見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2024年12月27日
  • 記事番号
    12098
  • ライター
    見城 こうじ

第33夜『サーカスチャーリー』(1984年・KONAMI)

サーカスの英雄チャーリーのジャンプアクション!

『サーカスチャーリー』はサーカス小屋を舞台にさまざまな種目をこなしていくオムニバス形式のKONAMIのジャンプアクションゲームです。

種目は、火の輪くぐり、綱渡り、トランポリン、玉乗り、曲乗り、空中ブランコ、そして後から出現する水上トランポリンの計7種類です。これらを時間内にクリアしていきます。

どの種目も2方向レバー1ボタンで実現されており、内容もサイドビューのジャンプアクションもしくはそのアレンジ系の遊びで統一されています。

キビキビした操作性が心地よく、各種目の完成度も高く、ジャンプアクションのお手本のような、じつに端正なゲームです。

画面上部の広いエリアをサーカスのテントやスコア表示などで占有しており、雰囲気作りに腐心している感じがよく伝わってきます。

そのレイアウトゆえ、ゲームフィールドが正方形に近いのですが、どの種目をプレイしても画面が狭いという印象がまったくありません。画面の使いかたが非常にうまい。トランポリンで跳ねすぎた際に、ただの背景かと思っていたテントの屋根を突き破ってしまう演出の何とも趣深いことよ。

見事に計算された各種目の秀麗さ

全種目とも大変よくできているので、一つひとつ語っていきます。

「火の輪くぐり」。大きな輪と小さな輪があり、地上のトラップとうまくタイミングを合わせるだけの作りながら、飛ぶことが任意である小さな輪にはボーナスが配置されるなどの工夫もあり、最初の種目としての完成度がとても高い(自由に種目が選べるバージョンもあります)。

「綱渡り」。前方から走ってくるサルをジャンプでかわすだけの遊びですが、途中から飛び跳ねてくるサルが混ざってきます。こやつは他の直進サルの頭上を飛び越してくるので、プレイヤーはそこでタイミングよくジャンプする必要があります(2匹のサルを同時にかわさないといけない)。
企画者的に考えると、飛び跳ねるサルの下をプレイヤーにくぐり抜けさせることをもって正解にしそうな気がするのですが、そうではないフェイント感がじつにうまい。

「トランポリン」。個人的には、この種目と、この派生の水上トランポリンの作りの美しさにはうならされます。プレイヤーの動きには制約があり、トランポリン上のジャンプをプレイヤーの意思で止めることはできません。勝手に飛び跳ねるなか、トランポリンからトランポリンへと、障害物のタイミングを見ながらうまく移動しなくてはならない。
しかも、同じところで跳ね続けると徐々に跳躍の高さが上がっていき、3回連続で飛び跳ねるとミスになってしまいます。

「玉乗り」。これでゲームになるのかと思うほどシンプルな作りですが、自分が乗った玉だけは左右に操作ができるので、うまく間をとったり、時には玉を一つ飛び越す解法も求められます。操作時にうっかり玉同士がぶつかってしまうといけないなど、意外に絶妙な距離の取りかたが必要とされる、とてもデリケートな遊びです。

「曲乗り」。全種目中、じつはこれがもっとも独創的なアイデアではないでしょうか。強制スクロールで次々とトランポリンを飛び跳ねていくのですが、トランポリンの台に横から当たるとアウト。それを避けるためにスティックの左右で速度の調節ができます。
ここでポイントとなるのが、速度やジャンプのタイミングをうまく調節することで、一つのトランポリン上で複数回飛び跳ねてスコアが稼げる点です。うまくプレイできるとすこぶる気持ちいい。似た仕組みの遊びがあまり思い浮かびません。

「空中ブランコ」。タイトーの『ジャングルキング』『パイレートピート』にもよく似た遊びがありましたが、こちらは振れ幅をスティック操作で調整できたり、途中のトランポリンを利用してブランコにつかまり直すことでボーナスが得られるなど、より凝った作りになっています。ゲームとしてはクライマックスの高難度種目に位置づけられており、それにふさわしい完成度の高い遊びに仕上がっています。最後にチャーリーがなぜか分身する演出も素敵です。

隠しボーナス、隠しキャラクターなる当時の文化

『サーカスチャーリー』には数多くの隠しボーナスが設定されています。障害物を進行方向と逆にジャンプで越えるとコインが出現したり、ゴールへジャンプではなく歩いて到着するとドル袋が出現したり等々。

こうした隠しボーナス(隠しキャラクター)は、おそらく『ゼビウス』辺りで一気に火がついたフィーチャーですが、同じくKONAMIの『ハイパーオリンピック』にも競技ごとに用意されていて話題になりました。

おもしろいのが、こうした隠し要素の流れが、同系統(オムニバス型)のゲームであるタイトーの『ザ・運動会』や、サン電子の『ザ・ギネス』にも非常によく似た形で継承されていることです。ほぼそのままといってもいい。

運動競技などのゲームに隠しキャラクターを導入すると、世界観に合わない唐突な感じになることも多く、なぜ制作者がそこまでして入れたかったのかというのは、当時の歴史的背景を知らないとよくわからないかもしれませんね。

なぜ隠しキャラクターを仕込むのかといえば、『ゼビウス』のときは世界に深みを持たせるためのミステリアスな存在というのが理由として大きかったのですが、その後のゲームに関していえば、話題性が作れる、出現させるためにプレイヤーがリピートしてくれるなど、よりダイレクトに売り上げを上げるための方策というのがメインの理由になっていきました。

一つのゲームに盛り込まれる要素が圧倒的に増えた現代では、隠しキャラクターという概念がほとんど意味をなさなくなりました。近い要素はあるにしても、唐突なものを唐突な出現条件で登場させる手法は影をひそめ、レアアイテムなどの概念で置換されたといってもよいかもしれません。隠しキャラクターは黎明期ならではの流行だったのだと思います。

では、また次回。

©Konami Digital Entertainment
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