2025年のベストインディー& Game of the Yearは『Clair Obscur: Expedition 33』! TGAノミネートのインディータイトルや、連載で今年に紹介したタイトルを振り返り
いい感じの遊び心地
いい感じのポップさ
いい感じのカジュアルなビジュアル
いい感じの2Dドットなゲームも豊富
いい感じの重すぎない&軽すぎないゲームらしさ
『発見! インディーゲーTreasures』は、
そんな“ちょうどいい感じ”なインディーズゲームを紹介していく月イチ連載です。
2025年も終わりなので、今回は1年の締めくくりの回をお送りいたします。
まずは、
1年の中で優れたゲームを選出し表彰するイベントThe Game Awards(ザ・ゲームアワード、TGA)が今年も開催されました。
年々存在感を高め続けていて、日本のコアではないゲームファンにも浸透してきているなと感じるところです。
部門の中にはもちろんインディーゲームもあります。今年はこのような結果となりました。

【2025ベストインディーゲーム受賞】
『Clair Obscur: Expedition 33』 (Sandfall Interactive)
【同部門ノミネート】
『Absolum(アブソラム)』 (Guard Crush Games/Supamonks/Dotemu)
『Ball x Pit』 (Kenny Sun/Devolver Digital)
『Blue Prince』 (Dogubomb/Raw Fury)
『Hades II』 (Supergiant Games)
『Hollow Knight Silksong』 (Team Cherry)
また、スタジオのデビュー作品となったインディーゲームに限定した部門はこちらの結果に。

【2025ベストデビューインディーゲーム受賞】
『Clair Obscur: Expedition 33』 (Sandfall Interactive/Kepler Interactive)
【同部門ノミネート】
『Blue Prince』 (Dogubomb/Raw Fury)
『Despelote』 (Julián Cordero/Sebastián Valbuena/Panic)
『Dispatch』 (AdHoc Studio)
『Megabonk』 (Vedinad) ※ノミネートを辞退
と、いうわけでベストインディー、デビューインディーともに『Clair Obscur: Expedition 33』でした。
『Clair Obscur: Expedition 33』は2025年のGame of the Yearを獲得。
さらにはそれを含めて、
Game of the Year
ベストインディゲーム賞
ベストパフォーマンス賞
アートディレクション賞
デビューインディー賞
ベストミュージック賞
ベストRPG賞
ベストナラティブ賞
ベストゲームディレクション賞
と、なんと9部門を獲得。9冠はTGA史上最多です。TGA2025を総ナメ。圧倒的ですね。
これは他のタイトルを貶す意味合いはないのですが、賞レースである以上はライバルが強いかどうかにも関わってくるところがあって、結果で言えば、2025年は『Clair Obscur: Expedition 33』と競り合って勝てるタイトルがなかったと、TGAの選考結果は示したということです。
もちろん、2025年には魅力的なゲームはいろいろあったのですが、“10年単位で語られるほどに圧倒的にすごいもの”はあまりなかったというのはボク自身も感じているところです。
本当はもう1タイトル『Expedition 33』と競り合えるゲームが出現していたら、もっと盛り上がれたとは思うのですが。
『Expedition 33』の開発費は1,000万ドル(約15億6000万円)以下だとインタビューで語られていて、いわゆるAAAタイトルの10分の1未満の費用と言えます。
また、開発スタジオのSandfall Interactiveは、もともとはUbisoftに所属していたベテランが設立したスタジオ。そのUBIは、株価の下落にレイオフ、テンセントからの出資分業を受け入れと、非常に不穏な状況が続き、買収の噂も絶えない1年でした。
光と闇のような結果。大手のメーカーに硬直化や企業病など多くの問題やリスクが見られ、そこから離脱したベテランによるインディー規模スタジオのデビュー作がTGA2025を席巻した。この対比は、今のゲームの流れをわかりやすく示していると言えるのかもしれません。
ハイリスクなAAAではなく、中規模タイトルやインディー規模でコンスタントにアイデアやこだわりを創出することが功を奏する。そうした時代にあると言えるのではないでしょうか。
ちなみに『Clair Obscur: Expedition 33』というタイトルは、
Clair Obscurが“明暗(技法)”、Expedition 33が“第33遠征隊”という意味になります。
物語も加味して日本的に意訳をすると“第33遠征隊が明かす光と闇”みたいな感じでしょうか。
なのでまぁ、略してタイトルを言うときは『エクスペディション33』が無難です。『Clair Obscur』は明暗技法という言葉だけなので。

