餅月あんこのゲーセンに行きたい!

  • 記事タイトル
    餅月あんこのゲーセンに行きたい!
  • 公開日
    2022年06月10日
  • 記事番号
    7741
  • ライター
    餅月あんこ

第47回 『Wonder Boy Collection』のことを知りたい!(前編)

6月に海外版がリリースされた『Wonder Boy Collection』。今回は、監修を担当する株式会社ラクシスエンタテインメントさんにお邪魔して、シリーズのサウンドを手がけ、当サイト&当コラムでおなじみの坂本慎一さんにプレイしていただきつつ、代表の栗原孝典さんとのお話をうかがわせていただきました!

株式会社ラクシスエンタテインメントさんにて。左が坂本慎一さん、右が栗原孝典さん。
『時計じかけのアクワリオ』の、「プロジェクトの開始からリリースまで最も時間がかかったゲームソフト」としてギネス認定された公式認定証があります。

栗原孝典さん
株式会社ラクシスエンタテインメント代表取締役。『モンスターワールドII ドラゴンの罠』『ワンダーボーイV モンスターワールドIII』ではメインプログラムを担当。
  

坂本慎一さん
あまた株式会社 技術開発部 音響課所属、あまたサウンドチーム「伯林青(ベレンス)」メンバー。『モンスターワールド』シリーズでは多くのタイトルのサウンドを担当。
  

『Wonder Boy Anniversary Collection』

『Wonder Boy Anniversary Collection』に収録されてるゲームは21本あるんですよ。

ここ、もう録音しておいたほうがいいよ(笑)。

――― えっ(焦)!
  

収録されるのは6タイトルなんですけど、いろんなプラットフォームに移植されているので、それぞれのバージョンを合わせると、合計で21本あるんです。

――― なるほどー。今日は開発中のものを遊ばせていただけるんでしょうか。
  

画面写真は公開できないのですが、遊んでいただくのはいいですよ。

――― ありがとうございます!

♪(ゲームセレクト画面のBGM)
  

曲、いいねえ(笑)。(※今回、坂本慎一さんが書き下ろした新曲)

――― なはは!
  

みんな意表を突かれてますよ、この曲は。

でしょ!

これなの!? っていう。

不満なの!?(笑)

僕は好きです(笑)。毛色がだいぶ違うから。

ゲームの世界から戻ってきた感じがするでしょ。

最後まで聴いてみたくなる、曲の構成ですよね。いつもの『ワンダーボーイ』シリーズの雰囲気じゃないので、「おっ」って思って。ちょっと流しっぱなしにしてるといい感じだし(笑)。

SEGA AGES版の『ワンダーボーイ モンスターランド』は、立ち上げて起動したときに、モンスターランドじゃなくて全然違う、SEGA AGESシリーズ共通のオープニング曲がかかるのね。でもその一歩引いた感じが逆にいいなと思って。この曲は聴いててラクでしょ。

――― ライブラリ感ありますねー!
  

商品として大きく分けると3種類のバージョンがあって、まず、海外で発売される「リテール版」と言われる通常版があって、これは一番安価なバージョンです。

ゲームソフトだけってことですね。

そうです。こちらは日本では発売されなくて、海外だけの発売です(6/3に発売されました)。収録されているのは、『ワンダーボーイ』、『ワンダーボーイ モンスターランド』、『ワンダーボーイV モンスターワールドIII』と『モンスターワールドIV』の4タイトルです。それが『Wonder Boy Collection』で、その後に、海外で年内発売を目標にいま作ってるのが『Wonder Boy Anniversary Collection』といって、日本のものも含めて全部で21のゲームが入ってます。日本向けにも似たような商品を予定しています。

ひとつのタイトルにいくつかのプラットフォームのバージョンがあるということね。

そうですね、6タイトルに、それぞれハードが違うバージョンがあって、合わせて21本になります。

よく覚えたね(笑)。

ずっと作ってると覚えますよ(笑)。

僕はサントラの作業だけでも大変なのに(笑)!

みんなに協力してもらって作ってるけど、一応僕がフロントとしてやってるから(笑)。監修とか商品構成をこちら(ラクシスエンタテインメント)でやってます。

栗ちゃんは、スタッフクレジットはどう載るの?

Special Thanksですかね? 西澤さん(西澤龍一さん)や、坂本さんや、絵を描いた大空真紀さんとか、日本国内のスタッフに対するマネージメントとか、(海外の販売で)つけるグッズなどをチェックしてOKを出したりしています。海外のファンのかたがたは、日本のファンのかたがたとはまたちょっと違う視点で応援してくれてるので、好きなポイントのギャップを埋めるのがなかなか難しいんです。

――― 『ワンダーボーイ』シリーズは海外での人気もすごく感じますよね!
  

