「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第二十一回 オープニング

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    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第二十一回 オープニング
  • 公開日
    2022年01月28日
  • 記事番号
    6887
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第二十一回目のテーマは、「オープニング」です。

あくまで筆者の私見ですが、「オープニング」は、プレイヤーを感動させることを目的に用意される「エンディング」に比べると、あまり注目されてこなかった感があります。しかし、いざ調べてみると、そこには先人たちによって編み出された、さまざまな創意工夫が盛り込まれていることがわかります。

以下、今回も筆者の思い付く限りではありますが、あの手この手でプレイヤーをゲームの世界に引き込み、ゲームに夢中にさせる「オープニング」の数々を、その歴史を振り返るべく、古い時代のタイトルを中心にご紹介していきましょう。どうぞ最後までご一読ください!
  

「ゲームニクス」とは?

現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!

ビデオゲーム黎明期の「オープニング」

初めに、黎明期のアーケードゲームに導入された「オープニング」の演出をご紹介しつつ、その歴史を振り返ってみましょう。

黎明期のタイトルには、当コラムの第十回目でも取り上げた「デモ画面」はいろいろな演出があった一方、「オープニング」には目立った演出はなかった感があります。

例えば、『PONG(ポン)』(Atari/1972年)や『Breakout(ブレイクアウト)』(Atari/1976年)などの有名タイトルには「オープニング」の演出はなく、クレジットを投入またはスタートボタンを押すとすぐにゲームが始まります。

『スペースインベーダー』(タイトー/1978年)も、クレジットを投入すると画面に「PUSH ONLY 1PLAYER BUTTON」と英語で表示され、スタートボタンを押すと「PLAY PLAYER<1>」と表示されてからすぐにゲームが始まるので、特に「オープニング」と呼べるような演出はありません。
  

時代が少し進むと、『ギャラクシアン』(ナムコ/1979年)や『パックマン』(ナムコ/1980年)などのように、スタートボタンを押すとゲーム開始を告げるジングルが流れる「オープニング」の演出が導入されたタイトルが現れ始めます。当時はBGMやジングルに、クラシック曲やヒットソングをもじったものを使用するのが当たり前の時代でしたから、これらのタイトルのようにオリジナルのジングルを用意しただけでも画期的でした。

ジングルを流すだけでなく、さらにアニメーションも交えた「オープニング」を導入した最も古い例のひとつが、おそらく『ルパン三世』(タイトー/1980年)ではないかと思われます。

本作は、主人公のルパンを操作して、敵の銭形警部や犬などを避けつつドル袋を盗むアクションゲームですが、ゲームスタート時にルパンがヘリコプターからロープを垂らし、屋上からビルに侵入する「オープニング」のシーンがあります。今の目で見ると極めてシンプルな「オープニング」ですが、プレイヤーはまるで自身がルパンになったかのような気分になる、実に見事な演出でした。

また、同じタイトーの『エレベーターアクション』(タイトー/1983年)にも、主人公がビルの最上階(エレベーター)にロープを引っ掛けて潜入する「オープニング」があります。こちらも『ルパン三世』に似たタイプのアクションゲームゆえ、もしかしたら開発時にオマージュ的な演出を入れようとの意図があったのかもしれませんね……。
  

初期のシューティングゲームで、特に凝った「オープニング」を用意していたのが『ムーンクレスタ』(日本物産/1980年)です。

本作には、3機の自機が合体した状態で出現し、1号機だけが分離する「オープニング」があります。こちらもプレイヤーを合体ロボットアニメのパイロットになったかのような気分にさせてくれる、ワクワク感に満ちた「オープニング」だったように思います。
  

黎明期のタイトルの中でも、特に有名な「オープニング」のひとつが、おそらく『ドンキーコング』(任天堂/1981年)になるでしょう。

本作には、ゲーム開始直後にレディを連れ去ったドンキーコングがハシゴを駆け登ると、繰り返しジャンプしながら鉄骨を踏み鳴らし、最後にプレイヤーを挑発するかのようにガハガハと笑う「オープニング」があります。プレイヤーにレディを救出するのが目的であることが明確に伝わるとともに、「憎たらしいヤツめ、俺がやっつけてやるぜ!」などとモチベーションを大いに高めてくれる、これまた秀逸な演出です。
  

ところで、オリジナルのジングルを流しつつ、アニメーションも交えた「オープニング」を最初に導入したタイトルは何だったのでしょうか?
いろいろ調べてはみたのですが、前述の『ルパン三世』(※1980年4月発売)以前のタイトルにも「オープニング」があったのかどうか、はっきり確認することができませんでした。
もしご存知のかたがいらっしゃいましたら、ぜひご一報を!

