見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2024年09月27日
  • 記事番号
    11732
  • ライター
    見城 こうじ

第28夜『フロッガー』(1981年・KONAMI)

4方向レバー1本のみのホッピングアクション

『フロッガー』は主人公のカエルを操作して家まで送り届ける固定画面のアクションゲームです。当時、その明快で楽しい内容から電子ゲームにも移植され、アメリカでも人気がありました。

操作は4方向レバー1本のみというとてもシンプルなもので、レバーを入力するとその方向にカエルがぴょんと飛び跳ね、1ブロック分移動します。一歩一歩がとても大きいことがこのゲーム最大の特徴です。

踏んづけられてもまた起きろ! ど根性でゴールを目指すのだ!

日本においてカエルというモチーフは、それこそ「鳥獣戯画」の時代から馴染みがあり、漫画やアニメでも「ど根性ガエル」「けろっこデメタン」「けろけろけろっぴ」「ケロロ軍曹」など、さまざまな作品で愛らしい身近な存在として扱われています。

カエルの身近さはアメリカでも同様で、「セサミストリート」などに登場するカエルのマペット「カーミット」は大変有名ですし、『フロッガー』以前にも米Gremlin社から『Frogs』というカエルが主人公のゲームが発売されています。

洗練されたコースレイアウトが光る

『フロッガー』のゲームデザインはじつにエレガントです。

スクリーン最下部からスタートし、前半は障害物の車をかわしながら道路を横断します。後半は中央分離帯(?)を挟んで、丸木やカメの背中などを使って川を渡り、最上部にある家へ飛び込めばゴールです。家は5つ並んでおり、5匹のカエルを連れて帰ればステージクリアとなります。

前半の道路は、シンプルに障害物をかわすことだけが求められますが、後半の川は、素早く飛び移っていかないと画面の端まで流されてミスになったり、ときどきカメが沈んでしまうなど、ぐっとテクニカルな遊びになり、さらに最後のゴールは一点突破で座標を合わせる必要があります。

つまり、ゴールが近づくにつれ、徐々に正解ルートが狭められ、ロジカルに難易度が上がっていくわけです。

また、中間地点の中央分離帯が小休止できる安全地帯になっているなど(ステージが進むとここも安全地帯ではなくなりますが)、最初から最後までよく考えられたコースレイアウトに感心させられます。

そして、ステージが進むと、車の速度が上がり数も増え、川の流れも速くなる。非常にわかりやすく難易度が上がっていきます。

改めてルールを見直すと、プレイヤーがミスになる条件がとても多くて、たとえば、車にひかれる、川に落ちる、流されて画面外まで行ってしまう、時間切れになる等々、細かく挙げていくとまだいくつもあります。

当時にしてこれだけ気を遣う要素がありながら、ルールがわかりにくいとか、理不尽な遊びに感じさせないというのは、それだけ世界設定込みでよくできたゲームなのだと思います。

余談ですが、ゴールにときどきワニが顔を出すフィーチャーは、同社『プーヤン』でハシゴのところに飛び出してくる狼をちょっとだけ彷彿とさせます。

あえてツッコむと、定期的にワニが侵入してくるような場所にカエルを連れ帰っていいのか? と少しだけ思いました。

アメリカでとくに人気が高かった『フロッガー』

前述のとおり、『フロッガー』はアメリカでとても人気の高かったゲームです。日本でもヒットしましたが、向こうではそれ以上に成功しています。

そもそもこうした黎明期の固定画面もので、画面の反対側にあるゴールへ向かうことが目的のゲームは定番でした。

往復するタイプのゲームも含みますが、『マンイーター』『スペースレース』『海底宝探し』『ルナレスキュー』『ナイスオン』『ギャラクシーウォーズ』『スペースランチャー』等々……。遊びの構造はどれもよく似ているのですが、それらの中でも遊びやすさにおいて『フロッガー』は一つの到達点だったのかもしれません。

『フロッガー』については移動が常にジャンプで、最初にも記したとおり、1回の移動単位が大きいということは特筆すべき点だと思います。“ホッピングゲー”とでもいいますか。

このタイプでは、『フロッガー』から1年遅れてGottlieb社から発売されたペイントアクション『Qバート』もアメリカでヒットしています。

同様な動きのゲームとしては、他にもたとえば『ホッピングマッピー』『迷宮寺院ダババ』、もう少し最近のものでは『クリプト・オブ・ネクロダンサー』 などもあります。

また、少し違うのですが、『テトリス』のアレクセイ・パジトノフ作『ナイトムーブ』も印象深いゲームでした。このゲームにおいてプレイヤーはチェスのナイトの動きしかできません。

こうしたゲームの長所として、大きな単位で軽快に動くことによるリズム感が生まれるという点が一つ挙げられます。

もう一点、プレイヤーの最小移動単位を大きくすると、あと戻りがしにくくなるので、ゲームが難しくなるイメージもあるのですが、当然のことながら敵やトラップの動きなどもこれに合わせてデザインすることになるので、うまく作ることができれば、ターン制のゲームに近いわかりやすい遊びになります。よりデジタルに整理された攻略性になるとでもいえばいいか。

最後に、『フロッガー』と『パックマン』との類似性も挙げておきたいと思います。『フロッガー』同様、『パックマン』も日本以上にアメリカで大きなヒットを記録しました。

ゲームルールこそまったく別物ですが、どちらもビジュアルが整理されていて、配置物の役割がわかりやすく、何より4方向レバーのみの単純な操作で、当時としてはきわめてクイックな動きが実現されており、とてもシンプルかつスピード感のあるゲームという共通点があったと思います。

『フロッガー』がヒットした理由、そしておもしろさのポイントとしては、そんなことが考えられるのではないでしょうか。

では、また次回。

©Konami Digital Entertainment
Arcade Archives Series Produced by HAMSTER Co.

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