「クリティカル・ワード ゲームスタディーズ」(吉田寛/井上明人/松永伸司/マーティン・ロート=編著)が6月26日に発売開始!

  • 記事タイトル
    「クリティカル・ワード ゲームスタディーズ」(吉田寛/井上明人/松永伸司/マーティン・ロート=編著)が6月26日に発売開始!
  • 公開日
    2025年06月27日
  • 記事番号
    13174
  • ライター
    IGCCメディア編集部

現代社会において、ゲームは単なる娯楽を超えた文化的現象として、私たちの生活に深く根ざしています。
そのゲームという営みを学術的に探究する「ゲームスタディーズ」は、まさに21世紀を代表する学問分野として現在、注目を集めつつあります。
このたび、その本格的な入門書として「クリティカル・ワード ゲームスタディーズ」がフィルムアート社より刊行されます。

本書は、吉田寛、井上明人、松永伸司、マーティン・ロートという四名の編著者のもと、ゲームと遊びを研究する総合的な学問分野であるゲームスタディーズの全体像を、体系的かつ包括的に提示した一冊。
従来、断片的に論じられがちであったゲーム研究の諸概念を、理論的基盤から文化的現象、さらには必読文献に至るまでバランス良く整理した構成は、本書の最大の特徴といえます。

第一部の理論編では、ゲームスタディーズの根幹を成す基礎概念を丁寧に解説しています。
ルール、フィクション、メディア、遊び、エンターテインメント、ソーシャル、インタラクティビティ、人工物といった、ゲームを理解する上で不可欠な概念群について複数の視点から多角的に検討を加えています。
これらの概念は、一見自明に思われるものでありながら実際には複雑で多義的な性質を持っており、本書ではそうした複雑性を丁寧に解きほぐし読者の理解を深めていきます。

第二部のキーワード編では、現代のゲーム文化を理解するために欠かせない重要なトピックを27項目にわたって取り上げています。
アーカイブ、RTA、アクセシビリティと障害の表象、アバター、インディーゲーム、ゲーム実況、チート、VR、没入、物語といった多様なキーワードを通じて、ゲームという文化現象の豊かさと複雑さを浮き彫りにしています。
これらのキーワードは、技術的側面から社会的側面、文化的側面から倫理的側面まで、ゲームを取り巻く様々な論点を網羅しており、読者はゲーム文化の全体像を把握することができます。

第三部のブックガイド編では、ゲームスタディーズの理論的発展を支えてきた重要文献を厳選して紹介しています。
ヨハン・ホイジンガの古典的名著である「ホモ・ルーデンス」から、トーマス・S・ヘンリックスの「遊びと人間の条件」まで、遊びとゲームの研究史を彩る20の必読文献についても解説されています。
これらの文献案内により、読者はゲームスタディーズという学問分野の歴史的展開と理論的深化を理解するとともに、さらなる学習への道筋を見出すことができるでしょう。

ゲームスタディーズという学問分野は、コンピュータサイエンス、心理学、社会学、文化研究、メディア研究、哲学など、実に多様な領域にまたがる学際的な性格を持っています。
そうしたゲームの持つ多面的な価値を理解し、その可能性を最大限に活用するためには、ゲームそのものに対する深い理解が不可欠です。
本書は、そのような理解への扉を開く鍵として、ゲームという文化現象の本質に迫る洞察を提供してくれるでしょう。

【執筆者】

池山草馬/井出草平/今井晋/武澤威/岡本健/尾鼻崇/木村知宏/倉根啓/小林信重/近藤銀河/西條玲奈/髙橋志行/髙松美紀/竹本竜都/田中治久/谷川嘉浩/根岸貴哉/福田一史/藤田直哉/藤本徹/ムン・ゼヒ/山口浩/楊思予
 

