見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2024年06月14日
  • 記事番号
    11169
  • ライター
    見城 こうじ

第23夜『セクターゾーン』(1984年・ニチブツ)

ペトラ人救助にギルギット快走!!

“謎の基地に潜入、追跡をかわし要塞を攻撃せよ!! 宇宙都市の静寂は破られた ペトラ人救助にギルギット快走!! 撃音がひびきセクターゾーンは突如戦場に。”(『セクターゾーン』フライヤーより)

『セクターゾーン』はバイクに乗った主人公が敵バイクとの攻防を繰り広げながら、途中のペトラ人を救出していく、縦画面による横スクロールアクションゲームです。敵バイクはショットで撃破したり、体当たりで壁にぶつけて破壊することもできます。

初見ではなかなか難しい! 緩急ありの2ステージ構成

今回、久しぶりにプレイしてみたのですが、当時あまり遊び込んでなかったこともあり、慣れるまでメチャクチャ難しく感じてビックリしました。

理由として、高速の横スクロールゲームであるにもかかわらず縦画面仕様のため、前方視界が狭く、障害物が画面に現れてからプレイヤーに到達するまでの時間が短いということが挙げられます。その上、障害物とのヒット判定も厳しめです。だから、ゆったり構えて障害物を目視してからの対応では一歩出遅れる。

同じ理由から、マップ上に配置されたバイクのエネルギー取得や、ペトラ人の救出もなかなか大変です。ペトラ人は取り逃しても大きな問題はないのですが(救助した数に応じてステージクリア時にボーナス得点になる)、エネルギーのほうは死活問題です。

ゲームとしては、いくつかの要素が複合的に盛り込まれていますが、障害物レース的な色合いが強く、敵バイクにしてもペトラ人にしても、ミスを誘発させるための罠としてうまく機能しています。

とくに敵バイクのアルゴリズムはこのゲームを特徴づける肝の一つになっていて、簡単にショットで倒せないよう、基本的に後方から出現し、かつすぐにプレイヤーを追い越すことなく後方でプレッシャーをかけてきます。体当たりもすぐにはさせてくれないわけです。ゲームとして成り立つよう、ねちっこく調整されていることがよくわかります。

なかなかイヤらしいトラップ(?)だなと思ったのが、前方の敵をショットで破壊した際に敵本体のヒットが残るので、目前で撃破するとそのまま突っ込んで衝突するミスが頻発することです。前方の敵に対してむやみにショットを撃ちまくることはリスキーな行為なのです。

そして、ステージ2はゲームの毛色が変わり、スクロール速度がグッと落ちます。ショットによる破壊可能な障害物も増え、さらに敵も弾を撃ってくるようになります。ステージ1の疾走感あふれるバイクアクションから、ステージ2ではじっくりプレイするシューティングへと構成が大きく変わるんですね。

ここで興味深いのが、ステージ1ではショットの使いどころがあまりないことです。唯一のボタンを駆使させることよりも、高速スクロールによる疾走感と体当たりの爽快感から成るシンプルなステージを優先した構成になっているわけです。

ステージや場面によってスクロール速度を変更することで遊びの方向性を変えるゲームはときどきあって、『グラディウスII』の高速スクロールステージなどが有名ですね。

ペトラ人の世界に平和は訪れたのか。その結末は杳(よう)として知れない――

冒頭でも触れたとおり、敵基地に潜入してペトラ人救出&バトルというのがこのゲームのバックストーリーです。オープニングで奥の扉が開き、バイクがスライドしてゲームの舞台である敵基地に潜入します。

もっと手のかからない演出として、バイクが既にそこにいる状態から始まるとか、左手画面外からフレームインして来るやり方もあると思うのですが、このひと手間かかった小粋な演出があるおかげで、扉の向こう側の世界はどうなってるんだろう、なんて想像が膨らみます。

ペトラ人は、プレイヤーがバイクで体当たりすることで救出することができます。これを見て思い出したのが、オルカの『リバーパトロール』です。

『リバーパトロール』では、要救助者に対してボートで正面から突っ込むと救出失敗になってしまいます。ちょっと斜めから優しく接触しないといけない。なかなか繊細な仕様です。それからしたら、高速で突っ込んでくるバイクにひかれることなく、よどみなく乗り込むペトラ人の運動神経は大したものだと思わずにいられない。

ペトラ人に関しては、もう少し後年のゲームだったら、乗せたキャラクターと会話したり、そのタイプによってさまざまなスキルが加わったり、装備が強化されるなんてのもありそうですね。

では、また次回。

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