ボクらはあの頃、余計なソフトをインストールしてくる悪質なインストーラーと戦っていたんだ……。『マルウェア』
いい感じの遊び心地
いい感じのポップさ
いい感じのカジュアルなビジュアル
いい感じの2Dドットなゲームも豊富
いい感じの重すぎない&軽すぎないゲームらしさ
『発見! インディーゲーTreasures』は、
そんな“ちょうどいい感じ”なインディーズゲームを紹介していく月イチ連載です。
今回ピックアップした1本は、こちら。
『マルウェア』!
タイトル:『マルウェア』
開発: Odd Games
パブリッシャー: Odd Games
リリース日: 2024年8月1日
価格:350円
配信プラットフォーム:PC(Steam)
【Steam】
https://store.steampowered.com/app/3019370/_/
便利そうなフリーソフトをダウンロードして、インストーラーをポチポチーっとしてライセンス契約もツラツラーっとスクロールして同意、これでインスコ完了~……すると、あら不思議。ブラウザに見慣れないツールバーが増えたぞい?
2000年頃のPCライフ・インターネットではこういうことがよくあったんですよね。
便利なフリーソフトのインストーラーにひっそりと別のソフトをインストールするチェックボックスがあって、チェックを外さずに進めてしまうとそれがインストールされてしまう。
今ではもうほぼなくなった古の光景ですが、そんなインストーラーの巧妙な罠をしっかり見破って自分のPCを守ってきたという歴戦のPC強者なあなたが挑むべきゲーム。
それが、本作『マルウェア』です。
本作のゲーム名は『マルウェア』という実に嫌な名前な直球勝負。インパクト大。
「マルウェア」とは、PC内のデータを奪うなど悪意のある動作をするソフトの総称です。いわゆるコンピューターウィルスやワームと呼ばれるものも含まれます。
本作は、あの手この手でインストーラーに仕込まれた「マルウェア」のインストールオプションを見破って、無事に目的のソフトだけをインストールすることが目的。
主人公はタイムトラベルで1999年にやってきた旅行者。ですが、元の時代に帰るためのお金がないらしく、「マルウェア」を避けて目的のソフトだけをインストールする方法を見つけてほしいという依頼をこなしていきます。
1999年といえばWindows 98ぐらいの頃。インターネットはまだ低速で積極的に利用している人も少なく、日本だといわゆる個人のテキストサイトやニュースサイトが盛んで、サイトごとに設置されていたCGIベースの掲示板にサイトの訪問者キリ番を報告したり、リロード式のチャットで夜な夜な会話を楽しんでいたり……そんな無垢で牧歌的な時代でした。
こうした1999年にメールのやり取りで主流だった「Outlook Express」……ではなく、「Outhook Express」の画面が、本作のメイン画面。
依頼のメールにそのソフトの実行ファイルが添付されているので、それがステージ選択のようになっているという形式。
依頼のメールは内容が様々。「人気ゲームの読み込みを早くするための最適化ツールを入れるとマルウェアも入ってくる……」という、いかにもありそうなシチュエーションも。
日本語訳は支障なくプレイできるぐらいで、箇所によっては自分なりに変換して読み取らないといけないところもあるにはあるという具合。ただ、依頼主の名前が「らんらんるー」だったり、ドライバーに関する依頼でもグラボの名前が「Envida Voodoo」だったりなどなど、古なネットネタもところどころに散りばめられていて、そういうところはしっかり翻訳されています。
いざ、インストールに挑む画面では、昔懐かしい古の配色なインストールウィザードが開きます。それっぽさと当時を知る人ならわかるノスタルジー感は満点。
序盤の依頼では、シンプルに不要なソフトをインストールするかのチェックボックスの文を読み取ってチェックをつけたり、文章によってはチェックをつけたままにしたりとシンプル。
インストールを終えて完了を押したあとに、マルウェアがいくつインストールされてしまったのか表示されるので、それが0個になるように手順を考えていきます。
序盤こそシンプルですが、依頼が進んでいくにつれて凶悪なインストーラーが次々に出現! マルウェアのインストールに同意したと認められる……のかどうか疑問なぐらいに、チェックボックスは「ここまでやるか!?」と言いたくなるほど巧妙かつ悪辣な手口で隠されていたりします。
ボクがプレイしたときにも、とある依頼でどうしてもマルウェア回避方法が見つけられず、約1時間ほど悩み倒したこともありました。
「えー? これ本当にチェックあるの……?」と、うめきながらプレイして発見したときに、「あったーーーー!! こんなのわかるかーーーー!」という、喜びと怒りとおもしろが入り混じった1/3の純情な感情が味わえるのが本作の醍醐味。
あらゆる部分が怪しく見えてくる疑心暗鬼が押し寄せ、インストールバーが1999年頃の低速なHDDならではな、じわじわ&途中何度も止まるを繰り返す感じまでも、どこか不安な気持ちを煽ってきます。昔のインストーラーの配色やメーラー等の無機質さは、どこか独特なホラー味もありますね。
古のインターネットライフにつきものだったインストーラーとの闘いという独特な題材をゲームにした本作のおもしろみはまさにインディーズゲームならでは。
価格は350円と非常に低価格なので、自分でプレイするのはもちろんとして、同じく古のインターネットを戦ってきた友人知人のSteamアカウントにプレゼントで突然送りつけるのもありですね。『マルウェア』という名前にちょっとびっくり、プレイしてみて2度びっくりしてもらえること間違いなしです。
©Odd Games