあるじゃないですか。あれはなぜ2種類あるのでしょうか?

大森 2種類というと……レバーボールのことですね。ナス型はもともとアメリカから来たものなのですが、あちらは基本的にアップライト筐体なので、ほぼあの形ですね。

鵜木 アメリカではレバーを握るときの感覚が、「丸」というよりは「棒」といった感じで認識しているのかもしれません。

――逆になぜ日本はボール型なのか不思議ですね。

▲「レバーボールの形状はなぜ2種類?」素朴な疑問に答える佐藤氏

佐藤 皆さんよくご存じの通り、日本はほとんどボール型ですよね。韓国ではアメリカ同様、ナス型が一般的です。中国は日本と同じボール型なんですよ

大堀 ボールの大きさに取り決めはあるのでしょうか?

鵜木 今は30mmから35mmが主流ですが、大きさに特に取り決めというものはありません。昔は30mmが多かったのですが、現在はほとんど35mmです。これについても明確な理由もないのですが、見栄えの問題もあるかもしれませんね。30mmってけっこう小さいんですよ。

大森 35mmのほうが、握っていて確かにしっくり来ますね。

大堀 『●ンベーダー』(1978年)の頃はもっと径が小さかったような記憶があります。20mmとか……。『●ックマン』(1980年)の頃辺りから大きくなったような。

大森 その頃はテーブル筐体だったことも影響しているのかもしれませんよ。特に『●ンベーダー』は筐体からレバーが直接飛び出していたから、じゃまにならないように配慮したとか。

佐藤 いずれにせよ、アップライト筐体であるかテーブル筐体であるかがレバーボールの形状に影響を与えたのは確かかもしれませんね。握りやすいようにそれぞれ適した形になったと。

▲レバーボールのカラーバリエーション。現在主流のものは35mmとのこと

次回予告

今回はジョイスティックレバーについてご回答いただいたが、レバーと同等以上に重要なパーツといえばボタン。ビデオゲーム用の押しボタンから、クレーンゲームや大型筐体でおなじみの照光式ボタンまで、次回は三和電子社が展開するさまざまなボタンと、それにまつわる裏話をお届けする。次週公開予定!

三和電子

1982年に創業以来、一貫して業務用ジョイスティックレバーやボタンをはじめとする周辺パーツを開発・販売してきた、アーケードゲーム業界の影の立役者。近年では、その長年培ってきた高信頼パーツを武器に、家庭用ゲーム機向けのアーケードコントローラー(アケコン)の販売もおこなっている。公式サイト

前田尋之

脚注

脚注
01 JLW-PLシリーズ : レバーの先端を握るのではなくレバー全体を握る、いわゆる「操縦桿(そうじゅうかん)」スタイルのジョイスティックレバー。PL1は先端にボタンが1つ、PL2は親指と人さし指が当たる部分に2つのトリガーボタンが設けられている。
02 JLW-TM-8 : 見た目は一般的なテーブル筐体用ジョイスティックレバーだが、プリント基板を使わない旧式。本文で触れた通り、強度が要求されるためにあえて旧式のレバーをベースにした。
03 「ボール型」と「ナス型」 : 日本のアーケードゲーム向けレバーは丸いものが一般的だが、アメリカではレースゲームのシフトレバーのような(ナス型)形状が一般的。

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