見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2024年10月11日
  • 記事番号
    11739
  • ライター
    見城 こうじ

第29夜『スターフォース』(1984年・テーカン)

地上と空中の弾を共通化した画期的なシューティング

『スターフォース』は、地上と空中の敵を同じ弾で破壊できるようにした、ほぼ最初期のシューティングゲームです。

この数年前に『ゼビウス』が、対地・対空弾を撃ちわけて敵を撃破するシステムを導入しました。撃ちわけシステムの元祖が『ゼビウス』というわけではないのですが、大ヒットしたことでこのタイプのゲームがその後乱立した時期がありました。

『スターフォース』はそれらのゲームと差別化を図るために、地上物があるにもかかわらず、撃ちわけを廃しました。3次元的にどうなっているのかよくわからないけれど、とにかく全部弾が当たる。これがスピーディでおもしろい。

『ゼビウス』等で敵が地上と空中の二層になり、ゲームとして深みが生まれたのを、自機側のショットだけ一世代前に戻したわけです。そのことによってこんなにも洗練された魅力的なゲームになるのかという驚きがそこにはありました。

この発明のおかげで、東亜プランの『タイガーヘリ』が生まれ、現代にもつながる弾幕シューの系譜が誕生したのはおそらく間違いないところではないでしょうか。

また、左右任意スクロールを導入した縦スクロールシューティングも、ほぼこれが最初かもしれません。これによって戦闘空間がぐっと広がり、移動の自由度が大きく増す感じになりました。

ちなみに『スターフォース』というタイトルは、年代的に『スターウォーズ』にちなんだものと思われます(開発中タイトルが『デススター』だったということもあるくらいですから)。

絶妙な敵のアルゴリズムで快適な遊びを実現

『スターフォース』を改めて見ると、敵の動きがじつによくできています。その多くが自機に対して軸を合わせる動きをしてきます。サインカーブで目の前を通過する、自機とX軸を合わせて真上に集まってくる、Y軸が合ったら急接近してくる等々。多彩な動きをしながらも、最終的に目の前にやってくる敵がとても多い。

つまり、プレイヤーの弾を当てやすくしているわけです。こちらは大きく動かずに一か所で待っていれば連撃できるタイプの敵が多い。

もちろん、常に敵弾がばらまかれているので、必ずしも思いどおりにいくとは限らないし、一か所に集まってこないタイプの敵もいます。

そして、とにかくゲームの展開が早い。ゲーム開始直後から編隊攻撃の連続で畳みかけられ、そう時間が経たないうちに、特徴的なボーナスターゲットのラリオスが登場、続いてボス格のエリアターゲットに達し、あっという間に1エリアクリアとなります。この辺のメリハリが本当にうまい。

このエリアターゲットの作りもとても美しくて、両サイドに1基ずつ砲台が配置されているだけのシンプルな構成で、本体はスクロールとともにどんどん接近(降下)してきて、勝つにしても負けるにしても短期決戦であっという間に勝負がつく。

もう一点、敵の動きでうまいのは、撃ち逃した敵の多くが、後方からも体当たりや弾でプレッシャーをかけてくる点です。

もちろん、そういうゲームは他にもいくらでもあるのですが、『スターフォース』は1種類の敵が間髪を入れず編隊で畳みかけてくるので息をつく間がなく、確実に撃ち落としていかないと自機がドンドン前へ追いやられる作りになっている。

そのため、他のシューティングゲーム以上に、一つの編隊が何機で出てくるかが難易度に大きく関わっています。1編隊の数が少なければ一時的に前へ出てやり過ごせるけれど、それがいつまでも続くとやがて逃げ場がなくなっていく。数機増えるだけでずいぶん変わる。このゲームのデータ入力・難易度作成は、なかなかおもしろい作業だったんじゃないかと思います。

各種ボーナスフィーチャーの完成度の高さ

また、『スターフォース』は地上物の位置づけが非常にユニークです。自機本体に対して当たり判定がないのは『ゼビウス』と一緒なのですが、こちらに対して一切攻撃を仕掛けてきません。攻撃したり、ぶつかってくるのはすべて空中物の仕事なのです。

なので、基本的に地上物は、こちらのショットを妨害する障害物として存在しているわけです。

その上で、ボーナスターゲットや隠しターゲットとしての役割を持たされているキャラクターが多いことも地上物の特徴です。

撃ち逃した数に応じてエリアクリア時のボーナスが減点されるB・bターゲット、1UPのケラ、隠しターゲットのヒドゥン、片側を連続破壊することでボーナスが得られるジムダ・ステギ、そして100万点ターゲットなどがすべて地上物扱いで配置されています。

『スターフォース』におけるこれら一連の“役物”フィーチャーのおもしろさ、完成度の高さは、シューティングゲーム史上でも傑出していると思います。

これらのフィーチャーは、一部を除いて割と頻繁に出てきます。そしてそれらを逃したとて致命的な損になるわけでもなく、もう少し頑張ればまた出てくる。この辺の重みづけの塩梅がとてもよいのです。

歴史の転換点となったゲーム『スターフォース』

前述の隠しターゲット・ヒドゥン、そして1UPのケラは、ほぼ間違いなく『ゼビウス』のソルやスペシャルフラッグの影響から生まれたフィーチャーだと思われます。また世界観と絡めた100万点ターゲットのミステリアスな扱いにしても同じく『ゼビウス』の影響でしょう。

最初にも少し書きましたが、『スターフォース』は『ゼビウス』の優れた点を受け継ぎつつ、『ゼビウス』以上の“スピード感”、そして“ルールの明快さ”と“爽快感”が加わったことで、のちの日本のシューティングの一大潮流となる礎を作り上げたゲームだと思います。

また、先に『スターフォース』の弾は3次元的にどうなっているのかわからないという話を書きましたが、じつはそれでいうと『ゼビウス』も一緒で、敵が地上から撃ってきた弾がどういう軌道でこちらに当たっているのか全然わからないんですよね。『スターフォース』はその割り切りを押し進めたゲームという印象です。

余談になりますが、たぶん、それをさらにもう一段階発展させたのが『メタルホーク』だと思います。見た目はあくまで2Dなのに、自機が高さを自由に変更できるので、敵弾は2Dと3Dのミックス的な不思議な挙動で追ってくる。

歴史的にぼくらは自然に受け入れてきましたが、これらはじつに独特なゲームジャンルの系譜なのだと思います。

では、また次回。

©1984 コーエーテクモゲームス All rights reserved.
Arcade Archives Series Produced by HAMSTER Co.

こんな記事がよく読まれています

2018年04月10日

ゲームセンター聖地巡礼「1980~1990年代 新宿」前編

今回から、新企画「ゲームセンター聖地巡礼」の連載がスタートします。当研究所・所長の大堀康祐氏と、ゲームディレクターであり当研究所のライターとしても協力いただいている見城こうじ氏のお2人が、1980~1[…]