開発期間7年! オリジナル版から40年後にリメイクした訳は!? マインドウェア市川幹人氏&女優・天翔ゆいさんに訊く 前編

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    開発期間7年! オリジナル版から40年後にリメイクした訳は!? マインドウェア市川幹人氏&女優・天翔ゆいさんに訊く 前編
  • 公開日
    2024年11月01日
  • 記事番号
    12009
  • ライター
    松井ムネタツ

『ウットイ3671』開発者 マインドウェア市川幹人氏&女優・天翔ゆいさんインタビュー

マインドウェアは2024年3月14日、Steam版『ウットイ3671』をリリースしました(パッケージ版は9月20日発売)。当時を知るレトロPCゲームファンからは「まさかあの『ウットイ』が!?」と注目を集めていた……のですが、発表から7年も経過してようやく発売に。結果的にオリジナル版『ウットイ』の発売から40周年にあたる2024年発売となりました。

発売日が見えてきた2024年1月より、マインドウェアの公式YouTubeでは『ウットイ3671』を集中的に生配信することになったのですが、その番組の新アシスタントとして、女優・声優でアクトレスガールズにも参加している天翔ゆいさんが就任しました。ちょうど番組配信前にお邪魔して、お二人に『ウットイ3671』の開発秘話やその魅力についてじっくり語ってもらいました。

【聞き手】
松井ムネタツ

『ウットイ3671』の開発に7年かかったのは、ちゃぶ台返しが2回あったから

―― オリジナルの『ウットイ』は工学社の「I/O」(アイオー)1984年8月号に掲載さたゲームで、これがのちにコムパック(ソフトウェアの開発・販売を行っていた工学社の関連会社)からパッケージ版が発売となりました。

市川 当時の広告を調べたんですが、厳密な発売日はよくわからないんです(注:当時はインターネットも無く、都市部と地方ではお店に並んだ日もばらつきがあったため、当時の関係者以外の人は月刊で出版されているパソコン雑誌で発売されたことを確認するしかなかった)。また、機種名の表記が増えたり減ったりしていて、それが発売中なのか発売予定なのか明記がないものもありました。
最初にFM-7版が発売されたのは間違いなくて、そのあとPC-8801、PC-9801、X1、MB-S1、FM-16βが発売されたようです。予定では他にもいくつか発売予定があって、広告に掲載されていたのですが、発売されなかったようです。MZ-2200版はプログラムが「PiO」(工学社発行のゲームプログラム投稿雑誌)に掲載されたのですが、パッケージ版の発売はなかったですね。

▲オリジナルの1984年版『ウットイ』

―― 『ウットィ』は当時流行していたステージクリア型のアクションパズルゲームですが、市川さんご自身は当時プレイされていました?

市川 当時、私はX1 turbo IIと同時にX1版を買いました。ディスク版5800円ですね。
ルールは簡単で、サイドビューの画面固定となっているステージで、スタート地点にいるTENTENを、左右移動やジャンプ、ブロックを作る/消すなどをして、ゴール地点まで移動できたらステージクリアです。コンテストに応募されてきたゲームで、出来がいいからすぐ製品版を出そう!となったようです。

―― マインドウェアさんはこの時代のゲームを何本かリメイクされていますが、今回この『ウットイ』を選んだ経緯を教えてください。

市川 『ウットイ』はずっとリメイクをやりたかったんですよね。当時遊んでいましたし、「自分ならこう作り直す!」というビジョンが遊んだときからあったんです。いつか絶対に自分でリメイクしよう!と思っていたタイトルの1つだったんです。
リメイクするにあたり、作者に許諾を得ないといけないのですが、全然見付からない状態が何年も続いていました。あるとき、ニンテンドー3DSの『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』を遊んでいたら、クレジットで偶然『ウットイ』作者の名前(高科恭司さん)を見つけたんです。珍しい名前だと思っていたので、間違いなくご本人だろう!と、早速スパイク・チュンソフトに連絡して本人とコンタクトを取り、快く許諾していただきました。

―― そして開発に動き出したのが……。

市川 2017年前半ですね。2017年末に出すつもりでいたのですが、7年もかかってしまいました。理由はいくつかあります。並行していろんなことをしていたので、別のプロジェクトが忙しくてなかなか手が回らなかったのがひとつ。
もうひとつは、2回ほどちゃぶ台返しをしてイチから作り直しをしたから、なんです。たとえば2人同時プレイモードを作ってみたり、マップがスクロールしたりと、かなり大胆なアレンジを検討していました。それこそステージのスタート時点ではゴールも見えていない状態というか。でも、このゲームは画面全体が見えないと話にならないな、ということがゲームを動かしてみて気が付きました。レーダーを表示させたのですが、やっぱりダメで……というか、どんどんダメになっていきました。
そんなことがありまして、2回ほどちゃぶ台返しをしました。どのゲームの場合でも、良さそうだと思いついたアイデアは、一応作ってみるんですよ。そのうえで判断します。そのアイデアのおかげでもしかしたら神ゲー爆誕かもしれないですし。
最終的にはオーソドックスなパワーアップの形に落ち着きました。

