最高峰の山“カミ”に挑むオンリーワンな魅力を持つ登山クライミングゲーム『Cairn』― 優れた作品ながら、ゲームとしてあと一歩の調整不足を感じる惜しいところも
いい感じの遊び心地
いい感じのポップさ
いい感じのカジュアルなビジュアル
いい感じの2Dドットなゲームも豊富
いい感じの重すぎない&軽すぎないゲームらしさ
『発見! インディーゲーTreasures』は、
そんな“ちょうどいい感じ”なインディーズゲームを紹介していく月イチ連載です。
今回ピックアップした1本は、こちら。
『Cairn』!

タイトル:『Cairn』
開発:The Game Bakers
パブリッシャー:The Game Bakers
リリース日: 2026年1月30日
価格:3,400円
配信プラットフォーム:PC(Steam)/ PS5
「なぜ山に登るのか?」
「そこに山があるからだ」
あまりにも有名な、英国人の登山家ジョージ・マロリーのセリフですが、
実際のインタビューでマロニー氏は、
「Because it’s there.」
と、抽象的な答えをしたそうです。
「そこにあるから」
その言葉をどう捉えるのかは、人それぞれの人生が反映されるのかもしれません。
切り立つ崖の、わずかな窪みや溝を観察してルートを模索する。
テント内で水や食料の残りを見つめつつ身体を休める。
四肢を使って山を登り、限界の前にピトン(ハーケン)を刺す。
極限のクライミングの先に何を感じるのか。何かを見つけられるかもしれない。
それが今回紹介する『Cairn』です。
『Cairn』は、著名な登山家の主人公アーヴァが、前人未踏の山「マウント・カミ」の登頂を目指すクラミングゲーム。
山登りと一口に言ってもいろいろとありますが、本作で挑む山はほぼ垂直な崖ばかり。ビバークできる場所までクライミングして登り、また上を目指していくというのが基本の流れ。
壁を登るときは両手と両足をそれぞれアナログスティックで動かして、くぼみや溝のところでボタンを押して手足を置く。しっかりとホールドできる場所でグリップすれば登る体力を維持してくれますが、何もないところだとスタミナを消費して最終的には落下してしまいます。
動かす手足は姿勢に応じて自動選択されますが、オプションで手動選択にすることも可能。「左足をそこの溝にかけて……左手を伸ばして……右足をこっちに……右手を上に……」という感じで登っていくのが基本的な流れ。

そもそも岸壁に対してどのルートを登っていくかが重要で、登る前に見える範囲をよく観察してルートを想定するのがポイント。ヒビや溝が多いところのほうがもちろん登りやすいですが、傾斜がきつく反り返っているようなバンクだと、しがみついているだけでスタミナが減ってしまいます。
本作はUIがデフォルト設定だと非常に少なくて、ちゃんと手足がホールドできているか、今の姿勢はスタミナが減るのか回復するのかは、プレイヤーが判断することになります。手足のグリップはオプションで見えるようにできるので、難易度が上がってきたらこのオプションをオンにするのがオススメ。
スタミナが減る状況なのか回復する状況なのかはアーヴァの呼吸や手足の震えなどの挙動で判断するのですが、これが何とも本作の難点のひとつで、正直なところスタミナが減るのか回復するのかは、あまりよくわからない。
明らかに楽な姿勢のときはだいたい回復しますが、「え、これもダメ?」という感じにじわじわとスタミナが減る姿勢だったり、逆にだいぶきつそうな傾斜でも回復状態になったりと、けっこう曖昧。急に落下したりすることもあって難易度が上がる後半ではけっこうな理不尽ポイントになっているので、スタミナについてはグリップ同様にオプションで視覚化を可能にしたり、もう少しわかりやすい調整を期待したいところです。

アーヴァは体力のほかに空腹度、喉の渇き、体温の合計4つのゲージがあって、体力以外が減っていくとめまいを起こし、最終的にこれらが尽きると失神してしまいます。失神からの落下などで体力がなくなるとゲーム―バー。ビバークしたセーブポイントからのリトライとなってしまいます。
アイテムには水や食料、さらに薬などがあって、ビバーク中のテントの中や、歩ける平地ならいつでも使用可能。
元々持ち込んだ食料などだけでは当然足りないので、山中の食べられる草花や、湧き水、他の登山家が残していった物品で補充していきます。たまに、登山家本人が遺体となっていたりしますが。
また、この「マウント・カミ」の山麓には、かつてこの地を住処としていた一族がいて、その住居や施設などの跡で食べ物など物品を発見することも。特異な生き方をしてきた一族の文献や遺跡を見つけるのも本作の楽しみのひとつ。


