「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第十二回 ゲーム音楽

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    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第十二回 ゲーム音楽
  • 公開日
    2021年02月19日
  • 記事番号
    4806
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第十二回目のテーマは、音によってゲームのおもしろさを表現する演出、すなわち「ゲーム音楽」です。

クラシックやポップスにはない、「ゲーム音楽」ならではの特徴とはいったい何でしょうか? それはプレイヤーの操作、あるいはゲームの展開に応じて、BGMやジングル、SE(効果音)がインタラクティブに変化するところにあると言えるでしょう。

先月(2021年1月)の27日から「ゲーム音楽」を文化資源とするオンライン展示イベント「Ludo-Musica」が公開されています(※2月26日まで公開。筆者も寄稿させていただきました)。
そこで、この機会に改めて「ゲームニクス」視点で「ゲーム音楽」のおもしろさをご紹介したいと思った次第です。

以下、本稿ではプレイヤーの快感と、緊張感を演出する例に絞ったうえで、その素晴らしいアイデアの数々をご紹介していきます。
なお、ショット発射や爆発、ジャンプ音などのSE(効果音)や、曲に合わせてボタンなどを操作して遊ぶ、『ビートマニア』(コナミ/1997年)などの音楽ゲームは今回は省かせていただきました。
悪しからずご了承ください。
  

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!

  

「ゲーム音楽」が生み出す達成感、快感の素晴らしさ

「ゲーム音楽」を利用した、プレイヤーを夢中にさせる仕掛けで真っ先に思い付くのは、ステージをクリア、あるいはバトルに勝利したり、主人公がレベルアップしたときなどの良いプレイができたときに流れる、達成感を演出するBGMやジングルを流す方法でしょう。

例えば『スーパーマリオブラザーズ』(任天堂/1985年)では、ゴール地点までたどり着くと、いかにもプレイヤーを祝福してくれる心地良いジングルが流れることは、皆さんもよくご存知かと思います。

さらに特定の条件、あるいは好成績を収めてクリアした場合にのみ流れる、特殊なジングルを鳴らすことで、プレイヤーに快感、達成感をもたらす例もいろいろあります。

『スーパーマリオブラザーズ』を再び例に挙げますと、各ワールドの4面クリア時、つまり強敵の大魔王クッパを倒したときは、通常ステージとは異なるジングルが流れ、プレイヤーがそのワールドを制覇したときの達成感をさらに高めてくれます。
同じく、ファミリーコンピュータ用ソフトの『悪魔城伝説』(コナミ/1989年)でも、最終ステージをクリアしたときだけは、通常ステージとは異なるジングルが流れます。
  

クリア時のジングルに工夫を凝らした、おそらく最も古いタイトルのひとつが『クレイジークライマー』(日本物産/1980年)でしょう。
本作は全4ステージで、何とクリア時に流れるジングルはすべて異なるというこだわりぶり。プレイヤーが次のステージに進めたときの達成感がさらに増す、実に粋な演出ではないでしょうか?

このように、ステージクリアのジングルひとつだけを取っても、実に多彩なバリエーションがあることがわかります。
  

高得点が加算されるボーナスを獲得したときのジングルにも、「ゲーム音楽」ならではの楽しさ、素晴らしさが凝縮されています。

有名タイトルから例を挙げますと、『スターフォース』(テーカン/1984年)では隠しボーナス獲得に成功すると、メインのBGMを一時ストップしたうえでジングルがしばらく流れ、プレイヤーを祝福する演出があります。
同じく『アルゴスの戦士』(テクモ/1986年)でも、隠しボーナスを獲得するとBGMをいったん止めたうえでジングルが流れ、さらに1プレイに1度しか狙えるチャンスがない、100万点の超高得点ボーナスを獲得すると、とびきり派手なジングルが鳴るアイデアも秀逸でした。
  

また『ちゃっくんぽっぷ』(タイトー/1984年)では、ステージクリア時に隠しボーナスの獲得条件を満たすと、クリア時に流れるジングルが変わるのもおもしろいアイデア。
前述した、ステージクリアを祝福する演出との「合わせ技」というわけですね。