さてさて、インディー部門の話に戻りますと。
ベストインディー受賞こそ逃したものの今年のノミネート作品も非常に個性的。本連載で過去に紹介したものは除いて、軽く紹介していきましょう。
『Absolum』
“ベルトスクローグアクション”という造語ジャンルを掲げるアクションゲーム。その名のとおり、ベルトスクロールアクションにローグライクな強化を獲得する要素が加わってリプレイ性を高めています。4人のプレイアブルキャラクターを選択して太陽王アズラの軍勢に立ち向かっていくという物語で、キャラクターたちのアニメーションの滑らかさやビジュアルの美しさは特筆もの。シングルプレイに加え、最大2人のローカル、オンライン協力プレイにも対応しています。
『Ball x Pit』
“ブロック崩し”✕“ローグライト”。上方向へと強制スクロールしていくステージを、ボールを当てて敵を倒しながら進んでいくという、1980年代~1990年代に見られたスクロールタイプのブロック崩しを現代風にアレンジして様々な要素を加えた本作。プレイヤーキャラクタ固有の能力が豊富にあり、ものによってはゲーム性そのものが変わるほどのアレンジが加わることもあって、シンプルなゲーム性にバリエーションを持たせています。
『Blue Prince』
本格的なミステリーアドベンチャーの物語を追って様々なパズルに挑んでいく『Blue Prince』。主人公は他界した大祖父の遺産の受取人に指名されますが、その遺産を引き継ぐためには大祖父の屋敷に隠された「存在しないはずの46番目の部屋」を探し出さなければならないという奇妙な条件がありました。屋敷の部屋の配置を自分が決めて、その部屋にある謎を探るという独特なシステムがポイント。残念ながら日本語対応がされておらずゲーム性的にもそれが難しいため、国内のゲームファンにはあまり届いていないという現状がありますが、英語がいける人はぜひチェックしていただきたいですね。
『Dispatch』
スーパーヒーローを現場に派遣して事件を解決するという裏方の存在になる本作。ヒーローたちにはそれぞれに能力があり、それに合った現場へ派遣するのがポイント。ヒーロー固有のストーリーがあって選択肢も存在し、選んだ選択やヒーローとの関係性で物語も変化します。連続ドラマのようなエピソードが全8話あって、リリースから1週間ごとに2話ずつエピソードが配信するという連続ドラマのような手法も話題となりました(現在はすべて配信済み)。
『Despelote』
青春ストーリーをテーマにしたサッカーゲームであり、一人称視点のアドベンチャーゲーム。8才の少年Juliánとなって、街や公園といった日常でドリブル、パス、シュートをしていると様々なことが起きていきます。独特な手法とビジュアルで綴られるストーリーが魅力の1本。
ちなみに、本連載で2025年に紹介してきたインディーゲームは以下のようになります。
『ブレードキメラ』(PLAYISM/WSS playground)
『都市伝説解体センター』(Hakababunko/SHUEISHA GAMES)
『ツーポイントミュージアム』(Two Point Studios/SEGA)
『スルタンのゲーム』(Double Cross/2P Games)
『StarVaders』(Pengonauts/Joystick Ventures, Playworks)
『Berserk or Die』(Nao Games/poncle)
『PEAK』(Team PEAK/Aggro Crab, Landfall)
『Is This Seat Taken?』(Poti Poti Studio/Wholesome Games Presents)
『Hollow Knight: Silksong』(Team Cherry/Team Cherry)
『Megabonk』(vedinad/vedinad)
『エスケープ フロム ダッコフ』(Team Soda/bilibili)
The Game Awardsでノミネートされたタイトルに比べると、やっぱりだいぶ日本人好みのタイトルを選出しているなーと自分でも感じるところがありますね。
なお、『Clair Obscur: Expedition 33』については当時に本連載で取り上げるか悩みましたが、フルプライスのRPG作品でボリュームもしっかりとあり、クオリティもあまりに高いので“良い意味でインディーらしくないな”と感じ、本連載では扱いませんでした。価格は控えめで手軽なタイトルを選ぶ基準にして今後もオススメタイトルを選んでいきたいなと思います。
というわけで11タイトルを今年もオススメしてきたわけですが、その中から最もオススメな、本連載のGame of the Yearはというと……、
『エスケープ フロム ダッコフ』
ですかねー。見下ろし画面で脱出系シューターを遊んでみようという試みは着眼点がおもしろいなと思いますし、3D酔いするという人にもオススメできる良さがありますね。キャラクターもダックたちでかわいいながら、シビアさや脱出までの緊張感はしっかりと脱出系ルートシューターの醍醐味がしっかりと味わえます。

次点では、やはり『都市伝説解体センター』でしょうか。ビジュアルの魅力が圧倒的で、国内において普段からインディーゲームをプレイしている層だけでなく、ライトなゲームファン層にも知名度が広がったインディータイトルとしては、今年のNo1ではないでしょうか。制作チーム『墓場文庫』さんの次回作にも注目が集まりそうです。

総括として今年印象に残っているのは、ゲームの発売タイミングの固定化がインディーにも進んできている、というものです。
どういうことかと言うと、今のゲームのプロモーションからの発売の流れは、6月のSummer Game Festで大きめにアピールをして、夏にgamescom、秋に東京ゲームショウを挟んで、9月~11月あたりのホリデーシーズン前に発売というものが顕著です。
大手メーカーの大型タイトルはもともとこの流れを意識しているものが多かったですが、最近ではインディーゲームの大手パブリッシャーも取り入れていて、結果、前評判の高い有力なインディーゲームも9月~11月あたりに集中するという現象が今年は見られました。
それが効果的なのはわかるのですが、ゲームファンが使える時間には限りがありますし、あまりに集中していると機会を損失するタイトルも出てくるわけで、もう少し1月~6月あたりにも発売されるゲームが増えて欲しいなーというのが個人的に感じるところ。実際に月に1本オススメを紹介する本連載でも、1年の後半は良作揃いで1本に絞るのに悩むことが多かったですね。
今年はついにGOTYを獲得するインディーゲームも登場して、インディーゲームの競争は高まり続けるばかり。おそらく2026年はさらに多種多様なインディーゲームが登場してゲームシーンを牽引することと思います。アイデアが光る奇抜な“変なゲーム”が登場することを期待したいですね。
それでは、2025年もありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
良いお年を~。
