第31夜『ASO』(1985年・新日本企画)
その名は“あっそう”ではなく“エー・エス・オー”!
『ASO』は多段階のパワーアップと、8種類の個性的なアーマーを駆使して戦う縦スクロールシューティングゲームです。『ASO』は「エー・エス・オー」と読みます(ASO=ARMORED SCRUM OBJECTの意味です)。
操作は8方向レバー3ボタン。ボタンは対空のレーザー、対地のミサイル、そしてアーマーの着脱に使用します。
個人的に大好きなゲームで、当時夢中になって1コインクリアしました。よくぞこれだけの要素を盛り込んで、うまくまとめ上げたものだと感心します。神業的なゲームバランスの名作シューティングです。
最大の特徴であるアーマーによる攻略の楽しさ
『ASO』の一番の魅力を挙げると、これはもうアーマーを使いこなすおもしろさに尽きると思います。シールド、キャノン、ファイヤー、サンダー等、アーマーは全8種類。
アーマーは道中でパーツを集めてそろえていきます。入手したアーマーはレバーとボタンでメニューから選んで装着すると、基本的にごく短い時間だけ使うことができます。
これをボス戦に合わせて計画的に使うのがじつに楽しい。あまりうまくないぼくなんぞは、サンダーアーマーがなければ5面ボスの強敵ギガ・ビットのところで挫折していたんじゃないかな。
例外的に、ボス以外の道中で使うとより効果的なアーマーもあります。シールドアーマーはエネルギーを集め続けることで長く持たせるのがセオリーでした。この使いかたを知ってから、またゲームがおもしろくなったのをよく覚えています。
こうした強力で多彩な武器を計画的に使うシューティングとしては、この前年になりますが、データイーストの『B-ウィング』も有名です。全ステージを通して戦略的に考える点で、どちらも大変優れたゲームです。
さまざまな要素がうまく噛み合った熱いゲームなのだ!
『ASO』は当時のアーケードとしてはゲームシステムがなかなか複雑です。
まず、対地と対空攻撃がそれぞれ多段階にパワーアップし、ミス時に強化状態をキープするポイントもあります(※ポイント=このゲームにおけるアイテムの意味です)。その他、とにかくポイントパネルの種類が多い。これらを全部アルファベットと色分けだけでプレイヤーにわからせていました。
それ以外にパーツを集めて8種ものアーマーを使いわける要素があり、そのアーマーの持続時間もポイントで延長させることができる。
また、1レバーしかなかったこともあり、アーマーの選択操作と自機の移動が同一のレバーで兼ねられていて、敵との戦いの最中に選ばないといけない。その際、画面にアーマー名が書かれていないので、形状や配置を覚えるまではインストラクションカードを見る必要もあります。そして、アーマーパーツ収集中に、うっかり別のパーツを取ってしまうと、それに差し変わってしまう(収集状況がリセットされてしまう)。
当然ながら開発者としてはアーマーをこのゲーム最大の特徴と考えていたでしょうから、少々複雑でも力押しでねじ込んだのだろうなということがヒシヒシ伝わってくる仕様です。
何より強烈な仕様だなと思うのは、武器がランクダウンしたり、エネルギーが失われるなどのマイナス系ポイントです。パワーアップしていくことで出現し始めるものなので、「自分が強くなるほどトラップが増える」と考えれば理にかなっているともいえるのですが、とにかく触れてはいけないものだらけになっていく。
ただ、こうした仕様も全部ひっくるめて、不思議とプレイしていて心地のよいゲームなんですね。次にやるべきことを常に意識させられながら、程よいスピード感でゲームが進んでいく。
自機の攻撃力と機動性能、敵の攻撃パターン、敵弾の物量、地上物と空中物のバランス、どれも適切な作りで、いろいろ詰め込んでいるようで、激しすぎない、過剰すぎないところがよいのかもしれません。戦闘とポイント収集のバランスもよくできていると思います。
印象的な敵の攻撃として、中盤からホーミング弾が出てくるのですが、これに関しても、絶妙に嫌な誘導をしてきて、強すぎず弱すぎず、じつによいアクセントになっています(ここでまたシールドアーマーが役に立つ)。
時代性がよく表れたゲーム『ASO』
『ASO』は地上と空中の撃ちわけシステム等において、この数年前に大ヒットを記録した『ゼビウス』の影響を強く受けています。道に沿って移動しながら攻撃してくる敵などは、まさに『ゼビウス』のドモグラムを彷彿とさせます。
ただ、『ゼビウス』に比べると、画面上のインフォメーションの記号性であったり、ザコ-中ボス-ボスへ至る規則性の高いステージ構成であったり、より“ゲームゲームした”作りに寄せた印象が強い。こうした作りは、このてんこ盛りのゲームシステムで遊んでもらう上で、うまくプラスに働いていたのではないかと思います。
もう一点思ったのは、武器の多段パワーアップや、ミス時にそのパワーダウンを阻止するための「K」(キープ)ポイントなどの存在が、この時期のアーケードを象徴してるということです。
こうした仕様は、それまでのゲームに比べ、全行程が長くなったことの証しです。つまり、全行程が長くなったことで多段階に強化するだけの尺が生まれ、作り手の「ミス時にこれが全ロストになるのは厳しいだろう」という配慮から状態キープのフィーチャーが生まれたわけです。
その上、このゲームにはコンティニュー機能がありません。上達した人だけが1コインでより長く深く楽しめる作りになっているのです。全ステージを最後まで通して遊んだ場合に、ゲームが最大限おもしろくなるよう設計されています。そうした遊びかたができる腕前のプレイヤーから見たときのゲームとしての完成度はとても高い。
しかしながら、この数年後にはよりインカム効率の高いクイズものやベルトアクションなどの多人数プレイによるコンティニュー前提の製品が増えていき、そして90年代には対戦格闘ゲームの時代が始まるわけです。
『ASO』はそうしたゲーム群への移行前に作られたシューティングジャンルにおける傑作の一つではないかとぼくは思います。
では、また次回。
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