完全新作に加え過去作の魅力も再発見できる『グラディウス オリジン コレクション』

  • 記事タイトル
    完全新作に加え過去作の魅力も再発見できる『グラディウス オリジン コレクション』
  • 公開日
    2025年05月23日
  • 記事番号
    13012
  • ライター
    橋本新義
『沙羅曼蛇III』タイトル画面。権利表記年の『2025』がアツい

アーケードゲームにおいて“シューティングの金字塔”と呼べるタイトルは? と問いかけると、必ず入ってくるであろうシリーズの一つが、KONAMIの『グラディウス』シリーズ。非常に強力な自機パワーアップや、時代時代の水準を超えた美しい画面により、数多くのプレーヤーを虜にした作品たちだ。

非常に高い人気シリーズだけに、これまでにも多くの家庭用移植がなされているが、この2025年に新たなタイトルが加わる。初代アーケード版のリリース40年を記念し、KONAMIが8月7日に発売するのが『グラディウス オリジン コレクション』だ。

対応プラットフォームは、プレイステーション5、Nintendo Switch、Xbox Series X|S、Steamの4種。価格はダウンロード版の6380円(税込)からとなる。記事執筆時は10%引きとなる事前予約セールが開催中だ。

本作はグラディウス・沙羅曼蛇(さらまんだ)シリーズのアーケード版を多数収録した、いわゆる「複数移植作をパックにしたタイトル」だ。
開発担当は、クラシックゲームの移植に定評のある、有限会社エムツー。同社の過去作を見ても、基本的な移植度に関しては、現状の時点でさえほぼ間違いないと考えて良いレベルだろう。
 

収録作品は7タイトル18バージョン 完全新作『沙羅曼蛇III』と幻の『グラIII AMショー版』も

本作が注目される第一の理由が、収録作品だ。

●沙羅曼蛇III(完全新作)
●グラディウス
●沙羅曼蛇
●ライフフォース
●グラディウスII GOFERの野望
●グラディウスIII 伝説から神話へ
●沙羅曼蛇2

の7タイトル。
そして本当に凄いのがここからで、それぞれのタイトルに対し、細かなバージョン違い(出荷後の難度調整や、海外向けに再調整された版)を網羅、収録している。これにより総計では、18ものバージョンが集まっている。

『グラディウス』シリーズのアーケード版……という点では『グラディウスIV 復活』が未収録という点が気にかかるところだが、一方でこれまで移植回数の少なかった『沙羅曼蛇2』が収録されているのは嬉しいところだ。

収録タイトルとバージョン一覧。初代は何と5バージョン

中でも注目されるタイトルが、完全新作となる『沙羅曼蛇III』だろう。
同作は『沙羅曼蛇』の特徴である2人同時プレイやアイテム取得式のパワーアップといった点を引き継ぎつつも、「新しく設けられた「バーストボタン」により、一定時間超強力な特殊パワーアップ「バースト攻撃」ができる」といった、昨今のタイトルで主流となっている操作が導入されている。

一定時間のバースト攻撃直後はパワーダウンするデメリットもある(一定時間で回復)

また発表されている動画を見る限り、『沙羅曼蛇2』よりも直系的な続編として仕上げられているようだ。
こうした懐かしくもモダンな仕上がりを目指した作品は、開発担当のエムツーが得意としてきた作風なだけに、本作もこうした面では大きく期待できそうだ。

『沙羅曼蛇III』スタート直後。出現する敵や動きは、2よりも初代の直系を感じさせる
『沙羅曼蛇III』の2人同時プレイでは、夢のオプション8個による強力な攻撃が。縦スクロール面もしっかり用意されている

そして隠れた目玉作品として注目されているのが、今回が初収録となる、初代『グラディウス』の「北米プロト版」と、『グラディウスIII』の「日本AMショー版」だ。

前者はプロト版ということもあり、ほぼ知られていなかったバージョン。コナミスタイルのXでは「一部で噂されていた最大オプション6個のバージョンではない」旨のコメントがされているが、細かな調整の差があるとのこと。
 

北米版を制作する途中のバランス調整版となるこのバージョン。細かなところでは、敵攻撃ランクの計算式やランクに依存する敵の行動、撃ち返し弾発生の条件や復活時の敵出現テーブルなどが発売版と異なるという。
ということで初代のファンにとっては、かなり遊び甲斐がありそうだ。

