「アストロシティミニ」オールカタログ 第三回目
目次
「アストロシティミニ」最高!
と叫んでいる人も叫んでない人も、こんにちは。
ゲームライターの鴫原盛之さんにお願いしている収録全タイトル解説。この第三回目で最終回となります。
プレイのおともに、ぜひどうぞ!
『ラッドモビール』
アメリカを舞台にした、大型体感筐体を使用したドライブゲームで、夜の街ではライトボタンを、雨が降るステージではワイパーボタンを押して、視界を確保するおもしろいアイデアが導入されていました。アーケードゲームでは初めてソニックが登場(※フロントガラスに吸盤でくっ付いたマスコットですね)したタイトルとしても知られています。
本作を初めて見たときは、「スピード感がすごくあるな」というのが第一印象でした。特に、2面以降では『アウトラン』などとは違って、対抗車線からも車が向かってきますし、もし衝突するとフロント部分が大破する演出があり、思わず顔をのけぞらせてしまうほど迫力がありましたね。モニターのサイズもかなり大きかったですし。
2面の舞台は、アメリカ西部のモハーベ砂漠になるのですが、終盤にコース外に飛び出してしまうと、まるでアリジゴクにハマったかのように車を思うように運転できず、コース上に復帰するのがすごく難しかった記憶がありますね。「こんなところで100円取られちゃうのはイヤだよ!」と、何だかアリジゴクに捕まったアリの気持ちが、少しだけわかったような気がしました(ヘタクソ)……。
『コットン』
ホウキに乗って空を飛ぶ、魔法使いのコットン(ナタ・デ・コットン)を操作して、対空ショットと対地ボム、魔法を使って敵を倒す横スクロールシューティングゲーム。いかにも魔法使いが出てきそうな、西洋の童話を想起させるビジュアルに加え、機体やメカではなく人間、しかも女の子が自機となるシューティングは、当時としては非常に珍しかったように思います。
敵を倒したときに出現するアイテムを取ると、画面下部のゲージが増え、満タンになるとショットがパワーアップ。さらに、対空ショットのボタンを長押ししてから話すと、ファイヤーやサンダーの攻撃、あるいはバリアの魔法が使えます。また、コットンのパートナーである妖精がオプションの役割を果たし、コットンと一緒に対空ショットを撃つだけでなく、ボムボタンを長押しすると敵を追尾してダメージを与えることができるアイデアもおもしろいですね。
また個人的には、ステージクリア後のティータイム(ボーナスゲーム)で、上空からたくさん降ってくる湯飲みを1個も取らずに、全部スルーすると隠しボーナスがもらえると初めて聞いたときには、「そんな裏技があったとは!」と、逆転の発想的なアイデアには驚かされましたね(発売当時は全然知りませんでした)……。
『アラビアンファイト』
その名のとおり、『千夜一夜物語』をほうふつとさせる世界観が特徴のベルトスクロールアクションゲーム。最大4人まで同時プレイができる作品ですが、アストロシティミニ版では2人同時プレイまでの対応となります。
小生が本作を初めてプレイしたのは大学時代、発売から数年後のかなり遅れたタイミングでした。それでも、「キャラクターが滑らかに動く、アニメーションがきれいだな」という印象を受けました。特に、主人公が周囲の敵を一掃する強力なマジックを使用すると、華麗なアクションを披露する演出はカッコよかったですね。しかも、マジック使用時はわざわざカメラ目線で決めセリフを叫ぶので、何だかおかしくて笑ってしまった記憶があります。
日本人が何となくイメージするであろう、古代の中東やエジプトに出てきそうな、サーベルを持った怖い人や怪物が敵として多数出現する、ちょっと怪しげなビジュアルは見ているだけでも十分に楽しめます。ポリゴンを使用せず、キャラクターの拡大・縮小機能を利用してフィールドの遠近感を演出しているのも、本作の大きな見どころでしょう。初めのうちは敵との距離感がつかみにくいかもしれませんが、慣れてくると俄然おもしろくなりますよ!