また、第十一回の「ボーナスステージ」でもご紹介した『ギャラガ』(ナムコ/1981年)は、チャレンジングステージでパーフェクトを達成すると、通常とは異なる、プレイヤーの腕を称えるカッコいいジングルが流れるのも素晴らしい演出です。
  

アーケードゲームならではの、「ゲーム音楽」でプレイヤーを楽しませるアイデアとして忘れてはいけないのが、第一回のテーマでもある「ネームレジスト」です。

例えば、『ゼビウス』(ナムコ/1983年)や『ギャプラス』(ナムコ/1984年)などのタイトルは、上位5位までに入ると「ネームレジスト」ができますが、1位獲得時のBGMと、2~5位のBGMを別にすることで、1位になったプレイヤーにさらなる優越感を与える効果をもたらしています。

さらに『1942』(カプコン/1984年)ではネームレジストのBGMに加え、入力が完了するとプレイヤーに「よくやったね!」と伝えてくれるかのようなカッコいいジングルが流れたり、ネームレジストができなかった場合でも上位にランクインした場合は、特殊なジングルが流れる演出があります。
  

「ネームレジスト」時の「ゲーム音楽」で、とりわけ凝った演出をしているのが『エグゼドエグゼス』(カプコン/1985年)です。
本作では、1位と2~5位の「ネームレジスト」曲を変えるだけでなく、1,000万点を獲得すると「おめでとう!」のメッセージとともにプレイヤーを祝福するジングルが鳴ってゲームオーバーとなり、さらに1,000万点達成時にしか聴けない特別な「ネームレジスト」曲が流れます。ビデオゲーム史上に残る、「ゲーム音楽」を利用した秀逸な演出と言っても過言ではないでしょう。

ほかにも『モトス』(ナムコ/1985年)では、その日のハイスコアを更新するとジングルが鳴り、同時に「HIGH-SCORE」の文字が点滅するという、これまた素晴らしいアイデアが導入されていました。
  

主人公や自機がアイテムなどを取ることでパワーアップ、あるいは無敵状態になったり、プレイヤー側が有利な状態になると、特別なBGMやジングルが流れる例も古くからたくさんあります。

前出の『スターフォース』では、友軍機のパーサーと合体するとノリノリのBGMに変わることは、40代以上の方であればよくご存知でしょう。
同様に『タイガーヘリ』(タイトー、開発:東亜プラン/1985年)も、ヘルパーを合体させるとBGMが変わることで、プレイヤーにパワーアップに成功した喜びを与え、テンションをますます高めてくれます。

『ツインビー』(コナミ/1985年)にも、スピードアップや分身などのパワーアップ効果があるベルを取るとジングルが鳴り、BGMが変わる素晴らしい演出があります。
またファミコン用ソフトの『頭脳戦艦ガル』(デービーソフト/1985年)は、自機のパワーアップ段階に応じてBGMが2度変わるのも、これまたおもしろいアイデアでした。
  

さて、突然ですがここで皆さんにクイズをひとつ。
アーケードゲーム『コスモポリス・ギャリバン』(日本物産/1985年)、『ワンダーモモ』(ナムコ/1987年)、PCエンジン用ソフト『サイバークロス』(フェイス/1989年)の各アクションゲームに共通する、プレイ中にメインBGMが変化する条件とはいったい何でしょうか?

その答えは、「主人公が変身すること」です。
いずれのタイトルも、主人公が変身すると大幅にパワーアップし、なおかつBGMも変わることによって、プレイヤーはまさに特撮のヒーロー、あるいはヒロイン気分となり、ゲームに夢中になってしまうというわけですね。

ほかにも、シミュレーションRPGの『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』(任天堂/1996年)では、敵ユニットの大半を倒して自軍が優勢になると、プレイヤーに勝利を確信させるかのようなノリノリのBGMに変わる素晴らしい演出があります(※ちなみに正式な曲名も、そのものズバリで「勝利近し」です)。
  

