『オホーツクに消ゆ』ファンミーティング・初夏のひがし北海道ツアーレポート
2025年6月21日(土)~22日(日)の2日間、「北海道連鎖殺人『オホーツクに消ゆ』ファンミーティング・初夏のひがし北海道ツアー」が開催されました。
北海道外からも含めて多くのファンが参加して、堀井雄二氏原作のアドベンチャーゲーム『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』の舞台となった初夏の東北海道を巡りながら交流を行いました。
『流氷物語号×オホーツクに消ゆ』について
ツアー・レポートの前に今回のイベントの発端となっている「流氷物語号」について紹介します。
JR北海道が網走~知床斜里間で1990年から運行していた「流氷ノロッコ号」が2016年2月に廃止。その後継列車として2017年から「流氷物語号」が運行を開始しました。
例年、流氷がオホーツク海に接岸する時期と重なる1月下旬~3月上旬に運行。JR北海道単独での運行だった「流氷ノロッコ号」に対し、「流氷物語号」はJRだけではなく地域住民や沿線の各自治体と連携しての運行となっているのが特徴のひとつ。鉄道での地域起こしを目標に掲げる市民団体「MOTレール倶楽部」が率先して企画立案とイベント運営を行っています。
2021年には「MOTレール倶楽部」会長である石黒明氏の要望に多くの皆さんが応える形で『オホーツクに消ゆ』と「流氷物語号」のコラボが実現。以降、2025年現在まで運行が続いています。


筆者は2025年2月に「流氷物語号」に乗りました。また、「MOTレール倶楽部」が網走駅近くの「ホテル サンアバシリ」と協力して実現した『オホーツクに消ゆ』コンセプトルームにも宿泊してきました。
「流氷物語号」は網走~知床斜里間を1日2往復。網走から知床斜里へ向かう車両は『オホーツクに消ゆ』の舞台のひとつでもある北浜駅、知床斜里から網走に行く車両は浜小清水駅に数分停車し、駅に降車しない乗客もホームに降りることができます。
車内では「MOTレール倶楽部」のボランティアスタッフが車窓からの景色のほか、沿線各駅の特徴や歴史・風土について丁寧に説明をしてくれるのでそれぞれの地域への理解と親しみが深まります。また「MOTレール倶楽部」オリジナルの『オホーツクに消ゆ』限定グッズも車内で購入できます。


ホテル サンアバシリの『オホーツクに消ゆ』コンセプトルームでは、部屋の中に2021年から2025年までの「流氷物語号×オホーツクに消ゆ」のポスターが掲示されていて、これまでの取り組みの歴史を俯瞰的に眺めることができました。
また部屋にはファミコン互換機とNintendo Switchが設置、『オホーツクに消ゆ』を含めたファミコン用ソフトも多数置かれていて部屋の中でプレイすることができます。
筆者は私物のNintendo Switch版『オホーツクに消ゆ』を持参して備え付けのNintendo Switch本体でエンディングを見ました。舞台のひとつである網走で歴代「流氷物語号」のポスターに囲まれながら見るゲームのラストシーンはまた格別でした。


網走滞在中に「博物館 網走監獄」、「オホーツク流氷館」などの観光施設を見学したほか、「砕氷船おーろら」の船上からオホーツク海に浮かぶ流氷を間近に見てきました。
筆者は札幌市在住ですが、これまで網走に行く機会がなく、このときにはじめて網走市内に足を踏み入れました。流氷もオホーツク海沿岸の町に住んでいなければ、北海道民でも見る機会はありません。このときの旅は流氷を含めて網走~知床間の地域の魅力を発見して親しみを得る機会になりました。そのきっかけを作ったのが『オホーツクに消ゆ』というゲームということになります。
一方で『オホーツクに消ゆ』を知らない観光客の皆さんも、網走から知床に移動する手段として「流氷物語号」に乗車していました。そういったお客さんにとってはオホーツク海沿岸の観光をきっかけとして『オホーツクに消ゆ』を知る機会にもなる。この相互作用をとてもおもしろく感じました。
流氷時期の網走や知床には海外からの観光客も多数訪れていますから、海外の皆さんにとってもそういった発見が得られる旅になっていたことと思います。この取り組みを5年間続けている「MOTレール倶楽部」のことをもっと深く知りたいと筆者が願うようになったときに今回のツアーイベント開催の情報を知ったことで、ぜひとも参加しようと思い立ちました。