『ゴールデンアックス デスアダーの復讐』
『ゴールデンアックス』シリーズ第2弾にあたるベルトスクロールアクションゲーム。主人公となるキャラクターが3人から4人に増え、攻撃技のバリエーションがさらに多彩になっています。本来は4人まで同時プレイにできるゲームですが、『アラビアンファイト』と同様に、アストロシティミニ版で同時に遊べるのは最大2人までとなります。
小生が本作を初めて遊んだのは、多分地元にあったセガの直営店で、「マルチキャビネットスイング」筐体で稼働していたと思います。この筐体は、最大4人分のコンパネを横一列に並べられるよう設計されていましたから、本作を動かすにはまさにうってつけだったわけですね。
グラフィックスがさらに美しくなり、なおかつ主人公たちのキャラクターサイズも大きく、動き方も滑らかになり、「あの前作よりもさらにカッコよくなってる!」と、またまた驚かされましたね。個人的には、4人いる主人公のうち、半人半馬のドーラが前足で連続高速キックを放ったり、両前足を高く上げて遠くに蹴り飛ばしたりできるのがおもしろかった印象。サソリの背中に乗ると、尻尾からの電撃攻撃などを利用して敵を倒すのも快感でした。
なお、余談になりますが、小生が麻雀ゲームの『MJ Arcade』をプレイするときは、自身のテンションをより高めるべく、今でも本作の1面のBGMが毎回流れるように設定してあります。
『ぷよぷよ』
『テトリス』や『コラムス』とはまったく異なる、コミカルなキャラクターが多数登場する独特の世界観、連鎖を組むと対戦相手に「おじゃまぷよ」面を送り込んで攻撃できるアイデア、そしてプレイヤー同士での対戦のおもしろさ。メガドライブ版とともに大人気を博し、後に日本一プレイヤー決定戦「全日本ぷよマスターズ」が開催されことはあまりにも有名です。
小生は、元祖となるMSX2とファミコン版の存在をまったく知らなかったので、ゲーセンで友人にすすめられたことがきっかけで本作を遊ぶようになりました。幼女キャラが出てくるような作品は正直好みではなかったので最初はずっと避けていたのですが、いざ遊んでみたら想像以上におもしろかったのでビックリ。CPU戦を何度か遊んでいたら偶然にも何度か連鎖が完成し、相手側に大量の「おじゃまぷよ」がドサっと降って敵キャラが悶絶する姿に、みんなで大爆笑した思い出があります。
その後、メガドライブ版を買った友人宅で、何度もみんなで徹夜して対戦プレイに興じることになりましたが、小生と同じく徹夜対戦を経験した方は全国にゴマンといたことでしょう。それにしても、最初は敬遠していた小生でも、これほど夢中にさせられた「ぷよぷよ」。改めて恐るべしですね……。
『ダークエッジ』
いわゆるポリゴンを使用せず、2Dのドット絵による拡大・縮小機能を駆使して立体空間
を表現。『バーチャファイター』に先んじた、3D対戦格闘ゲームの始祖とも言うべき存在と言えるでしょう。
操作は8方向レバーと、弱・強パンチ、弱・強キックとジャンプボタンを使用し、レバーを相手と反対方向に入力するとガードになります。敵に接近した状態で、レバーを相手方向に入れながら強パンチを押すと投げ技が、左右いずれかに少入力したまま(いわゆる「ため」ですね)待ってから、反対方向にレバーを切り返して弱か強パンチを押すと、キャラごとに種類が異なる飛び道具を撃つこともできます。
プレイヤーが使用できるキャラクターは計6人。今の目で見ると少ないと思われるかもしれませんが、当時としては十分なボリュームであり、しかも3D空間で戦えるという新鮮さがありましたから、特に不満はなかったですね。当時は幸運にも、小生の地元のゲーセンでは本作が「メガロ50」筐体で稼働していたので、50インチの大画面でより迫力のある3D空間でのバトルを楽しむことができました。今となっては、とても貴重な体験をさせていただいたなあと思います。
『タントアール』