サウンドはWING☆氏、小沢純子氏、椎葉大翼と贅沢な方々が参加

―― そのパワーアップポイントを教えてください。

市川 何と言っても大きいのは主人公TENTENくんの彼女、TELTELちゃんの登場です。ゲームスタート時に操作キャラをどちらにするかを遊べるようになりました。

―― ステージ内に配置されているボーナスアイテムのフルーツも、新たに追加された要素ですよね。

市川 そうです。オリジナル版はクリアしたときのタイムボーナスだけで、それ以外のスコアはないんですよ。リスクに対して挑むものがタイムボーナスだけだったので、もうちょっとスコア要素を入れてもいいだろうなと思い、フルーツを配置しました。
すぐ近くにあるゴールを目指すだけでいいかもしれませんが、ちょっと遠くにあるフルーツを取ってスコアを稼ぐのか……。このあたりはプレイヤーにジレンマを感じてもらえるように設計しています。

―― サウンドまわりも強化されていますよね。

市川 オリジナル版はBGMがありませんでした。これは絶対に追加しよう……と思っていて、結果的に何人かの方にお願いしました。
最初に発注したのは、弊社の『平安京エイリアン3671』や『スペースマウス』などでお願いしているWING☆さんです。2017年の秋くらいには『ウットイ3671』用の曲ができあがっていました。
ある程度開発が進んだ段階で、オープニングが追加されたのでその曲が必要になり、あとネームエントリー曲も入れることになったので追加で曲を発注させていただこうかと思ったのですが、WING☆さんが入院することになってしまって……。
そこで次は小沢純子さん(ナムコ在籍時に『リブルラブル』『ドルアーガの塔』などの名作ゲームのサウンドを担当。マインドウェアのタイトルでは『エイリアンフィールド3671』など)に頼みました。小沢さんはC30(ナムコカスタム音源)で曲を書くとおっしゃったので、WING☆さんのPSG版に加えて、小沢さんはC30の音、ということになりました。
そうこうしているうちに今度は元任天堂の椎葉大翼さん(『トモダチコレクション』や『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』など)が手を挙げてくれまして。「ファミコン音源でやりたい!」ということで、何だかとんでもなく豪華になりました。

―― その他のパワーアップポイントは?

市川 細かいところですが、ボクサーというキャラですが、オリジナル版は右向きしかなかったんですが、左向きも用意しました。オリジナルが右向きだけなのは、とくに前半は右から左のほうに向かうステージが多いんで、おそらくそれで右に向かって攻撃するパターンしか用意されていなかったようです。

配信番組に天翔ゆいさんを起用した理由は、「逸材だ!」と思ったから

―― マインドウェアさんは2016年あたりからYouTubeで新作情報の生配信を続けています。2024年1月の『ウットイ』配信から、番組に女優・声優の天翔ゆいさんを起用しました。

市川 以前、弊社で『燃えろ!!プロ野球 ホームラン競争 SP』というスマホアプリを開発・運営していたのですが、そのとき女子プロレス団体のアイスリボンとコラボをやったんです。その関係で、X(旧Twitter)のフォロー・フォロワーに女子プロレス関係の方が一気に増えまして。
そうした中であるとき、アクトレスガールズ(プロレス試合形式によるエンターテインメント団体)に参加している天翔さんの写真がタイムラインにあがってきたんです。その写真の表情がとてもよかったんですよ。個人的には、現WWEのASUKA選手(日本で活躍しているときは「華名」を名乗り、グラフィックデザイナーとしても活躍。マインドウェアタイトルのロゴデザインもいくつか担当した)以来の逸材ではないかと思ったんです。それで、「これは公式放送を手伝ってもらうしかない!」と。
すかさずXをフォローさせていただいたら、すぐフォローバックがきました。こっちはゲーム会社を名乗っているので、これはきっと仕事につながると思ってフォロバしてくれたのだろう!と思いましたね(笑)。

―― とのことですがどうでしょうか?(笑)

天翔 最初フォローがきたときは「誰だろう?」「ゲームを作っている人か」みたいな感じで。
正直に言えば、「声優の仕事あったらいいな」と思いました。実際にDMいただいて、『ウットイ』の説明をしていただいたり、放送用の資料とかいただいたりしたのですが、どうにも『ウットイ』がどういうゲームなのかよくわからなくて。わからないままだったのですが、「出ます!」と返答して、放送に参加しました。

―― もともとテレビゲームは遊ばれるほうですか?

天翔 そんなにガッツリやるというタイプではありません。小さいころはPS2で『サルゲッチュ』や『塊魂』を遊んでいました。最近、『塊魂』のサントラがサブスク配信始まったので、毎日お風呂で聴いてます!

―― そうしたゲームよりもっと古い、1980年代のゲームを遊んでみて、どんな印象でしょうか?

天翔 全然レトロじゃないなって思いました。私、めちゃくちゃゲーマーじゃないからこそ、こういうゲームだと親しみが湧きます。これが40年前に作られたゲームなんだ、っていうのはすごく感動しました。

(後編に続く)
次回は主人公キャラたちの魅力や天翔ゆいさんによるオリジナルステージ、そしてマインドウェアの今後の新作などについてお訊きしています。

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