餅月あんこのゲーセンに行きたい!

  • 記事タイトル
    餅月あんこのゲーセンに行きたい!
  • 公開日
    2021年11月19日
  • 記事番号
    6516
  • ライター
    餅月あんこ

第37回 鴫原盛之さんのお話を聞きたい!(後編)

前回に引き続き、鴫原盛之(しぎはらもりひろ)さんにお話をうかがいます。
中高生時代はスポーツに明け暮れたとのことですが、いよいよ「月刊ゲーメスト」に。ゲームアーカイブ活動のお話やゲームライターの心得も必見!

「月刊ゲーメスト」編集部へ

――― 鴫原さんは、子どもの頃からゲーム大会で優勝されたりして、すごくゲームを好きだからゲームを仕事にしたい、みたいな気持ちはあったんでしょうか。
  

それにつながるのは『ギャプラス』ですね。
「こういうゲームを作ってみたいな~」と
何となく憧れるようになったのが『ギャプラス』で。

――― あ、ゲーム業界に入りたいと思ったきっかけは「作りたい」からだったんですね。
  

そうです。もともと開発志望だったので。
大学もプログラムの勉強をしようと思って、工学科を出たんです。
けっきょく営業に行ったんですけど(笑)。

――― えっ、プログラムを勉強したのに?
  

大学時代にX68000っていうパソコンをいじっていました。
大学ではC言語やアセンブラなどを習いました。

――― なるほど……! この頃プレイステーションを買われたんですね。
  

『ファイナルファンタジーVII』がやりたくて買いました。
1996年の12月頃だったと思います。

――― その頃もまだゲームの開発を目指してらっしゃったんでしょうか。
  

大学時代はそうです。
ゲームメーカーの情報を集めたいという目的もあって「ゲーメスト」でアルバイトをしたのですが、仕事をしてるうちに「自分がやりたいのは開発じゃなくて、ゲームの布教活動だったんだ」ということに気がついて。それで、就職したときは営業に入ったんです。

――― ゲーメスト時代は、大学生の頃っていうことなんですね。
  

そうです、1993年の7月に入って、そこから3年半、大学を卒業するまでいました。

――― そしたらきらり屋さんとか同じ頃ですか……?
  

きらり屋ちゃんは、僕の入った次の年に入ったんだったかな。
直接一緒に仕事したことはほとんどなかったんですけど、
シューティング好きの女の子っていう、レア中のレアキャラでしたね。
しかもかなり上手いし、「この子何者だよ……!」って思ってました(笑)。

――― そうですよね、確かに……ゲーメスト、かっこいいですね……。
  

はじめに社会を経験したのが日本一攻略記事を書くのがキツい編集部で、
日本一のハイスコアを出す人がゴロゴロいたので、必然的に鍛えられて良かったですよ。
自分の担当ゲームのハイスコア申請は禁止というルールはあったんですが、
当時攻略を担当していた『ダライアス外伝』のゾーン別では途中まで
全一よりも高いスコアを出していたり、引退後には某サッカーゲームで全一を取ったりしましたよ。

――― ああっ、そうなんですか。ゲーメストこわい……。
  

『ダライアス外伝』(Nintendo Switch『ダライアスコズミックコレクション』より)。ⒸTAITO CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED.

ゲームメーカーの営業と、ゲームセンターの店長

ゲームメーカーの営業職ではゲームグッズの企画や開発もやりましたよ。
あとは電車の中吊り広告とか、
ドアのところに貼ってあるステッカー広告なんかを作ったりもしました。

――― 営業職ってそんないろんなことをやるんですね。
  

そうですね。
あとはプレスリリースを書いたりとか。
モバイルコンテンツの部署にいたときにはバナー広告を作ったりもしましたよ。

――― 社内でけっこう異動があったんですね。その都度、勤務地も変わったりしてたんですか?
  

最初は東京の営業本部で。
その後、およそ8年の間に5回、1都5県に転勤を繰り返しました。

――― そんなにお引越しされたんですね……! そして、ゲーセンの店長さんもやられていたという。
  

ゲーセンの店員をかれこれ足かけ6年やってました。
そのうち2年半ほどが店長です。

――― 経歴が色々ですね~。いつも影武者いるんじゃないかと……ちょっと働きすぎなんじゃないですか!?
  