後者のAMショー版は、1989年に発売前イベントで2日間のみ稼働したバージョン。AMショーというイベントは基本的に業者向けということもあり、プレイできた人数は非常に少ない、幻のバージョンと呼ぶにふさわしいタイトルだ。

『グラIII』AMショー版では、リップルレーザーが最大6連射と超強力。プレイ感覚も発売版と別モノ

実は発売版とは大きく仕様が異なっており、とくに自機のショット武装は、レーザー系が最大6連射(発売版は2連射)、ダブル系も最大3連射(単発)と非常に多く弾が撃てるようになっている。
また防御系武装でも、フォースフィールド(全体バリア)とリデュース(自機縮小)が併用可能など、発売版に比べて非常に強い設定となる。

『グラIII』AMショー版のエディットモード。リデュース(自機縮小)が『!』ゲージにあるので、フォースフィールドとの併用が可能だ

さらにステージ構成なども発売版とは変更されているため、他タイトルのイベント限定バージョンと比べても、別モノ度は非常に強い。“もう一つのアーケード版グラディウスIII”とも呼べるタイトルなのである。

本作のような復刻移植タイトルは、ともすれば「懐かしのタイトルを安価に楽しめる」点を一義にした作品も多く見られる。
しかし本作はここまで紹介したように、目玉となる新作や特殊バージョンを収録することで、収録作を遊び尽くしたユーザーに対しても非常に魅力的な作品となっているのだ。

遊び尽くした作品の新たな魅力を引き出す豊富な新機能の数々

そして本作の魅力は、こうした新作や準新作(と言ってよいだろう)だけではない。
実は他のタイトルでも従来の移植よりも最良の移植とすべく、様々な機能やオプション設定が導入されている。
これらにより、本作版に収録されたシリーズタイトルは、ゲーム内容は元となったアーケード版を基本としつつも、より遊びやすく、また親切な“最も遊びやすく、攻略しがいのあるグラディウス”を目指したものとなっているのだ。
 

具体的な機能としては、無敵モードやイージーモード、巻き戻し機能、当たり判定表示機能、トレーニングモード(ステージ中のいくつかのポイントを集中練習できる)、さらにはクイックセーブやロード(しかもセーブスロットは全タイトルで100個)といった、より遊びやすく、また攻略の研究に役立つ機能が導入されている。

『沙羅曼蛇2』で当たり判定を有効にした画面。同作などでは、点数表示領域に隠れた敵が見やすくなるというメリットも

とくに無敵モードは、「無敵になりつつも、本来は被弾になった回数をカウントする」仕様となっており、無敵を使いながらも攻略が進めやすい工夫がなされている。

またイージーモードは、自機の被弾判定を極小化することで、原作では通れない隙間でもミスにならないというモード。難度が下がるというだけではなく、昨今のシューティングに慣れたプレーヤーでも、違和感が少なく遊べる……という工夫が盛り込まれている。
 

『沙羅曼蛇』のトレーニングはステージごとに加え、ラストの脱出のみを練習できるモードも新設。これは嬉しい

これに加えて本作では、エムツーのシューティング移植作で導入されてきた「ガジェット」表示も搭載されている。これは原作画面表示の周囲に、ゲームプレイに役立つ情報を常時表示するというもの。

本作では、たとえばバリア耐久度の表示や、敵攻撃ランク、敵を全滅させる青カプセルやオプションハンター出現条件といった、「攻略においては重要ながら、原作では半ば隠しパラメーターとなっていた表示」が、いつでも確認できるようになっている。

『グラディウスIIでのガジェット表示例。リアルタイムでのバリア耐久度や敵攻撃ランク、オプションハンター出現までの時間などが確認できる。中央下部に表示された音声字幕、右下の曲名表示などもガジェットだ

とくに『グラディウスII』や『III』においては、攻略において「フォースフィールドの貼り替え」――全体バリアの効果が切れたら即座に再装備する――が必須となるのだが、ガジェットでバリア耐久度が常に見えるようになったことで、慣れていないプレーヤーでも計画的に狙えるようになる……といったメリットがある。

