餅月あんこのゲーセンに行きたい!
目次
第48回 『Wonder Boy Collection』のことを知りたい!(後編)
前回に引き続き、監修を担当する株式会社ラクシスエンタテインメントさんにお邪魔して、開発中の『Wonder Boy Collection』を、坂本慎一さんにプレイしていただきつつ、代表の栗原孝典さんとのお話をうかがわせていただいております!
栗原孝典さん
株式会社ラクシスエンタテインメント代表取締役。『モンスターワールドII ドラゴンの罠』『ワンダーボーイV モンスターワールドIII』ではメインプログラムを担当。
坂本慎一さん
あまた株式会社 技術開発部 音響課所属、あまたサウンドチーム「伯林青(ベレンス)」メンバー。『モンスターワールド』シリーズでは多くのタイトルのサウンドを担当。
『ワンダーボーイIII モンスターレア』の続き
僕はこの頃はウエストンに入ったばっかりで、ROMを焼いたり、データを打ち込んだり、アシスタント的なことをしてました。デバッグやテストプレイなんかもして。夜中、ROMを焼いて、朝、プログラマーさんが来る時には新しいROMになっているように、みたいな。
焼いてあってね(笑)。……これ、2Pプレイでやると、(ひとりがゲームオーバーになってもコンティニューすると)ゲームが止まらないから、曲がずっと流せるんですよ。
――― なるほど!
それまではゲームオーバーになるとリスタートがかかってたから、曲がアタマからばっかりかかっちゃうんですよ。僕は、短い曲じゃないと、起承転結を早めにしていかないと全部を聴いてもらえないと思ってたんだけど、『ワンダーボーイIII モンスターレア』に関してはずっと曲が流れるようにしてほしい、ってお願いして、淡々とやられるんだけど、曲は止まらないようにしてもらったおかげで、長尺の曲が作れるようになったんですよ。
――― なるほどなるほど!
だから今までとは系統が違うんですよ。アーケードとしては。
――― (コントローラーを渡されて)何が(ボタン操作は)どれですか?
やればわかるよ。
――― あっ、死んだよ、もう。10秒やってないよ! ……シューティングなんですね、これは。
安地(安全地帯)を探して……。
――― ムリムリムリ! 私のシューティングのヘタさをナメないでください! 終わった。
(笑)もういいかな。ここまではアーケードで、『ワンダーボーイ』シリーズとしてはアーケードの作品としてはこれで最後なのかな。
そうですね。
次はメガドラ版。
これはエイコムさんが作ったバージョンなんですよね。
この頃、これから協力プレイ、マルチプレイ、がスタンダードになるんじゃないの、みたなことを言ってたら……対戦格闘ゲームが出て来たんだよね。あれでアーケードの流れが全く変わっちゃったのもあって、このシリーズはここで終わったと言えるかな。アーケードの歴史が変わったのは間違いないんで。だからそういう不運もあったよね。
――― 流れがそういう感じになっちゃったんですね。
ここにあるの(『モンスターワールドII ドラゴンの罠』ゲームギア版)は僕たちが作ったやつだよね。移植版はほとんど自分たちで作ってないけど。
そうですね、このゲームギア版も移植なんですけど、ウエストンでは初めて自分たちのタイトルを移植したタイトルです。
セガ・マークIII版とゲームギア版では、まず画角が違って、いっぺんに表示される領域がせまかったから、作り直しみたいな感じで。
企画から考えないと。ゲーム自体がかなり緻密にできてるので、マップの表示エリアが変わると、仕様も変更しないといけなくて。
――― なるほど~。
ここからが家庭用になるから、コンティニューとかパスワードとか……メモリセーブがまだなかった時代だから。
日本語にしましたよ。西澤さんからはそうとう反対されましたけど……。
何で?
日本語がきれいなフォントで出ないと嫌だと。
美的感覚ね。
――― オリジナルバージョンでは英語だけなんですか?