『ワンダーボーイ』

『ワンダーボーイ』を遊ぶんですか?

最初からひととおり遊んでみようと思って。

これはSG-1000版ですね。

これは僕は遊ぶのは初めてなんですよ。セガ・マークIII版とかゲームギア版とか、ホントにいろいろありますね……。

ですよね。SG-1000版は、僕も西澤さんも今まで遊んだことがなくて。

(プレイ開始)オリジナルとちょっと色が違うんですね。

ハードに合わせて仕様が変更されているので、操作方法も違ったりします。チェックする時には、SEGA AGES 2500の『モンスターワールド コンプリートコレクション』も参考にさせていただきました。

――― これはちなみに、1986年って書いてありますけど……。
  

アーケードとほぼ同じタイミングで出たんだね。

――― すごいなあ!
  

次はゲームギア版。

ゲームギアになるとかなり性能が高いですね。これはいろんなおもしろい機能が……最近流行の巻き戻し機能がついてて、「やられた!」となったらちょっと巻き戻してやり直せるんです。

時間を戻せるの(笑)?

そうそう、ミスしないでクリアするのってなかなか難しいから。あとはオプションでハイジャンプを設定できたり。

これ、何かキーが違うね。音程が2度下がってる。ゲームはかなりオリジナルに近いね。ゲームの内容はもう知られてると思うから、今日はこれを作ってたときにどんなことを考えてて何をしてたかっていうことを話そうと思って。『ワンダーボーイ』を作ってた頃はまだウエストンの社員じゃなくてエスケープにいた頃で、開発後半になった、リリース直前くらいに呼ばれて……栗ちゃん知ってる? その話。

私の妻がウエストンの創立メンバーなので、ウエストンの事情はよく知ってます(笑)。

(笑)当時はただ僕、「ちょっとこれ遊んでみて」って言われて、ウエストンに遊びに行ってるような感じだったんだけど。それで、これ、セガのハードとしてはその頃ちょっと古めになってたんだよね。

そうですね、システム1ですからね。

もう次のハードが出る頃で。

買ったから、基板、ありますよ(笑)。

セガハードとしてもシステム1の時代が終わりの頃に投入されたゲームで。だけどありがたいことに人気が出たので、ウエストンという会社が設立されたという(笑)。『ワンダーボーイ』が人気じゃなかったらウエストンはできなかったよね。

そうですよね。

そのときはまだ西澤さんの個人名で作ってたから。一応『エスケープ』っていう名前はあったけど、法人にはなってなかったんですよ。で、『エスケープ』って名前は良くない、って言われてね(笑)。

当時は西澤さんも21歳くらいでしたから、少しやんちゃなところもあり(笑)? 社会に反発するような、わざわざ『エスケープ』っていう名前じゃなくても、っていう(笑)。

銀行にだって評判悪いですよね(笑)。

その名前を聞いたら、こいつら逃げるんじゃないかって思いますよね(笑)。

―――あははは、絶対お金貸したくない!
  

若造が3人ぐらいでやってるんですからね。僕は坂本さんより2歳下なのですけど、当時はゲームってまだちょっと、悪い、不良のたまり場みたいなイメージで。ゲーム会社に入るって言った途端に周りのみんなから反対されましたよ。

僕もそうだよ。そういう時代だよね。

学校の先生からも反対されるし。

栗ちゃんの行ってた学校はコンピューター系だったよね。そこで反対されたんだ。

お前、やめろと。N○Cに行けと。

情報処理系なんだ。

僕は情報処理系の科学技術コースで、会計とか、ハードウェア部門とかいくつか分かれていて、ソフトウェアだけを専門に学ぶコースだったんですけど、みんなカタい企業に……学校としても当時はそういうところに入ってほしかったみたいで。

――― あ~、そうだったんですね~。
  

求人票を見ながら、人数の少ないところを探してたんですよ。埋もれるのが嫌で。とにかくいろんなことを知りたいなと思ってたから。

あ~。

とにかく求人が5人くらいの、少人数のところを探していて。それで、ウエストンの求人が7人で、ゲームが好きだったから、「ここに行きたい!」って思って、面接を受けたんです。で、受けた後に、先生からすっごい怒られて。

――― え~!
  