規定の時間の範囲内でストップウォッチを止める「必殺!ハートウォッチャブル」、高速移動する忍者の隠し場所を当てる「忍者どこじゃ?」、鳴き声を発した動物の順番を瞬時に暗記して当てる「アニマルサウンドシャワー」(※ン? どこかで聞いたような名前ですね……)などなど、短時間で勝負が決まるミニゲームがたくさん遊べるバラエティゲームです。
ミニゲームをたくさん詰め込んだゲーム内容だけでなく、プレイヤー同士で競うための得点が存在しないことや、カクカクした独特のキャラクターデザインなども、発売当時のゲームセンターの中では異彩を放っていたように思います。何しろ、この時代は対戦格闘ゲームの真っ只中で、筐体を背中合わせにした通信対戦筐体がどこの店にもズラリと並んでいた時代でしたからね。
とは言え、今と違って誰でも基本プレイ無料で遊べる携帯・スマホ用ゲームなどなかった時代ですから、老若男女を問わずお気軽に遊べる、本作の存在意義は確かにあったと思いますし、ゲームの出来もたいへん良かったです。ちなみに小生は当時、一番のお目当てだった某シューティングゲームを遊ぶ前のウォーミングアップのために、ありがたく利用させていただきました。特に、ボタンを連射して風船を割るゲーム「ケッコー毛だらけコケコッコー」は重宝しましたね。
『バーチャファイター』
皆さんもよくご存知の、業界初となる3Dポリゴンを使用した対戦格闘ゲームです。本作の登場した翌年には、早くも続編の『バーチャファイター2』が登場し、史上空前の対戦格闘ゲームブームを牽引したことはあまりにも有名ですね。まるで画面内に浮かび上がったかのような、立体的でリアルなファイターたちがあらゆるカメラワークで表示される、そのインパクトは強烈でした。
小生の記憶が確かならば、本作の稼働当初は、どこのゲーセンに行っても1プレイの料金が何と200円!
しかも、1ラウンドは30秒しかないから速攻で決着がつくし、もしリングアウトしようものなら(※これも本作ならではのアイデアでしたね!)あっという間にお金がなくなるのも恐怖でした。コマンド入力の方法やコツも、ほかの対戦格闘ゲームとは全然違ったので最初はかなり戸惑いましたが、打撃系の技がカウンターで決まったときの「ガキーン!」という音は、ものすごく気持ち良かったですね。
やがて料金設定は、ほとんどの店でほかのゲームと同じ100円へと変わりますが、本作はポリゴンによる大迫力のビジュアルだけでなく、プレイ料金の面でもほかのビデオゲームにはない高級感を演出していたようにも思います。また、当時多くの店舗で導入していた、50インチの大型プロジェクターを使用した筐体(セガの「メガロ50」など)で稼働しているのを見た方も多いことでしょう。その圧倒的な迫力は、一度見たら容易に忘れることができませんよね。
『スタックコラムス』
『コラムス』シリーズのひとつではありますが、宝石をひたすら消していくのではなくCPUキャラ、または相手プレイヤーとの対戦プレイに特化した落ち物パズルゲームです。宝石を消していくごとに、チップが文字どおりどんどんスタック(積み重なる)され、手持ちのチップがあるときに攻撃ボタンを押すと対戦相手を攻撃できる、つまりプレイヤーが任意のタイミングで攻撃を仕掛けられるところに、本作ならではのおもしろさがあります。
かつて、筆者が在籍していた『ゲーメスト』編集部では、当時のライター仲間が本作の紹介、および攻略記事を一生懸命書いていたのを目の前で見ていたこともあり、発売前からずっと気になっていました。ただ、あくまで小生だけの印象ですが、本作は都内のゲーセンでも稼働させている店はあまり多くなかったと記憶しております(※後に登場する『コラムス97』と比べても、見かける機会は少なかった感があります)。ですから、ほかのシリーズ作品に比べると知名度は高くないかもしれません。
本作をご存じない方も、
セガサターン版の『SEGA AGES コラムスアーケードコレクション』以来、久々に家庭用への移植が実現したこの機会に、ほかのシリーズとはひと味もふた味も違う、対戦特化型の『コラムス』をぜひ楽しんでいただければと思います。
『イチダントアール』