長年この仕事で生き残ってるヤツは、僕と同じくらい働いてますよ(笑)。

――― 学校の先生もされてて、いつもすごい遅くというか早朝までお仕事されてる様子がツイートで……。
  

昼間は年を取ってきたら筆が進まなくなって(笑)。

――― いつも取材に行かれてるじゃないですか。
  

そうですね、あとはライフワークでもあるんですけど、
いろんなゲーセンをどんな感じかなーって見てまわったりもしてるので。

――― ゲーセンの現状が把握できて大事なことですよね。
  

自分の原点はやっぱりゲーセンやゲーメストなので。
いつもゲーセンには行くようにしています。

――― すごいですね……コロナ禍でココ1年半くらいはけっこう異例の事態でしたよね。
  

どこもやっぱり、厳しかったですよね。

フリーライターに

――― フリーライターになるキッカケはどういう感じだったんでしょうか?
  

もう立ち消えた話だから話しても差し支えないかな……。
もともとは、過去のゲームをアーカイブするビジネスを起こそうと思ってたんですよ。

――― へええ!
  

ところが、そのタイミングが任天堂がWiiを出す直前で。
任天堂がちょうど「バーチャルコンソール」のサービスを発表したので、
入る余地がなく……。やっぱ先に考えられてたか~、と(笑)。

――― なるほど~。
  

でも、そのためにいろんな人に会ったりお話をうかがったりしてたおかげで、
大学の先生や、日本デジタルゲーム学会の方々などアカデミーとのつながりができたんです。
立命館大学のゲーム研究センター(※2021年現在、ゲーム分野における日本で唯一の学術的機関)のかつてのセンター長が、上村雅之さんという、任天堂でファミコンとかスーパーファミコンのハード設計をしたかたなんですが、もともと立命館大学には1998年からゲームアーカイブプロジェクトをやってる先生方がいらっしゃったんです。

――― へぇぇ~、立命館大学がそういうことをやってるんですね。
  

立命館大学の先生に、日本デジタルゲーム学会の創設に関わったかたかたがいらっしゃいましたので、
それでお誘いをいただいて、出入りするようになったという感じです。

――― 日本デジタルゲーム学会ゲームメディア SIG 代表……すごいですね……! これはゲームではなく、ゲームメディアについての研究ということでしょうか。
  

そうです。
SIGは「Special Intelligence Group」の略称で、ゲームメディアに特化した研究部会です。
毎年テーマを考えて学会で発表しています。

※参考リンク:ゲームメディアSIG 第8回 講演動画(IGCCの大堀所長、見城こうじ氏がゲスト参加)
  

そうそう、あと、文化庁に、メディア芸術データベースっていうサイトがあるんですけど、
これもさっきお話した立命館大学の先生が中心になって作っているんです。
まだβ版なんですが、漫画・アニメ・ゲーム・メディアアートの
4分野の歴代コンテンツのデータベースを作っていて、とても便利ですよ。

――― おおお、これはいいですね。
  

この検索サイトを使ってもらうと、
例えば「ポケットモンスター」って入れると、ゲームだけじゃなくてアニメや映画の情報も出てくるんです。
まだ抜けている情報もあるのですが、これでテキストとしてのデータベースは
だいたい出来がったのではないかと思います。

――― 素晴らしいですねー!
  

文化としてのゲームのアーカイブ活動

――― 「文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業」っていうのはまた別の活動ですか?
  

そうです。
こちらは一橋大学と立命館大学の合同プロジェクトで、文化庁から予算をもらって、
ゲーム産業史のオーラル・ヒストリー収集事業をやっているのですが、
僕はそのお手伝いをしています。

――― オーラル・ヒストリーは、どういう内容なんでしょうか?
  

