圧倒的な世界観でビギナーから超上級プレイヤーまでを魅了した『ナイトストライカー』

  • 記事タイトル
    圧倒的な世界観でビギナーから超上級プレイヤーまでを魅了した『ナイトストライカー』
  • 公開日
    2019年10月04日
  • 記事番号
    1855
  • ライター
    オッシー

出荷台数の少なさゆえに

1989年にタイトーがリリースした『ナイトストライカー(以下、ナイスト)』は、今もなお伝説の体感ゲームとして多くのファンに絶賛されている。

『ナイスト』は、これまでのタイトーの大型筐体ゲームである『ミッドナイトランディング』(1987年)や『フルスロットル』(1987年)、そして『チェイスH.Q.』(1988年)などが提示した「現代での遊び」から離れ、「夜の近未来都市という空間」というまったく異なる世界感を提示した。
そこに奥深いゲーム内容が絶妙にブレンドされ、プレイした者をただちに魅了し、虜にしていく。
こうしてプレイヤーは、「ナイトストライカーの一員」となり、抜け出せなくなるのだ。

ただ出荷台数があまり多くなく、タイトーの直営店や一部の限られた店舗などに足を運ばないとプレイすることができなかったため、プレイ人口は他の体感ゲームに比べると少なかったかもしれない。
しかし、逆にそれがレア感を醸し出し、コアなファンを作ったのも事実である。

筐体は一人プレイ専用。
プレイヤーは大型の白いコクピットの中に乗り込み、トリガー付きのレバー1本で自機(正式名称:インターグレイ Xsi)を操る。
視点は3D。クルマ型の自機で夜の空を飛び回り、弾を撃って敵を攻撃する。

BGMはタイトーのZUNTATAが担当。
そのサウンドは『ナイスト』への没入感を高めてくれるだけでなく、これまで『ナイスト』をプレイしなかった人たちまで惹きつけたほどだった。
筐体のイス部分には、同社の傑作シューティングゲーム『ダライアス』(1986年)同様に振動が伝わるボディソニックシステムを採用しており、臨場感も高い。

『ナイトストライカー』と『サイバリオン』のBGM、さらには攻略映像や開発資料などをディスク5枚に収録した『ナイトストライカー&サイバリオン パーフェクトBOX』。ZUNTATAによる数々の楽曲を堪能せよ!

ステージはA~Uまでの全21ステージ構成。
こちらも同社の『ダライアス』と同じように、ステージクリアするとコースは2択の分岐になり、プレイヤーがどちらのステージへ進むのかを選択できる。
6ステージを見事クリアすれば、エンディングを迎えることになる。

残機制ではなくシールド制。敵の攻撃などを受けるたびに、これが減少していく。
ゲームスタート時は5シールドあり、ステージクリアごとに1シールド加算される(最大で9シールドまで増える)。

このシールド制の採用により、他のゲームと比べてミスの許される回数が多い。
とはいえゲーム後半ともなると、敵のホーミーグミサイルなどの攻撃がかなり激しくなり難易度が上昇。
そのため、お店にもよるのだが、プレイヤーへのサービスで取付けた「連射装置」がないと全ステージをクリアするのはなかなか大変だろう。

シューティングゲームではお馴染みのシステムである「ボンバー」などの特殊な攻撃はないが、レバーを敵の方向に入れながら連射すると敵をサーチして自動で狙ってくれるサーチ弾機能を搭載していた。

敵の攻撃の激しさに対応しようとするとどうしてもプレイヤーも熱くなりがちで、ついつい操作する手に力が入ってしまうことも少なくなかった。
その結果、レバーが故障してしまうこともあった。

マニアの心に刺さったパシフィストボーナス

上級プレイヤー向きに、とあるもの凄い仕掛けが隠されていた。

「パシフィストボーナス(以下、パシフィスト)」。
それはまるで開発者からの挑戦状のようなボーナスシステムで、ハイスコアを狙う上で必ず取らなくてはならないものである。