『オホーツクに消ゆ』ファンミーティングツアーのこれまで
『オホーツクに消ゆ』の舞台を巡るツアーは2021年2月27日(土)~28日(日)に第1回が開催されました。このときのゲストは原作者でありシナリオも手掛けた堀井雄二氏。
第2回は2022年2月18日(金)~20日(日)に開催。ゲストはPC-6001版・MSX版のプログラムを手掛けファミコン版では音楽を担当されたゲヱセン上野こと上野利幸氏。
2025年2月1日(土)~3日(月)に第3回が開催。ゲストは堀井氏、上野氏に加えてプロデュースを担当された東府屋ファミ坊こと塩崎剛三氏、ファミコン版のグラフィックデザインを担当された荒井清和氏が参加という豪華な顔ぶれとなりました。
各回それぞれ経路の違いはありますが、網走を起点に『オホーツクに消ゆ』の舞台となった場所を巡り、宿泊先のホテルでファンミーティングを開催、運行中の「流氷物語号」に乗ってオホーツクの冬の車窓を楽しむという部分は共通していました。
4回目となる「北海道連鎖殺人『オホーツクに消ゆ』ファンミーティング・初夏のひがし北海道ツアー」は、初となる6月の開催。『オホーツクに消ゆ』のゲーム中では雪が積もっていないので、よりゲームのシチュエーションに近い状態での旅となります。
また、3回目までのツアーでは訪れなかった釧路からスタートというのも特徴のひとつ。『オホーツクに消ゆ』ではプロローグとなる東京編のあと北海道編が始まる場所が釧路なので、より主人公である「ボス」の気分と同期できる旅の始まりと言えます。今回は第2回以降毎回参加されている上野利幸氏が引き続きスペシャルゲストとして参加されました。
初夏のひがし北海道ツアー1日目
ツアー開始の前日となる6月20日(金)、釧路に前日入りした参加者と運営スタッフ、上野利幸氏が釧路市内の居酒屋に集まり前夜祭を行いました。
筆者も参加、旅の本番が始まる前に参加者の皆さんに顔を覚えていただく良い機会となりました。
翌21日(土)、釧路名物の霧が立ち込める中、いよいよJR釧路駅からツアーがスタート。
まずは当日に現地入りされる参加者を迎えるため釧路空港に「ばしょいどう」。ゲーム中では主人公「ボス」が相棒となるシュンこと猿渡俊介と釧路空港で出会うところから北海道編が始まるので、ファンにとっては思い入れの強い場所と言えます。

©G-MODE Corporation/©ARMOR PROJECT ©KADOKAWA

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釧路空港で参加者21名が全員揃いました。
移動するバスの車内で参加者が自己紹介。筆者以外の全員が過去のツアーへの参加経験があり、中にはすべてのツアーに参加されている方も。
ほとんどが北海道外から来られていて、これまでのツアーがいかにファンの心を掴んでいるかということ、そして参加されるファンの皆さんの熱量を実感することになりました。
バスの車内ではバスガイドとして原田カーナさんが同乗され、道中それぞれの目的地や車窓からの風景について解説をしていただきました。
原田さんは釧路で観光クリエイターとして活躍され、またイラストレーターとして様々なデザインのお仕事もされています。以前、バスガイドの仕事もされていたことから、今回の抜擢となったそうです。
ふだんゲームは遊ばれないそうですが、今回のために『オホーツクに消ゆ』をプレイされ、さらにゲームについての情報を調べられていました。原田さん手作りのツアーマップはふだん観光ガイドを行いながらイラストのお仕事をされているだけあって、とてもわかりやすくまとめられていました。