主にゲーム業界の黎明期にご活躍された方々のインタビューです。
貴重なお話をたくさんお聞きできるので。

※参考リンク:一橋大学イノベーション研究センターライブラリ内の鴫原さんの執筆されたオーラル・ヒストリー
  

――― 文化ですよね……! 日本ってゲームの保存に関して他の国に後れを取っているっていうのを最近よく聞くんですが、けっこう動いてるんですね。
  

今は休館してるんですが、日本ゲーム博物館さんも文化庁の支援を受けたりして、
今リニューアル中でがんばってらっしゃいますし。
あとコンシューマーではゲーム保存協会っていうNPOがありまして、
そちらも文化庁の助成を受けて、コンシューマーゲームの保存をやっていますね。
あとは国会図書館でもゲームの収集を、納本制度を利用してやっています。

――― いろいろなところでゲームが文化としてちゃんと収集・保存されてるんですね。
  

ただ、海外に比べたら全然まだまだという感じですね。
浮世絵と同じですよ。
自国では俗文化というイメージでなかなか価値を見出されない一方で、海外では絶大な人気という。
アメリカにそういう活動がとても進んでるナショナルミュージアムがあるんですけど、
手続きをすると、展示を見るだけじゃなくて自由に遊ばせてくれるようなところで。

※参考リンク:USA、ニューヨーク州ロチェスターにある「The Strong National Museum of Play」の「Video Games Archive」のページ。
  

――― それは理想ですねー! 日本も早くそういう施設ができるといいですね。
  

それをやれやれって今、お願いしているんですけど……(笑)。

――― やっていただきたいです! 今年、2021年はオリンピックの開会式にゲーム音楽が使われたりして、世の中のゲームの立ち位置がかなり向上してきたのを感じましたよね。eスポーツでも感じますけど、ここ数年でだいぶゲームの地位が向上して、文化として認められてきた感じがありますよね。
  

まさにそうですね。
昔はゲーセンに行っただけで不良扱いされてたのに、ホントに羨ましいですよ。
ゲームで勝負して賞金が稼げるんですから!(笑)
私も20~30年遅く生まれてたら、間違いなくeスポーツの道に行ってたと思いますよ(笑)。

――― 間違いなく! でもそんな感じしますね(笑)。先生のお仕事はどれくらいの頻度でやられてるんですか?
  

非常勤講師なので、今は週に1回です。
次の世代にノウハウを渡すのもいいかなと。

――― どういうテーマの授業を担当されてるんでしょうか?
  

2つ授業を受け持っていて。
ひとつは「ゲームライターコース」で、ライティングスキルを教える授業です。
もうひとつは授業の名前は「ゲームアーカイブ」なんですけど、
前に大学の先生と一緒に書いた「ビジネスを変える『ゲームニクス』」という本があって、
「ゲームを夢中にさせる仕組みとは何ぞや」というテーマなんですけど、
これをメインの教材に使って、ライターコースの学生に「このゲームはこういう仕組みだからおもしろくて、
プレイヤーがついつい夢中になっちゃうんだよ」みたいな話を、
実際のゲームの映像を流したりしながら説明しています。
IGCCで私が書いた記事も教材に使っていますよ。

――― おもしろそうですね~。ゲーム学科の学生さんの中で、ライター志望の学生さんもけっこういるんですか?
  

そうですね、ゲーム開発志望の子が多いですが、ライター志望の生徒もいます。
ジャーナリズムとか攻略のサイトで書きたいという子もいれば、
ゲームのシナリオを書きたいという子もいます。

ゲームと健康!

――― いつも睡眠時間はどれくらいですか?
  

5~6時間は寝てますよ。

――― ちょっと短いですねー。ツイートを拝見すると明けがたによくビール(※鴫原さん曰く「ガソリン」)を摂取されてますが……何か健康に気をつけてることとかありますか?
  

アルコールを飲む前は必ず筋トレをするようにはしています(笑)。
基本的に脂肪を落とすための運動をするので、プランクは30秒を最低5セットと、
スクワット系でバックランジっていう運動があるんですが、それを200回やるのは基本ノルマにしてます。
それにいろいろな筋トレやストレッチを混ぜたり、たまにですが外を走ったりもしてます。

――― ビールを飲んでもカロリーむしろマイナスになりそうな運動量ですね……! ゲームとお仕事ばかりされてるイメージだったですが、すごく健康的でビックリしました。今、着られてるのはサッカーのユニフォームですか?