「パシフィスト」とは、各ステージで弾を一発も撃たず、なおかつノーダメージでクリアすることよって得られるボーナスのこと。
これによって『ナイスト』は、ただのシューティングではない、独特のジャンルのゲームに昇華しているのだ。

弾を撃ちまくって遊ぶビギナーから、弾を撃たずに避けまくる上級者までが遊ぶことができるという二面性こそがこの『ナイスト』最大の魅力なのだ。

ルート選択によって様々な異なる「顔」を見せてくれるのも 『ナイトストライカー』 の魅力のひとつ。(株式会社タイトー提供)

「パシフィスト」を達成すると「通算ステージ数+1×100万点(最高は2,000万点)」が得られる。しかも連続で達成すると前ステージの2倍のボーナスが加算される。

例えばUステージまでオールパシフィストだと――

A:200万点 → C:400万点 → F:800万点 → J:1,600万点 → O:2,000万点 → U:2,000万点というようにボーナスが入り、通常弾を撃って得られるスコアよりも遥かに高いスコアが出せるのである。

シューティングでありながら、自分が弾を撃たずともここまで数多くのプレイヤーを夢中にさせるゲームなどあっただろうか。
今、振り返ってみても、とても大胆な発想であることに驚かされる。

この「パシフィスト」の存在が発覚してから、スコアラーたちは開発者の挑戦を受けるが如く、弾を撃たずに避けるパターンを作るために日々試行錯誤を繰り返した。

しかも、ただ弾を避けるのではなく、自機を地上のコース上で走行させるとスコアの入りが多くなる「走行ボーナス」や「Cステージ」の障害物のパイプの間をすり抜けると10万点入る、通称「パイプボーナス」なども意識しながらハイスコアを狙うのである。

自機を地上で走行させることで得られる「走行ボーナス」もハイスコアを狙うためには欠かせない。(株式会社タイトー提供)

30年経った今でも更新されるハイスコア

究極のスコアを出すには「Cステージ」通過をからませながら、できるだけ自機を「走行」させて「オールパシフィスト」を取るのが高スコアを出すポイントである。

また『ナイスト』では、各ラストステージ(P、Q、R、S、T、U)では自機がロボット、人間、バイクなど色々な形に変形するが、当たり判定や操作感覚までもこれまでの自機と全く異なってしまう。

そうすると敵の弾が避けづらくなるため、ラストステージの「パシフィスト」の獲得が最後の難関となった。

一発、弾が当たってしまったらその時点でボーナスが途切れ、高スコアの条件は終了となるため、その緊張感は半端ない。

バイク型の自機に変わる(自機の中からバイクが出てくる)「Sステージ」に至っては、リリースから何ヶ月経っても「パシフィスト」は達成できず、もはや不可能かと思われたほどであった(最終的には全ステージのパシフィストパターンは完成した)。

当時、私は『ナイスト』に一目惚れをしてから夢中になり、ほぼ毎日のように仲間とゲーセンでやり込み続け、攻略に明け暮れた。

その結果として、初めて全国一位のスコア(ゲーメスト1989年12月号)を記録したのは、今でも忘れられない良い思い出となっている。

そんな『ナイスト』も、今年発売から30年周年を迎えた。

そんな気の遠くなるような年月の経った現在(2019年5月19日時点)、「なかっぴ氏」によって「Tステージ」のハイスコアが更新された。これは凄まじい偉業である。

※下記のハイスコアデータは、日本ハイスコア協会さまのWebサイトより引用させていただきました。

タイトル部門スコアスコアネーム備考申請店舗
ナイトストライカーTゾーン91,631,920 HTL-金属バット-なかっぴ ALL、P.B、最終面6,000点落ち、
Aボス通常破片
グッディ21
(東京)





2019年9月24日現在、秋葉原のタイトー直営ゲームセンター「Hey」などにおいて、この貴重な『ナイスト』を、まだプレイすることができる。

もしこの記事を読んで興味のわいたプレイヤーは、遊んでみては如何だろうか。きっと、その奥深いゲーム性に夢中になってもらえるはずだ。
(でも、レバー操作は優しくしてね!)

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