見城こうじのアケアカ千夜一夜
第8夜『キッドのホレホレ大作戦』(1987年・ニチブツ)
さまざまな時代を旅する穴掘りアクション
『キッドのホレホレ大作戦』は23世紀から時空間迷宮に引き込まれたキッドとマックがさまざまな時代で敵と戦い、最終的に元凶の魔神ダンテを倒すゲームです。『テラクレスタ』などで知られる藤原茂樹さんが企画を担当されています。
操作は4方向レバー2ボタン。ボタンは初期状態では「穴を掘る/埋める」と「ドアの開閉」に使います。穴を掘ることで敵を落として足止めしたり、そのまま埋めてやっつけることもできます。また、ドアを開閉することで迷路を一部改変したり、敵を弾き飛ばすこともできます。すべての宝箱を集めて鍵を手に入れ、出口の扉を開けるとラウンドクリアです。
その他にも、ヨーヨーやファイヤーといった攻撃アイテムや、ジャンプ台やワープホールなどさまざまなギミックが登場する、盛りだくさんのゲームです。
プレイしていて少し大変だなと思うのが、フィールドが意外と広いことです。ちょうど3×3画面分ぐらいでしょうか。宝箱の残数は表示されるのですが、位置を教えてくれるレーダー類はないので、きちんと覚えておかないと苦労します。
トップビューとサイドビューの穴掘りゲーム
黎明期のビデオゲームにおいて穴掘りゲームといえば、まず“東大生が考えた”という触れ込みで有名な『平安京エイリアン』があり、これを横からの視点にしたらどうなるかという発想で『スペースパニック』が生まれます。どちらも画期的なゲームでした。この『スペースパニック』がヒントの一つとなって生まれたのが、傑作『ロードランナー』です。
穴掘りゲームには、他にもたとえば『ディグダグ』『バルダーダッシュ』『シンドバッドミステリー』などがあります。
大別すると、穴掘りゲームにはトップビューとサイドビューという2種類の視点があり、トップビューの場合、穴はプレイヤーと敵側のどちらにとっても経路をふさぐトラップ的な存在に留まることが多いのに対し、サイドビューになると、穴を利用して自分が下段に降りるなど、高さを活かした立体的な使いかたが生まれます。言葉の上では同じアクションでも、それぞれまったく異なるプレイ感になるのがおもしろいところです。
ゲーム目的は敵のせん滅ではなく宝箱の収集
『キッドのホレホレ大作戦』の話にもどります。トップビューで穴を掘って敵を倒す遊びという点で、どうしても『平安京エイリアン』を彷彿とさせ、よく比較もされるのですが、実際にプレイするとゲームとしての印象はかなり異なります。
たとえば、『キッドのホレホレ大作戦』において、穴掘りは恒常的に使えるアクションではありません。攻撃アイテムであるヨーヨーやファイヤーを取った際、「穴を掘る/埋める」ためのボタンは攻撃用のボタンに切り替わるのです。しかも、これらは出現頻度が高く、効果持続時間も長いため、必ずしも穴掘りばかりの遊びになっていません。
また、攻撃アイテムの存在感の大きさに加え、穴掘り/穴埋めの速度が速いこともあって、かなり“攻め”の戦いができます。けっして『平安京エイリアン』のような“待ち”主体のゲームではないんですね。
何より大きく違うのが、このゲームの目的が『平安京エイリアン』のような敵全滅ではなく、宝箱を集めて出口へ向かうルールということです。敵を倒すことは、宝箱を集めるための手段の一つに過ぎないわけです。
その点で、このゲームは『平安京エイリアン』や、そこから派生した『スペースパニック』よりも、『ロードランナー』に構造が近いかもしれません。作りとして、目の前の敵を排除したすきにターゲットを集めることを想定したゲームバランスになっていて、敵をやっつけてもやっつけてもどんどん補充されます。
とくにこのゲームの場合、ラウンド開始時から敵の数が多く、穴掘りやさまざまなアイテムをガンガン使って対処していくという、とてもダイナミックな遊びになっています。それがわからず宝箱集めだけに奔走すると、かなり難しいゲームになります。
穴掘りに関して、なかなか思い切ってると思うのが、パワーアップすると同時に掘れる穴の数がどんどん増えていく仕様です。自分の前方に何個もまとめて掘れるようになります。これがなかなか壮観で、まるで機銃掃射のような派手なビジュアルを楽しむことができます。
もう一点、ちょっとおもしろいのが、敵を埋めるのに使った場所には墓が立ち、そこにはもう穴を掘ることができないという仕様です。敵を埋めまくっていくと、徐々に使える場所が減っていき、難易度が上がっていくわけです。うまく考えられています。
墓が立つことで行動エリアが限定されていくゲームというと、1976年のExidy社『デスレース』を彷彿とさせます。敵をどこでやっつけるかが攻略に関係してくるというのも一つのアイデアでありゲーム性ですね。
では、また次回。
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