線画アートのビジュアルに編み込まれた日々の小さな物語を“影”から見守るパズルアクション『SCHiM – スキム -』

  • 記事タイトル
    線画アートのビジュアルに編み込まれた日々の小さな物語を“影”から見守るパズルアクション『SCHiM – スキム -』
  • 公開日
    2024年07月19日
  • 記事番号
    11598
  • ライター
    山村智美

いい感じの遊び心地
いい感じのポップさ
いい感じのカジュアルなビジュアル
いい感じの2Dドットなゲームも豊富
いい感じの重すぎない&軽すぎないゲームらしさ

『発見! インディーゲーTreasures』は、
そんな“ちょうどいい感じ”なインディーズゲームを紹介していく月イチ連載です。

今回ピックアップした1本は、こちら。

『SCHiM – スキム -』!

 

タイトル:『SCHiM – スキム -』
開発: Ewoud van der Werf, Nils Slijkerman
パブリッシャー: Extra Nice, PLAYISM
リリース日: 2024年7月18日
価格:ダウンロード版 2,750円、パッケージ版 4,400円
配信プラットフォーム:PC(Steam) / Nintendo Switch / PlayStation 4 / PlayStation 5 / Xbox One / Xbox Series X|S

【公式サイト】
https://schimgame.com/

【PLAYISMの『SCHiM – スキム -』紹介ページ】
https://playism.com/game/schim/

【Steam】
https://store.steampowered.com/app/1519710/SCHiM/

【Nintendo Switch】
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000079744.html

【PlayStation Store】
https://www.playstation.com/ja-jp/games/schim/

“夏の日”と言えばどんな光景を思い浮かべますか?

ボクは、カンカン照りだった昼もそうですが、その時間が過ぎ、遊び疲れて座って眺めている夕暮れの街。伸びる影。そういう景色が浮かびます。

もし、そんな影の中に人々をそっと見守っている“存在”がいるとしたら。

カエルのように影をぴょんぴょんと飛び移る精霊「スキム」となって、美しい街を、そしてある一人の人生を見守っていく。

それが、本作『SCHiM – スキム -』です。

タイトル名の『スキム』とは、

「オランダ語で“精霊のようなもの”や“目の端に見えるチラチラしたようなもの”などを意味します。」

と公式にて説明されています。精霊や妖精のことを指す言葉というわけですね。

本作に登場する「スキム」は、黒くて小さい毛玉のような姿。そこに2つの眼があってカエルのようにぴょんぴょんとジャンプして影を移動する……そんな不思議な存在です。

日本的には、出ておいでー! でおなじみ「まっくろくろすけ」を思い浮かべる人もいるでしょうか。まぁ、「まっくろくろすけ」は煤渡り(ススワタリ)の妖精ですしジブリの創作物なのですが、暗い場所に潜んでいる妖精という考え方は近いですね。

本作は、プレイヤーがこの「スキム」となって、人々の暮らしを、そしてある青年の日常を追っていくというパズルアクションゲームなんです。

本作のゲームシステムは非常にシンプル。

スキムが移動できるのは、ヒトやモノの影のある場所だけ。

街にはヒトやモノがたくさんあってそれぞれに影があるので、その影から影へとジャンプで飛び移っていき、目的地を目指していくというものです。

物語は、あるスキムがいつも見守っていた人間から離れ離れになってしまったところから始まっていきます。

本作には言葉やボイスはなく、人々の動きやシチュエーションから起きている出来事を感じ取っていくスタイル。ですが、何が起きているかはしっかり伝わってきます。

人生のいろいろな場面に遭遇し、心を揺さぶられる青年。

彼の人生をしっかりと見届けるため、プレイヤーことスキムは彼を追いかけて影から影へと移動していきます。
 

影から影へとうまく移動して目的地を目指すアクションパズルな本作ですが、

当然ながら、

「あれ? ここはどこから飛び移っていけばいいんだろう?」

と考える場面が登場します。

画面を90度に回転できるので、角度を変えたりして飛び移る影を把握するのが基本。

また街中には、走行中の車だったり、自転車であったり、ジョギング中の人などの、

“移動する影”

が、たくさんあります。そうした移動する影にタイミングよく飛び移っていくのもポイントになります。

逆に、動かない影の中にじっとして周囲を観察しているときに、走行中の車の影が重なり、車のほうの影に強制的に運ばれてしまうということも起きたりするので、油断は禁物。

隠れている影を作っているモノをボタン操作で反応させることも可能で、例えば電灯をチカチカ点滅させたり、ゴミ箱からゴミを出したり。そうした異変を起こすと近くの人が気づいて寄ってくることもあります。

特筆すべきはやはりこのグラフィックス。線画アートの世界は非常に細かに描き込まれていて、そしていろんなものが豊かに動きます。

そして、本作のゲーム性の軸である影も当然のようにしっかりと作られているので、線画のビジュアルに影のコントラストがしっかりと効いているというアート作品のような画面になっています。

移動するために影の場所を観察していると、自然とこのビジュアルをよく眺めることになり、その芸の細かさに自然と気づいていけるという上手い作り。

影が細かく正確に描写されているところもアーティスティックさを高めていますが、本作の影はグローバル・イルミネーションでリアル生成しているそうで、太陽光、街灯、それら光の反射などで、しかりとリアルな位置や長さの影を描写しているとのこと。

それでいて、パズルゲームとして成立させるためにオブジェクトの配置などをしっかりと調整しているということで、アーティスティックなビジュアルとゲームならではのデザインを両立しているところが注目です。
 

ゲームシステムはシンプルながら、描いているビジュアルにしてもテーマにしても懐の深さを感じさせる本作。

アート作品のような線画のグラフィックスで描かれている街は、まるで生きているかのように細かに動いていて、

遊び回る子どもたち、

ジョギングしている大人、

自転車に乗っている人、

車やバイク、

転がっているボール、

あらゆるヒトやモノに常に寄り添っている影と、そこにいる精霊たち。

本作で描かれているものには、日常の暖かさや柔らかさがあって、でも時おり現実的な社会の営みもあり、生活の喜怒哀楽が、日々の小さな物語がしっかりと編み込まれています。

あなたもぜひ、ある一人の青年の歩みをスキムとなって見守ってみてはいかがでしょうか。

©Ewoud van der Werf ©Nils Slijkerman All Rights Reserved
Licensed to and published by Extra Nice B.V. And sub-licensed and published by Active Gaming Media Inc.

こんな記事がよく読まれています

2018年04月10日

ゲームセンター聖地巡礼「1980~1990年代 新宿」前編

今回から、新企画「ゲームセンター聖地巡礼」の連載がスタートします。当研究所・所長の大堀康祐氏と、ゲームディレクターであり当研究所のライターとしても協力いただいている見城こうじ氏のお2人が、1980~1[…]