ピンチ、クライマックスの場面の盛り上げにも欠かせない「ゲーム音楽」

今度は逆に、プレイヤーにミスやゲームオーバーなどの危機が迫った場面で緊張感を煽る、「ゲーム音楽」の例をご紹介していきましょう。

主にアクションゲームで、タイムアップが迫るとBGMのテンポが速くなり、スリル感を演出したタイトルは昔から数多くあります。
前述した『スーパーマリオブラザーズ』や、『サーカスチャーリー』(コナミ/1984年)などがこれに該当します。

さらに古いタイトルから例を挙げますと、『スペースインベーダー』(タイトー/1978年)では敵のインベーダーの数が少なくなるにつれて移動速度が徐々にアップし、同時に曲のテンポも速くなり、スリリングな場面を演出する素晴らしいアイデアがすでに導入されていました。
本作の場合は、BGMと言うよりは敵の移動音を表現したSEと呼んだほうが適切かもしれませんが、ビデオゲーム史上に残る、後世に語り継がれるべき名演出と言えるでしょう。

あるいは『ドラゴンバスター』(ナムコ/1985年)などのように制限時間ではなく、主人公のライフ(体力)が少なくなるとBGMのテンポが速くなり、プレイヤーの緊張感を高める例もあります。
皆さんもBGMがテンポアップしたことで思わず焦り、ミスをしてしまったという経験がきっとあることでしょう。

『ナッツ&ミルク』(ハドソン/1984年)や『キャメルトライ』(タイトー/1990年)などのタイトルは、残り時間が少なくなるとカウントダウンが始まり、スリリングな場面を演出しています。
ほかにも『妖怪道中記』(ナムコ/1987年)や、『ワンダーボーイ モンスターランド』(セガ、開発:ウェストン/1987年)、『1943』(カプコン/1987年)などのように、ライフが少なくなるとBGMに警告音を重ね合わせることで緊張感を演出する例もあります。
  

『ソロモンの鍵』(テクモ/1986年)や『クルクルランド』(任天堂/1984年)、『イー・アル・カンフー』(コナミ/1985年)などのタイトルは、残りタイムやライフが少なくなったときにBGMそのものを変えることで、ピンチの場面を演出しています。

『テトリス』(セガ/1988年)や『コラムス』(セガ/1990年)などの落ち物パズルゲームでは、多くのブロックが積み重なり、ゲームオーバーのピンチが迫ったところでBGMが変化。
こうしたプレイヤーの緊張感を高める演出は、もはや定番と言っても差し支えないでしょう。

また、これらのタイトルの多くは、BGMが切り替わるタイミングで「HURRY UP!」などのメッセージ表示とともに警告音を鳴らしたり、あるいはタイムアップ寸前にカウントダウンのジングルが流れる演出もセットになっていることが非常に多いように思います。
  

タイムアップ時のスリルを演出するおもしろい例としては、前出の『アルゴスの戦士』があります。
本作では、残りタイムが10秒になるとカウントダウンのジングルが鳴り始め、ゼロになると背景が暗くなって低音がズンズン響くBGMに変わり、絶対に倒すことができない巨大な敵(※いわゆる「永パ防止キャラ」)が繰り返し出現するようになります。

また『トイポップ』(ナムコ/1986年)は、残りタイムが13秒になると画面が点滅してBGMが少しずつテンポアップし、同時にフィールドがどんどん狭まって逃げ場がなくなることでスリル感を演出しています。

さらに古いタイトルで、プレイヤーに強烈な恐怖感を与えるBGMを用意していたのが『トランキライザーガン』(セガ/1981年)です。
本作には、プレイ中にずっと流れるBGMはありませんが、(捕獲した敵を積み込む)トラックの燃料がゼロになると警告音が鳴り、直後に敵の動物たちが主人公に向かって一斉に襲い掛かってくると同時に、BGMが流れ始めます。
このBGMは、曲というよりは警告音のSEをエンドレスで鳴らしていると言ったほうが適切かもしれませんが、その音色は一度聴いたらトラウマになるほどの、狂気すら感じるものがありました(筆者も子どもの頃、猛烈に怖かった思い出があります……)。
  

