見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2024年08月30日
  • 記事番号
    11530
  • ライター
    見城 こうじ

第27夜『マウサー』(1983年・ユニバーサルプレイランド)

青ネズミを捕まえて囚われのマリヤを救出せよ!

『マウサー』は主人公ニャン太を操作し、囚われのマリヤ救出を目指す固定画面のジャンプアクションものです。ニャン太が一定数の青ネズミを捕まえることで、最上階へのハシゴが降りてきて、マリヤにたどり着くことができます。可愛らしいドット絵が印象的なゲームです。

この時期は1981年に発売された『ドンキーコング』の影響を受けたゲームが多数リリースされています。『カンガルー』『アラビアン』『スプリンガー』『ジャンプコースター』『ティップタップ』などがそれに当たります。『マウサー』もそうしたゲームの一つです。

『マウサー』は『ドンキーコング』同様、4ステージ構成です。ただし、1周目をクリアしてもマリヤを救出することはできず、より難易度の上がった2周目をクリアすることで、初めてハッピーエンドを迎えることができます。

ジャンプの距離やタイミングはかなりシビア

久々に遊んでみると、これが難しい。障害物を飛び越える際の座標やボタンを押すタイミングが、兎にも角にもギリギリになるよう設計されていて常に気が抜けない。

この判定の厳しさがある上に、ステージ1から水平方向に飛んでくる攻撃とバウンドする敵が混合してくる辺り、相当難しいと思います。

また、ちょっとの高さから落ちただけでミスになります。この手の話では『スペランカー』がよくネタにされますが、『マウサー』も『ドンキーコング』も、この点では似たようなものですね。

そのため、やるべきこと(攻略法)がわかっていても、ちょっと気を抜くと簡単にミスしてしまう。本当に針の穴を通すような、とまでいうとやや大げさかもしれませんが、なかなかデリケートなプレイが求められるゲームではあります。

ただ、繰り返しプレイしていくと、障害物の出現周期などもきちんと考えられた、丁寧な作りのゲームであることがわかってきます。

セオリーが確立されてない時代に作られたゲーム、そこがおもしろい

ゲームの目的が少し変わっていて、ゴールに到達するとステージクリアなのですが、先に述べたとおり、道中でウロチョロしている青ネズミを一定数捕まえないと、マリヤのいる階へつながるハシゴが出現しません。

つまり、「収集」と「ゴール到達」という2つの目的の“合わせ技”型のゲームなのです。

同タイプのゲームである『ドンキーコング』『カンガルー』『スプリンガー』『ティップタップ』等にも、(ゲームによっては一部例外的なステージはあるものの)そのような基本ルールはないのですが、『マウサー』ではこのルールが全面を貫いて採用されています。

『マウサー』と同じようなクリア条件を設けているゲームとしては、たとえば『ロードランナー』があります。金塊を集めることでハシゴが現れる点で『マウサー』そっくりです。

ただ、『ロードランナー』は、パズルアクションゲームであって、道中に順繰りに仕掛けられたトラップやギミックを乗り越えて先へ進むような“アスレチックアクションゲーム”ではありません。

それに対して、先に挙げた他のゲームは『マウサー』も含めてすべてスタート地点からゴールへ向かって進むアスレチックアクションの一派です。だから『マウサー』の特異性が際立つのです。

(ほとんど思い浮かばなかったのですが、他にこういうゲームありましたっけ? ちょっとタイプが違うのですが、強いていえば『ボギー’83』が少し近いかもしれません)

また、赤ネズミの仕様もおもしろくて、常に遠くから攻撃を仕掛けてくる存在なのですが、こちらから近寄ろうとすると一定の距離を保つ挙動をし、逃げ場がなくなると消えてしまいます。なかなか不思議な動きです。

そこまで強引に逃げようとさせずとも、接触したらプレイヤーのミスになる(ゲームとしてよくある)仕様にしてもよいのでは? とも思ったのですが、このゲームの場合、青ネズミが収集対象(触れてOK)になっているので、混乱を避けるために絶対に接触できないアルゴリズムにしたのかもしれませんね。

他にもある、ハシゴを巡るユニークな仕様

2階層分を貫くハシゴ(途中の階では昇り降りができない)があるのも、こうした階層アクションゲームでは珍しい気がします。

しかも、俯瞰の迷路ゲームでいうところの「陸橋が架かった立体交差(飛び降りたり飛び乗ったりできない前提の)」と同じ構造かと一瞬思うのですが、敵サイドに限っては途中の階からも昇り降りができるので、プレイしていて少々面喰いました。

それと、これはかなり細かい話になるのですが、ちょうどハシゴを昇り切った位置に置かれたボーナスターゲットの魚が、下からハシゴを昇り切っても取得できません。床の上に立ってから一度横へ移動して戻る必要があります。こういう処理は開発中に直すことが多いと思います。全体に繊細な作りのこのゲームで、なぜこのままにしていたのか少し気になりました。

古いゲームを遊んでいると、こういう現代のセオリーから外れた仕様を見られることがまた楽しいのです。

では、また次回。

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