プレイヤーのモチベーション、没入感を瞬時に高める「オープニング」いろいろ

『ドンキーコング』のように、敵にガールフレンドやお姫様がさらわれてしまう「オープニング」は、プレイヤーに対し短時間で極めてわかりやすく、勧善懲悪のストーリーを伝えることができるためなのか、古い時代から定番になっていた感があります。

『魔界村』(カプコン/1985年)をはじめ、『影の伝説』(タイトー/1985年)、『ダブルドラゴン』(テクノスジャパン/1897年)、『ロンパーズ』(ナムコ/1989年)のほか、主人公のひとり、ハガーの娘が敵にさらわれてしまう『ファイナルファイト』(カプコン/1989年)など、非常に多くのタイトルで見ることができます。
  

上記の演出と似たパターンで、味方のキャラクターや基地、母星などが敵軍の襲撃を受けるシーンを流す「オープニング」も昔から多く、『サイドアーム』(カプコン/1986年)や『1943』(カプコン/1987年)、『アルカノイド』(タイトー/1986年)などがこれに該当します。また『熱血高校ドッジボール部』(テクノスジャパン/1987年)では、主人公のくにお君が他校の生徒に突然ボールをぶつけられる、ユニークな「オープニング」を見ることもできます。

以下の写真は『1943』の「オープニング」ですが、味方の空母が敵機に爆撃された直後に、自機のP-38が発艦することで、自軍がピンチに追い込まれた状況であることがとてもよく伝わってきます。さらに空母をよ~く見てみると、被弾した直後に画面向かって左側に傾く、実に細かい演出も盛り込まれています。
  

シューティングゲームでは、自機が母艦やカタパルトなどから発進するシーンを「オープニング」に盛り込み、プレイヤーのモチベーションを高める演出も古くから定番になっています。

『スターフォース』(テーカン/1984年)、『ASO』(SNK/1985年)、『A-JAX』(コナミ/1987年)、『アフターバーナー』(セガ/1987年)、『雷電』(セイブ開発/1990年)、『空牙』(データイースト/1990年)、『首領蜂』(アトラス、開発:ケイブ/1995年)など、こちらも枚挙にいとまがないほど多くのタイトルに導入されています。
  

ビデオゲーム黎明期から数あるシューティングの中でも、筆者がとりわけ感銘を受けたのが『タイムパイロット』(コナミ/1982年)の「オープニング」です。

本作は、スタートボタンを押すと1面のマップに即切り替わるのではなく、ジングルが流れるのと同時に、背景が反時計回りに流れるようにして徐々にマップに切り替わる、当時としては非常に珍しい「オープニング」があります。まるで空間をワープしてタイムスリップしたかのような気分にさせてくれる、その美しさとカッコよさに少年時代の筆者は震えるほど感動したのを今でも鮮明に記憶しています。
  

ほかにも、短時間でプレイヤーを個々の世界観に引き込む、非常に工夫を凝らした「オープニング」はまだまだたくさんあります。

例えば、アクションゲームの『トイポップ』(ナムコ/1986年)や『メルヘンメイズ』(ナムコ/1988年)は、どちらも文字どおりポップでメルヘンチックな独特の世界観にプレイヤーを引き込む「オープニング」があります。特に後者の、ヒロインのアリスが鏡を覗き込むと鏡面にウサギが突如出現し、鏡の中の世界へと誘い込む演出は、ビジュアルもジングルも非常に優れていたように思います。

逆に『源平討魔伝』(ナムコ/1986年)は、時代劇映画の「オープニング」をほうふつとさせるアイキャッチが流れ、直後に不気味な風貌の安駄婆(あんだばあ)が画面いっぱいに出現し、「ひゃっひゃっひゃっひゃっ……」と笑うことで、プレイヤーをおどろおどろしい世界に引き込む、インパクト抜群の「オープニング」が用意されていました。
  

また、ベルトスクロールアクションゲームの『天地を喰らうII』(カプコン/1992年)には、兵士が敵軍の来襲を劉備に報告すると、諸葛亮が「ご安心ください。すでに策を練ってあります。武将をお選びください」と語るシーンに続く形で、武将(主人公キャラ)のセレクト画面へと移行する「オープニング」があります。こちらもプレイヤーがゲームの世界にすんなりと溶け込める、とても良く考えられた演出になっています。

