ポップな見た目ながら体験はばっちり本格ルートシューター!良作多数な今年のインディーの中でもGOTYクラスの1本『エスケープ フロム ダッコフ』
いい感じの遊び心地
いい感じのポップさ
いい感じのカジュアルなビジュアル
いい感じの2Dドットなゲームも豊富
いい感じの重すぎない&軽すぎないゲームらしさ
『発見! インディーゲーTreasures』は、
そんな“ちょうどいい感じ”なインディーズゲームを紹介していく月イチ連載です。
今回ピックアップした1本は、こちら。
『エスケープ フロム ダッコフ』!

タイトル:『エスケープ フロム ダッコフ』
開発:Team Soda
パブリッシャー:bilibili
リリース日: 2025年10月16日
価格:1,800円
配信プラットフォーム:PC(Steam)
いつ襲われるかわからない場所を探索する緊張感。
貴重な物資を見つけたときの興奮と帰還までの焦燥。
無事に持ち帰ったときの光、途中で戦いに敗れ失ったときの闇。
そんなシビアなルートーシュータージャンルの魅力を味わえる入門として最適な1本。
それが今回紹介する『エスケープ フロム ダッコフ』です。
『エスケープ フロム ダッコフ(Escape from Duckov)』は、ハードコアマルチプレイヤー脱出シューターの元祖と言える『Escape from Tarkov』、通称タルコフをその名前のとおりパロディしているカジュアルゲーム。
タルコフはプレイヤー同士のシビアなひりつく戦いが繰り広げられる中を生き延び脱出するPvPvEシューターですが、それに対してダッコフは見下ろし画面の中でかわいいアヒルたちが銃を構えて戦うユーモラスな世界観が特徴で、シングルプレイで楽しめる脱出シューターとなっています。
タルコフの資源集め、脱出、死によるロストのリスクといった魅力は活かしつつ、PvP(プレイヤー対プレイヤー)の厳しさは排除して、CPUの敵と戦うPvEシングルプレイオンリーでストレスフリーにアレンジしているところがダッコフの魅力。「1人で気軽に遊べるタルコフ」としてよくできているというわけです。
10月16日に配信開始されてから20日には50万本、23日には100万本、28日には200万本、11月8日で300万本とかなりのハイペースで購入され、いわゆる配信者の人もこぞってプレイ。その配信を見て購入する人がまた増えていくという、人気が人気を呼ぶ状態。
本連載としても今年一番おもしろかったインディーゲームにはこの『ダッコフ』を推したいというのが正直なところ。
(本連載の掲載タイミング的にすでにリリースから1か月経っているので、アンテナが高い人はもうがっつりプレイ済みだとは思いますが、シングルプレイゲームなのでプレイするのに早いも遅いも関係ないですし、インディー連載で『ダッコフ』をスルーはちょっとありえないなという結論になるぐらいオススメなんですよ)

本作は、アヒルが主人公の見下ろし視点脱出シューター。様々なマップを探索して、武器や装備、ガラクタを持ち帰り、拠点を発展させ、タスクをクリア。最終目標はとして、滅びゆく惑星から脱出することを目指します。
ゆるかわいいキャラクターたちテクテク歩いているほのぼのした世界観ですが、敵はみな銃器を構えていて発見すれば即襲いかかってくる本気モード。倒されればその場に全アイテムを落としてしまう(最高難易度では1発ロスト)という骨太なゲーム性をしています。
見た目のポップさとは裏腹に、アポカリプティックなシリアスさがプレイヤーを引き込む魅力のひとつ。

フィールドには様々なボックスやロッカーなどの、いわゆる“漁れる収納”が点在していて、その中には武器、弾薬、回復アイテム、素材(ネジ、木材など)が入っています。
本作にはクラフトの要素があるので、何に使うかわからないガラクタでも何かしらの素材に。そのため何でもいいからできる限り持ち帰りたいのですが持ち運びのバッグの収納量や重量の制限は厳しめです。
そして、本作はマップの脱出ポイントから無事に帰還しないとそれら収穫物を持ち帰れないので、探索をどこで区切るのか、欲ばりに行くのか、それとも欲をしっかり抑えて安定させるのかが問われます。
タスク目標のアイテムだったり何かしら貴重なものを見つけると途端に「無事に帰りたい……!」という気持ちというか願いが湧き上がるところがポイント。
焦りと緊張、やられてしまったときの「うわぁぁぁっ!」と声が出るような衝撃。シビれるような緊張感と隣り合わせの達成感は、ルートシューターの醍醐味が詰まっていて、決してライトでポップなばかりでなく味は本物となっています。


プレイヤーには“視線”があって、視線を向けている方向のある程度の距離までしか敵の姿を認識できません。ゲーム画面的には見下ろしですが、敵の姿は視線を向けないと見えません。
視界は正面方向の一部に限定されるので、常に四方八方を確認して安全を確保していく、いわゆる“クリアリング”が重要。もちろん音も大事で「グワッグワッ!」という敵アヒルの鳴き声や足音、犬の鳴き声にも注意しなければいけません。そのあたりも本格的なシュータータイトルさながらというわけです。

拠点では様々な施設を建設、その施設のアップグレードも可能。施設のトレーニングで体力を増やしたり視界を広くしたり射撃精度を向上させたりといった、パッシブ強化(永続強化)を得られるので、少しずつ育成していけばプレイは着実に楽になっていきます。
そのほかにも武器屋や防具屋、各マップへ移動できるポータルなど探索が楽になる機能があるので、それらを建設したりアップグレードするための素材を獲得することもプレイでは重要になっていきます。コツコツと、いわゆるファーミングを重ねて拠点を強化し、アイテムのストックを貯めていくことで“少しずつ着実に強くなっていく”のが実感できて、クセになるんですよね。
そして……どんなに堅実なプレイをしても、調子にのりすぎてゲームオーバーからのアイテムロストを味わうことは間違いなく起こるわけで、着実な成長と勢い余っての失敗。静と動、火と水のような2面性のループがプレイヤーの心を揺さぶるんです。
難易度はいつでも変更可能なので、しんどくなったら難易度を下げるもよし、自信があるなら高難易度でより激辛なシビれを味わうもよしです。

ゆるかわアヒルがライフルで火を吹くコントラストが秀逸な『エスケープ フロム ダッコフ』。
パッと見のかわいらしい印象から「誰でもクリアできるぐらい簡単そう」と最初は誰もが思うであろう本作ですが、その中身は脱出系シューター特有のヒリつく厳しさをしっかり持った硬派なスルメゲー。
厳しさをしっかり味わえる一方で、とっつきやすく、コツコツ慎重に積み重ねることで着実に先へ進める難易度バランスがよく、脱出系シューターの魅力を知れる入門作として優れた作品となっています。
ちなみに本作はボリュームもかなりのものがあって、正直「この価格とクオリティでボリュームまであるの?はぁ?」と、謎の嬉しい怒りが湧いてくるほど。
『ダッコフ』で脱出系シューターの魅力を知ってから、『ARC Raiders』や『Escape from Tarkov』などのより本格的なタイトルへと手を伸ばすというのも良いのではないでしょうか。
今年のインディータイトルの中でも屈指の良作、まだの人はぜひチェックしてみてください。
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