見城こうじのアケアカ千夜一夜
目次
第30夜『パイレートピート』(1982年・タイトー)
船の甲板から海、そして密林へと進むアクションゲーム
『パイレートピート』は、主人公の海賊ピートを操作し、敵に囚われたヒロインを救うべく船から海、そして密林へと進むアクションゲームです。“ジャングル”が冒険ファンタジーの題材として扱われていた時代の郷愁を感じさせてくれる作品です。
ステージ1は揺れるロープを次々飛び移る空中ブランコ的なアクション、ステージ2はサメをかわしたり倒しながら泳いで進む海中ステージ、ステージ3は転がってくる岩をかわして進む坂道のジャンプアクション、そして最後は敵の槍をかわしてヒロインを救う4ステージ構成になっています。全ステージとも右から左へ進む珍しいタイプのゲームです。
もう一点、少し変わった仕様として、残り時間のタイマーがそのまま次のステージへ持ち越されることが挙げられます。そのタイマーはプレイヤーがミスをしてもリセットされません。そして、タイマーがゼロになると、持ちキャラクターのストックがいくつあっても、そこで一気にゲームオーバーです。
つまり、1ループクリアまでの持ち時間が完全に決まっていて、そこに救済要素はないということになります。
ただ、実際には、ステージ1はしばらく放置しておくと強制的にミスになりますし、ステージ2と3は強制スクロールなので、極端に長い時間をかけることはできません。だから時間切れでゲームオーバーになることはそうそう起きないのですが、ちょっとおもしろい仕様です。
多彩なアクションで展開する全4ステージ
このゲームが発売された1982年は、サイドビューのスクロールアクション(もしくはアスレチックアクションなどの呼称でも)が、まだほとんど存在しなかった時代です。
固定画面ものであれば、前年に傑作『ドンキーコング』が誕生していますが、スクロールもので近い遊びとなると、かろうじて『ジャンプバグ』や『ムーンパトロール』がこの時期で、ジャンルと呼べるほどの種類は出ていなかったと思います。『パックランド』そしてファミコン『スーパーマリオブラザーズ』の登場はこのさらに数年後になります。
『ドンキーコング』の直系的な固定画面ものに関しても、『カンガルー』や『スプリンガー』など、その数はさほど多くありませんでした。
つまり、この時代はまだ「“ジャンプ”を使って冒険するアクションゲーム」がさほどメジャーではなかったんですね。遊びとしてのジャンプの使い勝手のよさや深みが、そこまで認知されていなかった。容量的にそれを活かすだけのボリューミーなゲームが作れなかったがゆえ、というのもあるかもしれません。
前置きが長くなりましたが、『パイレートピート』はそんな時代に作られたゲームです。
だから全4ステージを見返してみると、「ロープ渡り」「海中を泳ぐ」「障害物をジャンプもしくは伏せでかわすスクロールアクション」「固定画面のジャンプアクション」と、バラバラの内容で、アクションがとくに統一されていないんですね。ほぼ全ステージでプレイヤーの挙動が違っていて、ジャンプがとくにメインのアクションというわけではない。
そういう意味では、ほぼジャンプアクションが軸になっている『ドンキーコング』『ジャンプバグ』『ムーンパトロール』『パックランド』『スーパーマリオブラザーズ』などとは、けっこうコンセプトが異なるゲームのように思います。
『パイレートピート』と『ジャングルキング』の違いについて
『パイレートピート』は同社の『ジャングルキング』というゲームが元になっています。
遊びの内容はほぼそのままに、主にビジュアル面が変更されており、『ジャングルキング』は密林の野生児が主人公、それに対し『パイレートピート』は海賊が主人公です。そのため、場面によっては少し違和感のある箇所があるんですね。
その一つがステージ1です。ヒロインを救いに行くのだから、すぐに海に飛び込めばいいのに、なぜか船の甲板で綱渡りをしています(元々はジャングルでツタからツタへと飛び移っていました)。
そしてステージ3のゴールでは、大きな岩に飛び乗り、かちどきを上げるという、あまり海賊っぽくない仕草をします(元々は野生児だったのでこれが似合っていた)。いろいろな場面でちょっとクスっとしてしまいます。
また、ぼくの記憶の限り、『ジャングルキング』から『パイレートピート』になった時点で、若干ゲームバランスにも手が入っているようです。
アーケードアーカイブス版をプレイして一番驚いたのは、『パイレートピート』では、ステージ3で大きな岩が転がってこないことです。『ジャングルキング』では終盤に大きな岩が転がってくるのですが、これはジャンプではなく「伏せ」アクションを使わないとかわすことができません。
ぼくは当時、この解法がしばらくわからなくて悩んだので、とても強く印象に残っています。岩の弾む動きが絶妙で、ジャンプでかわせそうに見えるんですよね。
勘のよいゲーマーならすぐにわかるような解法かと思いますが、難しすぎる(なかなか気づかない)という判断で、『パイレートピート』では削除したのかもしれませんね(ループの先の周では出てくるのでしょうか?)。
それではまた次回。
© TAITO CORPORATION 1982 ALL RIGHTS RESERVED.
Arcade Archives Series Produced by HAMSTER Co.