クライミング中はバックパックを触れないですが、ピトン(ハーケン)を打って休憩姿勢が取れればバックパックの中身を使用可能。
また、ピトン(ハーケン)を打つと命綱もそこで固定されるので、落下してもピトン(ハーケン)の箇所から復帰が可能に。いわば途中セーブのような役割になっているので、上手くペース配分をして使っていくのが攻略のポイントとなります。

落下などで死亡してしまうとセーブポイントからやり直しになりますが、ピトン(ハーケン)を刺さないままでかなり登ってしまってから落下した場合、かなり前からのやり直しになってしまうことも。
本作はサクサクと進める中盤までと、難易度が上がってくる後半とでガラリと印象が変わるところがあって、中盤以降は通常難易度でもかなり歯ごたえが出てきます。プレイ次第では、いわゆる“苦行ゲー”のようなやり直しをすることにもなるので、ピトン(ハーケン)を惜しまず活用していくのがポイント。

本作の大きな魅力は、そのロケーションとビジュアル。
山ならではの激しい天候の変化や、時間の経過があって様々な表情を見せてくれますし、厳しい岸壁を登りきった先にある絶景ポイントからの景色は、登った甲斐があると言える美しさを達成感とともに味わえます。

本作はタイトル発表時から注目度が高く、配信開始からも非常に高評価されてきましたが、実際にプレイするとちょっと気になるところや人によって好みが分かれるポイントも。
本作は傾向として、“感覚的にクライミングをさせる”ところがあり、あまりゲーム的なUIを見せずにクライミングを成立させています。そのコンセプトの多くは成功していて、尖ったところのある優れたインディーゲームと言えるのですが……、
序盤~中盤までは言うなれば“このゲームを雰囲気でプレイしている”状態。スイスイと登っていけて、いろいろな未知の発見もあって、本作が圧倒的に素晴らしいゲームに感じられること間違いなしなのですが、中盤以降に難易度が上がってくると、気になるところがだいぶ出てきます。
主に以下の3点が、実際にプレイして改善してほしいと感じたところ。
・溝や突起を掴もうと手足を運んでも位置が少しでもズレているとグリップしてくれないこと
・スタミナが奪われる状態と回復する状態の区別がわかりづらい
・操作する手足の自動選択機能が、いざというときに限って上手く選択してくれない
いずれも本作のメインであるクライミングに関わるもので、落下に繋がってしまいます。グリップ判定がちょっと浅いところや、平地に登って立ち上がるときの判定もなぜか妙にシビアなので、これはもう少し補正してもいいのではと感じるところ(プレイヤーはちゃんと意識しているので)。
スタミナが減る姿勢なのか、それとも回復する姿勢なのかは、上でも触れたとおり、結構不可解なところがあります。本作はUIで情報を見せないスタイルでスタミナはその最たるものなので、手探りで理解するしかないトライ&エラーのストレスが強めに出てしまいます。
操作する手足の自動選択機能については、足ばかり連続して選択されたり、しっかりとホールドできている手をなぜか先に動かそうと選択するなど、ちょっとプレイヤーの意図とずれることが見られるというもの。特にスタミナが厳しいシチュエーションほど自動選択に悩まされることになりがちで、手動選択をするにしても、スタミナが厳しいときは時間の猶予がなく、厳しいです。
このあたりがもう一歩うまく調整されていれば本作はゲームプレイにおいて唯一無二で非常に魅力的なものになったと思いますが、プレイした時点のものだと、よくできているだけに“惜しいゲーム”というのが、素直な感想です。
あとは、ちょっとストーリーとキャラクターが、好みがわかれるところかな……というのがありますね。

手足を操作し岸壁を登っていくクライミングゲームとして、かなりの高水準な本作。空腹度や喉の渇きといったリソース管理の焦りがプレイヤーを追い込むサバイバル感、落下の恐怖とビバークポイントまで登ったときの達成感、そして主人公アーヴァの葛藤。いずれもインディーゲームの枠を超えているぐらいにレベルの高いものとなっています。
ただ、上でもまとめた判定などのシステム的な調整不足や、UIを少なくしていることでゲームシステムの理解がしづらく、上達しづらいという弊害は、問題として小さくはなくて、人によっては本作への大きな不満になるのではと感じます。
そのあたりは、今後にアップデートで調整されるのを期待したいところ。
そうした懸念点はありますが、現時点でもトライ&エラーも冷静に取り組めるという人にはゲームプレイも十分にオススメできます。本作にしかない魅力も多く、非常にハイクオリティ。ハマる人はかなり心に残る1本になるはず。ぜひチェックしてみてください。
© The Game Bakers 2026