ここからは、ちょっと変わったピンチの場面を演出する「ゲーム音楽」の例をまとめてご紹介しましょう。

例えば前出の『ツインビー』では、対ボス戦でプレイヤーがミスをすると、いかにもピンチになったことを想起させるBGMに切り変わります。つまり、自機がパワーアップしたときにノリノリのBGMに変わる演出の逆パターンというわけですね。

ところで、このボス戦でミスをするとBGMが変わるアイデアですが、『ツインビー』以外のタイトルで使用されたケースは非常に少ないように思います。
似たような例としては、『ファイアーエムブレム トラキア776』(任天堂/1999年)で、味方ユニットに戦死者が出るとBGMが変わる演出がありますが、類例はほとんどない感があります。
なぜ、『ツインビー』のような有名タイトルのアイデアが広まらなかったのか、今後の研究課題ですね。
  

ほんの数秒しか流れないジングルだけで、緊迫した場面を演出する例として特筆に値するのが『マグマックス』(日本物産/1985年)です。
本作では、ミスをした後のリスタート時に必ずジングルが流れますが、残機ストックがゼロになった場合にのみ、いかにもピンチになったことを想起させる曲に変わる、見事なアイデアを導入しています。

実はこのアイデア、『テラクレスタ』(日本物産/1985年)や前述の『コスモポリス・ギャリバン』など、日本物産からほぼ同時期に発売された別のタイトルにも使われています。
筆者が知る限りでは、ほかのメーカーのタイトルでこのアイデアを導入した例は皆無で、まさに同社の伝統、専売特許の演出となっている感がありますね。

また、『1942』(カプコン/1984年)では、4面ごとに難易度の低い「ポイントアップステージ」が登場しますが、ここでミスをすると通常とは異なる、リスタート時のジングルがいかにもピンチになったことを想起させる曲に変わります。
筆者も小学生当時、この曲の存在に初めて気付いたときは恐怖感とともに、とても感動した思い出があります。
  

RPG系のタイトルでは、主人公や味方のキャラクターにステータス異常が発生すると、歩いたりダメージを受けるごとにSEを鳴らし、プレイヤーに注意を喚起する演出がよくありますが、BGMをガラっと変えてピンチになったことをプレイヤーに伝える例もあります。
『ワルキューレの冒険』(ナムコ/1986年)では、ヒロインのワルキューレが敵から毒攻撃を受けると警告音が鳴り、毒を消去するまでの間はBGMが変わるようになっています。

BGMを変えることで、プレイヤーにステータス異常を知らせる演出の中でも特に秀逸なのが、PC用ゲームの『ザナドゥ』(日本ファルコム/1985年)です。
本作では、フード(食料)のストックがゼロになると、主人公のライフが徐々に減少するステータス異常が発生し、同時に音程が外れまくったBGMに変わることで、空腹によってピンチを迎えていることをプレイヤーに教えてくれます。

ちなみに本作は、レベル(マップ)ごとにBGMはそれぞれ異なるのですが、すべてのレベルで通常のBGMとは別に、空腹時の専用BGMもわざわざ用意していることには、今さらですが本当に驚かされます。
開発、および作曲者の並々ならぬこだわりを感じずにはいられませんね。
  

以上、当コラムでは初めてとなる、「ゲーム音楽」をテーマにした「ゲームニクス」の事例をいろいろご紹介しましたが、どのようなご感想をお持ちになったでしょうか?

今回取り上げた曲以外にも、「ゲーム音楽」には膨大な数の曲やアイデア、表現技法があり、そのすべてを1回分のコラムだけでご紹介するのはとうてい不可能です。
ほかにも、ぜひ皆さんに知っていただきたい、プレイヤーを夢中にさせるアイデアを盛り込んだ「ゲーム音楽」はたくさんありますので、また機会があればご紹介したいですね。

なお、「ゲーム音楽」に関するくわしい内容は、サイトウ先生と筆者の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」の「原則3-E 音楽理論の導入」のところに、音楽の専門家である玉川大学の野本由紀夫教授が監修した解説が掲載されていますので、ご興味のある方はぜひご一読ください。

それでは、また次回!

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