そうです、これは僕が大好きなオランダ代表のユニフォームで……
家でくつろいでいるときはサッカーのユニフォームが基本です(笑)。

――― サッカーくわしくなくてすみませんが、Twitterなどの荒井清和先生の似顔絵のプロフィール画像や、イベントに登壇されたときに着ていらっしゃった、赤と黒のストライプのユニフォームはどちらのチームのユニフォームなんでしょう?

これはイタリアのミラノにあるACミランというクラブチームのユニフォームです。
30年以上前から応援してるチームで、
ACミランの試合だけは生中継で絶対観るようにしてるんですよ。

――― だから深夜というか早朝に起きてらっしゃるんですね……! でも今日お話させていただいてすごく思ったのはめちゃめちゃ見た目健康そうだなと……。
  

それだけが取り柄です(笑)。

――― いや、すごいですね。自己管理とかすごいんだろうなと。
  

そこは部活で鍛えてもらって感謝してますよ。
キツくて何度辞めようかと思いましたが。
おかげで今でも元気でやれて、
ほぼ毎日ビール2リットル飲んでますが全然平気です。

――― それは多いな……! 今、ステイホームでみんな色が白くなりがちだと思うんですけど、鴫原さんわりと灼けてらっしゃるのは、ランニングとかですか?
  

これは、先日IGCCの「小樽・札幌ゲーセン物語2」の取材で北海道に行ったときに、
あちらで1日休暇を過ごして、大自然をウロウロしてたら灼けました(笑)。

※参考リンク:当サイトの、鴫原盛之さんによるゲームセンター、アーケードゲームの展示イベント「小樽・札幌ゲーセン物語展2」会場レポート
  

――― まさかのIGCCがらみで北海道灼け! わりとアウトドアもお好きなんですね。
  

そうですね。こういう仕事をしてるとインドアに思われがちですが。
ゲームも、子どもの頃の僕にとっては野球やサッカーや虫取りなんかと同じ
遊びのひとつだったので、アウトドアも好きなんですよ。

ゲームライターを目指す人へのメッセージ

――― 今日は本当にありがとうございました。最後に、ゲームライターを目指す人へのメッセージをいただきました。
  


鴫原さんからゲームライターを目指すかたへのメッセージ

ひとことで言えば、「とにかく数をこなせ、手を動かせ!」。
ライター経験ゼロだったのに、自分が仕事をできるようになった最大の要因がまさにコレ。
ゲームメディアに限れば、ハッキリ言って文芸のセンスはいらないので、あとはどれだけ場数を踏むかどうかでは、というのが実感。
今はメールや SNS などを利用し、ネットだけで仕事をやりとりできる時代で、コロナ以降はその流れがますます加速してる感がある。
なので、昔の私みたいに新人時代に編集部に通い詰め、
プロの編集者や先輩ライターから直々に添削指導を受けながら鍛えてもらう機会が激減しているのが現状。
プラス、ネットありきになったことで、ライター仲間同士の横のつながりも広がりにくくなっている。
だからこそ、デビュー前から自身で web サイトなり同人誌なりでどんどん筆を動かし、
ライターの求人に応募する段階で、すでに即戦力になれるだけのスキルを持っていないと、ライティングだけで生計を立てるのは難しいと思われる。

そんな経験から、2015年からライター仲間と「ゲームライターコミュニティ」という勉強会を開催し、
みんなで知見や情報を共有しようという活動も開始しているので、もし興味があればぜひご参加を(※コロナ禍のため、現在は不定期にオンラインで開催中)。
  

――― ありがとうございました! あと、私にシューティングゲームのコツなどのアドバイスがありましたら教えてください!
  

そりゃもう敵が出て来るタイミングや弾のパターンを覚えること。
とにかく場数をこなすことですね(笑)。

――― やっぱり……。

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