日本語版も作ったんですけど、セガ・マークIIIからもうメガドライブに移行する時期だったので、日本ではリリースせずに、海外だけでのリリースだったんです。だから坂本さんは日本向けには当然FM音源で作ってたんですけど、すごいショックでしたよね。
日本でのリリースがなくなったのはね。
FM音源で作った曲はもう一生聴けないの!? って。……これは坂本さんもプログラムをやってるんですよ。
――― えぇ~。
サウンドの制御をしてるのは坂本さんのプログラムなんです。ビックリですよね。
何で?(笑)
ウエストン、プログラマーすごく多いから。
CPUが1コしかなかったからさ。アーケードだとCPUが2コついてるから、描画をするプログラムと、音楽を鳴らすプログラムが別なの。だけど家庭用ってだいたい1コしか載ってないから、僕がヘタなプログラムを打つと、コッチ(ゲーム)が動かなくなっちゃうっていう(笑)。すごくシェイプして、高速で動かすようにしないとゲームがまわらなくなっちゃう、音のせいでゲームができなくなっちゃう(笑)。
――― へぇぇ~。
『モンスターワールドII ドラゴンの罠』
これが海外で一番人気があるタイトルかもしれないですね。
人間だったのに、呪いをかけられてドラゴンにされちゃって、「オレこれからドラゴンで生きてくの!?」ってなってるんだけど、道中を進んでいくうちにいろんなアイテムによって封印が解かれることで、他の動物に変化できるようになるの。
ボスと戦うと、呪いによってまた別のものに変わるんです。で、キャラクターの能力が違うので、空を飛べたり、行けるところが広がったり。
――― へぇ、おもしろい!
マウスマンとかだと等身がせまいから、こんな一列のところに入っていけるの。ドラゴンだととおれれないから、「あそこに宝箱があるんだけど、どうやったら取れるの?」っていうのを見せつけられてたのが、変身すると取りに行けるようになるっていう。これは僕、すごい真面目に曲いっぱい作ったよね。
――― (ふだんは真面目に作ってないのか?)
坂本さんは僕の机のすぐ横だったんですけど、新人だから、坂本さんにプログラムをすっごい教えてもらったんですよ。
(笑)
新人は5人いたんです。4人は石塚さん(石塚路志人さん)っていう、ウエストンいちのプログラマーに教えてもらってたんです。
ウエストンいちどころか、日本でも指折りのプログラマーだよ!
僕だけが何か知らないけどひとりぼっちで(笑)。
ハズレを引いたね(笑)。
坂本さんが隣の席で、けっこう茶々を入れてくれて。いろんなことを教えてくれましたよ。今思うと教えかたも上手かったなって。
(笑)
わからない人にいきなり難しいことをやらせるのって厳しくて、小出しにしていったほうが覚えやすいじゃないですか。そういう風にしてくれて。サウンドドライバ―を作ったらデバッグ用のプログラム作って、とか。音符出して、ちょっと確認したいんだよね、みたいな。
あ~、思い出した。
そういうのをやると、ハードの知識とかも身につくし、音符とかもリアルタイムに動かさなきゃいけないんで、そういうのを教えてもらってましたね。
あったね、そういうの。
坂本さんと石塚さんにけっこう教えてもらった感じはしますよね。西澤さんも当然プログラムはできるから、相当書いてるはずなんですけど、西澤さんに教えてもらった記憶はゼロです(笑)。
――― そうなんですか!
プログラムに関しては(笑)。インタビューでも、西澤さんにプログラムをどうこう、っていう話は一切してないです。字数のことしか話してないです(笑)。
(笑)
変更が多い、プログラムに関する仕様がない、とか。西澤さん仕様書みたいなのあんまり作らないから、絵とかマップとかを描いたりするときは、西澤さんが考えたとおりにするのに、方眼紙に細かいデザインというか、マップの構成とか敵の配置とかを描いてましたけど、プログラムは最終的に動けばいいので、細かい仕様書とかないんですよ。だからどうやって作ったらいいかわからないじゃないですか、新人としては(笑)。
『ワンダーボーイV モンスターワールドIII』
『ワンダーボーイV モンスターワールドIII』、これはね、僕がシリーズの中で一番好きなゲーム。自分ではやりきった感があって、だからさっきのゲーム(『モンスターワールドII ドラゴンの罠』)は海外で人気があるって言ってたけど、僕はこっちのほうが好きなんです。
――― へぇ~。
開発としてはこれが一番おもしろかったかな~。
おもしろかったよね。『モンスターワールドIV』のほうが遊びやすくはなってるんだけどね。
『モンスターワールドIV』はどちらかというとアクションRPG路線というよりは、『ワンダーボーイ』に近い、プラットフォームアクションに近くて。行ったところにはもう戻れないみたいな。このゲームとかは行きそこなったところにいつでも戻れるから、遊ぶ幅が広いですけど。
『モンスターランド』をオマージュしてて、同じ構成にしたりして。ここ(ゲーム冒頭)で前作のエンディングのアレンジ曲を流したりとか。
――― うんうん。
何かあれだね、液晶で見るとすごいね、ドットが。当時と違って。これはあれはつけないの? 何となくボヤかすモードとか。
ありますよ。(設定しながら)シェーダーとかって……。
ああ、変わった変わった。
すごく細かい設定があって。ブラウン管……CRTとかガンマ値とか……。
おお、画面の角が丸くなった。こういうのは海外のプレイヤーさんたちはこだわるのかな?