レースゲームの『アウトラン』(セガ/1986年)には、プレイヤーがBGMを選択する「オープニング」のシーンが登場します。ここではドライバーが右手でカーラジオのダイヤルを操作する画面になっていて、プレイヤーがハンドルを動かして曲を変更すると、ドライバーの手も動くようになっています。まるで実際にドライブに出掛けるかのような気分にさせくれる、これまた実に見事なアイデアですね。

そして、地味ながらも実に味わい深いのが『マッピー』(ナムコ/1984年)の「オープニング」です。

本作は、スタートボタンを押すと主人公のマッピーが敵キャラのニャームコとミューキーズたちを追い掛けるアニメーションが流れ、さらに1面の画面に切り替わった瞬間、マッピーが自動でトランポリンに向かってジャンプし、すぐ向こう側にある床に着地します。マッピーは着地した直後に後ろを振り返り、頭上には「?」マークが表示され、「?」が消えたところでゲームがスタートします。

冒頭のアイキャッチだけでなく、あえてマッピーにトランポリンで1回ジャンプさせることで、本作はトランポリンでの移動が可能であることをプレイヤーに示す、チュートリアルも兼ねた「オープニング」になっているというワケですね。

以上のように、古くからアーケードゲームの「オープニング」には、ほんのわずかな時間でプレイヤーのハートをいかにつかみ、夢中になって遊んでもらえるか、ひいては1枚でも多くの100円玉を投入してもらうための工夫が凝らされていたように思えてなりません。
  

黎明期のPC・家庭用ゲームの「オープニング」

ここからはPC・家庭用ゲームで、古い時代に導入された「オープニング」の例をご紹介しましょう。

初期のアクション系のゲームでは、アーケードと同様に簡単なアニメーションまたは1枚絵を表示し、同時にジングルも流すことで、ゲームの目的やストーリーを紹介する「オープニング」が古くから数多く見受けられます。

例えば、PC用アクションゲームの『ドアドア』(エニックス/1983年)には、ゲーム開始時にジングルが鳴り、主人公のチュン君が敵キャラたちと対峙するシーンが表示される「オープニング」があります。またファミコン用アクションゲームの『アイスクライマー』(任天堂/1985年)には、敵のコンドルが得点アイテムにあたる野菜(ナス)を上空に持ち去るシーンを流すことで、プレイヤーに氷山を駆け登り、敵から野菜を奪還するのが目的であることを明確に伝える「オープニング」が登場します。
  

超有名タイトルの『スーパーマリオブラザーズ』(任天堂/1985年)シリーズは、初期の作品には「オープニング」の演出がありませんでした。昨今のシリーズでは、大魔王クッパやその手下にピーチ姫のお城が襲撃されたり、ピーチ姫がさらわれたりする「オープニング」が定番になっていますが、かつては「オープニング」すらなかったとは、今となっては驚きですね。

筆者の知る限りではありますが、同シリーズで最初にインパクトのある「オープニング」を用意したのは『スーパーマリオ64』(任天堂/1996年)だったように思います。

本作には、ピーチ姫がマリオに「お城へ遊びに来てください」と招待状を送るシーンの後、カメラワークをプレイヤーに説明する役目を負うジュゲムブラザーズが登場し、さまざまなアングルから周囲のマップを映し出す「オープニング」があります。シリーズ初となる3D化されたマップの広大さやリアルさを、プレイヤーに「これでもか!」と言わんばかりに見せ付け、まさに新時代の到来を告げるかのようなワクワクする演出になっていました。
  

初期のRPG、とりわけフロッピーディスクを使用していた時代のタイトルには、ゲームスタート前にアニメーションを流す「オープニング」デモを用意して、プレイヤーのワクワク感を高めるタイトルがとても多かったように思います。

例えば『ザナドゥ』(日本ファルコム/1985年)では、剣士や魔法使いと思しき、リアルに描かれたキャラクターが1人ずつ出現してタイトル画面が完成する「オープニング」デモがあります。さらに続編の『ザナドゥ シナリオII』(日本ファルコム/1986年)には、主人公の剣士が現れた直後にノリノリの「オープニング」テーマ曲が流れる演出があります。

