発見! インディーゲーTreasures

  • 記事タイトル
    発見! インディーゲーTreasures
  • 公開日
    2023年03月17日
  • 記事番号
    9323
  • ライター
    山村智美

“3Dリアルタイムアクション化したウィザードリィ”みたいな意欲作『Dark and Darker』

いい感じの遊び心地
いい感じのポップさ
いい感じのカジュアルなビジュアル
いい感じの2Dドットなゲームも豊富
いい感じの重すぎない&軽すぎないゲームらしさ

「発見! インディーゲーTreasures」は、
そんな“ちょうどいい感じ”なインディーズゲームを紹介していく月イチ連載です。

今回ピックアップした1本は、こちら。

『Dark and Darker』!

© 2022 IRONMACE Co., Ltd. All Rights Reserved.


タイトル:『Dark and Darker』
対応機種:PC(Steam)
発売日:2023年第4四半期(4月頃にアーリーアクセス版が登場するかも)
価格:未定

https://store.steampowered.com/app/2016590/Dark_and_Darker/

30数年ほど昔、一人のゲーム好きな少年だったボクは『ウィザードリィ』というゲームが特に好きでした。

プレイヤーが自由にクリエイトして名前を決めた冒険者たち。

そんな駆け出し冒険者たちが酒場で出会いパーティーを組んで、
恐ろしい魔物が蠢くダンジョンへと潜っていく。

シンプルなビジュアルの『ウィザードリィ』には冒険者たちのイラストなどは一切なく、あるのは名前などのテキスト情報だけ。戦いの激しさや傷つき倒れるその物語は、プレイヤーの頭の中に創造されていました。

もちろん、自分の心に広がる想像の世界に勝るものはないので、それはそれで良さがあるわけですが、その一方で、

「きっとこれからゲームはもっともっと進化して、自分が冒険者の一人になりきってリアルなダンジョンの中を見知らぬ人と協力して進んでいくような“リアルなウィザードリィ”みたいなものも遊べるに違いない!」なんて、当時に思いを馳せたものなのです。

それから何と30数年。そんな想像がそのまま具現化されたような意欲的なゲームが登場しました。
それが、『Dark and Darker』!

……まぁ、ゲーム名を略すと“D&D”になるあたり、どちらかというと『ウィザードリィ』より『ダンジョンズ&ドラゴンズ』リスペクトっぽくない? という感じもするのですが。

何しろボクが「これリアル進化版ウィザードリィじゃないですかー! おもしろー!」って思ったので、それでいいんです。
  

先にお伝えすると、この『Dark and Darker』はコマンド選択式のRPGではないですし、それどころか、かなり独特な、いろんなゲームジャンルの要素を併せ持ったものになっています。

『Dark and Darker』はジャンルとしては、

“ローグライク”
“ダンジョン探索”
“PvE(CPUのモンスターと戦う!)”
“PvP(他のプレイヤーとも戦う!)”
“バトルロイヤル”
“アクションRPG”

です。

熱心なゲームファンでも要素が多くて「えーっと……?」っとなる感じですが、

ざっくり言うと、

“冒険者としてダンジョンを探索し、アイテムを発見して無事に持ち帰る”

これが目的。ダンジョンものの王道ですね。

そして、大きな特徴として、

ダンジョン内で力尽きてしまうと所持していたアイテムをすべて失ってしまいます。いわゆるローグライクの要素です。キャラクターそのもののロストこそはありませんが、力尽きると持ち込んでいた装備やアイテムを失ってしまいます。

PvEは、「Player versus Environment」、いわゆるCPUキャラと戦うというもの。RPGで例えるとエンカウントしたモンスターと戦う普通の戦闘はPvE。

一方でPvPは、「Player versus Player」、いわゆるプレイヤー同士の対人戦です。くわしくは後述しますが、『Dark and Darker』では自分たちパーティ以外の他のプレイヤーと、戦うこともあります。

本作では“自分が生き残るために他のプレイヤーを襲うのもあり”です。

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プレイヤーはダンジョンに挑む冒険者の一人。

「ファイター / ローグ / ウィザード / レンジャー / バーバリアン / クレリック」のいずれかのクラスを選択できます。もちろんクラスごとにスキルや扱える武器や防具の違いがあります。

ロビーは、これまたダンジョン探索ものの定番である「酒場」。ここから1人でダンジョンに挑んでもいいのですが、他のプレイヤーと3人のパーティを組むこともできます。

「集会所」という、他のプレイヤーと自由にチャットができる場所もあります。ざっくり言うと、そこに来ている人はほぼ全員が“誰かとパーティを組みたい”と考えていると思っていいので、レベルが近い人をばんばんパーティに誘っちゃいましょう。
  

ダンジョン内の画面は1人称視点。

画面構成や操作の手触り的には、エルダースクロールシリーズの『スカイリム』や、ちょっと懐かしいところだと『キングスフィールド』シリーズに近いスタイルです。

W/A/S/Dキーで移動してジャンプも可能。床のスイッチを踏むと針が飛び出してくるといった定番の罠なんかも随所にあるので、そういう罠を発動させないように慎重に移動して探索していきます。

ダンジョン内にはところどころ松明が設置されているものの、それでもかなり暗め。暗いままではろくに進めないので、松明を片手に持って照らします。

パーティを組んでいるときなら、必然的に誰かが松明を持って照らす役目をするようになり、その明かりを頼りに盾を構えつつ慎重に先頭を進む人、その後ろに続く人といったように、隊列が自然とできてくるんです。