さらに『グラディウスIII』では、上級プレーヤーを悩ます敵機「ジーアイ」の残り数や出現方向を表示するといった、攻略を進めるプレーヤーにとっては非常に嬉しいガジェットも用意されている(ジーアイは画面外に逃げた後、ランダム的に再出現するが、これがミスの要因となることが多く、撃ち逃しが確認できればかなり楽になる)。

こちらは『グラディウスIIIでのガジェット表示。ジーアイ関連表示はレベル段階の調整が可能で、画面は最大状態。右下の「ジーアイカウンター」と画面右の「WARNING」表示で画面外からの接近も容易にわかる

さらに見逃せないのが、各タイトルごとに、作品の魅力をより高める「マニアックオプション」と呼ばれる設定が導入されている点だ。

具体的な項目やその数はバージョンごとに異なるのだが、いくつかはコナミスタイルのXで紹介されている。

『グラディウスIIでの大注目オプションである「当たり判定変更」。原作ではレーザーやフォースフィールドの判定が8ドットごとに区切られており、見た目とズレることがあったのだが、これを見た目通りに揃えるというもの
原作版『グラディウスIIの当たり判定処理概説(KONAMI提供)。手順としては、先に赤い範囲の「前処理」が適用され、次に青色の範囲で判定が処理されるという。結果、位置によっては見た目より判定が小さくなる。図の例では、フォースフィールドの被弾では有利だが、ショットは判定が縮小。大きく不利となってしまう

例えば『グラディウスII』では「武器とフォースフィールドの当たり判定変更」といった、過去の移植では聞いたことのない設定を紹介。
 

これにより当たり判定が見た目どおりに調整され、レーザー装備が遊びやすくなる」という、非常に興味深いものとなっている。

設定項目数に関しても、最多となる『グラディウスIII』製品版では何と27項目。AMショー版でも11と(『グラIII』が他タイトルに比べて突出しているものの)非常に豊富だ。
 

中には「グラディウスIIIの沙羅曼蛇面BGMをステレオで再生する」といった、前代未聞の項目もあるという。
 

というのも同作のサウンド回路はモノラル出力だったため、アーケード版では絶対に聞けない設定となるのだ。

『グラディウスIII』の注目設定の一つが、この「沙羅曼蛇面ステレオ」。内部曲データをそのまま再生する設定に加え、何とステレオ効果を再調整したバージョンも。さらに下部には「E装備追加」など、気になる項目が多数用意される
『グラディウスIII』のサウンド関連では「ステージ1とタイトルデモの曲をサウンドトラック版の楽譜ベースで演奏する」という、こちらも類を見ない設定も用意。サントラ版のほうを聞き慣れた方も安心(?)だ

アーケードを超える快適さで遊べる“決定版移植”に

『グラディウス』シリーズは名作との評価も高いことから、多数の機種で繰り返し移植されてきたタイトル。しかし本作では数々の新機能や新設定により、過去の移植とはプレイ感覚が別モノと言っても過言ではないほど、より優しく、より深く楽しめる仕様となっている。

その点で本作は、これまでさまざまな移植版を購入して“渡り歩いて”きた、歴戦の『グラディウス』ファンにこそオススメしたいタイトルとも呼べる作品なのである。
 

歴戦のファンからこれまで触れたことのないユーザーまでが、新作や準新作のみならず、過去作も、これまでの移植版のみならず、アーケード版をも超える快適さでプレイできる『グラディウス オリジン コレクション』。
移植作の決定版とも呼べる本作、ご興味があれば、ぜひプレイしてほしい。

ガジェットがとくに嬉しいであろう『グラディウスII』。常にバリアの耐久力が確認できる安心度は、やり込んだ人ほど嬉しいはず

©Konami Digital Entertainment

『グラディウス オリジン コレクション』8月7日(木)発売!

今年40周年を迎える「グラディウス」シリーズの集大成として、2025年8月7日(木)に『グラディウス オリジン コレクション』を発売することが決定いたしました。

『グラディウスⅢ 伝説から神話へ』の「日本AMショー版」、2Dーシューティングゲームとしては17年ぶりとなるシリーズ最新作『沙羅曼蛇Ⅲ』などを加えた、全7タイトル18バージョンを収録。

巻き戻し、クイック・セーブ/ロードはもちろん、イージーモード、無敵モード、トレーニングモードなど、幅広いプレイヤーに楽しんでいただける機能が満載。

くわしくは、こちらを!
 

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