襲い来る単語の群れ! 君は生き延びることができるか? 新感覚タイピング×ローグライク『Glyphica: Typing Survival』

  • 記事タイトル
    襲い来る単語の群れ! 君は生き延びることができるか? 新感覚タイピング×ローグライク『Glyphica: Typing Survival』
  • 公開日
    2024年10月18日
  • 記事番号
    11972
  • ライター
    山村智美

いい感じの遊び心地
いい感じのポップさ
いい感じのカジュアルなビジュアル
いい感じの2Dドットなゲームも豊富
いい感じの重すぎない&軽すぎないゲームらしさ

『発見! インディーゲーTreasures』は、
そんな“ちょうどいい感じ”なインディーズゲームを紹介していく月イチ連載です。

今回ピックアップした1本は、こちら。

『Glyphica: Typing Survival』!

 

タイトル:『Glyphica: Typing Survival』
開発: aliasBLACK
パブリッシャー: aliasBLACK, Squeaky Wheel
リリース日: 2024年10月9日
価格:1,000円
配信プラットフォーム:PC(Steam)

【Steam】
https://store.steampowered.com/app/2400160/Glyphica_Typing_Survival/

タイピングのスピードには自信はありますか?

キーボードを淀みなくカタカタと打ち続けていると、自分なりのリズムや打鍵感のテンポが出てきて、次第に没頭していくんですよね。

ほかでは味わえない独特の集中感。心は無の境地に近づき、研ぎ澄まされていく意識と、そこに寄り添うキーの音。カタカタ、カタカタカタカタ、カタカタカタカタカタカタ……ターンッ(エンターキーの音)。

いわゆるタイピングハイというやつです。

……まぁ、タイピングハイという言葉は今、ボクが適当に考えただけですが。

そんなタイピングをゲームにしているタイピングゲームは古来より定期的に流行ったりしてきたわけですが、今回紹介するのはまたちょっと変わり種の1本。

「押し寄せる敵をタイピングで迎撃!」

「ランダムにピックアップされるパワーアップ要素からひとつを選択していくローグライク要素!」
「グラフィックスもサウンドも、何だか全体的にすごくおしゃれ!」

それが、『Glyphica: Typing Survival』です。

『Glyphica: Typing Survival』は、シンガポールのゲームスタジオであるaliasBlackが、2024年10月9日よりSteamにてアーリーアクセスで配信を開始した、タイピング×ローグライク。

aliasBlackは『Stellaris』などさまざまなタイトルの開発に携わってきたベテランゲームデザイナーXuanming Zhou氏が独立して立ち上げたスタジオでそのデビュー作です。

価格は通常価格が1,000円、2024年10月24日にはリリース記念セールで800円で購入可能。
プレイしたアーリーアクセス開始時のバージョンは、基本のゲームモードと武器が実装されているのみのかなりシンプルな内容ですが、本作のゲーム性や味はしっかり確認できるものになっています。

アーリーアクセス時点で実装されているゲームモードは、10分~20分程度のプレイ時間でボスを倒すまでを楽しむトライアルと、無制限なエンドレスの2つ。

プレイヤーキャラが画面の真ん中にいて、移動操作はなし。そこに四方八方から敵がじわじわ近づいてくるというものになっています。

敵にはそれぞれ単語がついていて、それを入力すれば倒せるという仕組み。敵を選択するという操作はなく、タイピングすればそれに一致している敵を自動的に攻撃します。

本作はすべての操作をキーボードのみで完結しているのが好印象。タイピングゲームとしてキーボードから手を動かさず集中できるようになっています。

敵を倒していくと定期的にパワーアップが取得できます。パワーアップは3つの特殊効果から1つを選ぶ、いわゆるローグライクな方式。

パワーアップで獲得できるのはタイピングとは別で敵を攻撃してくれるサブ攻撃のようなもの。「ホーミング弾」、「ドローンの自動攻撃」、「回転ブレード」、「電気攻撃タレット」などなど。

次々にいろいろな武器を獲得していくもよし、集中して好みの武器を強化し続けるもよし。攻撃対象が『f・g・h・iから始まるワード』や『a・e・oを含むワード』など、タイピングゲームならではの武器もありまし、攻撃するエフェクトや範囲が異なるので、自分がタイプングするのに邪魔にならないものを選ぶのがいいかもしれません。

パワーアップ画面にはどの武器がどれぐらいダメージを出しているかのDPSも表示されるので、それを参考にするのもいいですね。

プレイヤーキャラが画面の真ん中にいて四方八方から敵が押し寄せてくるというところや、撃破し続けていくとランダムにピックアップされるパワーアップ要素からひとつを選んで自分好みの攻撃を強化していくローグライクな要素があるところから、『ヴァンパイアサバイバーズ』を連想する人も多いかも。

ただ、プレイ感は当然ながらだいぶ異なるもので、プレイ中の視線は画面の四方八方からくる敵を見るためにあっちこっちに動きまくりですし、敵の中には途中で止まって溜め撃ちをしてくる種類もいるので、それに反応して優先的に倒したりと、どちらかという360度タイプのシューティングゲームに近いかも。

