大宮がゲームで熱くなった2日間! ソニックシティ30周年イベント「埼玉ゲームシティ」レポート
目次
去る2019年3月2日、3日の2日間、さいたま市大宮のソニックシティで「埼玉ゲームシティ」が開催されました。同イベントはソニックシティ開業30周年記念事業の一つとして、「遊んで学べる!体験型ゲームイベント」をテーマに企画されたものです。
ビデオゲームに関するさまざまな展示では、当サイトがテーマにしているレトロゲームも扱われるとのことで、さっそく取材してきました。
ソニックシティ初となるゲームイベント
埼玉ゲームシティは、一部の有料公開エリアを除いて基本的に入場料無料。週末のイベントということもあり大盛況で、特に日曜日にあたる3日はあいにくの雨模様だったにもかかわらず、多くの来場者で会場は熱気に満ちていました。
イベントは大きく6つのコーナーで構成されていましたが、その中で、当サイトが特に注目していたのは、レトロゲームが体験できる「あそぶ!ゲーム展」。こちらについては、後述で詳しくレポートするとして、まずはそれ以外の催し物について紹介していきます。
ステージイベント
ステージでは、『ウイニングイレブン 2019』(PS/2018年/コナミ)や『実況パワフルプロ野球2018』(PS/2018年/コナミ)のeスポーツデモンストレーション、『ストリートファイターV アーケードエディション』(PS他/2018年/カプコン)ではeスポーツ選手によるエキシビジョンマッチなど、eスポーツイベントで構成されていました。プロのテクニックを生で見られ、eスポーツに興味のある来場者は学ぶことが多かったのではないでしょうか。
新作&人気ゲーム体験コーナー
出展社数は少なめの印象はあったものの、どのブースにも大勢の来場者が列を作り、ゲームを楽しんでいました。特に目を引いたのはセガの「巨大メガドライブコントロールパッド」と、タイトーの『ARCADE1UP(アーケードワンナップ) SPACE INVADERS』(2018年)、『TABLE PONG(テーブルポン)』(2018年)で、プレイの順番を待つ列は場内でもひときわ長いものとなっていました。
HADO MONSTER BATTLE(ハドーモンスターバトル)
AR(*01)体感ゲームを体験できるコーナー。目の前にモンスターが迫ってくる迫力はARならではといったところでしょう。子どもたちがとても楽しそうにプレイしている姿が印象的でした。レトロゲーム至上主義の筆者ではありますが、こういったゲームも悪くないものですね。
ワークショップ
1日目(3月2日)は小学生を対象に、子ども向けプログラミングソフト「Scratch(スクラッチ)」を用いて『スペースインベーダー』を制作するプログラミング講座が、2日目(3日)には小中学生とその保護者を対象にビデオゲームの歴史や仕組みについての講座が開かれていたようです。ここでゲーム制作に興味を持った子どもたちが、未来のゲームデザイナーとして育っていってくれるといいですね。
音楽ライブ「THE GAME MUSIC CITY!! #1」
十数名のミュージシャンやクリエイターによるゲームミュージックライブはソニックシティ小ホールで行われました。筆者のような1980年代のゲームに親しんだ世代にとってはノリノリ、若い人たちには新鮮なライブだったのではないでしょうか。筆者の個人的見どころは、小沢純子さん(*02)や石崎正人氏(*03)の出演でした。
初期から1980年代のゲームまで
実物をプレイできる「あそぶ!ゲーム展」
当研究所が掲げているテーマとの接点から、この「あそぶ!ゲーム展」は特に興味深く観覧しました。実はこの展示、川口市にある「SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム」で、2015年より3回にわたって実施されているシリーズ企画展でもあります。毎回、期間を区切りながら異なるテーマでゲーム文化を紹介しており、現在は第3弾が開催中。そして、ここ埼玉ゲームシティ会場で行われたのが、第1弾「ステージ1:デジタルゲームの夜明け」のリバイバル展示でした。
1950年代後半から1980年代前半にかけて活躍したビデオゲームが、いずれも実際にプレイ可能になっていることには驚かされました。さすがに『コンピュータースペース』(1971年/ナッチング・アソシエーツ)のような希少価値の高いゲームは実機プレイできなかったのですが、一般の汎用筐体にセットアップされており、ゲーム自体は遊べるようになっていました。実機ではないものの、歴史的なビデオゲームを実際にプレイできたのですから、貴重な体験だったといえます。
個人的には、米ブルックヘブン国立研究所が1958年に開発した世界最初のコンピューターゲームの1つ『テニス・フォー・ツー』のプレイアブル展示に感動しました。オリジナルは、大型冷蔵庫数台分にもなる大きさのアナログコンピューターにつないだオシロスコープでプレイするもので、展示物はオリジナルの再現です。それは容易に理解できたのですが、それでも実際に動作している姿を目の前にして、筆者は興奮してしまいました。
今回、取材前は、展示物の中で来場者層的に人気が集中するのは、『パックマン』(1980年/ナムコ)や『ドンキーコング』(1981年/任天堂)など1980年代以降の馴染み深いゲームかなと予想していました。ところが予想に反して、1962年に米マサチューセッツ工科大学が開発したシューティングゲーム『スペースウォー!』や、アーケードゲーム初期の『スピードレースデラックス』(1975年/タイトー)などマニア感涙の渋い1970年代タイトルを、子どもたちが楽しそうに遊んでいるのを見て、ゲームが持っている魅力は年月が経っても色あせないものなのだと、あらためて実感しました。
埼玉ゲームシティでは2日間の開催でしたが、SKIPシティでは「あそぶ!ゲーム展」の締めくくりとなる「ステージ3:デジタルゲームミレニアム」において、1990年代のビデオゲームを展示中です。2019年4月7日までの期間限定となっているので、ぜひ足を運んでみてください。
継続が望まれるイベント
主催のソニックシティに今回のイベントについてお話を伺いました。
ソニックシティが手がける初のゲームイベントということで、メーカー1社1社に声をかけて回るなど、地道に準備を進めていったそうです。ただ、事前に十分な告知をするだけの時間がなく、主にさいたま市内の小中学校に向けた告知しかできなかったとか。心配していましたが、予想以上の来場者があったことに驚いているとのことでした。今後も継続して開催するかは未定だそうですが、今回の反響で確かな手応えを感じていることも事実と語っていました。
「東京ゲームショウ」のような国内最大規模の大型展示会とは違い、「埼玉ゲームシティ」は手作り感ある身近なイベントでしたが、非常に良い印象を受けました。
埼玉県民の筆者としては、埼玉で開催されるゲームイベントとして今後も継続・発展していってくれることを期待しつつレポートを終えたいと思います。
脚注
↑01 | AR : Augmented Reality(拡張現実)の略語。VR(仮想現実)はCGなどで現実に似せて制作された仮想世界を体験できる技術だが、ARは現実世界にCGなどのデジタル情報を重ね合わせて、現実の世界を拡張的に表現する技術。ARゲームの分かりやすい一例に、スマートフォンゲームの『Pokemon GO』(2016年/ナイアンテック)がある。 |
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↑02 | 小沢純子 : 元ナムコのゲームミュージックコンポーザー。ZUNKOなどの名前でも知られる。『ギャプラス』(1984年)、『ドルアーガの塔』(1984年)、『イシターの復活』(1986年)など、ナムコの多くのメジャータイトルに携わった。 |
↑03 | 石崎正人 : ミュージシャン。アイレム所属時代は『スパルタンX』(1984年)、『ロードランナー』(1984年)、『R-TYPE』(1987年)などの楽曲を手がける。 |