レバーとボタン1個の操作だけで、誰でも簡単に遊べるミニゲームをたくさん詰め込んだ、ゲーム内容もタイトルの語呂もおもしろい、『タントアール』の続編です。
同じ動き方をするサルのペアを探し出す「ロイヤル猿~ン」、いわゆるハノイの塔と同様にパズルを完成させる「入れカエル」、線路上のポイントを動かして機関車を規定のポイントに走らせる「機関車トーマラズ」などなど、独創的なアイデアが光るミニゲームの数々は、今遊んでもおもしろいですね。
前作に続き、本作でも小生は指先を温めたり、頭の体操代わりにありがたく利用させていただきました。一時期は1コインでエンディング到達を目指そうと頑張ってはみたのですが、かなり難しいことがわかったので断念しました。とはいえ、どのミニゲームを遊んでも短時間で勝負が決まるのでテンポがとても良く、ルールがシンプルなのでミスをした原因もすごくわかりやすかったので、短時間で終わっても特に腹が立つようなことはありませんでした。
本作の発売当時、小生はすでに『ゲーメスト』でライター業を始めていましたが、「攻略記事を僕に書かせてください!」と軽率な発言をしなくて本当によかったなあと思います(苦笑)。
『ぷよぷよ通』
ご存知、アーケード版『ぷよぷよ』シリーズの第2弾。基本ルールは前作と同じですが、より遊びやすく、対戦が白熱する数々の新システムが導入されました。次に出現する「ぷよ」が2手先まで見えるようになったり、「ぷよ」の左回転ボタンが追加されたのも本作が最初でしたね。
新システムのなかでも、小生が特にうれしかったのは「おじゃまぷよ」の相殺でした。落ち物パズルゲームがあまり得意ではないこともあり、相手が送ってきた「おじゃまぷよ」がフィールドに落下するまでの間に、できるだけ「ぷよ」を消すことでダメージを緩和できるこのアイデアには、CPU戦でも本当に助けられました。
発売からすでに四半世紀が過ぎましたが、数あるシリーズのなかでも「対戦で遊ぶなら、今なお「『ぷよぷよ通』こそが至高」という声を、いまだによく聞く印象があります。現在は『ぷよぷよeスポーツ』が開催されていますが、本作は今遊んでも本当におもしろいですし、本作を使ったeスポーツ大会を、90年代の「全日本ぷよマスターズ」出場経験者やスコアラーも呼んで開催したら、意外と盛り上がるかもしれませんね。
『ドットリクン』
元祖『アストロシティ』など、当時のセガ製汎用ビデオゲーム筐体とセットになっていた基板で遊べるゲーム。ルールは1979年に発売されたドットイートゲーム『ヘッドオン』と同じで、敵に捕まらないようにプレイヤーキャラクターを操作して、画面内にあるドットをすべて消すとステージクリアとなり、移動中にボタンを押しっ放しにすると、プレイヤーキャラクターの移動スピードがアップします。
当然と言えば当然なのですが、小生は本作の存在を、『アストロシティ』が各地のゲーセンに出回るようになった後も全然知りませんでした。そもそも本作は、法律の関係で元祖『アストロシティ』のような汎用筐体は単体で販売できず、売る際にはゲーム基板とセットにしなくてはいけないという事情があったため、そのセット用として開発されたものだからなのです。
と、いうことで、本作を知ったのは小生がゲーセン店員時代、仕事中にたまたま筐体の中に放置してあった基板を発見したのがきっかけで、多分1998年頃だったと思います。だって、こんな見た目が「70年代に発売されたのか?」と思えるようなオマケで付いてきたゲームを、わざわざ稼働させるゲーセンなんてあるワケないですし(ですよね?)……。
それにしても、まさか2020年にもなって『ドットリクン』が再び遊べる機会に恵まれるとは思いもしませんでしたね。筆者のなかでは、今回登場した37タイトルのなかで、収録決定の報に最も驚いたのが本作でした。マニア心をくすぐりまくる、実に素晴らしいアイデアですね。本機の開発者の皆さん、さすがよくわかっていらっしゃる!
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