1プレイは10分~20分ほどで、最後にはボスが登場するのですが、ボスは単語ではなく長文。例えば夏目漱石の「吾輩は猫である」を冒頭だったりを、雑魚敵を処理しつつその合間にタイピングしていきます。

これもまた非常に独特で、

「吾輩は猫である(カタカタ)……名前はまだない(カタカタ)……、変える!(カタカタ)歌う!(カタカタ)」

といった感じに、ボスの長文を打っているところから雑魚の単語へと急に切り替えつつ、また戻るというなかなか忙しい感じのプレイになります。

雑魚敵の侵攻を一定時間止めるなどの効果をうまく狙ってボス長文を打つ隙を作るのがポイント。

本作はグラフィックスやサウンドが非常にかっこよく心地いいのが大きな魅力。

デザインはアイボリーやノワールなおしゃれなカラーアート上に記号の敵のデザインが、設計図のようなクラフト感やミニマル感を出しています。

サウンドも静かなミニマルテクノ的なBGMで、敵を攻撃したときなどの効果音も良質。タイピングの没頭感を良くしてくれます。

とまぁ、全体に高評価している本作なのですが、日本語のタイピングゲームとしてはアーリーアクセスリリース直後の今の仕様ではいくつか大きな問題を持っています。

まず、ローマ字入力の複数対応ができていないこと。

ローマ字入力は例えば「し」なら shi か si、「ふ」なら fu でも hu でも入力できるという、いわゆるヘボン式と訓令式の両方に対応している必要があるのですが、それができておらず、単語ごとにヘボン式か訓令式が固定されていて、その入力でないと受け付けません。

例えば、「ちゃんと」なら tyanto しか受け付けなくて chanto はダメですし、「しゅ」は syu だけで shu はアウトだったりといったもの。

また、「ん」の入力が nn ではなく n だけになっています。

さらに、伸ばし棒がないので、例えば「データ」が deeta という入力になっています。

どれも日本語特有なところがあり「日本語むずかしいよね~」という感じがするのですが、タイピングの集中が途切れてストレスになるポイントなので、ここは頑張っていただきたいところ。

なお、本作のパブリッシングを手掛けるRyan氏がSteamのコメントにてこれら日本語入力の問題点に対応すると返答していますので、期待したいところです。

実は他にもまだ気になる点はあって、日本人のプレイヤーとしては、単語の表示はローマ字のスペルではなく日本語の表示をメインに大きくして欲しいんですよね。

例えば、「目薬」なら目薬という字を大きくして、その下に補助的にローマ字スペルを表示するというもの。ボクたち日本人はローマ字スペルを視認してタイプするということはなく、日本語を見てローマ字を打つという方式なんですよね。

表示周りとしては、雑魚敵の数が増えてきたときに重なってしまって文字が判別できないという状況も起きがちなので、これも調整して欲しいところです。

ちなみに本作はゲームパッドでもプレイ可能。

タイピングの代わりにボタンの組み合わせで敵を攻撃するというスタイルになります。上記の問題で日本語タイピングがどうしてもストレスなら、ゲームパッドモードや、できる人は英語モードなどでプレイしつつアップデートを待つというのもありかもしれません。

『Glyphica: Typing Survival』のプレイ感は非常に独特。タイピングゲーム特有のタイプし続けていく没頭感だけでなく、画面全体に目を配りつつ距離がより近い文字を判別していくという、並列処理な思考で没頭していくことになります。

すると、独特な研ぎ澄まされていく感覚というか陶酔感が出てきて、それが整ってきたあたりで長文入力のボスが加わり、ボスの長文をカタカタカタと撃っていく合間に、雑魚敵の単語という短いリズムが刻まれていきます。

現状で実装されているモードだと、ある程度タイピングが上手い人のほうが本作のプレイフィールを楽しめるものになっているかと思いますが、それは非常に独特で他では味わえないものがあります。

ただ、それだけに現状では文字が重なって判別できなかったり、入力方式が合わなくてミスになるなどタイピングを邪魔されてしまうと、けっこうなストレスになるところも。

逆に言えばそれら気になる要素にイラッとしてしまうぐらいに集中して心地よくプレイしたくなるゲームであり、それら問題点がアプデで解消されれば相当に良いタイピングゲームに仕上がる可能性があるということでもあると感じています。

今後のアップデートを期待し応援する意味もこめて、まずはアーリーアクセスを購入してみてはいかがでしょうか。その価値が十分にあるゲームだとオススメします。

©aliasBLACK, Squeaky Wheel

こんな記事がよく読まれています

2018年04月10日

ゲームセンター聖地巡礼「1980~1990年代 新宿」前編

今回から、新企画「ゲームセンター聖地巡礼」の連載がスタートします。当研究所・所長の大堀康祐氏と、ゲームディレクターであり当研究所のライターとしても協力いただいている見城こうじ氏のお2人が、1980~1[…]