(爆笑)

「お前、いいから、そこに決める前に、とりあえずN○Cの面接に行ってこい」と。親からも反対されたし。

そんな経緯があったんだ。

何でそんな小さい会社に入るの、とか。兄は6歳上だけど、兄からも反対されて、「ゲーム!? 好きなのはわかるけどさ、もうちょっとちゃんとした会社に入って技術を積んでからやればいいんじゃないの」と言われて、僕は「何を言ってるんだこの人たちは!」みたいな(笑)。

まだ一般的にゲーム会社がまっとうな印象を持たれてなかったんだね。

で、ウエストンでは、一番に面接に来た人は採るって決めてたらしくて。僕が一番だったんですよ。もう何も問題なく採用。

ひどい会社だよね(笑)。

――― いやいや、何か、いいですね。
  

後から聞いたんですけどね(笑)。ちょっと試験みたいなのはあったけど、形だけで(笑)。

『ワンダーボーイ モンスターランド』

――― わたし、おばけキノコが倒せないんですよ。
  

おばけキノコはひとつの関門だから。

――― そうなんですか?

『モンスターランド』をやってる頃は、僕、ウエストンに入ってたんだけど、栗ちゃんはこのとき入ってたんだっけ?

まだ入ってないです。

僕がウエストンに入ったときに『モンスターランド』はある程度できてて、画面を見ながら曲が作れたところが良かったんですよ。ゲームと音楽の制作が同時進行で、ゲーム画面を見ないで曲を作らなきゃいけないっていうときもあるから。……いま遊ぶと途中までしかいけないなあ。栗ちゃんはクリアできるの?

(うなずく)

できるんだ(笑)。

巻き戻し機能があるので(笑)。

巻き戻し機能、いいね! ……で、僕はその頃会社で、ずっと『大戦略』をしてたね、西澤さんと代わりばんこに。『大戦略』ってターン制だから、西澤さんがコマを進めてる間に曲を作って、「慎ちゃん終わったよ~」って言われたら、また進めるみたいな(笑)。

セガ・マークIII版を遊びますか?

うん。

それまでは『モンスターランド』って呼んでましたけど、ここから『モンスターワールド』というタイトルに変わってるんですよね。(※マスターシステム/セガ・マークIII版の『スーパーワンダーボーイ モンスターワールド』)

これってFM音源になってる? マイルドな音になってる。

海外版ですよね。

何でセガ・マークIII版、FM音源なんだろう?

ここの表記が難しくて、マスターシステムって言っちゃうとFM音源ユニットがついてない海外版の名前……日本でいうセガ・マークIIIっていうのがマスターシステムとして販売されてるんですよね。で、日本ではセガ・マークIIIとマスターシステムって、基本的には同じなんですが、FM音源が搭載されているセガ・マークIIIをマスターシステムっていうんですよ。

『ワンダーボーイIII モンスターレア』

これを遊びたくて。これ、2Pできないの?

まだ実装されてないです。

西澤さんはこのゲームをフィーチャリングしたいらしくて。これはこのキャラも、すーちゃん?

そうですね。

すーちゃんは、栗原さんの奥さん。

――― ふむふむ。
  

すーちゃんって呼んでるんだけど、鈴子っていう苗字だから。

変わった苗字なんですよ。

――― へぇ~。……いまプレイしているのはどのハードのバージョンですか?
  

これはアーケードで、システム16Aって言って、『ファンタジーゾーン』とかと同じ基板。このときは世の中的にはアーケードゲームのインカムがすごく心配されてて、この前作が『ワンダーボーイ モンスターランド』だったんだけど、このゲームって熟練してくるとワンコインクリアできちゃうから、インカムがめちゃくちゃ悪いんですよ。

――― そうなのか~。
  

だから、もっとインカムを稼げるゲームを作ってくれないかって言われたときに、2P対戦だったらいっぺんに200円入るし、シューティングって難易度の調整がしやすいから、これ、一応シューティングだから。で、コンティニューしてくれるじゃない? シューティングだと。

――― なんでなんで?
  

先に進みたいから。これはマネーパワーがあれば最終面までいける作りになってるから。

最後の面はコンティニューできないんですよ。

いやらしい作りなんですよ(笑)。

――― へぇ~! そこまで来て。
  

とにかく最終面まではお金をつぎこめばたどり着けます(笑)。

だからインカムいいだろう、っていうんで、2Pプレイしてくれれば、片方が死んでも片方が生き残ってる間に、お金を入れてくれるかもしれないとか。

――― なるほど、すごいおもしろいですね、それ!
  

1Pプレイだと、終わった瞬間に1回心が折れちゃうから(笑)。

――― あ~、わかります。
  

で、そこで友だちが遊んでると、「早く100円入れて加勢してくれよ!」ってなるから。

――― おもしろい!
  

オレ今めちゃくちゃいい話してない? もうコレでいいんじゃない? 取材終わったんじゃない?

――― 終わったか……。

いえいえまだまだ続きます! 次回、後編をお楽しみに!

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