D4エンタープライズ15周年記念インタビュー 「プロジェクトEGGとゲーム保存について」後編

ブームは気にせず、コツコツと自分たちのやるべきことを積み上げていく

▲レトロゲームの保存意欲を語る鈴木氏

――レトロゲームを配信する楽しさ、やり甲斐について教えてください。

鈴木 私自身も1ユーザーでしたから、当時のゲームを作られた方々に直接お会いして話を聞けるということ自体が、すごくいい体験だと思っています。そして、コンテンツ許諾が得られて、プロジェクトEGGで供給をして、ユーザーさんたちから「やった!」と喜んでいただける…。それが本当にうれしく、やり甲斐を感じますね。

――そういったユーザーさんの声というのは、メールで届く感じで…?

鈴木 メールでもありますし、イベントで直接声をかけていただくこともあります。弊社は当初、ゲームショウやコミケ(コミックマーケット)など、ちょこちょこイベントに参加していたんですね。で、そのときにユーザーさんから直接「本当にありがとうございます!」とか「あのゲームやりたかったんですよ!」とか熱い声をかけていただきました。そういう体験は得難いものですし、うれしくて仕方がないですね。

――直接の反応というのは、またメールとは違ったうれしさがあるでしょうね。

鈴木 ユーザーさんのオフ会を開催させていただいたこともあります。既存会員の古株の方や、最近入られた方などに集まっていただいて、プロジェクトEGGの今後の方針をプレゼンして、ヒヤリングをする。そういったところで貴重な意見を伺いながら、プロジェクトEGGをどう残していくか、どういう計画でコンテンツを獲得していくかなど、ユーザーさん目線で一緒に考えたりしています

――そういった、ユーザーさんと密な交流をされていたのは少し意外でした。素晴らしいです。

鈴木 イベントでのお声掛けのときは、いい言葉しか聞けないところもあったと思うんですよ。けれども、しっかりダメ出しをしてもらうことも重要なので、そういう場を設けようと、こちらからユーザーさんを10人くらいピックアップしてお誘いして、ご協力いただいたんです。

――近年のレトロゲームブームについてご意見を伺えますか。

鈴木 ブームはなるべく気にしないようにしていますね。ブームのときには大手メーカーさんにマネタイズしてもらって、我々は自分たちのやるべきことをコツコツと積み上げていくという方針です。

近年、任天堂さんのバーチャルコンソール※01バーチャルコンソール : 過去のゲーム機やアーケード向けに発売されていたゲームソフトをWii Uやニンテンドー3DS上の任天堂ハード上で再現したもの、およびその配信サービスの名称。各タイトルをダウンロードすることで遊べる。など新規事業にも協力させていただいており、現在配信中のプラットフォームとともに、ブームに左右されない安定した配信を行っていきたいと考えています。

大堀 現在主流の配信型コンテンツ(サーバー対応型ゲーム)は、常時更新されていくじゃないですか。そういうものも、いつかはレトロゲームとなる日が来ますが、残すことはすごく難しいと思うんです。更新されたバージョンをすべて残すのは難しいですし。そのようなコンテンツはどのような形で残すべきか、考えがありましたらお聞かせください。

鈴木 いろいろな残し方があると思うんですが、まず、ハードウェアとかコンテンツとかサーバーのシステムとか、クライアントアプリだけではなくて、全部まるっと小さいものを作り上げてしまって、まとめて残してしまうという方法が1つあると思います。
またシステム的には、通信モジュールをフックして、汎用的なサーバーを1つ構築しておいて、どのタイトルでもそこでヤリトリができるようにクライアント側のサービスを残す、ということは可能かもしれない。

大堀 なるほど。非常に勉強になります。レトロゲームですと、PCやコンシューマー、アーケードは残してくださる人がいるんで、楽しかった思い出も再現できるんですけど、今のソーシャルゲームのユーザー層が歳を取ったときに、「アレおもしろかったよね」と思い出に浸っても、見せられる現物がなかったらかわいそうだなと思うんですよね。好きな人たちの掲示板や、動画が残る程度になってしまうのかなと。でも、残すとなるとすごくコストがかかるのが悩ましいですよね。

鈴木 ホントそうですね……。

――そういったものの残し方は、今後の業界の課題かもしれませんね。

大堀 最後にレトロゲームファンの皆さんにメッセージを一言お願いします。

鈴木 プロジェクトEGGを応援してくださっている皆さんには、感謝の気持ちしかありません。プロジェクトEGG自体は、エミュレーターを活用した事業として、私が知っている限りでは世界初なのかなという思いで取り組んできたんですけど、ここまで業界で一般的になるとは思いませんでした。正直、エミュレーターを使った事業は不安が多かったんですね。けれど、ユーザーさんもメーカーさんもなんですが、そういった我々を支えてくれた業界全体に感謝したいなと

私自身もゲームファンなので、これからも何を残せるのかというのを真面目に考えて取り組んでいきます。あとは、もう少しユーザビリティーを高くしていって、プロジェクトとしてもさらに多くの方々に楽しんでいただけるようにしていきますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

▲資料なのかコレクションなのか、D4社内の棚には、貴重なレトロPCゲームがぎっしりと……。今後もこの中からさまざまな作品が配信され続けることを願ってやみません
鈴木 直人 氏
株式会社D4エンタープライズ代表取締役。かつてはプログラマーとして、スーパーファミコン、ネオジオ、プレイステーション等、自らゲームの制作にも腕を振るった。2004年にD4エンタープライズを立ち上げ、代表取締役に就任。「プロジェクトEGG」を束ねる無類のレトロゲーム好き。

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