釧路空港に続いて向かった先は釧路の東にある厚岸町。
今回のツアーは基本『オホーツクに消ゆ』に登場する土地を巡りますが、舞台となっていない町の魅力も紹介したいということから、ゲームには登場しない厚岸町も目的地のひとつに選ばれたようです。
「厚岸漁業協同組合直売店 エーウロコ」にて厚岸産の海の幸のショッピングをしたあと、道の駅「厚岸味覚ターミナル・コンキリエ」で厚岸産食材を使った昼食を楽しみました。


厚岸を後にして、釧路に戻ります。
まず向かったのはゲームの北海道編・冒頭でボスとシュンが釧路市内で聞き込みを行う「緑ヶ岡」(ゲーム中では「緑ヶ丘」表記)。住宅地にバスを停められないので、その代わりにエリア内にある緑ヶ岡公園を散策しました。
周囲の住宅地を眺めながら、ゲーム中に出てくる「増田家」がもし実在するとしたらどの辺りになるのか。そんなことを想像しながら公園の景色を楽しみました。その後、釧路の名所「幣舞橋」と「釧路フィッシャーマンズワーフMOO」を散策してから、宿泊地である阿寒湖に向かいます。
その途中、バスはリメイク版2024年パートで刑事の犬飼健太が勤務していた「北海道警察 釧路方面本部庁舎」の前を徐行で進むという粋な計らいをしてくれました。



©G-MODE Corporation/©ARMOR PROJECT ©KADOKAWA



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宿泊地となる阿寒湖のホテルでは夕食後に特設会場でファンミーティングが開催されました。
主催である「MOTレール倶楽部」代表の石黒さん、スペシャルゲストの上野さんからの挨拶のあと、まずは参加者のお一人が発案した「ブラックジャック大会」が行われました。
ゲーム中で遊べるトランプの「ブラックジャック」。参加者のひとりがプレイして、相手CPUのシュンに勝つか、負けるかを他の参加者が予想します。予想が当たった人は景品がもらえるというルール。
参加者のほか、石黒さん、上野さん、バスガイドを務められた原田さんも対戦を行い、とても盛り上がりました。ちなみに筆者も対戦に参加させていただき、手札合計のMAX値となる「21」でシュンに勝つことができて良い思い出になりました。



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「ブラックジャック大会」に続いて、「流氷物語号」の今後についてのミーティングが行なわれました。
石黒さんから、ひとまず来年の流氷時期の開催についてこれからJR北海道を交えて協議していきたい、上野さんとも引き続き連携を行いたいという話がありました。
まだ案の段階なので、ここで具体的にどういう話がされたかを述べることはできませんが、来年に向けての動きがあるのは間違いないようです。石黒さんの方でツアー参加者からの要望も募りたいという話もあり、多くの皆さんから活発な意見が出されていました。

最後に行われたのは「Samba Saroma」のカラオケ大会。筆者は今回のツアーではじめてこの曲を聞きました。
2025年2月に行われた3回目のツアーで立ち寄った「道の駅サロマ湖」で流れていた曲で、そのときの参加者に大きなインパクトを与えたということです。
今回、ゲストの上野さんが耳コピでカラオケを制作されてきたそうで、原曲と一緒にまず阿寒湖へ移動中のバス車内で流されました。筆者は経緯を知らなかったので、上野さんの紹介で流されたこの曲を『オホーツクに消ゆ』のボツ曲か何かと思ってしまいましたが、あとで参加者のお一人に経緯を伺って、ようやく事の次第を理解できました。今回のツアーで曲を使用するにあたって、石黒さんが佐呂間町役場に確認をとって許諾を得たということです。