見城こうじのアケアカ千夜一夜
第55夜『ヴォルフィード』(1989年・タイトー)

演出・ゲーム性ともに優れた陣取りアクションゲーム
『ヴォルフィード』は『クイックス』の流れをくむ固定画面の陣取りアクションゲームです。
元になった『クイックス』は陣取りアクションの始祖的存在で、多くの続編やオマージュともいえるゲームが作られました。『ヴォルフィード』は、それらの中でももっとも完成度の高い作品の一つといえるのではないでしょうか。
ゲーム性だけでなく、演出的にもたとえばプレイヤーが空間を切り取ったあとに見えるのが次のラウンドの背景というアイデアも、じつに美しいと思います。どんどん下の階層へ潜り込んでいくようなイメージです。

『クイックス』からの変更点、そして工夫の数々
『ヴォルフィード』は『クイックス』から9年後にリリースされた製品です。それだけ間隔が空いているため、『クイックス』の時代にはほとんどなかったラウンドごとのビジュアルやギミックの変化が加わっています。
とくにプレイヤーが相対するボスキャラクターの性格が、1ラウンドごとにまったく異なるところは、『クイックス』からもっとも大きく変わった点といえます。
さらにアイテム要素によるメリハリが加わっている他、『クイックス』において若干とっつきにくかった仕様がことごとく修正されています。
まず前述の敵ボスのアルゴリズムがわかりやすくなったのがすごく大きくて、ボスの移動や攻撃のパターンに明確な緩急や法則を作っており、弾を発射するタイミングで一時的に動きを停止するなど、プレイヤーの勝負どころがとてもわかりやすくなっています。
他にも重要な点として、ラインに関するルールにかなり手が入っていて、根本に近いところから再構築されています。
たとえば伸ばしたラインを逆戻りできるとか、ラインに敵が触れても即ミスにならないなど、ルールをよくわかってないプレイヤーがいきなり理不尽に感じることがないよう、よく考えられています。
他にも、外周に沿って追ってくる敵がおらず、その代わりにボスと同じように空間を自由に移動するザコキャラを追加することによってゲームバランスを再構成しているのは、かなり大きな方針変更ではないでしょうか。
このように『クイックス』に対して『ヴォルフィード』がグッと遊びやすくなっているのは間違いないのですが、個人的には、どちらのゲームの考えかたにも理があるとも思います。
というのは、プレイヤーが外周上にいるか、ラインを伸ばしている最中かで、まったく異なるロジックの敵を用意して役割分担をさせている『クイックス』のゲームデザインはとても美しいと思うんです。
その一方で、ラインを伸ばしているとき以外は原則として死ぬことのない『ヴォルフィード』は、とても遊びやすいゲームになっています。『ヴォルフィード』には、プレイヤーにとって絶対的に安全な時間があり、しかもそのタイミングもプレイヤーの意思で決められます。これは遊ぶ上で大きな納得感になります。
こうしたゲームデザインに関する両ゲームの考えかたの違いは、とてもおもしろい。
それから、陣取りジャンルに関してですが、『クイックス』や『ヴォルフィード』は、同じ陣取りタイプのゲームとして『アミダー』や『ダンシングアイ』等と比較されることが多いのですが、後者の2作はプレイヤーのマーカーがあらかじめ設定された経路上しか移動できないので、フィールドを自在に移動できる『クイックス』等とはかなり考えかたが異なると思います。
そういう点では、ほぼ同じゲームシステムを流用している続編や亜流を除くと、アーケードゲームで『クイックス』に一番近いのは『ディスコNo.1』辺りかもしれませんね。……いや、これもけっこう違うかな。

『ヴォルフィード』はボスオンパレードを楽しむゲームといえるのかもしれない
今回改めて『ヴォルフィード』をプレイしてみて、自分なりの気づきがありました。『クイックス』にボスバリエーションの要素が付加されると、“ボスとの一騎打ちを楽しむゲーム”である点がより強調される、ということです(ザコ敵も混じってはいますが)。
そして、それが『クイックス』型のゲームシステムととても親和性が高いことも改めて感じました。ボスを直接攻撃できないがゆえに、より動きをしっかり見て対応することが求められます。『ヴォルフィード』は各ラウンドのボスの行動パターンを解析して攻略する“ボスオンパレード型”のゲームなのです。
なお、このゲームの企画は、『ハレーズコメット』『バブルボブル』『レインボーアイランド』『サイバリオン』などでも知られるMTJ(三辻富貴朗)さんが担当されています。
当時MTJさんからお聞きした話によると、このゲームより前に『スーパークイックス』がリリースされたことで、営業的な事情から一時的に『ヴォルフィード』のリリースが保留されていたそうです。最終的に世に出て本当によかったなあと感じる快作です。
では、また次回。

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