記憶のパズルを読解力で解く。良質な推理小説をゲームならではのシステムで読み解き真実をたぐる『未解決事件は終わらせないといけないから』
いい感じの遊び心地
いい感じのポップさ
いい感じのカジュアルなビジュアル
いい感じの2Dドットなゲームも豊富
いい感じの重すぎない＆軽すぎないゲームらしさ
『発見! インディーゲーTreasures』は、
そんな“ちょうどいい感じ”なインディーズゲームを紹介していく月イチ連載です。
今回ピックアップした1本は、こちら。
『未解決事件は終わらせないといけないから』！
タイトル:『未解決事件は終わらせないといけないから』
開発:Somi
パブリッシャー:Somi
リリース日: 2024年1月18日
価格：¥800
配信プラットフォーム：PC（Steam）
【Steam】
https://store.steampowered.com/app/2676840/_/
「ゲームもいいけど、たまには本も読みたいな。」
そんなときもありますよね。
ふだんはあまり読書しないという人だと特に。
おもしろい本を読むと、文章表現ならではの良さや、読み解くことに集中することで得られる特有の没頭感が心地いいんですよね。頭が整理されてスッキリする感じも。
では、そういう感覚をゲームでも、特にゲームならではのおもしろさも入れて楽しめる作品はないかというと……あるんですよ。
それが、今回ピックアップした『未解決事件は終わらせないといけないから』です。
『未解決事件は終わらせないといけないから』はタイトルのとおり、
あるひとつの未解決事件がテーマ。
主人公は、12年前に退職した元警察官「清崎蒼」。
彼女は、自身が捜査したなかで未解決になってしまったある事件を今も悔やみ、記憶にフタをしてしまっている。
そんな彼女のもとへやってきた若い女性警官。彼女は清崎を「おばあちゃん」と呼び、その未解決事件「犀華ちゃん行方不明事件」を終わらせようと提案します。
ですが、おばあちゃんの記憶は曖昧でバラバラ。当時の関係者との会話を思い出していくも、そもそもきっかけがないとどんな話があったかを思い出せないし、時系列も、ましてや話した相手が誰だったかすらあやふや。
そんなバラバラになっている記憶のかけらを思い出して再構成し、清崎おばあちゃんの心を救えるように未解決事件の真実を明らかにしていきます。
未解決事件「犀華ちゃん行方不明事件」は、いわゆる児童誘拐事件。
ですが、おばあちゃんが事件当時の会話で真っ先に思い出すのは、
父親からの「これ以上、娘を捜さないでください」というお願いの言葉なのです。
このお願いをきっかけに事件は未解決のままにされてしまったということですが……はたして。
メインとなるゲーム画面では、当時の清崎警察官と関係者の会話が、まるでSNSのような画面で並べられていきます。
最初は数が少ない……というか、ほとんどありません。ですが、会話中に青色で表示されるキーワードを選択すると、そのキーワードに関連する別の会話を思い出すことがあります。
キーワードをたどって別の会話を聞き、また別の会話を掘り下げていく……基本はこの流れになりますが、
何とこの記憶は、「誰が話したのか」も曖昧で、間違っていることがあるのです。また、断片的に思い出しているということで時系列もバラバラ。本当に断片なんですね。
そこでプレイヤーは、会話の内容を読んで「そもそもこの話をしているのは誰なのか？」を選択します。また、話を時系列順に並べ替えることも必要です。
会話の中にはピンク色で人名が出ることもあり、その人名を選択すれば、新たな話者として追加されます。
読解力でパズルを解いていくという、独特なシステムのゲームなんですよ。
プレイし始めはシステムの独特さに困惑しても、読み進めていくと「これって……、話しているのは◯◯さんでは？」と話している相手が想像できたり、話の流れから時系列の違和感に気づいたりしていきます。
正しい話者と並びにできれば、キラーンとSEが鳴って日時も正確に判明。パズルを解いたときの気持ちよさがしっかりとありますし、会話を正しくできると鍵が手に入って、より重要な会話のロックを外せるようにもなります。
鍵を外した先で現れる会話には「えっ……？」と思わず声が出るような、想像していなかった事実が眠っていることも。
攻略のポイントというかプレイヤーを悩ませるのは、
公式の本作紹介文にもある“誰もがそれぞれの理由で嘘をついてました”ということ。
パズルのピースである会話の記憶の中には嘘が混じっているのです。嘘といっても、悪意のあるものや理由のないくだらない嘘というわけではなく“それぞれの理由”があり、そこを読み解くことで本作の物語はより深みが増していきます。
“会話の文章”をピースにしているという独特なパズルで、話している相手も時系列も曖昧、ましてや内容すら嘘をついている場合もあるとなると難解に思えるかもしれませんが、本作のクオリティは非常に高く、推理小説を先の展開を予想しながら読んでいるときのようなアプローチで、文章からしっかりと正解を導けるものになっています。
本作はローカライズ作品で、テキストから話者や時系列を読み取るという読解力を駆使するゲーム性なので、ローカライズの質が低いと成立しなくなる可能性が高いわけですが、本作のローカライズは非常に良くて、日本語でしっかりと読み解けます。
プレイ時間としては2～3時間ほど。良質な推理小説を読んでいるかのようで、BGMやビジュアルも繊細でセンスの良いもの揃い。
ゲームならではのシステムで読み進める『未解決事件は終わらせないといけないから』。価格も800円と中編小説を1冊読むぐらいのもの。
未解決事件の真実をぜひ、あなたも自身の眼で確かめてみてください。
未解決事件は終わらせないといけないから。
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