同じく、日本ファルコムの『イースII』(日本ファルコム/1988年)では、主人公アドルと少女リリアの出会いのシーンやスタッフロールなどを交えた、非常に長いアニメーションとテーマ曲が流れる「オープニング」デモがあったことは、当時からPC用ゲームを遊んでいたかたであればよくご記憶のことでしょう。
  

「オープニング」デモとは異なる、非常に凝った「オープニング」の演出を用意したことで有名になったタイトルのひとつが、おそらく『ファイナルファンタジー』(スクウェア/1987年)でしょう。

本作はキャラクターメイキングからゲームが始まり、スタート地点の近くにいる敵のガーランドを倒して王女を救出後、王様に会ってから城の近くにある橋を渡ると「オープニング」のシーンに切り替わります。スタッフロールを交えつつ、プレイヤーに対してこれから本格的な冒険の旅が始まることを告げるメッセージが表示される、当時としては非常に珍しい演出で、一度見たら容易に忘れないであろう強烈なインパクトがありました。

『FF』シリーズと言えば、当時「次世代機」と呼ばれたプレイステーションの高性能を生かし、「オープニング」以外のシーンでもムービーをふんだんに取り入れた『ファイナルファンタジーVII』(スクウェア/1997年)があまりにも有名ですが、シリーズ初期から「オープニング」の演出に凝っていた事実は特筆に値します。
  

『メタルギアソリッド』(コナミ/1998年)シリーズは「オープニング」に限らず、本物の映画さながらの迫力を実現したムービーが楽しめることで有名です。ですが、実は元祖『メタルギア』(コナミ/1987年)にも、飛行機から主人公のソリッド・スネークがパラシュートでジャングルに降下し、着地後に上官のビッグボスから任務を伝える無線が入ることで、プレイヤーが特殊部隊の一員になったかのような気分にさせる、凝りに凝った「オープニング」が用意されていました。

同じく、アクションアドベンチャーゲーム『スーパーメトロイド』(任天堂/1994年)にも、元祖『メトロイド』(任天堂/1986年)には存在しなかった素晴らしい「オープニング」のシーンがあります。

ゲーム開始直後、字幕とともに英語のナレーションが流れると、主人公のサムスがモノクロのムービーを織り交ぜつつプロローグを語るシーンに切り替わります。その後、サムスが乗り込んだ宇宙船がスペースコロニーに到着したところで、プレイヤーは初めてサムスを操作できるようになります。まるで海外のSF映画の主人公になったかのような気分にさせてくれる、実に見事な演出でした。
  

最後に、今となっては「消えた文化」と言っても差し支えないであろう、サウンドにフォーカスした「オープニング」のアイデアをご紹介します。

アーケードからファミコンに移植された『グラディウス』(コナミ/1986年)にはゲーム開始直後、1面の前衛地帯で流れるBGMのイントロ時に、ショット発射音や破壊音などすべてのSEをあえてカットし、全3和音をBGMのパートに割り当てることで、プレイヤーにじっくり曲を聴かせる演出があります。

同様の演出は、続編にあたるファミコン版の『沙羅曼蛇』(コナミ/1987年)や『グラディウスII』(コナミ/1989年)などにも導入されており、いずれもサウンドの素晴らしさをプレイヤーに伝える、実に見事な「オープニング」のアイデアです。

また、『がんばれゴエモンからくり道中』(コナミ/1986年)は、主人公のゴエモンが屋根の上で見得を切るパフォーマンスとともに、敵キャラが「御用だ!」と叫ぶボイスが聴ける「オープニング」があります。当時はキャラクターがしゃべるタイトルは非常に珍しかったので、 「このゲームは敵がしゃべるんだ!」という驚きをプレイヤーに与える演出になっていました。

同様に、アドベンチャーゲームの『デッドゾーン』(サン電子/1986年)には、本作のキャストが表示されるとともに、「なぜ俺は、ここにいるんだ?」というボイスが流れ、プレイヤーをびっくりさせる「オープニング」が用意されていました。
  

以上、超駆け足となりましたが、古い時代の「オープニング」の数々をご紹介させていただきました。ほかにも、ぜひ皆さんに知っていただきたい、秀逸な「オープニング」の例はまだまだたくさんありますので、機会を改めてご紹介したいですね。

なお、「ゲームニクス理論」における「オープニング」に関するくわしい解説は、筆者とサイトウ・アキヒロ先生の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」の「原則4-A-①:スタート時のつかみ」などのページに書いてありますので、ご興味のあるかたはぜひ御覧ください。

それでは、また次回!

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