すごくこだわりますね。当時のブラウン管のテレビと同じように遊びたい、っていう。
――― なるほど~。
うわ~、ほんとにブラウン管みたいだね。
これはハードの再現性がすごく高くて、オーバーランするときにもオーバーランするんですよ。
――― 小泉進次郎さん構文?
(笑)オリジナルバージョンと同じように処理落ちするんですよ。
これはどこが移植したの?
ドイツの会社です。『アクワリオ』を移植したメーカーです。
これ、ある意味『モンスターランド』に近いよね。
そうですね。『モンスターランド』と、『モンスターワールドII ドラゴンの罠』が合体したみたいなゲーム性だと思いますね。
『モンスターワールドIV』
最近、Switchで出ましたね、リメイクが(『ワンダーボーイ アーシャ・イン・モンスターランド』)。そのオリジナルです。動き自体は格段にアクティブになってるし、メガドラだけど、容量がだいぶ増やせるようになってて、キャラクターのCGをたくさん置けたから。こういう影のところはまだまだ網点なんだけどね。
そうですね。それまでの作品と違って、前作はビビッドな色が多かったんですが、色合いがちょっと淡い色を使ってたりとか。
このとき、僕、全然ゲームを作ってるところは見てなかったんですよ。
僕も見てなかったですね。チームのフロアが違うっていうのもありましたけど。
どういう進捗してるかあまりわかってなくて、サウンドは全部、JINくん(渡邉人さん)に任せてたから。僕たちはこのゲームに関してはあんまり語るところがない(笑)。リメイク版は作ったけどね。まあ、『Wonder Boy Collection』、入るゲームは全部で6本なんだよね。で、それにそれぞれいくつかのプラットフォームがあるっていう。で、ハードによって遊び心地が違ってくるけど、っていうことだよね。
うんうん。
ウエストンもこのゲームだけ作ってたわけじゃないんだけど、社内ではこのゲームは聖域化されてたから。このチームに入れるかとか。他のゲームはビジネスラインで考えてたけど、このプロジェクト全体はあんまり利益のことは考えないで作ってて、『ワンダーボーイ』シリーズは、「自分たちがどう作りたいか」ってことばっかり考えてたから、どのクライアントにも影響を受けないゲームみたいな。
――― へぇ~。
セガさんから企画自体を提出してくださいとは言われなかったし。
そう、セガさんからリリースされるんだけど、セガさんは全部こちらに任せてくれて、「こうしてほしい」とかって言われることもなくて。さっき話した『ワンダーボーイIII モンスターレア』みたいに「インカムを稼げるゲームにしてほしい」っていう大枠のお題が降りてくることもあるんだけど、内容に対してはフィードバックやNGが出ることは一切なくて、作ったままリリースしてくれて。
――― へぇ~。
だから、すごく特殊なプロジェクトだったよね。
全般的に、ウエストンは時代に乗り遅れてるんです。
(笑)
『モンスターワールドII ドラゴンの罠』もそうですけど、プラットフォームの終了直前に作ったので。どうせお金をかけるなら、新規プラットフォームにチャレンジして、そのプラットフォームを効率良く長く使うとかすれば、開発の負荷も少なくなって、無駄なコストが削減できるんだけど、ウエストンは後から(リリースから少し時間の経ったプラットフォームに)手を出すから、寿命が短いんですよね。新しいハードにチャレンジしなきゃいけなくなるから。
ドリキャス(ドリームキャスト)ぐらいじゃないかな、ローンチに近いところでやれたのは。
便利な機能でクリアを目指せ!
これって、エミュレーターで動いてるの?
そうです。
そしたら、『モンスターワールドIV』のリメイク……『ワンダーボーイ アーシャ・イン・モンスターランド』みたいに、Switchで作り直してるからそうなんだけど、効果音とBGMってどっちも鳴っちゃうじゃん、ちゃんと。ハードがちゃんとエミュレーションされていれば、効果音が鳴ってる時にBGMが止まったりしてるわけですよ。そこは再現されてるってこと?
再現されてると思う。
じゃあ本当に、遊ぶ人は、当時のゲームの感覚でコンシューマー版にしてもアーケード版にしても遊べるってことだよね。あと、ヘルプ機能はあるの?
開発側でいくつかの機能を考えているようですが、何が実装されるのか、まだ知らないです。
巻き戻しができるって言ってたけど、全タイトルでできる? これがあれば、苦手なゲームや、今までクリアできなかったゲームがクリアできるようになりますよ!! ということですね。
© SEGA/LAT/BLISS BRAIN/UNITED GAMES ENTERTAINMENT GMBH ORIGINAL GAME © SEGA/LAT