……こういうところが、かつて想像した“未来のウィザードリィ感”があってたまらないんですよ、このゲーム。

ちなみに、松明は床に投げ捨てるとその周囲を照らしてくれるので、いざモンスターと戦闘になったときには松明を捨てて武器に持ち替え、明るさを確保しつつ戦闘参加するという、妙にリアリティがある動きもしていきます。

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戦闘はアクション方式で、武器を振って攻撃し、モンスターの攻撃を盾を構えて防いだり、距離を取って避けたり。特に距離感が大事ですが、何しろダンジョンはあまり広くないので、味方が密集していて回避の邪魔になってしまったり、攻撃魔法が味方にヒットして大惨事! ……なんていうことも(いわゆるフレンドリーファイアがあるんです)。

かつて『ウィザードリィ』でも前衛3人と後衛3人という隊列があって近接攻撃できるのは前の3人だけでしたが、「狭いスペースで複数人数が戦うのを映像化すると、こんな感じになるよねー」と納得。

モンスターにびびりつつも、ところどころに置かれている宝箱からアイテムをゲット。互いのクラスに役立ちそうな装備を交換したりして装備を変えたりしていると、得も言われぬ満足感が。ダンジョンRPGものの醍醐味。

でも、これを生きて持ち帰らないといけないのが『Dark and Darker』。ダンジョン内には青い脱出ポータルがあって、そこにアクセスすると帰還できます。

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このように、“3Dリアルタイムアクション化したウィザードリィ”みたいでかなりいい感じな『Dark and Darker』ですが、冒頭でもお伝えしたように実はこのゲームは、“PvPがあるバトルロイヤル”もの。

同じダンジョンには最大で16人が参加していて、自分たちパーティ以外の他のプレイヤーは敵なんです。プレイヤー同士やパーティ同士の戦いが起き、勝者は敗者が所持していたアイテムを奪いとることができます。

ただ、必ずしも出会ったら戦わないといけないというわけではなく、例えば、脱出ポータルが2つ見えているときに2人のプレイヤーが出会ったなら、戦わずにそれぞれ脱出すればいいですし、モンスターが迫っているなら共闘して乗り越えるのが双方のメリットになります。

闇雲に出会ったら戦えばいいというわけではないけど、攻撃することはできるという状況なので、他のプレイヤーとの接触はかなり緊張感があります。

「PvP要素はちょっと苦手かなぁ……」という人もいると思うのですが、それこそ古の『ウィザードリィ』においても冒険者くずれが他の冒険者を襲う盗賊のようになっていった的なバックグラウンドはありましたので、その再現、ロールプレイとしてはありだよねぇ……というところ。

暗がりに隠れて背後から他のプレイヤーを襲うような、バリバリの盗賊プレイも可能なシステム。シビアです。

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さらにバトルロイヤルものでお馴染み“円形のセーフエリア”が時間経過とともに収縮していくという要素もあります。

セーフエリア外にいるとダメージを受け続けてしまうので、生き残っているプレイヤーはセーフエリアが縮んでいく中に集まっていき、遭遇しやすくなっていきます。

このため本作はRPG的にじっくりとダンジョン探索を味わう……という感じではなく、1ゲームは12分で終了するというスピード勝負になっています。

適度にモンスターを倒しつつアイテムを手に入れたら、脱出ポータルを探して一刻も早く脱出するという流れですね。

ただ、個人的にはこのバトルロワイヤル要素はゲームモードを分けるなりしてもいいんじゃないかなーと感じるところも。
PvP要素はシリアスかつシビアなダンジョンRPGものの再現としてありかなーとも思うのですが、セーフエリアが狭まるバトルロイヤル要素は、RPG的な味わいとは相性が良くないと思えるんですよね。あんまり上手く噛み合っていないような。

クエストやボス戦、トレジャーハンティング要素を高めた、協力プレイのダンジョン探索に絞ったモードがあっても良さそうかなと思います。それこそ『ウィザードリィ』ライクに、超レアアイテムを求めてパーティを組んでダンジョンに潜り続けるトレジャーハンティング特化なモードがあっても良さそうですよね。

まぁ、今はまだまだαテスト段階ですので。今後にどんな感じに発展していくのかに期待ですね。

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というわけで、シンプルなダンジョン探索型バトルロイヤルな『Dark and Darker』。何しろダークファンタジーな雰囲気がよく、『ウィザードリィ』がリアルに進化してオンラインで見知らぬ人とも冒険できるようになったらこんな感じでは……と、関心してしまう出来です。

一方で、若い世代の人にとっては斬新なファンタジーもののパーティバトルロイヤルゲームとして、新しい魅力のゲームになっていると思います。

実際のところ『Dark and Darker』はテスト段階ながら、かなり人気が高まっていて、参加人数はテストを重ねるごとに増加。日本サーバーができて、テキストの日本語化もされたので、日本での人気がますます高まりそう。

なお、『Dark and Darker』は、本稿執筆時点の2023年2月初旬では正式リリース前のプレイテスト段階で、4回目のプレイテストが2月6日から2月13日に開催されました。

この記事をお読みいただいているときだと、すぐにはプレイできないかもしれませんが、次回以降のプレイテストもあるかもしれないですし、アーリーアクセス版は4月に提供するかもと公式Twitterでも告知されていますので。気になる人は要チェックですよ。
  

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