見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2023年07月21日
  • 記事番号
    9931
  • ライター
    見城 こうじ

第7夜『エクセリオン』(1983年・ジャレコ)

浮遊感を楽しめ! 孤高のシューティングゲーム

『エクセリオン』は、背景の立体表現と心地よい自機の浮遊感、そしてシューティングとしての爽快感にあふれた、大変魅力的な作品です。ぼくが知り得る限りですが、類似したゲームがあまり見当たらない、孤高の秀作というイメージがあります。

デュアルとシングル、2つのビームをバランスよく使いこなそう

8方向レバーで自機を操作し、2ボタンでデュアルビームとシングルビームの2種類を撃ちわけます。

おもしろいのが、デュアルビームは通常ショットで、シングルビームのほうが弾数制限のあるスーパーショットという点です。デュアルビームは、左右に2発同時に弾が出る代わりに連射が利かず、シングルの方はレンジが狭い代わりに高速連射ができて超強力という一長一短があります。ただ、それを踏まえてもシングルビームの連射力・攻撃力は圧倒的で、敵をなぎ倒していく爽快さに満ちていました。

強さに大きな差のある2種類の武器を使いわけるシューティングといえば、ショット+ボンバータイプのゲームがありますが、『エクセリオン』のシングルビームは何十発という単位でどんどん補充されていくので、ボンバーより通常武器に近い位置づけで使い出があります。

デュアルビームで狙い撃つ楽しさ、そして危ないと思ったらシングルビームでズガガガガッと撃ち込む気持ちよさ、このバランスがとてもよい! のです。さらに、当時のゲームでよく見られた“チャレンジングステージ”(敵を一方的に破壊できるボーナスゲーム)もあり、その痛快さに拍車がかかります。

慣性のある特徴的な自機、そこがおもしろい

『エクセリオン』の自機の挙動には強い慣性がはたらきます。自機に大きな慣性がつくシューティング自体珍しく、アメリカの製品であれば『アステロイド』『スペースウォー』など、その例をいくつか挙げることができるのですが、日本でここまで制御の難しい2Dシューティングはなかなか珍しいのではないでしょうか。

プレイヤーの操作に慣性のあるゲームは、最初は辛く感じるのですが、その段階を乗り越えるとクセになる魅力があります。そこには心地のよい浮遊感があり、0コンマ何秒先のゲーム展開を先読みして操作を制御しているんだ、というゲーム的快感もあります。『エクセリオン』は、けっして万人受けではなかったにせよ、こうしたおもしろさが一定の層に受け入れられたゲームだったように思います。

攻略上、非常に独特だなと思うのが、自機の慣性が強いのと、敵も大きく旋回するような動きをすることから、敵の攻撃を避けるのにかなり大きな動きが必要なことです。このため、本当に画面全体を使うように動かされます。上級プレイヤーであれば、もっと効率的な動きで済むのでしょうけれど、ぼくはそんな感じでした。

『エクセリオン』は現代の感覚だとやや展開が少なく感じてしまう面はありますが、十分楽しめますし、何より、今なお新鮮な驚きを感じることのできるゲームです。

ぼくの勝手な想像ですが、このゲームのスタッフは当時とても独創的でおもしろいゲームを生み出したという手ごたえを持っていたんじゃないかと思うのですが、どうだったのでしょうね。現代風にアレンジした新作があったらどんな内容になるだろう、と思いを馳せてみたくなります。

では、また次回。

©CITY CONNECTION CO., LTD. / ©2014 HAMSTER Co.
Arcade Archives Series Produced by HAMSTER Co.

こんな記事がよく読まれています

2018年04月10日

ゲームセンター聖地巡礼「1980~1990年代 新宿」前編

今回から、新企画「ゲームセンター聖地巡礼」の連載がスタートします。当研究所・所長の大堀康祐氏と、ゲームディレクターであり当研究所のライターとしても協力いただいている見城こうじ氏のお2人が、1980~1[…]