見城こうじのアケアカ千夜一夜
第42夜『ギャラクシアン』(1979年・ナムコ)

ビジュアル、サウンド、華麗な動き、当時衝撃的だったその完成度
『ギャラクシアン』は、1978年に大ヒットした『スペースインベーダー』を徹底的に研究して生まれた名ゲームです。
敵エイリアンの軍団が隊列を組んでおり、左右に動いているところまでは『スペースインベーダー』と同じなのですが、その隊列が丸ごと進撃してくるのではなく、個別に離脱し、自機を狙うようにして自在にカーブを描いて急降下攻撃を仕掛けてくる点が斬新の一言でした(ときどきクルリと宙返りしたり!)。
さらに、バックに星が瞬きながら流れたり、スプライトつまりキャラクター1体ごとに複数の色が使われているなど、ビジュアル表現も当時としてはじつに先進的でした。
サウンド演出においても、敵の残り数が減って波状攻撃に入ると、それまで鳴っていた揺動音がなくなり一気に緊張感が増すなど、抜群の雰囲気作りがなされていました。
単発で敵を狙い撃つ“いぶし銀”的なゲームでもあった
このとおり『ギャラクシアン』はとても華やかで先進的なゲームでしたが、同時に非常に渋い、いわば“いぶし銀”的な面を持つゲームでした。
自弾は画面上1発しか存在できない連射の利かないゲームで、その弾速も現代の感覚だとかなり遅く設定されています。このため、敵をしっかりと狙い、1発1発を大切に撃つ必要があります。このエイミングとボタン押下タイミングに求められる厳密さは『スペースインベーダー』以上でした。
このようなゲーム性だったため、今この瞬間に弾が撃てるか否かがわかるように、発射可能なときは自機ギャラクシップの先端に弾が表示されており、それが飛んでいくようになっていました。なかなか味のある仕様です。
今回、改めて遊んでみて、ラウンド1から意外に難しく、その代わりに残機の追加が早いと感じました。1面さえクリアできれば2面辺りですぐにストックが増えます。
言いかたを変えると「最初からしっかり戦わされる」感じです。初っぱなから接近戦が強いられるゲームデザインなので、ちょっとした不注意で簡単にやられてしまう。でも少し頑張ればすぐに1UPは享受できる。当時はこんなチューニングのゲームが多かったかもしれません。

2つの高得点フィーチャーでライバルに差をつけろ
このゲームにおいて「撃ちかたによって得点が変化するフィーチャー」は、敵の急降下攻撃中に破壊すると得点が2倍になることと、3機編隊をうまく撃破できた際のボーナスの2つです。これだけで当時は十分新しかったのです。『スペースインベーダー』においては、UFOのミステリーボーナスしかありませんでしたから。
『スペースインベーダー』のUFOの得点は、それまでにプレイヤーが撃ったショットの数で決まります。画面に見えてない隠された情報・法則を知ることで、300点という最高得点を得るチャンスが増えるわけです。
それに対して、『ギャラクシアン』の3機編隊ボーナスは、護衛の2機を先に撃破した上でボスを撃ち落とすことで最高得点の800点が獲得できます。法則を知っておく必要がある点では『スペースインベーダー』と一緒ですが、画面に見えているアクションで完結している点で、個人的にはよりアクションゲームらしいきれいなフィーチャーだと思います。
この3機編隊にも、2機の護衛が固まっていて仕留めやすいフォーメーションと、両脇に離れたちょっと難しめのフォーメーションがあり、じつに小技が利いていました。
また、この成功時の得点が800点で、『スペースインベーダー』の300点よりもちょっとインフレしているのも意図的なものだったのではないでしょうか。当時はこの程度のことでも、それ以前のゲームよりも何だか豪華な感じがしたのです。

ゲームとしてのオンリーワン感
『ギャラクシアン』は前述のとおり、連射が利かず弾速も遅いため、確実に狙って撃つ必要があるということと、敵側が自分を狙うように動くので、相対する敵としっかり戦っている手ごたえが感じられるゲームです。
今見るとゆったりしたゲーム展開なので、古い感じはするかもしれませんが、じつはこれによく似たゲームはほとんど存在しないようにも思います。
当時『ギャラクシアン』を参考に作られた宇宙もののシューティングはたくさんあったのですが、これほどシンプルをきわめ、動きが洗練されたゲームは他になかったかもしれません。また、続編である『ギャラガ』や『ギャプラス』にしても、よくできた、まったく別のゲームだとぼくはずっと思っています。
もう少しだけゲーム速度を上げて、ステージごとに展開がある新作『ギャラクシアン』があったらどんな感じになるかな、なんてことを妄想したりもします。
では、また次回。

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