【目次】

はじめに 吉田寛

第1部 理論編──ゲームスタディーズの基礎概念
1 ルール
 1 ルール概念の多義性、多様な性質   井上明人
 2 ゲームはルールか?  松永伸司
 3 ルールはゲームを定義する  吉田寛
2 フィクション
 1 遊びの本質としてのフィクション  吉田寛
 2 ゲームはフィクションか?  松永伸司
3 メディア
 1 ゲームとメディアはどういう関係にあるのか?  吉田寛
 2 ゲームはメディアを超えられない  マーティン・ロート
4 遊び
 1 ゲームと遊びの関係について多様な理解  井上明人
 2 遊びの創造性  吉田寛
 3 ゲームは遊びではない  マーティン・ロート
5 エンターテインメント
 1 ゲームに関わる「娯楽」概念小史  井上明人
 2 ゲームはエンターテインメントではない  マーティン・ロート
6 ソーシャル
 1 ゲームの社会的使命  吉田寛
 2 ネットワーク外部性、ユーザー分類、メタ認知   井上明人
 3 ゲームはソーシャルではない  マーティン・ロート
7 インタラクティビティ
 1 インタラクティビティと「面白さ」  吉田寛
 2 「循環」論とインタラクティビティ  井上明人
8 人工物
 1 何がゲームとして見出されるのか  井上明人
 2 ゲームは人工物か?  松永伸司

第2部 キーワード編──ゲーム文化を理解するための重要トピック
1 アーカイブ  福田一史
2 RTA  竹本竜都
3 アイテム  山口浩
4 アクセシビリティと障害の表象  近藤銀河
5 アバター/プレイヤーキャラクター  ムン・ゼヒ
6 インディーゲーム  今井晋
7 NPC  髙松美紀
8 エミュレーション  吉田寛
9 音・音楽  田中治久
10 学習  井上明人
11 ゲーミフィケーション  井上明人
12 ゲーム行動症  井出草平
13 ゲーム実況  根岸貴哉
14 ジェンダーとセクシュアリティ  近藤銀河
15 スポーツ  吉田寛
16 チート  楊思予
17 ツーリズム  岡本健
18 ナビゲーション  谷川嘉浩
19 批評  藤田直哉
20 VR  池山草馬
21 プラットフォーム  マーティン・ロート
22 没入  吉田寛
23 マジックサークル  マーティン・ロート
24 物語  倉根啓
25 ユーザー生成コンテンツ  小林信重
26 倫理  西條玲奈
27 歴史記述(ゲーム史を書くこと)  田中治久

第3部 ブックガイド編──遊びとゲームを考えるための必読文献
1 ヨハン・ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』  マーティン・ロート
2 グレゴリー・ベイトソン「遊びと空想の理論」  吉田寛
3 ロジェ・カイヨワ『遊びと人間』  松永伸司
4 ジャック・アンリオ『遊び』  吉田寛
5  ミハイ・チクセントミハイ『退屈と不安を越えて』  木村知宏
6  バーナード・スーツ『キリギリス』  吉田寛
7  ゲイリー・アラン・ファイン『共有されるファンタジー』  髙橋志行
8  ブライアン・サットン゠スミス『遊びの曖昧さ』  井上明人
9  ジャネット・H・マレー『ホロデッキ上のハムレット』  吉田寛
10 エスペン・J・オーセット『サイバーテキスト』  吉田寛
11  イェスパー・ユール『ハーフリアル』   松永伸司
12 アレクサンダー・R・ギャロウェイ『ゲーミング』  マーティン・ロート
13  T・L・テイラー『世界をまたぐ遊び』  池山草馬
14 イアン・ボゴスト『説得的ゲーム』  藤本徹
15 ミア・コンサルヴォ『チート行為』  小林信重
16 レン・コリンズ『ゲームサウンド』   尾鼻崇
17 グラント・タヴィナー『ビデオゲームの芸術』   松永伸司
18 ニック・ダイア゠ウィザフォード&グレイグ・デ・ピューター『帝国のゲーム』  マーティン・ロート
19  エイドリアン・ショー『ゲーミング・アット・ジ・エッジ』  武澤威
20  トーマス・S・ヘンリックス 『遊びと人間の条件』  マーティン・ロート

人名索引
事項索引

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